第9話 明星の魂、不死鳥への合流
雷電は、高火力高性能攻撃により中型を撃破し、伊沢隊・伏見隊の援護をしつつ、戦艦の前面へ展開していった。
伊沢隊・伏見隊は連携しつつ、敵を蹂躙していた。数は多いものの確実に仕留めていった。
「杉里、石田、ポイントアルファに敵を集結させる!」
「了解!×2」
哲夫は生き残っているAlogを殲滅するために、各小隊を集めていた。
「佐々木は、集結した敵の殲滅を!」
「わかってる!」
伊沢隊は、智則・愛香・万里子のトリオで敵を翻弄し、大輔の攻撃により撃破するという戦法で確実に敵の数を減らしていった。
「杉里は俺の横について、敵の殲滅を! 石田は後方上空にて、周囲の索敵を!」
「了解!×2」
伏見隊は、和彦が戦場をかき回し、美恵と利花で敵を包囲殲滅、 奈津子は周囲の警戒するという戦法で、小型の数を一気に減らしていった。
EasdpJを追っていたAlogの小型が残りが30匹ほど。雷電1機で充分だったが、Alogを伊沢隊・伏見隊に任せ、哲夫は戦艦と対峙した。
「EasdpJの戦艦へ無線連絡を!」
「艦長。雷電より無線が入ってます。いかがいたしましょう?」
艦長は考えていたが、Alogを追い払ってくれたことや、死んだと思っていた結城・如月コンビが生きていたのであれば、戦局が一気に変わると確信し通信を開いた。
「私はEasdpJ所属艦、明星の艦長、鳳です」
哲夫は懐かしい顔をその中に見つけた。それは、自分がエース時代に搭乗していた母艦の艦長であった鳳 春花だった。
「お久しぶりです、鳳艦長!」
かしこまった哲夫に対し
「元気そうね、坊や」
春花は以前と同じように話しかけてきてくれた。
「姉さんこそ」
と、哲夫も当時の呼び方で答えた。
「あら、共にいるのは、さやかではないのね」
「はい。現在ともに戦う仲間です」
「艦長! 艦の損害が70%を超えました、水力低下、艦の姿勢制御が困難です」
明星が、ぐらつき始めていた。
「姉さん、誘爆の可能性は?」
「ゼロではないが、かなり厳しいわ。ただ、どのEasdpJにも連絡が付かないのよ。何か知っている?」
そこへ、基地に居る杏から、通信が入った。
「結城隊長。Alogの殲滅が終わったら、明星をこちらのドックへ誘導してください」
「よろしいのですか?」
「現在のEasdpJの事を、明星の皆さんにも、知っていただきたいです」
そして、その姿を、明星のスクリーンに映し出した。
「お久しぶりね、春花」
その姿を見て驚いた春花艦長は、
「ま、まさか、杏なの? どうして杏が?」
「詳しい話は、こちらに来てからという事で、今は、こちらに来てください」
そう言って、撃沈ギリギリな明星を、ドックへ案内した。
伊沢隊・伏見隊も、Alogを殲滅してその後に続いた。
ドックにて、哲夫や伊沢隊、伏見隊の面々、さらには、杏や慶子などと顔を合わせた春花は、
「あの頃に戻った様ね」
と、昔を思いつつ、
「流石に、さやかは無理だったのね」
と、さやかのことを悲しんだ。
「と、言う訳で、現在EasdpJは、Alogだけでなく、民衆からも狙われているのですよ」
杏からの情報に、
「本当に粛清が行われていたの?」
春花は半信半疑であったが、
「我々にも、その命令が出ていました。まぁ、無視しましたが」
と、智則や和彦がおどけて続けた。
「私たちには、その命令はなかったわ。ただ、Easdp本部を救援せよ、との命令だったのだけど、気が付いたら味方艦が居なくなっていたのよね」
春花が悔しそうに言うと、
「確かにEasdp本部の救援が、最初の命令でしたけど、途中で、EasdpJが攻撃を受けているので、引き返せと、命令が上書きされましたよ」
「お陰で、小隊単位で侵攻していた我々は、各個撃破されていった」
と、智則と和彦が怒りに震えながら話した。
「敵前で引き返したら、どう考えても危険だよな」
「敵前どころか戦闘中だったのに、早急に引き返せって、無茶な命令だったからな」
小隊のみなも、EasdpJの振る舞いに思う所があり、恨み言をぶつけていた。
「それで、春花たち明星はどうしたいのかしら?」
黙っている春花に、
「このままEasdpJにどうしても復帰したいのであれば、なんとか伝手を使いましょう。ですが、その時は、ここにいる面々とは敵となることを、覚えておいてください」
明星のクルーたちは、息を飲んだ。
「ど、どういう事かしら?」
春花の問いに、
「そのままの意味です。我々は、EasdpJを抜けて、新たな組織を立ち上げます」
杏は、哲夫たちが頷くのを見て、
「我々は、EasdpJに代わるEasdpの組織、NEasdpの立ち上げを行います」
そんな杏の言葉に、
「NEasdp・・・・。新しい地球軍特別防衛隊って事なの?」
春花がつぶやき、
「確かに、EasdpJじゃ、日本を守れないし。」
明星のクルーたちからも、EasdpJに対する不満が沸き上がっていた。
「――冗談じゃない。俺たちは使い捨ての駒かよ」
明星の操舵手である魁が、拳を震わせて吐き捨てた。
「艦長。わしらはあの政府のために明星を沈めるのは御免です。……杉里の嬢ちゃんの言うNEasdpってやつに、わしらの腕を預けることにするぞ」
油まみれのいかにも機械屋ですといった風貌の岩蔵が、他の整備兵と共に、春花に言った。
「私も同意見です、艦長。私たち明星のクルーは、EasdpJではなく、鳳艦長に命を預けているんですから」
隣で通信コンソールを握る凛も、静かに頷いた。
三人の言葉に、背後に控える他のクルーたちからも「そうだ!」「俺たちもNEasdpへ!」と賛同の声が上がった。
鳳艦長は、頼もしい部下たちの姿に目を細め、杏に向き直った。
「……決まりね、杏。この『明星』の魂ごと、あなたの組織に合流させてもらうわ」
杏は目を瞑って、
「ありがとう。・・・・春花」
それからは、さらに忙しく時間が過ぎていった。
「杉里代表、鈴木軍医。あんたたちはもう、その油まみれのツナギを脱ぎな」
岩蔵が、自慢の整備兵たちを引き連れてやって来た。
「真壁さん……」
「不死鳥の副砲換装も、雷電の最終調整も、俺たち明星の整備班が引き継ぐ。あんたたちは司令官として、医者として、やるべきことがあるだろ?」
岩蔵はニカッと笑い、哲夫の方を見た。
「結城隊長、あんたの機体、最高に仕上げてやるよ。……さあ野郎ども、作業再開だ! 最新鋭艦を拝ませてもらおうじゃねえか!」
明星の整備兵たちが一斉にドックへ散っていく。 その光景を見て、慶子はふっと肩の力を抜き、軍医としての顔に戻った。
それからは、不死鳥の整備が一気に加速していった。




