第8話 救援の金光、新生『雷電』出撃
攻撃部隊で哲夫と面識があるのは、智則、大輔、和彦、利花、奈津子の五人で、愛香とは杉里隊長の家で何度か見た程度であった。
ドックでは最新鋭戦艦「不死鳥」が急ピッチで製造されていた。
不死鳥は自力で地球の重力を楽に振り切れる推進力を持ち、大気圏内ではその推進力で空中の移動が可能であった。
その推進力とは、リバースグラビティであった。
Alogの残骸から、さやかが発見した、リバースグラビティ粒子を使い、重力そのものを操作して推進力を得るという、画期的なシステムであった。
そのリバースグラビティ粒子を圧縮し、濃縮することに成功し、それを不死鳥と雷電に組み込んでいった。
そして、宇宙ではその能力を最大限に引き出せるようになっていた。
当初は、紫雲と雹花にも組み込もうとしたが、濃縮した粒子を扱うシステムが巨大なため、現段階では見送られた。
不死鳥の整備はもちろん、雷電・紫雲・雹花の各整備班も揃っており、EasdpJの代わりに対Alogの切り札になりつつあった。
「Alog多数接近、EasdpJの生き残りと思われる戦艦が1艦交戦中。戦況はEasdpJに勝ち目なし!」
「繰り返す!」
「Alog多数接近、・・・・」
戦艦の最終調整段階に入った時、ドック内に警報が流れた。
EasdpJの生き残りがAlogに襲撃されているとの情報が入った。
現在のEasdpJは部隊の大半を失い、また市民からの恨みもあるため、表だった行動は出来ずひっそりと活動を続けていた。
「結城隊長。戦艦不死鳥は、まだ出撃できません。逃げているEasdpJの生き残りを助け出したいのですが、どうにかなりませんか?」
作業着姿で戦艦の整備を手伝っていた、杉里司令官が懇願してきた。
哲夫は少し考えて、
「みんな、Alogを殲滅する、ついでにEasdpJの生き残りも助けるぞ!」
「了解! 久しぶりの結城隊長の指揮で戦えるのですね!」
「おう! 常勝無敗だった、結城隊長の指揮を楽しみにしてる。我が小隊の命運を預けるぞ!」
哲夫は、伊沢隊・伏見隊を引き連れ救援に向かった。
雷電に向かう途中、二人に声をかけた。
「亜理紗、由美、行けるな!?」
雷電は複座式だったが、三人で搭乗する事になり、急遽コクピットが改修された。
「が、頑張ります」
「まぁ、何とかなるでしょう」
緊張した亜理紗と、経験豊富な由美であった。
「亜理紗はこれが初陣だ、焦らず、パニックになるなよ。俺たちがフォローする」
「そうね、訓練通りにやれば、後は、私たちがバックアップするから、安心して」
亜理紗を激励すると、由美もフォローしていた。
「が、がんばります」
と、同じ回答しかしない亜理紗に苦笑しながらも、三人は雷電に乗り込んでいった。
(やっぱりこの液体呼吸には、慣れないなぁ)
亜理紗がそう思いながらも、コクピット内が、液体呼吸できる液体で満たされて行くのを実感していた。
完全に液体呼吸に移行すると、目の前には周囲の状況を示すマップと、誘導弾および、誘導兵器の残弾数が表示されていた。
(やはり、この雷電のメンタル部分のシステムは異常ね。これを如月軍曹は一人で結城隊長を支えていた。本当にすごい人。私も、出来る事をやるしかない)
そう思いながら、液体呼吸できる液体で満たされて行くのを実感していた。
完全に液体呼吸に移行すると、周囲の状況を示すマップに索敵出来ている、敵の位置や味方の位置、所属不明の位置などが表示されていた。さらに、各小隊との直接リンクも行えるように、設定していった。
(まだ、全員と戦術リンクを行うと、索敵などの状況判断が破綻してしまうのが。まだまだなのよね)
そして、哲夫は、
(二人に背中を預けるか。そうだよな。さやかと同様に、二人の目と感覚を信じてただ引き金を引くだけだよな)
と、決意を新たにしていた。
哲夫は、スクリーンに映し出された戦況を見て、
「案を出せ、雷電」
そう命令を出すと、瞬時に複数の案が表示され、哲夫はその中から案を選び、修正していく。
(兄さん凄い。こんな事が)
「由美、戦術リンクで伊沢隊、伏見隊に連絡を!」
「はい。・・・・っく」
だが、全ての小隊に繋げられず焦っていると、
「全員につなげても情報量が多すぎて混乱するぞ。まずは、通信兵に伝えるんだ!」
哲夫の声に、伊沢隊・伏見隊の通信兵の機体と、戦術リンクを確立した。
「こちら雷電。作戦プランを伝える、作戦プラン通りに攻撃せよ」
万里子と奈津子は、雷電から送られてくる作戦プランを、思念波で読み取り、小隊に伝達していく。
二人は、思念波で膨大な情報を受け取り、それを、各小隊に伝達することができた。
(これが、雷電の特別な機能、状況分析と実行能力なの? 本当にこの通りに動けば、敵を一掃できる
の!?)
二人は哲夫と直接面識がなかったため、送られてきたプランをみて、焦っていた。
「石田、作戦はどうした」
作戦プランが送られてこない事に、智則が万里子に催促した。
「はっ、雷電からの作戦プランです」
そう言って、小隊に作戦プランを伝えた。
「なるほどな」
「これが、雷電の作戦プラン」
「さすが、隊長だぜ! いかしてる!」
と、伊沢隊の面々がつぶやく中、
同じく作戦プランを共有した伏見隊は、
「これなら、Alogをつぶしたい放題だな」
「この作戦プランなら、だれも失わないの?」
「すげぇな、こんな作戦プラン、見たことねぇゼ」
「・・・・この人がいてくれたら、みんなは・・・」
と、それぞれ思っていた。
EasdpJは戦艦1隻でAlogと交戦していた。
「艦の損害が65%を超えました、このままでは大破します!」
オペレータの悲痛な叫びを聞きながら、艦長は指示を飛ばす。
「魁は回避に専念! 絶対にエンジンに当てないで!」
「火力は中型に集中! 何としても落とすのよ!」
中型に攻撃を集中し、小型からの攻撃は致命傷を避けていた。
戦闘は何とか逃げているように見えたが、戦艦の物資が底を尽きかけ、攻撃防御共に後れを取り始めていた。
(このままでは)
「ここは、日本の領土よね!? 周囲に味方期はいないの?」
通信兵に尋ねるも、
「だいぶレーダーもやられてしまったので、詳しくはわかりませんが、味方からのコンタクトは、現状ではありませんよ」
完全に孤立しているようだった。
それもそのはずで、EasdpJは各支部毎に地下基地へ逃げ込み、地上の事には無関心であった。
「艦長! 右前方より、所属不明機多数接近! ですが、紫雲と雹花のようです」
味方の識別信号を出していない、味方の接近にオペレータは首をかしげながらも報告した。
「なんですって!?」
艦長は驚きながら、その機体を見つめていた。
「敵、中型Alogに、エネルギーの収束を感知! 撃ってきます!」
慌てたオペレーターの声に、
「回避!! 面舵!」
「間に合いません! 直撃します!」
無情にも、ブリッジ内に警告音が響き渡る。
全員が、敵の方に注意を向けていると、その横を、金色の大きな機体がすり抜けていった!
ドーーーーン
バチバチバチバチ
周囲に大きな衝撃音と、衝撃波が広がった。
哲夫は、リバースグラビティを応用した、特注のシールドで敵中型のエネルギー砲を弾き、戦艦への攻撃を防いでいた。
(このシールドも、一度使ったらメンテナンスしないと、再度は使えなさそうだな)
哲夫は、そう思いながらも、抜き去った戦艦を見つめていた。
(まさかな、明星が追われているとはな)
その時、戦艦のブリッジでも、助かったという安堵のため息にあふれていた。
「まさか、あの色、あの機体は」
艦長の問いに、オペレータは答えた。
「あの機体は、・・・・雷電です!」
スクリーンに映し出された巨大な物体はまさしく雷電であった。
「味方の識別信号がない以上、警戒を厳に! ただし、無用な発砲は控えること」
艦長はその機体と操縦者を知っていたが、確信が持てぬ以上、警戒するしかなかった。
「伊沢・伏見の各隊は小型の殲滅を!」
「了解」
「らじゃ」
哲夫は、そのまま中型へ攻撃を仕掛け、小型へ伊沢隊・伏見隊を戦艦を守る様に、小型に仕掛けさせた。
「こっちは、中型をやるよ!」
「はい」
「了解」
雷電は、小型が密集する中を通過し、作戦通りに、遅延型誘導ミサイルをばら撒いた。
これは、近くの物体に自動的に誘導するミサイルであった。由美の索敵により正確に敵の動きがトレース出来たため、最適な信管作動タイミングを哲夫の脳内へダイレクトにフィードバックする事により、計算の負荷から解放された哲夫は、ばら撒く本数を増やすことに成功した。さらに、亜理紗は飛んでいく誘導ミサイルを捉え、敵の弱点である、下側からの着弾や、敵が防御を解いて翅を開いたその刹那、ミサイルを直撃させるという芸当をこなしていた。一度に操れるのは2本が限界だったが、そのミサイルは、確実に敵を撃破していった。
雷電が、ど真ん中を突っ切っている時、伊沢隊は左翼側、伏見隊は右翼側の小型に攻撃を集中していった。
伊沢隊では、
「ミサイルに気を付けて、突撃だ」
智則の命令に、
「よっしゃぁ、行くぜ!」
大輔が、勢いよく飛び出した、
「杉里、佐々木の御守を任せる。撃ち漏らしは、こちらで撃破する」
「了解です」
「石田は、思念波で雷電との戦術リンクを維持」
「了解」
伏見隊では、
「波多野、後は任せた。俺は一匹でも多く、あの虫野郎を叩きつぶす!」
そう言って、敵に突っ込んでいった。
「ちょ、隊長! ミサイルが来ますよ!」
だが、そんなミサイルも利用しながら、小型を一機、また一機と倒していった。
「美恵、あたいも突っ込もうか?」
「いいえ、利花さんには、この周辺で私たちと共に、殲滅をお願いします」
「よぉし! わかったよ」
そう言って、和彦から逃げ延びた小型を、一機、また一機と殲滅していった。
中型の射程距離内へ進入、もの凄いGがかかる中で哲夫は内蔵エネルギー砲のトリガーを引いた。
圧縮されたリバースグラビティ粒子が、機体の前面に解放される。
亜理紗と由美のサポートにより命中率が格段に上昇し、中型に砲撃が命中すると装甲を冷却するために翅が開き、弱点部分が大きく露出した。
「今です!」
さらに接近していた雷電は、その弱点部分に向け、既に手にしていた外付けエネルギーライフルで何度も打ち抜き、ものの数秒で中型を仕留めた。
2026/4/9 編集
紫雲と雹花にも組み込もうとしたが、濃縮した粒子を扱うシステムが巨大なため、見送られていたが、何とか搭載する事に成功していた。
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紫雲と雹花にも組み込もうとしたが、濃縮した粒子を扱うシステムが巨大なため、現段階では見送られた。
と、しました。
今後、搭載する予定です。




