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地球軍特別防衛隊  作者: 悪魔神官長
第四章 火星基地アレス

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第47話 アレスの墓標

赤い砂塵が舞う火星――。

かつて人類は、多大な犠牲を払いながらも、この星を一度は取り戻していた。

その立役者であった『明星』部隊と雷電は、杉里隊長を失い月基地への帰投命令が出された。

その後、月基地に帰還した春花たちはなぜか厳しい尋問・軍法会議を受け、さらに隔離されたさやかに対し、さやかの構築したシステムを、軍は旗艦『不死鳥』や『月読』に強引に転用しようと画策。それを拒否したさやかは、二度と帰らぬ人となった。

哲夫がそのあまりにも理不尽な真実のすべてを知らされたのは、再び木星のAlog基地攻撃という非情な命令が下された後だった。

帰投命令後に火星防衛がどうなっていたのか――彼は、その顛末を知る由もなかった。


そして今――。


再びその地に立って見上げる火星アレス基地は、おぞましい暗緑色のRGエネルギーが脈打つAlogの前線基地へと完全な変貌を遂げていた。生物的な組織と結晶体が融合したような異様な構造物の中心には、先ほどの個体を遥かに凌駕する超大型カブトムシ型が、あたかも王座に就くかのように鎮座している。


だが、何よりも不気味だったのは、その超大型の傍らに、まるで護衛のように佇む一機のシルエットだった。 人類の機動兵器『紫雲』に酷似した、しかし禍々しい気配を放つその機体は、微動だにせず、ただ前線基地の深淵から星の海を睨みつけていた。

さらには、それらを守る様に、目に見えるほどのRGフィールドバリアが展開されたいた。

そのアレス基地を遠方に望む宙域で、超大型母艦『八咫烏』の艦内は、静かな熱気に包まれていた。 激戦を終えた各機体の急速補給と全力の整備が突貫で進められる中、演算室の凛だけは、周囲の喧騒から完全に孤立していた。


「……ここ、このプロトコルの暗号化、まだ潜れる……!」


凛の瞳は血走り、ホログラフィック・キーボードを叩く指先は、すでに感覚を失いかけていた。前線で掴んだ『マスタークラスタ・パルス』の解析――敵の通信構造の全貌を暴くための演算に、彼女は己の命を削るようにして没頭していた。


「凛姉さま、もう何時間も働き詰めです。お願いだから、少しだけでも休んでください」


ナミが、心配のあまり声を震わせながら懇願していた。

だが、凛の耳にはその声すら届いていなかった。『邪魔しないで』とさえ言わずに画面を睨み続ける凛の横顔には、痛々しいほどの悲壮感が漂っている。


「そこまでだよ、この大馬鹿者」


演算室の自動ドアが開き、タエが毅然とした足取りで割り込んできた。タエは凛の肩を掴むと、強制的にその視線を画面から引き剥がした。


「タエさん……放して! 今、いいところなの、ここで止められたら――」

「いや、止めるんだよ。今のあんたの脳細胞は、過熱したジャンクパーツと同じさ。このままじゃ効率が落ちるどころか、肝心な作戦の最中に焼き切れるよ」

「でも、解析を終わらせないと、みんなが……!」

「残りのルーティン演算とログの監視は、このスパイダーに任せな。あんたの作った自慢の子だろう? 自分の技術を信じて、今は泥のように眠るんだ。これは命令だよ」


健気に凛からの作業を引き継ぐスパイダーの姿と、タエの絶対的な眼光に圧され、凛は悔しそうに奥歯を噛み締めながらも、渋々と席を立った。


「わかったわよ」


簡易ベッドに倒れ込み、引きずり込まれるように深い眠りについた凛が、再び目を覚ましたのは数時間後だった。 驚くほど頭がクリアになっていた。タエの言う通り、限界を迎えていた脳が急速に再起動したことで、先ほどまで霧がかかっていたソースコードの構造が、まるでパズルが噛み合うように一瞬で理解できた。


「スパイダー、ログを見せて。……そう、ここよ。この接続点ノードさえ押さえれば……!」


覚醒した天才のタイピングスピードは先ほどの数倍に跳ね上がり、アレス基地攻略のための『通信介入プロトコル』が、驚異的な効率で組み上がっていった。


そして――人類の総攻撃の刻限が訪れた。


アレス基地の防衛網を突破すべく、明星艦隊や新・伊沢大隊が強固な防衛陣形を敷きながら、じわじわと火星の赤い大地へとアプローチを開始する。


「凛、あのバリアを破壊するには、特装砲で足りるかしら?」

「そうですね。特装砲A(連射型)では、何度撃っても修復が間に合う可能性があるので、やるなら、特装砲B(高濃度圧縮粒子型)の方ですね」

「特装砲B以外の方法は、何かないかしら?」

「使わないのですか?」

「特装砲Bは、あの、超大型に万全の状態で撃ち込めるように、取っておきたいのよ」

「なるほど。他の方法ですと、特装砲Aを含む、全艦一斉射でフィールドを吹き飛ばすしか、無いですね」

「了解! 特装砲A、方舟の箱庭、RGバスターカノン(雷電・八咫烏)、ケルベロス・ゲート、恵美機での、同時着弾攻撃で一気にRGフィールドを吹き飛ばす!」


「各機、各艦、照準同調――全特装砲・主砲、カウント開始!」


総旗艦『不死鳥』のブリッジで春花の鋭い大号令が下る。

先陣を切ったのは、不死鳥の特装砲だった。宇宙空間を切り裂く極大の光条がアレス基地の表層へと突き刺さり、先制の火蓋が切られる。

さらに、『流星』『朧月』『暁月』『彗星』の4艦同時攻撃である、方舟の箱庭も発射される。

それに一瞬の遅れもなく、カイルとエレーナの駆る『ケルベロス・ゲート』の大型内蔵エネルギー砲、そして恵美の乗機による精密な長距離エネルギー射撃が、寸分の狂いもなく同じ座標へと叩き込まれた。

さらに、後方からは黄金の巨体『雷電』が動いた。


「てぇぇぇ!!」


哲夫の絶叫と共に、雷電の『RGバスターカノン』が、空間を歪ませるほどの奔流となって発射された。

最後に超大型母艦『八咫烏』自体の『RGバスターカノン』が、重低音の咆哮を上げて追撃の閃光を放った。

次々と連鎖する、人類最大火力の一斉射撃。

轟音なき宇宙の激震の中、アレス基地を覆っていた暗緑色の生体防衛膜が、最初の一撃でひび割れ、最後の八咫烏の砲撃によって派手に消し飛ばされた。


「シールド消失を確認! 敵通常群、迎撃に出てきます!」

「よし、計画通りだ! 各隊、突入――大型・中型を各個撃破し、前進せよ!」


アレス基地の防衛膜を激しく激震させた直後、雷電は即座にアクションを起こす。空になったバスターカノンのエネルギー供給プラグだけを、強引に母艦『八咫烏』のチャージ・ドックへと直接接続。大容量エネルギーをバスターカノンへ強制再チャージさせるその間に、雷電本体は巨大な砲を放し、他の武装を構えてそのまま敵陣へと向かって獰猛な突撃を開始したのだ。


剥き出しになった前線基地から、無数のAlogが牙を剥いて湧き出してくる。しかし、人類の側には、すでにそれらの怪物を確実に屠るための『火線の方程式』が共有されていた。


明星艦隊の戦艦4隻が綺麗に交差陣形を組み、強固なシールドを持つ大型個体1体を完全に包囲する。


「全艦、方舟の箱庭――圧殺せよ!」


ミラー准将の号令とともに放たれた4艦同時の猛烈なエネルギー砲の斉射が、大型の生体シールドごと、その巨体を木っ端微塵に押し潰した。


「こちらも攻撃するわよ! 主砲照準、大型Alog!」


戦場を駆ける総旗艦『不死鳥』の主砲が一閃し、もう1体の大型個体の胴体を一撃で消し飛ばす。


「俺たちも続くぞ!」


『RGバスターカノン』を八咫烏に接続してチャージ中の『雷電』もまた、近接用の連続攻撃によって別の大型個体の装甲を強引に引き裂き、確実に撃破数を積み重ねていった。


「カイル! あれ!」

「おうよ。みんな、続いてくれ!」

「伊沢隊各機、ケルベロス・ゲートに続け!」

「任せろ! 行くぞ! 杉里!」

「こちらも突撃するぞ!」

「了解!」

「了解!」


前線では、カイルとエレーナの『ケルベロス・ゲート』が新・伊沢大隊の面々と完璧なフォーメーションを展開。息の合った連携攻撃によって大型の隙を突き、確実に仕留めていく。


「我々も、続くぞ!」


最後方からは『八咫烏』が放った『RGバスターカノン』の怒涛の三斉射が、戦場を横一列に薙ぎ払い、密集していた大型個体群を次々と爆砕していった。

大型の防衛線が瓦解する中、残る中型カナブン型に対しても、人類の牙は容赦なく突き刺さる。


巨体を躍らせる『雷電』の容赦ない連続攻撃が中型の群れを圧殺し、『不死鳥』は精密な主砲・副砲の数回にわたる正確な斉射と、空間を埋め尽くすミサイルの弾幕で中型を一網打尽にしていく。 さらに『ケルベロス・ゲート』がその巨体に秘められた内蔵大型エネルギー砲を解き放ち、眩い光線で中型の列を消滅させれば、追随する恵美の乗機もまた、内蔵エネルギー砲の鋭い輝きで中型個体を次々と貫いていった。


「……よし、いける! 通常群の排除、ほぼ完了!」


手応えを感じた前線の叫び。 人類が誇る圧倒的な火力のシミュレーション通り、アレス基地を守っていた通常群の防衛線は、見る見るうちに文字通り「解体」されていった。

だが、本当の地獄はここからだった。


前衛の肉壁が完全に消滅し、ついにアレス基地の核心部が剥き出しになる。

そこに鎮座する、これまでとは桁違いのプレッシャーを放つ超大型カブトムシ型。そして――その傍らで静かに駆動音を響かせ、不気味な紫の光を放ちながらゆっくりと浮上してくる、あの『紫雲に酷似した未知の機体』が、人類艦隊の前にその全貌を現した。


超大型の足元から、地響きと共にアレス基地内に残存していたAlogの『本隊』が津波のように湧き出し始める。大型、中型、小型――先ほどまでの前衛を遥かに凌駕する真の物量が、赤い大地を埋め尽くしていく。


「クソッ、数が多すぎる! 砲撃が追いつかねえ!」


新・伊沢大隊の面々が悲鳴を上げる。明星艦隊の斉射も、不死鳥の十字砲火も、空間を埋め尽くす暗緑色の壁を削り取るには至らない。人類の防衛線が圧倒的な物量に押し潰されようとしたその瞬間、母艦『八咫烏』から、目覚めた凛の声が響き渡った。


「みんな、下がって! ――上位権限マスタークラスタ対応プログラム、照射!!」


凛が放った新たな電子インジェクションが、前線の通信帯域へと炸裂した。刹那、突撃してきていた大量の通常群が、まるで互いに敵を見失ったかのように激しく衝突し合い、戦場に大混乱が巻き起こる。


「よし! この機を逃さないで! 全艦、全機、全力攻撃よ!」


春花艦長の号令で、混乱しているAlogに対して、ドンドン射撃を行っていった。


しかし、敵もさるものだった。凛の電波介入に対し、鎮座していた超大型カブトムシ型が、その命令を上書きしなおした。


「くっ、命令が書き直される速度が、速すぎる!」

「前回は、中型を経由していたけど、今回は、超大型が直接書き換えているから、更新速度が段違いに速い!」


凛と超大型Alogが繰り返し命令を更新し合い、命令系統が数千分の一秒単位で上書きされ続けた結果、大型以下のAlogたちはエネルギー砲の集中砲火を受け、次々と爆散していった。


「これなら更新速度が速くても勝てる!」


そう思ったとき、超大型はその凶悪なギミックを起動させた。

超大型の巨体から、無数の植物の根のような、禍々しい暗緑色の『生体RGライン』が文字通り爆発的に触手のごとく延伸されたのだ。それらは近くにいた大型や中型個体たちの肉体へと次々と直接突き刺さり、物理的な有線ネットワークを瞬時に構築していった。

空間を飛び交う凛の無線ハッキング電波を完全に遮断し、超大型から個体へ、ラインを通じて『直接命令』が強制インジェクションされる。


[ Warning: Injection Blocked ]

[ Physical Node Connection Detected ]

[ Command Overwritten by Direct Link ]


「嘘……! 無線通信の帯域そのものを捨てて、有線で直接命令を流し込んでるの……!? これじゃハッキングの電波が届かない……!」


凛の顔に焦燥が走る。超大型による物理的な直接命令への切り替えにより、Alog通常群の統率は瞬く間に完璧な状態へと引き戻された。再び狂暴な赤色の眼光を宿した敵の物量シールドが、人類の戦線をジリジリと圧迫し、追い詰めていく。

だが、有線接続による直接統率は強力である反面、そのラインの繋がった範囲でしか機能しない。明星艦隊や新・伊沢大隊は、その無線ハッキングが通じぬ絶望の中でも戦意を失わず、ラインの隙間を突いて確実に敵の数を減らしていった。

激化する乱戦の中、通常群の数が目に見えて減少し始めたその時、超大型はついに、傍らの『紫雲型』へと明確な『殺戮指示』を出した。

紫色の機体が、爆発的な推進力で星海へと躍り出る。その異次元の機動性と無駄のない洗練された戦闘スタイルは、明らかにこれまでのAlogとは一線を画していた。

一瞬で人類の懐へと潜り込み、圧倒的な力で戦線を押し上げていった。


「なんだあの動きは……!? 何処かで見たことがある。まるで――」


迎撃のために黄金の巨体を駆り、間近でその機体と刃を交えた哲夫は、センサーが捉えたその外装のディテールに目を見開いた。 禍々しい結晶体に侵食され、半分以上がAlogと化しているその機体。しかし、その奥に確かに残されていた固有のペイントと識別コードを、哲夫の脳が認識した。


「杉里……隊長……?」


それは、かつて自分たちを導き、還らぬ人となったはずの杉里隊長の『紫雲』そのものだった。


「杉里隊長ーーーッ!!」


哲夫の引き裂くような叫びが通信回線に響き渡る。

その瞬間、主の叫びに呼応するように、雷電の機体全体がうっすらと神聖な黄金の輝きを放ち始めた。雷電を媒介として、哲夫の脳内に、ノイズにまみれた『思念』が直接流れ込んでくる。


『……聞こえるか、哲夫。大きくなったな……』

「杉里隊長! 生きていたんですか……!」

『いや、俺の肉体はとうに奴らの一部だ。だが、この機体のシステムに残された俺の『意志の残滓』を、雷電のコアが呼び寄せた……。時間が、ない。奴らの命令系統の最深部にアクセスするための『Alog側の命令ログ(マスター・キー)』を、お前の雷電に転送する……! 受け取れ!』


雷電の戦術リンクが強制駆動し、その通信は『八咫烏』に控える杏と愛香のコックピットへも瞬時に共有された。


「……あなた……? 本当に、あなたなの……!?」

「お父さん……! お父さんなのね!?」


コックピットに響いた声に、杏と愛香が激しく息を呑む。 信じられない再会に声を震わせる最愛の妻と娘に対し、杉里の思念は、どこまでも穏やかで、しかし悲壮な決意を帯びていた。


『杏、すまないな、後は任せる。そして、愛香……。大きくなったな。……最後にまた、お前たちの声が聞けて良かった』

「そんな!?」

『もう、長くはもたない。俺の『意志の残滓』も、間もなく完全にAlogのシステムに呑まれ、身も心も完全に怪物になる。……頼む、杏。お前の知っている『悠』のままで、人として、人間のままで俺を逝かせてくれ……!』


「嫌……! 嫌よ、お父さん! やっと会えたのに、そんなの絶対に嫌ッ!」


だが、夫としての、そして父親としての、これ以上ない覚悟の深さを察した杏が、遠く離れた『八咫烏』のブリッジでボロボロと涙をこぼしながら、通信越しに娘をなだめるように首を振った。


『……愛香、悠は人のまま逝きたいのよ。わかって。……哲夫くん。お願い……。あの人を、自由にしてあげて』

「ぐずっ」

「……了解、しました」


哲夫は涙を拭い、正面から迫り来る紫色の機体を見据えた。


「いきます! 杉里隊長……!」


杉里の意志が、Alogの直接命令プログラムに抗い、一瞬だけその動きを完全に止める。その一瞬の隙を、哲夫は逃さなかった。


「おおおおおーーーーーっ!!」


雷電の放った最大出力の近接一撃が、紫雲の胸部装甲を真っ直ぐに貫いた。 爆炎が宇宙を包み込む。崩壊していくコックピットの光の中で、杉里の機体は、愛する家族に看取られながら、どこか満足そうに、穏やかな光の粒子となって星の海へと霧散していった。

杉里の紫雲が撃破されたことを見届けた超大型カブトムシ型は、戦況の不利を悟ったのか、張り巡らせていた生体RGラインを切り離し、不気味な駆動音と共に木星方向へと急速に撤退を開始した。


「逃がすかよぉぉぉ!!」


人間同士を戦わせるという非道に対し、怒りと悲しみを燃料に変え人類側の艦隊が一斉に吠えた。 超大型の撤退を援護すべく立ち塞がった残存のAlogどもを、新・伊沢大隊と明星艦隊が文字通り粉砕し、容赦なく蹴散らしていく。行く手を阻む肉壁をすべて消し飛ばし、不死鳥の前に、逃走する超大型の背中が完全に剥き出しになった。


「温存していたのは、このためよ……! これで……終わりにするわ!!」


春花の激情の号令が飛ぶ。総旗艦『不死鳥』の艦首に隠されていた、最大威力の特装砲Bが静かに、しかし圧倒的な質量をもってその砲門を開いた。


「特装砲B(高濃度圧縮粒子型)、最大出力――てぇぇぇーーーッ!!」


放たれた極大の圧縮粒子光条は、これまでの砲撃とは比較にならないほどの密度で空間そのものを焼き、木星へと逃れようとしていた超大型の巨体を背後から寸分の狂いもなく捉えた。

超大型カブトムシ型が誇る強固な外殻すら、その高濃度圧縮粒子の前にはバターのように融解していく。 直後、空間を引き裂く大爆発。火星の宙域を恐怖で支配していた超大型は、その巨体を細胞一つ残さぬほど木っ端微塵に砕かれ、閃光の中に消え去った。

爆炎が収まった火星アレス基地の跡地には、もはや暗緑色の不気味な光は一つも残っていなかった。杉里隊長という偉大な魂の犠牲を払いながらも、人類側の手によって、Alogの火星前線基地は今ここに完全なる破壊を遂げたのだった。

赤い大地に、もう暗緑色の脈動はなかった。

人類はついに、火星を取り戻したのだ。

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