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地球軍特別防衛隊  作者: 悪魔神官長
第四章 火星基地アレス

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第44話 未知なる脅威

雷電が大型AとBを引き付けたお陰で、敵陣の連携が歪んだその刹那、別方向から最大速度で肉薄していたケルベロス・ゲートが、敵中衛(大型C・D)の鼻先へと突っ込んだ。


「今だ、エレーナ、任せる!」


ハウルに割り振っていたエネルギーを、ゲートに回した。その時間、わずかコンマ数秒。


「これなら……貫ける!!」


ケルベロス・ゲートの超大型内蔵ビーム砲から、高濃度のエネルギーが発射された。


ドーーーーン


それはカブトムシ型大型Cが放とうとした生体エネルギー砲を正面から真っ向から圧砕し、その前面に展開していた無数の小型Alogを一瞬で蒸発させた。さらに、大型を文字通り肉の盾として守っていた中型カナブン型の『生体シールド』をも強引に焼き切り、大ダメージを与えた。その圧倒的な破壊の光柱が、敵の分厚い中衛陣を文字通り一撃で『縦に』ブチ抜いたのだ。


「よし、こっちに返してくれ」


ゲートに回していたエネルギーをハウルに戻すと、カイルが後方からの射線を通す様に美しい機動で滑らかに軸線を回避していった。


「ミラー准将! どうぞ!」


カイルの離脱を確認したミラー准将が、鋭く腕を振った。


「全艦、主砲副砲を斉射せよ! 小型を殲滅する!」


『流星』をはじめとする4隻の明星艦隊から、一斉に無数の火線が撃ち出された。空間を埋め尽くすような艦砲射撃の嵐が、前方一帯を網の目のように蜂の巣にしていった。だが、その猛烈な弾幕を、仲間の小型を犠牲にしながらも執拗にすり抜けてくる、おびただしい数の小型の残党群がいた。

それに対し、待機していた新・伊沢大隊が精密なフォーメーションで動き出そうとした――その刹那、彼らの頭上を、最後方に鎮座する超大型母艦『八咫烏』から放たれた、凄まじい質量の光軸が掠めていった。


ド・ド・ドォーーーン!!!


超長距離から精密にコントロールされたRGバスター・カノンによる、電光石火の三連射撃。

その絶大な威力を誇る3本の光の柱が、前方に群がっていた小型の残党たちの中心部を容赦なく抉り、一瞬でその勢力を大きく削ぎ落とした。完璧なタイミングで届けられた母艦からの大火力の援護だった。


「さすがはアルノルトさんたちだ、最高の道筋をくれたぜ! 新・伊沢隊、仕留めにかかるぞ! まずは中型の生き残りを恵美が薙ぎ払う! その後、大輔と和彦が小型に突撃、愛香と利花はその援護を!」

「了解!」


智則の冷徹な指揮に、メンバーが即座に応じた。

八咫烏の砲撃によって大混乱に陥っている敵陣へ、すかさず恵美の重装甲機に搭載された戦艦主砲クラスの超大型エネルギー砲が唸りを上げた。放たれた極太の光条が宇宙を薙ぎ払うと、ケルベロス・ゲートによる攻撃で半壊していた中型を吹き飛ばしながら、その周囲に密集していた小型Alogの群れが断末魔の爆炎を上げ、その統率が完全に乱れた。


「よっしゃー、行くぜ!」

「おうよ、遅れるなよ大輔!」


大輔の駆る機体が、新装備の電磁コイル実弾砲を連射しながら突撃の先陣を切った。最高速度の慣性を完全に乗せて放たれた弾丸は、目視不能の質量兵器となり、小型Alogの肉殻を次々と内側から爆散させていく。


そこへ周囲に散開している小型たちが大輔を囲もうとしたが、和彦は冷徹に、そのログをトレースしながら外部エネルギー砲でミリ単位の追撃を正確に叩き込み、大輔への接触を許さなかった。


「落ちろ! 落ちろ! 落ちろ!」


大輔と和彦が通り過ぎると、小型の大群にぽっかりと穴が開いたようになっていた。

当然、生き残った小型たちが左右に散って二機を取り囲もうとしたが、後方から見守る愛香と利花がそれを許さなかった。


「させませんよ!」


愛香のマルチミサイルが、回り込もうとした小型の群れを先回りするように正確に爆砕。逃げ場を失って一箇所に固まらざるを得なくなった敵の残党へ、すかさず利花が追撃を仕掛けた。


「あたしの弾幕からは逃げられないわよ!」


利花の広域拡散ビーム砲が宇宙を面で埋め尽くし、敵の動きを完全にクギ付けにした。


「中型はどこだ! 小型しか見えないぞ!」


大輔が叫びさらなる敵を探すと、和彦は完全停止したミリ単位の隙をついて、外部エネルギー砲を構えた。


「小型で十分、撃って撃って撃ちまくる!」


和彦の精密な狙撃が、足を止められた小型のコアを正確に撃ち抜いていった。二人の圧倒的な突撃と大隊の完璧な連携に、Alogの数はみるみるうちに激減していった。


――だが、戦場はここで終わりではなかった。 小型の数が劇的に減り、遮蔽物のなくなった戦場へ、一撃離脱したケルベロス・ゲートと明星艦隊が別角度から侵入し、その猛攻が間髪入れずに襲いかかった。


「カイル、もう一撃!」

「よし、別角度から回り込む! 大型が一直線に並んだ!」


ハウルへとエネルギーを戻して加速していたケルベロス・ゲートが、急制動をかけて反転。1撃目とは全く異なる斜め上空のブラインドスポットから、生体シールドを張っていた中型の消えた大型Cの前へと躍り出た、その後方には大型Dの姿も見える。


「ここ!」


エレーナがトリガーを引いた。限界まで高められた2撃目のビームが漆黒の宇宙を斜めに切り裂き、大型CのRGフィールドを容赦なく焼き払って、さらには大型Dのフィールドも吹き飛ばす。両方ともRGフィールドが消滅し、生体シールドも爆散。残る防御は、外殻だけとなった。


「ミラー准将! 伊沢さん! 追撃を!」


そう言いながら離脱した。


「畳みかけるぞ! 外殻を狙え! 出来ればそのまま倒してしまえ! 大型からの反撃を許すな!」


『流星』をはじめとする4隻の明星艦隊から、ケルベロス・ゲートの射撃に追従するように、さらに追い打ちの集中砲火を浴びせた。精緻にコントロールされた主砲の光条が、RGフィールドが焼失した大型Alogたちの外殻を次々と爆砕していった。


「新・伊沢隊、仕上げだ! 恵美は大型に向け攻撃! 他は小型をその場で撃破しろ!」


智則の鋭い号令が飛んだ。

傍に居た恵美は、第一射後、エネルギーを溜めていた。彼女のセンサーが、外殻も破壊されコアがむき出しとなった大型CとDを完璧に捉える。


「みんながこじ開けたコアを、無駄にはしない!」


超大型エネルギー砲がもう一度、眩い輝きを放った。

その絶対的な破壊の光に大型CとDが耐えきれなくなり、二匹同時に跡形もなく爆散した。

そして、統制を失って四散しようとする小型Alogの残党たちに対し、新・伊沢大隊が一斉に面制圧を開始した。大輔と和彦が絶妙なクロス射撃で敵の進路を塞ぎ、愛香と利花が周囲に弾幕を張り、生き残っていた小型を殲滅していった。


敵の防衛線だった陣形は、この完璧な2往復のコンビネーションによって、完全に機能停止へと追い込まれた。


「よし! 残りは正面の大型Eのみね。大型Eを蹴散らしながら、超大型に特装砲をお見舞いするわよ! 魁、行けるわね!?」

「無論です!」


「最大船速! 少し揺れるかもしれないが、怪我しないでくださいよ!」


そう言って、皆で開けた敵陣の穴を器用に通過していく。


「今よ! 大型E及び、その周囲の中型に向け一斉射! 撃てーー!」


そして、すり抜けざまに、手痛い一撃をお見舞いしていった。その一気苛烈な攻撃によって、大型Eは周囲に纏わりついていた中型ごと一瞬で撃破された。


「敵大型、完全に沈黙! 同じく中型も撃破しました。残りは超大型と、小型が多数です」


万里子の報告に、


「小型は振り切ります。特装砲の発射時に、纏わりつくようであれば、ジャックさんにお任せします」


不死鳥が超大型に向けて一直線に突撃する。大型をすべて失ったAlogの残党である小型の群れが、本能的な恐怖からか、不死鳥の進路を塞ぎ、その巨体に自爆特攻を仕掛けんと一斉に牙を剥いて殺到した。


「カッカッカ! 待たせやがって! 艦長の命令だ、お前ら一枚も不死鳥の装甲には触れさせねえよ!!」


その特攻の群れの前に、防空特化型『グラディエーター』を駆るジャックが猛然と割り込んだ。 ジャックの周囲に展開していた大量の防空ドローンが一斉に臨界駆動し、不死鳥の艦首を覆うように、幾重もの高密度な『対空防御の光の網』を形成した。


「オラオラオラァ! 蜂の巣になりな!」


ジャックがトリガーを引くと同時に、グラディエーターの全対空機関砲とドローン群から、狂気じみた密度のガトリング火線と迎撃レーザーが全方位へと解き放たれた。 突撃してくる小型Alogは、不死鳥の数キロ手前でことごとく蜂の巣にされ、触れることすら許されずに次々と木っ端微塵に爆砕していく。ジャックの文字通り『一歩も譲らない』鉄壁の防空網が、不死鳥の進路を完全に、そして綺麗に撃ち開いてみせた。

こうして、敵の防衛線を完全に突破し、不死鳥はホールドし続けた圧倒的なエネルギーを滾らせながら、目標である超大型の眼前にまで肉薄した。


「敵超大型! エネルギー砲、発射態勢に入っています!」


「こちらの有効射程までは、あとどの位?」

「あと、3秒です」


重苦しいカウントダウンの3秒が経過した瞬間、春花が鋭く腕を振った。


「特装砲A 発射!」


ドーーーーーン!!!


突撃の瞬間からホールドされ、極限まで高められていた不死鳥の一撃が解き放たれる。それは超大型Alogが放った巨大なエネルギー砲と正面からぶつかり合い、宇宙を白光で染め上げる。


「超大型の強力な生体シールド、完全に粉砕! 消失しました!」

「今よ、次弾チャージ急げ!」


後方にいる八咫烏とのエネルギー・テザーによる超高速充填が完了のシグナルを告げる。春花は間髪入れずに命じた。


「特装砲A 発射!」


ドーーーーーン!!!


二の矢として放たれた絶対的な光軸が、今度はシールドを失い無防備となった超大型の本体へと直撃した。その凄まじい破壊の光は、超大型の巨大な質量を内側から文字通り完全に消滅させた。


「撃破しました!」


万里子の歓声がブリッジに、そして遠征艦隊全体へと響き渡る。火星基地奪還への第一歩は、新生した人類の圧倒的な勝利によって飾られたのだった。


その後、超大型・大型を失ったAlogの残党たちは、統制を失い、次々と連鎖するように爆散していった。


「やはり、この信号は、自爆せよの信号のようね」


モニターに映る爆発の波形を見ながら、凛は確信したように呟いた。




補給と整備をしながら、いよいよ目的地である火星に向かって順調に航行していた一行に、先行して火星方面に出していた無人偵察機『八咫』から、火星の情報が一瞬だけ飛んできた。


「『八咫』からの信号です。あれ? これだけ?」


万里子が不思議そうに首を傾げた、その直後だった。


「いや、シグナルロストです」

「次々と『八咫』のシグナルがロストしていきます」


万里子の緊迫した声がブリッジに響く。


「まさか、あのステルス機に気がついたとでも言うの?」


凛の言葉に、順調な航行の中で張り詰めた緊張を少しだけ緩めていたブリッジの空気が、一瞬で凍りついた。

『八咫』は人類の技術の結晶であり、Alogの既存の索敵網を潜り抜けるための最高峰の隠密性を備えていたはずだった。それが、火星基地に近づいた瞬間に、まるで虫ケラでも払われるかのように、一瞬で『消された』のだ。


「メインモニター、最後の一秒を明度最大で固定! ノイズを落として!」


万里子の指が弾かれたようにキーボードを叩く。

ざらついた砂嵐の向こう、火星の赤茶けた大地に歪なコントラストを描いて鎮座していた『それ』は、これまで遠征艦隊が遭遇してきたどの個体とも違う、圧倒的な質量を誇る『何か』だった。


「……大きい。超大型レイドクラスなんてレベルじゃない……」


誰かが小さく息を呑む音が、スピーカー越しに聞こえた気がした。

底知れぬ未知の絶望が、冷たい刃のようにブリッジの全員の心を凍りつかせ、重苦しい静寂が空間を支配しようとした――その瞬間だった。

コンソールに割り込むように、八咫烏から一筋の通信が勢いよく飛び込んできた。画面に映し出されたのは、後方で見守っていた杏の、前を見据える強い瞳だった。


「それでも、私たちには進むべき未来がある!」


スピーカーから響いた杏の凛とした、しかし決して揺るがない力強い声が、凍りつきかけていたブリッジの空気を一瞬で震わせ、溶かしていった。 その言葉を受け継ぐように、総旗艦の主座に座る春花が、ふっと口元に不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。


「そうね。敵は未知数。だけど、我われはあのカブトムシ型でさえ攻略して見せた。過度に恐れることはない!」


春花は全画面全天周モニターを見上げ、全軍のパイロットと各艦のクルーたちへ、堂々たる艦長としての、そして人類の希望としての檄を飛ばした。


「我々のゆく手を阻むのであれば、それを、蹴散らすのみ! 全艦! 火星に向け、発進!」


『了解ッ!!!』



通信回線が割れんばかりの、全軍の爆発的な勝鬨が不死鳥のブリッジに木霊した。 新生遠征艦隊は今、真の絶望が待つ赤き惑星へと、その翼をさらに加速させて突撃していく。

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