第43話 新生遠征艦隊
急ピッチで各機および各艦の改修作業が進められる中、技術工廠の一角にある簡易食堂では、凛がせわしなく端末を叩いていた。全自律式工学支援端末『スパイダー』から送られてくる膨大な演算結果と格闘する彼女の横で、幼いミナが仕事の合間を縫って楽しげに遊んでいた。
ミナの足元でちょこまかと動いているのは、手のひらサイズのピンク色のミニスパイダー。凛の機能最優先な無骨な個体とは違い、おやっさんこと岩蔵がミナにおねだりされ、凛と共に『ミナの友達』として特別に調整を施した簡易AI搭載機だった。
「もう! なんであなたは一緒に居てくれないの!?」
不意にミナの不満げな声が食堂に響いた。 その声に促されるように、久しぶりに食堂で食事を摂るために席についていた凛が、不思議そうに視線を向けた。
「どうしたの、ミナ」
「私のピンクちゃんは話しかけたらちゃんと相手をしてくれるのに、凛姉さまのスパイダーは、全然相手をしてくれないのですよ」
ミナはぷくーっと頬を膨らませて、凛の横で機械的に動き続ける作業用スパイダーを睨みつけていた。その微笑ましい光景に、トレイを運んできたタエがクスリと笑ってミナの頭を優しく諭した。
「ホラホラ、ミナ。そっちの蜘蛛さんは今、大事なお仕事をしている最中なんだから、邪魔をしちゃダメですよ。あなただって、お仕事の邪魔をされたくないでしょう?」
「うぅ……はーい」
素直に従うミナの姿を、凛は眼鏡の奥の瞳を和ませ、どこか微笑ましそうに見つめていた。
それからしばらくの間、整備兵たちの絶え間ない交代制の突貫作業を行い、まずは各艦の改修作業が完了した。シミュレーターでの訓練だけでなく実戦を想定した宇宙での訓練が重ねられる中、完全に『生まれ変わった』機体たちが不死鳥のドッグに勢ぞろいしていた。
「明星型、八咫烏、不死鳥の宇宙での訓練に続き、不死鳥艦載機の宇宙空間での訓練も開始する!」
春花の凛とした号令が全機のコックピットへ響き渡った。 直後、総旗艦『不死鳥』の艦首に備えられた高出力ホログラムプロジェクターが一斉に起動され、前方の漆黒の宇宙空間へと高密度な光の束が照射された。
ジジッ……と空間が明滅したかと思うと、不死鳥の眼前に、本物と見紛うほど禍々しい姿をした擬似Alogの群れが現れた。それは実戦さながらの高速戦闘を再現された凶暴な機動を見せ、速度や動き、さらにはRGフィールドの出力までもが実際のAlogより強化された、極限仕様の立体ホログラムだった。
その立体ホログラムの標的群を目がけ、ハッチを開け放った不死鳥から、各パイロットたちが火花を散らして飛び出していった。
「よっしゃぁ! まずは、俺から行くぜ!」
深宇宙の闇の中で、最初に咆哮を上げたのは大輔の機体だった。
ドォォォォォン!!
スラスターが狂ったような光の尾を引き、強烈なGが機体を軋ませる中、彼は新装備の電磁コイル実弾砲のグリップをガッチリと握りしめた。
「うおぉぉぉ! いいぞ! スピードが上がれば上がるほど、俺の『速さ』がそのまま弾丸に上乗せされていくはずだ! これだ、これが結城隊長の見ていた領域かよ! 良いぜ、この相棒はッ!!」
最高速度の慣性を全て乗せて放たれた電磁実弾は、もはや目視不可能な『見えない光』となって空間を切り裂き、実際のAlogよりも高濃度で展開した擬似RGフィールド標的を、干渉を受ける前に一瞬でブチ抜いて粉砕した。
「……いいな。これなら大輔がどれだけ暴れ回っても、俺の弾が遅れをとることはない。完璧だ」
その弾道ログをモニターで捕捉し、精密な外部エネルギー砲でミリ単位の追撃を正確に叩き込みながら、和彦が冷徹に、だがどこか嬉しそうに呟く。さらにその後方では、利花の機体が和彦を援護した。
空間を覆い尽くすほどの外部エネルギー砲(拡散砲)を展開し、擬似敵の動きを完全に阻害する。
「流石だな、利花さん! ビームの面で敵の動きが止まって見える! これなら、より多くの敵を倒すことが出来る!」
「露払いは任せたわよ!」
和彦が突撃し、それを援護する利花の連携は、かみ合っていた。
「おいおい、こっちには、援護はないのかよ!」
そんな様子を見ていた大輔が、愛香に不満をこぼす。
「えっ? 佐々木さんは、援護が必要だったのですか?」
そう言いながらも、多数のミサイルを撃ちだし、大輔が飛び回りやすいように的確な援護を施していた。
その様子を後方で見ていた智則が、恵美に攻撃を合図する。
「あとは、あのバカ二人が突っ込んで、敵の陣形が崩れた所で、中型のコアを吹き飛ばすぞ!」
「了解。何だかんだ言いながらも、ちゃんと敵をかき乱してくれているわ。そこ!」
恵美の大型内蔵エネルギー砲が、網にかかった標的の擬似コアを正確無比に撃ち抜いていった。完璧な小隊としての連撃。パイロットたちの間に、これまでにない確信と歓喜の笑顔が広がっていた。
一方、そのさらに奥で、異様な戦闘機動を見せる機体があった。結城哲夫の『雷電』だった。
哲夫が操縦桿を固定したままであるにもかかわらず、彼の背中にアタッチメントされた『RGバスターカノン』が生き物のように滑らかに駆動し、腰のビームサーベルが真空の宇宙へと放出され、雷電の周囲を舞う光の盾となった。
「お兄ちゃん、すごい……! 雷電の武器が全部、私の手足みたいに動くよ! お兄ちゃんは前だけ見てて!」
「ああ……ありがとな、亜理紗、おやっさん、凛。これなら俺は、前方の敵をブチ抜くことだけに100%集中できる!」
「敵に接近したら、ドローンも展開するわ、これだけ近ければ、数十秒でも大丈夫でしょう」
雷電はまさに、ワンマン・アーミークラスの超万能機へと進化を遂げていた。
艦外でのテストが大成功に終わる中、八咫烏の内部でもシステムのアップデートが完了していた。不死鳥への『RGエネルギー・テザー』によるテスト送電では、主砲・特装砲のチャージ速度が数倍に跳ね上がり、明星型4隻による『方舟の箱庭【アーク・ボックス】』の同期も完全な数値を叩き出していた。
「これならいける」
誰もが、人類の反撃の成功を、火星の奪還を確信していた。
それからしばらくして、各艦・各機が、八咫烏にて整備している時に、火星方面に偵察に出していた無人偵察機『八咫』から通信が入った。
「艦長! 火星基地から、Alogの編隊がこちらに向かって来ている模様!」
「規模は?」
春花が鋭く問い返す。万里子の声が響いた。
「超大型1、大型5、中型30、小型300以上です」
「前回よりは少ない……でも、油断できる戦力じゃないわ」
春花は一瞬で迷いを捨て、凛とした声で全艦に告げた。
「総員戦闘配備! 各員、配置につきなさい! 準備が出来次第、『八咫烏』より各機を発進させます。流星たちも、随時発進を!」
『了解した!』
通信の向こうで明星艦隊を率いるミラー准将の力強い声が響く。
「流星、朧月、暁月、彗星、発進したようです!」
「こちらも発進しましょう――不死鳥、緊急発進します! 整備班は退避してください」
八咫烏の下部ドッグに、隆の声が響き渡った。
「不死鳥が発進するぞ! 総員、下部ドッグから資材を退避させろ! 急げ、急ぐんだ! 退避させ次第、総員退避だ! サーフゾーンまで退避せよ!」
隆の声に、整備兵達が慌てて退避作業を行った。不死鳥のいる下部ドックが静寂に包まれていく。
「総員退避完了しました」
隆の報告に、アルノルトが頷いた。
「春花艦長、整備班の退避を確認した、これより、不死鳥の発進シークエンスに入る」
「了解です!」
アルノルトの掛け声で、八咫烏の下部ドッグの一部が隔離され減圧していった。
減圧が完了すると、不死鳥のいる所が左右に開いていった。
「ドッキングアーム解除!」
万里子が八咫烏に信号を送り、ドッキングアームを解除させた。
一瞬、『ガタッ』と揺れたが、すぐに自動姿勢制御により揺れは収まった。
「下げ舵30! 八咫烏より発進します!」
春花の号令により、不死鳥が八咫烏の腹から這い出るように発進した。
前衛へと躍り出た『流星』をはじめとする明星艦隊が、中央を大きく開けるように、上下左右へと美しく、そして一糸乱れぬ動きで展開していく。4隻の戦艦が一体となり、敵を迎え撃つ巨大な罠の陣形を形成する。
その後方に総旗艦『不死鳥』がガッチリと陣取り、さらに最後方には、すべての母船である超大型母艦『八咫烏』が、巨大な要塞のごとく鎮座した。遠征艦隊の完全なる迎撃陣形が完成した。
「ミラー准将! 流星たち明星艦隊は任せます。大型以下の敵の動きを止めてください。無理しない程度に叩いてください。超大型は我々が抑えます」
「八咫烏は後方から援護を、RGバスターカノンで狙い打ってください」
「全機発進! ポイントアルファにて、敵を迎撃せよ!」
『不死鳥』の第一カタパルトデッキに、激しい警報音が鳴り響く。 電磁カタパルトが限界まで励磁され、閃光のような放電が暗黒の宇宙へと走った。
事前の報通り、火星方面から迎撃地点へと突入してきたAlogの編隊――その高速移動する光点を完璧に捉え、総旗艦『不死鳥』のブリッジに座る万里子は、マイクをガッチリと掴み、全天周モニターに映るパイロットたちへ鋭い声を飛ばした。
「ジャック機、発進どうぞ!」
不死鳥の正面カタパルトに固定された、防空特化型の『グラディエーター』。そのコックピットで、ジャックは不敵に歯を見せて笑った。
「カッカッカ、ジャック機、出るぞ! 不死鳥の懐は一歩も譲らねえ! 後続部隊の進路は守ってやる!」
ドゴォッ! と爆音を立てて、大量の防空ドローンを随伴させたジャック機が漆黒の闇へと猛烈な勢いで射出される。 間髪入れず、万里子の緊迫したコールが工廠デッキへと繋がった。
「続いて、ハウルとゲート、発進どうぞ!」
新設された大容量『RG粒子プール』が青白く脈動する。突撃形態へと出力を回したカイルと、砲撃の牙を研ぐエレーナの声が、通信回線に重なった。
「ケルベロス・ハウル、飛翔する!」
「バルダー・ゲート、出る!」
二機のゲート型が、まるで一筋の巨大な流星群のように、互いのエネルギーラインを明滅させながら並んで宇宙へと爆進していく。
「続いて、新・伊沢大隊、順次発進どうぞ!」
万里子の声を合図に、八咫烏のマルチカタパルトが次々と火花を散らした。 初めて大隊長として部隊を率いる智則の声が、全メンバーの通信に厳固に響き渡る。
「ポイントアルファ(迎撃地点)に、集結次第、迎撃態勢に移行する。全機行くぞ!」
「よっしゃー、大輔、行きま〜す!」
超高速・実弾特化型へと生まれ変わった愛機を駆り、大輔が一番手で飛び出していく。その背中を追うように、和彦が外部エネルギー砲の照準を起動させた。
「俺も、出るぜ!」
「杉里機、発進します!」
愛香がミサイルコンテナのロックを解除しながら鋭く応じ、隣のカタパルトからは利花が不敵な笑みを浮かべて愛機を滑らせる。
「あたしも出るわよ!」
「私も行きます!」
恵美の駆る、戦艦主砲クラスの超大型エネルギー砲を積んだ重装甲機が重低音を響かせて射出される。 最後に、メンバー全員のリンクをガッチリと繋ぎ止めた智則が、大隊長機をカタパルトへと押し出した。
「伊沢機、迎撃行動に出る!」
六色の光条が、完璧な三層の陣形を描きながら星の海へ展開していく。そのあまりに鮮やかな連携を見届け、万里子は息を詰め、最深部の特別ドックへと最終コールを送った。
「最後に雷電、発進どうぞ!」
極限の加速に備え、すでにコックピット内は冷たい液体呼吸の闇に満たされている。 その底から、結城哲夫の低く狂おしい声が響いた。
「了解! ……由美、亜理砂、行くぞ!」
背面にマウントされた最強のオールレンジ・ドローンが駆動し、同乗する二人の少女の意識が、戦術リンクを介して哲夫の脳へと寸分のズレもなく完全同調する。
「「はい!」」
直後、ゴゥンッ!! という鼓膜を圧砕するような駆動音と共に、雷電は物理法則を置き去りにしたキチガイじみた初期加速で、火星の偵察Alogが待つ絶対零度の戦場へと、真っ赤な尾を引いて突き抜けた。
「敵の陣形は?」
春花が万里子に聞くと、
「超大型は後方に陣取っています。大型5は全匹こちらへ直進、すべて強力な頭角を持つ『カブトムシ型』です! 中型は、6匹ずつが大型に纏わりついています。恐らく外殻による生体シールド持ちの『カナブン型』。小型はそれぞれ、数を頼みに飛んでくる模様!」
春花は少し考え、
「このまま超大型の所まで、突撃しましょう」
「Alogの群れを、突き抜けるのですか?」
「その通りよ。特装砲、発射準備! 目標、正面の超大型! エネルギーをホールドしつつ最大船速へ移行、突撃します。すり抜けざまに、周囲の大型中型に対して主砲及び副砲による一斉射を浴びせます!」
春花の作戦を聞いた哲夫が答える。
「了解した。由美、戦術リンクだ!」
戦術リンクにより、雷電と伊沢機、ジャック機、不死鳥、八咫烏、流星が瞬時に、寸分のズレもなく一つに繋がった。全パイロットの脳内に、クリアな三次元戦術マップが展開される。
「敵大型をAからEで呼称。突っ込んで来ている二匹をAとB、中衛に居る二匹をCとD、後方に居るのをEとします。まずは、雷電で、AとBを引きつける。その隙に、ケルベロス・ゲートが敵の中衛の鼻先を攻撃します。続いてミラー艦隊、そして新・伊沢隊、その後に俺たちが行きます。――姉さんは、その後で一気に突撃してください!」
「了解よ。坊やたち、頼んだわよ!」
先陣を切ったのは、漆黒の宇宙を紅い尾を引いて爆進する結城哲夫の『雷電』だった。 超高速で接近するカブトムシ型の大型Aと大型B。その強固な頭角から放たれる生体ビームの激しい交差射線を、雷電は物理法則を無視した慣性制御で紙一重で回避し、その懐へと飛び込んで挑発するように二匹の注意を完全に引きつけた。
「哲夫さん、左舷から大型A来ます、随伴する中型6、小型60! 3秒後に雷電の死角へ回り込んでくる! 同じ編成で大型Bも接近中!」
「まずは、近い大型Aからやるぞ!」
「了解です。亜理紗ちゃん、誘導をお願いね。ミサイル発射、ドローン展開!」
由美の凛とした声がコックピットに響き、彼女の先読みデータに従って、大量のミサイルがばら撒かれ、雷電の背中から放たれたドローンが網を張る。
「ドローン、オート迎撃! 小型は近づけさせない!」
由美のオペレーション通り、ドローンが全自動で火線を撒き散らし、迫る小型Alogを次々と爆発させていく。その背後を信じ切って、哲夫は電磁コイル砲を正面の大型へと向けた。
「中型は大型を防御しながら、一緒に突っ込んでくる模様」
「くっ、中型が邪魔か!」
そこへ、亜理紗の操るミサイルが、大量に着弾する。
「兄さん、敵のRGフィールドは、ミサイルで減衰させるわ! 実弾なら、突き破れる!」
物凄い数のミサイルが、大型を守る中型に命中していく。
最初は何の影響もなかったが、当たり続けていくうちに、RGフィールドが減衰し、RG生体シールドも限界を迎えて来ていた。
「はっ! 遅れていた大型Bが急速接近! 二匹によるクロス攻撃です」
由美の悲鳴に近い索敵データと同時に、操縦桿を激しく倒す哲夫。大型AとBの巨体が、左右から雷電を挟み込むように牙を剥く。
「ちぃ。楽には倒せんか」
哲夫が舌打ちした瞬間、亜理紗の強い意志が戦術リンクを駆け巡った。自動射出された2本のビームサーベルが真空の宇宙へと突き出され、空間を舞う圧倒的な光の槍となって大型Bへと迎撃に赴く。
「これで抑える!」
亜理紗が踏ん張ろうとしていた。
だが、大型Bの突撃エネルギーは凄まじかった。純エネルギーの刃が巨大な頭角と激突し、激しい光の火花を撒き散らすが、2本のサーベルは大型Bの圧倒的な質量に押さえきれずに弾かれ、火線を散らして弾き飛ばされてしまう!
「キャッ……! 押し切られる……!」
2本のサーベルを弾き飛ばし、推進力を落とさない大型Bが、剥き出しの凶器となって雷電の至近距離へと肉薄する。直撃すれば雷電とて無傷では済まない。
その絶体絶命の刹那、戦術リンクを通じて由美の切迫した声が、鮮明なシステムデータと共に亜理紗の脳内へと直接流れ込んだ。
「亜理紗ちゃん、このRGシールドを使って!」
由美の索敵プロセスが、衝突までコンマ数秒の未来の軌道と、雷電のシールドの最適展開角を瞬時に弾き出し、亜理紗の意識へと共有したのだ。
「――わかった!」
由美の思念波を引き継ぎ、亜理紗が即座に応じる。 彼女の強靭な思念波によってコントロールされた雷電のRGシールドが、機体の前面へと吸い込まれるように滑り込み、完璧な角度で展開された。
ドォン!という衝撃と共に大型Bの頭角がシールドを叩く。だが亜理紗はそれを正面から受け止めず、由美の提示したデータ通りにシールドを絶妙に傾けた。
ガガガガガガッ!!
激しい摩擦光を上げながら、大型Bの猛烈な突撃軌道は雷電の装甲をかすめるようにして、強引に『外側へと逸らされた』のだ。
冷や汗を握るような一瞬の危機。だが、二人の少女の絆の連携が、雷電を軽傷で救ってみせた。
態勢を立て直した大型Bが、怒に狂ったように反転し、2度目の突撃を仕切ってくる。今度はさらに加速し、文字通り雷電を圧殺せんとする速度だ。
それを見据える亜理紗の瞳に、もう怯えはなかった。
「2本で駄目なら、もっと増やせば良いわ!」
亜理紗の思念波が爆発的に高まり、雷電の兵装コンテナから、次々とサーベルグリップが射出される。
宇宙空間に解き放たれた無数のビームサーベルが、眩い閃光の檻のように大型Bの進路へと立ちはだかった。何本もの光の槍が、生き物のようにうねりながら大型Bの巨体を包み込んでいく。
それらは敵の肉殻を削り、軌道を縛り、最後はすべての純エネルギーの刃が大型Bの巨大な頭角へと一斉に集中して、真っ向から激突した!
ゴオオオオオッ!!
空間が歪むほどの凄まじい衝撃波が迸る。しかし今度は、大型Bのいかなる突撃エネルギーも、その圧倒的な光の質量を突破することはできなかった。無数の槍は、咆哮を上げる大型Bの動きを完全にロックし、宇宙空間にガッチリと、完璧に縫い付けたのだ!
「ナイスだ、亜理紗! 動きが止まったのなら、こっちのものだ!」
哲夫は瞬時にその大型Bの背後へと回り込み、外付け電磁コイル実弾砲と、外付けビーム砲の全火力を、無防備になったコアへと連射した。
「まずは、一つ!」
その勢いのまま、生体シールドを大幅に剥がされた大型Aに肉薄し、同じようにコアへ連射する。
雷電が過ぎ去った後には、大型が爆破する二つの輪が見えた。




