第24話 第2デンバー・シェルター救援
岩蔵が不死鳥の改装作業をしていると、凛がEasdpAに向けた救援信号を、受信した。
「艦長! まずいです。ディアブロ基地から南東へ40キロ、旧デンバー市街の生存者が作ったシェルターからです! 大型のAlogが出現、防衛ラインが突破された模様!」
春花は焦ったように、
「岩蔵さん、不死鳥はどの位で飛び立てそう?」
岩蔵は、
「完全に特装砲周辺をばらしちまっているからなぁ。飛び立てるまで、相当時間がかかるぞ?」
と、絶望的な回答をしていた。
そこに、哲夫から通信が入った。
「我々が救援に行きます」
「そんな、艦載機だけでなんて、危険すぎるわ」
昔、雷電だけで防衛させ、大破した雷電をその目で見た春花は、恐れていた。
「大丈夫ですよ姉さん。あの時とは状況が違います。人も機体も装備も整っています。だから!」
春花の目から、迷いが消えた。
「わかったわ。全機、ここから発進! シェルターの救援を!」
「了解!」
「今回の大型撃破のカギは、RGバスターカノンになる、編成を変えるぞ!」
伏見隊より、バルダー・ゲートが雷電の下に入り、明星と共に、後方に構える。
伏見隊の残りと伊沢隊をジャックが率いて、先行して行った。
ディアブロ基地からわずか40キロ。かつてデンバーから逃げ延びた人々が築いた『第2デンバー・シェルター』は、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
シェルターの隔壁には、無数の小型Alogが群がり、酸と鋭い顎で装甲を削り取っていた。
「小型が多すぎるが、ミサイルは撃つな! シェルターの外壁を巻き込んじまう!」
自機に広範囲を焼き払う武装がないカイルは、一機ずつサーベルで斬り伏せるしかない。その焦燥を見透かしたように、ジャックの冷静な指揮が飛ぶ。
「落ち着け! 全機、内蔵バルカンと近接兵装に切り替えろ! ――伏見隊は外周を回って小型を誘い出せ。伊沢隊は俺に続け、一匹ずつ引き剥がすぞ!」
ジャックの冷静な指揮により、混戦の中で小型の殲滅速度が上がっていく。
和彦が興奮しながら、
「小さいのが多すぎる! 叩いても叩いても出てきやがる!」
そう言いながらも、殲滅速度を上げていった。
だが、それを察した中型5機が、大型を守る『盾』を解き、一斉に牙を剥いて突進してきた。
中型が乱戦に加わったことで、ついに本丸の大型Alogがその砲身を露わにする。狙いは、防衛ラインを支える伊沢・伏見の両小隊だ。
「中型を分断する! カイル、道を作ってくれ!」
「……任せろッ!」
カイルのワイルドスピードが超高速で中型を攪乱し、一瞬の『射線』が通る。
由美のリンクにより射線が決まったエレーナは、RGバスターカノンを構えた。
「くっ、エネルギーが暴れて、銃身が定まらない」
それを見ていた亜理紗は、バルダー・ゲートごと、RGバスターカノンを抑え込んだ。
その瞬間、エレーナの目に闘志が宿った。
「RGバスターカノン、チャージ100%……ターゲット、大型! 撃てぇ!!」
大型が放つ禍々しいエネルギー砲と、青白いRGバスターカノンが空中で交錯する。
RGバスターカノンの暴力的な重力波は、大型の砲撃をねじ伏せながらその巨体に直撃。ドォォォォン!! という衝撃と共に、大型の鉄壁だった前面装甲が、結晶のように砕け散った。
それを見て喜んだ哲夫だったが、バルダー・ゲートを見て唖然とした。
「やった、弱点が……! ――エレーナ!?」
バルダー・ゲートのコックピットには警告音が鳴り響いていた。明星からの過負荷と、RGバスターカノンの威力に耐えきれなかった両腕のフレームが、ひしゃげて火花を散らしている。
「……くっ、腕が……制御不能!? 2発目は撃てない……哲夫、お願い!!」
大型が断末魔のような咆哮を上げ、剥き出しの弱点から予備のエネルギーを暴発させようとする。そこへ、雷電が加速した。
「雷電にも……同じものが装備されているんだ!!」
雷電が構えたのは、エレーナ機と同型のRGバスターカノン。1発目で『道』は開いている。哲夫は由美からの射撃タイミングを同期しながら、その心臓部へRGバスターカノンのトリガーを引いた。
「墜ちろォォォッ!!」
RGバスターカノンは大型Alogの弱点部分に突き刺さり、内側から光に飲み込まれ粒子となって霧散した。
哲夫はRGバスターカノンのエネルギーを無理に腕のみで受け止めず、後方へそらす様に機体を制御していたため、損傷は軽微であった。
残った中型と小型は、ジャックの指揮のもと、殲滅が完了していた。
そこに、救援信号を出していた第2デンバー・シェルターから通信が入った。
「こちら、第2デンバー・シェルターです。救援感謝します」
ここで、ジャックから我々はNEasdpである事。このシェルターはEasdpAから見捨てられていることなどを伝えられ、救出してくれたNEasdpに合流する事になった。
シェルター周辺には、NEasdpの守備兵が哨戒することとなり、第2デンバー・シェルターを守る事になった。
しばらく特装砲の改修作業をしていると、ユーラシア大陸に向かったミラーから通信が入った。
「この映像を見てくれ! これが現在のユーラシア大陸なんだ。パリも、ベルリンも、かつて核の炎に包まれたはずの都市が、信じられないほど澄み渡っている。放射能も、煤煙も、一切感知されない。……だが、人間も、Alogもいないんだ。あるのは、見たこともないほど深く、鮮やかな緑だけだ」
その空虚な楽園の映像に、杏たちは戦慄する。
(Alogの目的は何なの……? 地球を、自分たちの理に書き換えようとしているの……?)
凛は各地に構築したネットワークを走らせ、真相を掴もうと躍起になる。
(これで、モニタリングすることが出来る。一体Alogの目的は何なの? さやか様は何か知っている様な感じだけど、情報を開示してくれたいのよね)
「ミラー准将、そのまま東海岸へ来られるかしら?」
春花の問いに、ミラーは不敵に笑った。
「問題ない。合流し、最後の超大型を仕留めよう」
ついに、地球上に残る、最後の超大型との決戦が、刻一刻と近づいてきていた。
一方、ワシントンD.C.の地下では、ガリクソン元帥が狂気に取り憑かれていた。
「NEasdpのガキ共が……。アメリカを救うのは古き良き『力』のみだ。オフラインで核の封印を解け。Alogもろとも、あの不死鳥も地獄へ送ってやる」
と、オンラインでは凛に感知されてしまうので、完全オフラインでEasdpAに残る核兵器の封印を解く準備をしていた。
彼は忘れていた。かつて月基地を突破された際、各国が宇宙へ向け核を準備した瞬間に何が起きたかを。
空から降り注ぐ『巨大な楔』。
それは核貯蔵庫を正確に撃ち抜き、周囲に死の灰を撒き散らした。楔が消えた後には決まって超大型が出現し、人類を蹂躙したのだ。
大国は分散していた核を使い、自国の領土を焼きながらも超大型を倒してきた。だが、その代償として国民の大半を失い、最終的には残存したAlogに基地を破壊され、人類は消滅していった。
いま、ガリクソンが再び『核』に手をかけようとしたその時、ワシントン上空の大気が、不吉に震え始めた。かつて世界を終わらせた、あの『質量弾(楔)』が再び狙いを定めているとも知らずに――。




