第22話 黄金の絆、不死鳥の咆哮
雷電のミサイルがAlogの侵攻ルートを制限し、そこへ『不死鳥』の巨体から放たれた光の帯が、逃げ場のない空を埋め尽くす。中型に対し、不死鳥の副砲の集中砲火で中型Alogは空中で爆散していく。
「重力場が、後ろにあっても、意味はないわ!」
雷電、不死鳥、伏見隊の連携により、後方から包囲しようとしていたAlogたちは、爆散していった。
それを感じていた大輔が、
「ははっ! さすが不死鳥と雷電だ、後ろの心配はゼロだな! 准将、これなら心置きなく前だけ見て突っ込めますぜ!!」
流星のスクリーンを見ていたミラーが、
「ああ、最高のサポートだ! エンジェル島のメイン障壁まであと30秒。……主砲、エネルギー充填開始! 最大出力で奴の顔面に挨拶をブチ込んでやるぞ!」
だが、それを待ち構えていたのは、超大型600m級を中心に大型3匹を島の周囲に均等に配置する事による、巨大な重力場であった。
「大気の揺らぎが見えるほどの重力場かよ!」
「あれは、うかつに近づけんな」
怖気づいたカイルと大輔の声に、春花が反応した。
「特装砲を使います! 発射準備を!」
「特装砲を撃つ!? バカな、大型に切り札を使っちまったら、本命の超大型はどうするんだ!」
ジャックの驚愕の声が通信波を震わせる。哲夫も、コックピットの計器に表示された再チャージ時間を弾き出し、戦慄した。
「二射目までのチャージは……どう計算しても間に合わない! まさか、姉さん!?」
「そうよ、その『まさか』をやるの。……凛、岩蔵さん、準備をお願い」
春花が不敵に命じると、ブリッジのメインスクリーンに、海面を滑る二隻の巨艦が映し出された。『明星』から伸びる極太の外部供給ラインが、のたうち回る大蛇のように『不死鳥』の艦尾へと伸びていく。
「明星を外部バッテリーにするなんて……いかしてる!」
凛が興奮で声を上ずらせる横で、明星の接続作業を指揮する岩蔵が、唾をまき散らしながら怒鳴った。
「理屈はそうだがよ、チャージを急いだところで、砲身の冷却は追いつかねえぞ! 二射目を急ぎ過ぎて砲身が焼き切れても文句言うなよ!」
「わかっているわ、岩蔵さん。でも、これ以外にあの重力壁を突破する策はないの。それに、直してくれるのでしょう?」
春花の断固たる決意。 それに応えるように、不死鳥の艦首装甲が鈍い音を立てて展開し、巨大な砲身がその姿を現した。
「エネルギー充填90%、臨界点……ホールド! 発射準備、完了です!」
凛の報告と共に、特装砲の奥底で圧縮されたリバースグラビティ粒子が、青白い雷光となって溢れ出した。
「春花、目標は?」
杏が冷静に問いかける。
「一番手前の大型。まずはあの重力場の『足』を一本、へし折るわ」
「……不気味ね。周囲の小型や中型は、ソナーには映っているのに一向に動く気配がない。何を待っているのかしら……」
不穏な沈黙を切り裂くように、春花がマイクを握り直した。
「坊や、エレーナ! 特装砲に続けて、同時攻撃で行くわよ!」
「了解。由美、戦術リンク開始。着弾差を1秒に固定しろ。特装砲が障壁を剥がした直後、俺たちの攻撃を叩き込む!」
哲夫の指が、雷電のトリガーにかけられる。バルダー・ゲートに乗るエレーナも、大型内蔵ライフルの照準を大型Alogの眉間に据えた。
「こちらも準備完了。いつでも行けるわ!」
「姉さん、撃てます!」
哲夫の声が合図だった。
「了解。――特装砲、発射!!」
春花の号令と共に、世界が白く塗りつぶされた。 凄まじい衝撃波が不死鳥の船体を揺らし、その直後、岩蔵の咆哮が響き渡る。
「電源ケーブル接続、出力全開! おい、撃ちやがったぞ、急げ! 2射目を撃てるように、明星の粒子を流し込め!!」
整備兵達が、空中で電源ケーブルを接続するという荒業を披露しつつ、明星と不死鳥が繋がった。
「今よ!」
由美の合図で、雷電とバルダー・ゲートから、エネルギー砲が発射された。
特装砲が、超大型と大型の張った巨大な重力場にぶち当たる。
減衰しながらも、大型の装甲を弾き飛ばし、その大型からの重力場が一気に弱まった。
「着弾まで、0.5……0.2……命中!!」
由美の鋭いカウントが響くと同時に、特装砲の直撃で赤熱化した大型Alogの弱点を、雷電の内蔵エネルギー砲とバルダー・ゲートの大型内蔵ライフルが寸分違わず貫きました。
減衰しているとはいえ、正確に弱点を貫かれた大型は、耐えきれず、爆散した。
動向を見ていた凛が、
「正面の大型、完全沈黙! 重力場の均衡、崩れます!!」
エンジェル島を覆っていた『大気の揺らぎ』が、まるではじけた泡のように霧散していきます。均等に配置されていた『重力の足』を一本失ったことで、超大型守る鉄壁の防御網に致命的な『穴』が開いたようだった。
「やった! 哲夫、連携、完璧!」
興奮した? エレーナの声が雷電のコクピットに響いた。
「待って、敵の様子がおかしいわ」
索敵をしていた由美が警告し、由美のリンクと不死鳥のレーダーを確認していた凛が、焦ったように報告してきた。
「こちらでも、確認しました。大型が防御陣形をやめ、攻撃態勢に入ろうとしています。現在の重力場は超大型の重力場のみと、なっています。」
由美が補足する様に、
「それに加え、中型と小型が、こちらに向かってきます」
哲夫は大至急雷電から、新たな作戦プランを確認していた。
「大型からのエネルギー砲は、流星と雷電が受け止めます」
「明星では、ダメなのか?」
「明星は、不死鳥へのチャージと、流星他艦載機のチャージで、リバースグラビティ粒子がかなり消耗しています。充填優先でシールドとしての使用は、まだ、無理です」
「われわれが、大型のエネルギー砲を弾く、または受け止めている間に、大型の撃破を不死鳥に、中型以下の撃破を、伊沢隊、伏見隊、艦載機隊で撃破してください。超大型の防御を、丸裸にします」
「了解」
哲夫の雷電と、補給を終えたミラー准将の『流星』が、双頭の竜のごとく前線へ躍り出た。 その背後を伊沢隊、伏見隊、艦載機隊が固め、しんがりに控える『不死鳥』が、残る大型2匹へその凶悪な砲口を向ける。
「大型からのエネルギー砲、来ます! 左右から薙ぎ払うように……来ます!!」
由美の悲鳴のような警告と同時に、2匹の大型Alogから漆黒の重力波が放たれた。海面を深々と抉り取り、空間を歪ませながら迫る破壊の奔流。
「リバースグラビティ粒子、前方展開! シールド最大!!」
哲夫は瞬時に、追加装備のRGシールドを前面に押し出した。展開された粒子の膜に大型の光線が激突し、コックピット全体に圧砕されるような衝撃が走る。アラートが鳴り響き、視界が赤く染まる中、哲夫は歯を食いしばり、操縦桿を死守した。
「ハッ、真正面から受け止めるのかよ! 男前だぜ、哲夫! ……こっちは、軌道をねじ曲げてやる!! 機関最大! 弾き飛ばすぞ!」
流星は速度を上げ、エネルギー弾の側面へ突進。RG粒子を受け流し(スイング)のように使い、巨大な奔流を強引に逸らしていく。流星の船体が軋み、青白い火花が装甲を駆け抜けた。
レーダーの動きを見ていた凛が、
「さらに、中型と小型が接近してきます!」
大輔が吠える、
「待ってました! ここまで出てくれれば、減衰率はほとんどねぇだろう」
カイルも吠える、
「突っ込むぜ!」
和彦も吠える、
「今回は、私も行こう!」
特攻三人衆(大輔、カイル、和彦)が、意気揚々と突っ込んでいった。
「狙い撃つ!」
バルダー・ゲートの大型内蔵ライフルが、中型に命中する。その一撃でかなりの損傷を負ったが、生きていた。
「なっ。私の攻撃では、中型すら落とせないの。パパ。助けて」
そこへ、カイルが飛び込んだ。
「へっ、お前のお漏らしは、俺が掃除するぜ!」
銀色の閃光が、ボロボロになった中型を一瞬で切り裂いた。
「カイル! 後ろが、がら空きだぞ!」
大輔が、カイルの後ろから迫っていた小型数機を、内臓エネルギー砲と内蔵実弾ライフルを連射し、確実に爆散させていった。
さらに、雷電や不死鳥からの大量のミサイルが空を黒く埋め尽くした。
「おいおい、まだ、俺たちが居るのに、すげぇ量だな」
カイルがぼやく中、特攻三人衆に当たらない様に、小型中型を減らす様にエネルギー砲を受け続けているコクピット内で、亜理紗も奮闘していた。
回避行動を取っていたカイルが、
「エレーナ、次の中型を撃て! 何度でも、俺が掃除してやる」
ミサイルの嵐と、エリーナ、カイルの連携、そして大輔と和彦の小型掃除により、大型のエネルギー砲が終わるころには、ゴールデンゲートブリッジ周辺の敵は、あらかた片付いていた。
その瞬間、不死鳥の主砲が火を噴き、無防備になった大型2匹を跡形もなく爆散させた。
「残りは、600m級ね。特装砲の再チャージは、後どのくらいかかる?」
春花の問いに、凛が答える。
「残り、30秒です」
「冷却は、間に合わないの?」
杏の素朴な質問に、凛は、
「……いえ、むしろ逆です。今の私たちは大気の中にいるから、まだ『空冷』が効いています。宇宙空間に入れば、熱を運んでくれる空気がありません。……もし宇宙でこれだけの連続射撃を行えば、特装砲の熱を逃がしきれず、艦が内側から溶け落ちてしまいます」
それを聞いた春花は、
「宇宙での排熱効率は、今後の大きな課題になりそうね……。今はチャージ完了と同時に、特装砲の発射準備!」
チャージを始めた特装砲を見た岩蔵が、
「おいおい、お嬢ちゃん! 完全に冷却しねえうちに撃ってみろ、排熱が追いつかずに砲身は溶けるし、艦の内部回路まで熱で焼き切れちまうぞ!」
「倒すためには、ダメージ覚悟で撃つしかないわ。ここで逃したら、次はない!」
覚悟を決めた春花に、凛が応じる。
「600m級の周囲の巣から、Alog出現! 600mのエネルギーをAlog生産に使っているようです」
その様子をスクリーンで確認した杏は、
「この期に及んで、Alogを生産するなんて、何の意味があるのかしら?」
凛は、コンソールで敵の動向をチェックしながら、
「ただ、こちらに来る気配はありません」
「何をしているの?」
春花の疑問に凛は、
「あ、あれは、こちらに装甲を向けています。雷電の追加シールドの様になっています」
「まさか、生きる盾を用意したというの?」
杏が呆気に取られていたが、Alogの生態シールドの強さを計算した凛が、
「ただ、元が、小型と中型なので、そこまで強度のあるシールドには、ならない計算です」
その報告を聞いた春花は。
「それなら、特装砲で吹き飛ばしましょう」
凛が特装砲の発射準備を始める。
「エネルギーのチャージ、完了しました。砲身の冷却完了まで30分。今回はこのまま、特装砲の発射準備に入ります」
「エネルギー充填90%、臨界点……ホールド! 砲身温度、警告域ですが――発射準備、完了です!」
凛の報告と共に、特装砲の奥底で圧縮されたリバースグラビティ粒子が、青白い雷光となって溢れ出した。
「目標、600m級! 撃てー!」
春花の咆哮。それはハワイ基地から始まった、長い長い『反撃』の狼煙となる号令でした。
ドォォォォン!!
二射目の特装砲が放たれた瞬間、サンフランシスコ湾の海水が一瞬で蒸発し、白い霧となって周囲を包み込みました。明星から直結された莫大なエネルギーは、限界まで熱せられた砲身を通り、破壊の光条となって600m級へ直進していった。
凛が光学映像を確認していると、
「特装砲、直撃コース! ……待って、敵の『生きる盾』が共振しています!」
600m級の周囲に展開した無数の小型・中型Alogが、自らの肉体を犠牲にして重力障壁を最大化。特装砲の光がその『肉の壁』に接触した瞬間、虹色の凄まじいスパークが走りました。
その時、不死鳥のブリッジに警告音が鳴り響く。
『警告デス! 砲身温度、臨界点を突破! ――不死鳥、艦首装甲が溶融を始めマス!』
船体が破損し、操縦桿を握っていた魁が、
「バランサー破損! 推量低下! 艦の姿勢制御でき・・・あれ?」
不死鳥が傾きかけたその時、亜理砂が不死鳥を捕まえていた。
「こんのー。今だけでよいから、力を貸しなさい! 雷電!」
その叫びに負けない様に、岩蔵が叫ぶ、
「春花ぁ! 意地でも繋ぎ止めろ! 砲身が焼き切れるのが先か、奴の盾が弾け飛ぶのが先か……根性見せやがれェ!!」
それを聞いていた哲夫が叫ぶ、
「遠距離持ちは、超大型に向け、攻撃開始! だが、決して近づくな!」
哲夫の咆哮と共に、全機一斉に攻撃を開始した。
「くっ、雷電からの支援が無いと、照準が定まらない」
エレーナがバルダー・ゲートで呟くと、
「私が支える! 私にも力を貸しなさい! 雷電!」
由美が、亜理紗の代わりに支援に回る。
「感謝!」
由美からの支援を受けたエレーナは、その大型内蔵ライフル型でエネルギー砲を撃ちまくった。
亜理紗と由美の思念波が増幅するにつれて、雷電がうっすらと黄金色に輝きだしていた。
そんな中、哲夫は冷静に雷電を動かし、内臓エネルギー砲、外部ライフル、外付け電磁コイル実弾砲を撃ち続けていた。
全員での攻撃は、特装砲の攻撃を後押しし、生体シールドごと、600m級を吹き飛ばすことに成功した。
「いよっしゃー!」
皆が歓喜に打ち震える中、カイルが、
「お、俺も、参加したかった」
と、呟いた。
2026/04/22
凛のセリフ
「宇宙空間なら、周囲の背景放射温度が絶対零度に近いのでもっと早く熱を逃がせますが、地球の重力下では『大気』という熱の壁に阻まれて、排熱が思うように進みません。……冷却には、まだ時間がかかります」
を以下に修正ました。
「……いえ、むしろ逆です。今の私たちは大気の中にいるから、まだ『空冷』が効いています。宇宙空間に入れば、熱を運んでくれる空気がありません。……もし宇宙でこれだけの連続射撃を行えば、特装砲の熱を逃がしきれず、艦が内側から溶け落ちてしまいます」
その後の春花のセリフ
「宇宙での効率は、今後の課題ね。今はチャージ完了と同時に、特装砲の発射準備!」
を以下に修正しました。
「宇宙での排熱効率は、今後の大きな課題になりそうね……。今はチャージ完了と同時に、特装砲の発射準備!」




