第20話 鉄の意志、流星の誕生
岩蔵の戦い:
【1日目:嵐の前】
朝、整備ドックで起きた岩蔵が、叫び声を上げていた。
「なんじゃこれは!」
そう言ってタブレットを掴み、中身を確認した瞬間に目玉が飛び出しそうになった。
「……あのクソガキどもめ! 明星型だぁ!? 資源が山ほどくるからって、鉄が勝手に船の形になると思ってんのか!!」
周囲の整備兵たちが『どうしたんですか、おやっさん?』と酔った顔で覗き込む。岩蔵は彼らを一喝した。
「これから、わしらの戦争が始まる! まずは、物資が運び込まれるまでが勝負じゃ。この基地に大型3Dプリント・ドックを仕込むぞ!」
「おぉ!」
今朝方まで飲んでいた整備兵達だが、日本の整備兵は岩蔵の命令が出たとたん、もののふの顔つきになった。
それを見ていたアメリカの整備兵は、
「これが、日本の力なのか」
と、唖然としてた。
「酒が抜けねぇなら、走ってこい! そのままの状態でここに居られたら、邪魔でしょうがない」
と、アメリカの整備兵達を、追い出していた。
【2日目:世界からの回答】
岩蔵たちが、急ピッチでドックを改良していると、ガリクソン元帥の横暴に嫌気がさしていた輸送艦のクルーや、民間船の同志たちが、続々とハワイに物資を運び込んできた。
「准将、頼まれていた資材だ! 途中で本部の検問があったが、ハワイの『スピーチ』を見せたら、あいつら黙って通してくれたぜ! 本部の中にも、味方が多いぜ」
それを見ていたミラーが、
「……旧本部の連中が見捨てた資材を、現場の人間たちが自らの意志でハワイへ運んできたか。皮肉なものだな、ガリクソン。お前の欲が、我々の翼を作る材料になったぞ」
港では、運び込まれたばかりの超合金インゴットや、最新の粒子導管が次々とクレーンで吊り上げられ、岩蔵が待つ第1ドックへと吸い込まれていく。
その日の夕方には、かなりの数の超合金のインゴットや粒子導管が山になっていた。
(これは、良いが、こっちはだめだな)
岩蔵はそれら一つ一つを鬼のような形相で検品し、資材が揃うその瞬間を、飢えた獣のように待っていた。
【3日目:鉄の夜】
夕方になり、山積みになったこのパーツを見ながら、
(これだけあれば、一隻は作れそうだな)
岩蔵は鼻を鳴らし、
「……ふん、凛の小娘が資金をふんだくり、世界中の同志たちが命懸けで資材を運んできてくれたんだ。ドックに山積みになったこのパーツを、いつまでも眺めてる暇はねえんだよ!」
整備兵たちに指示を出す。
「いいか! 設計図は凛の小娘が明星のデータを流星用に書き換えた。資材は今、目の前にある! あとはこれを出来るだけ早く練り上げる、わしらの腕だけだ! 鉄が冷める前に、魂をブチ込むぞ! 野郎ども、資材のチェックは終わったか! 凛の小娘がふんだくった金と、世界中の同志が命懸けで運んできた鉄だ。一欠片も無駄にすんじゃねえぞ!」
「おぅ!」
岩蔵は、ドックに設置された巨大な3D金属プリンターの稼働レバーを力強く叩いた。
酒が抜けたアメリカの整備兵も加わり、急ピッチで建造が進んで行った。
岩蔵は、ドックにあるモニタを確認しながら、
「凛の小娘! 計算は終わってんだろうな。……明星型の基本骨格に、ハワイでかき集めた高出力ブースターを組み込む! 重くなる分は、わしの肉抜き(軽量化)でカバーだ! 最速で、こいつを『流星』という名の船に練り上げるぞ! 火花を絶やすな、叩き込めぇ!!」
「おぅ!」
整備兵の整った返事がこだました。
【4日目:夜明け】
四日目の朝。
朝日を浴びて、光り輝く明星型が第1ドックの前に鎮座していた。
朝日を浴びて、鈍く銀色に輝く明星型二番艦『流星』。 その船体には、岩蔵の手による独特の『削り出し』の跡が残り、明星型一番艦『明星』よりもどこか刺々しく、攻撃的なシルエットを醸し出していた。
ドックの前に立つミラー准将は、徹夜明けの岩蔵から渡された、まだ熱を帯びているような電子キーを握りしめた。
「……岩蔵。この短期間で、これほどの『怪物』を産み落とすとは。あんたの腕は、NEasdpの予算よりも頼りになるな」
岩蔵は、煤だらけの顔で、安っぽい煙草をくゆらせながら
「……ふん。予算じゃAlogは倒せねえよ。倒すのは鉄と、それに乗る奴の意地だ。……おい准将、さっき言った通り、エンジン周りはかなり無理をさせてる。バルダー・ゲートに搭載した砲撃の反動を殺すためのバランサーを改良して、姿勢制御を補助できるようにした。じゃが、肉抜きにより、船体が不安定になりやすい。加速のGでケツを浮かせるんじゃねえぞ」
それを聞いたミラーは、
「了解した。……全員、乗艦! 目標はサンフランシスコ沖。我々の故郷(本土)を、不法占拠者から取り戻すぞ!」
ハワイ基地の全兵士、そして資材を運んできた同志たちの歓声と汽笛が響き渡る中、二隻の巨艦は海面を割って急上昇した。




