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クラスのアイドルは俺にだけ嘘をつく  作者: 砂糖流


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47話 両思い

 沈黙の中、目と目を見合わせて、もう彼女から目を背けないように見つめ続ける。


 また断られるかもしれなかった。否定されるかもしれなかった。


 でも、それ以上にもっと彼女の傍にいたかった。

 

 どうしてもこの気持ちに嘘をつきたくはなかったから。


 そんな俺の覚悟に彼女は淡々と続けた。


「じゃあ付き合っちゃおっか」


 まるで友達から誘われた遊びに了承するかのようだった。


「え?」


 意外にもあっさり告白を認められて、思わずそんな声が漏れる。


 確かに嬉しさはあった。


 好きな人から『付き合おう』と言われて胸が躍らないわけがない。


 今すぐにでもこの喜びを誰かに共有したかった。


 だけど俺の目の前には、現実という二文字が押し寄せてくる。


「でも……俺と付き合ったら、アイドルの活動が……」


「小林――バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」


 流川さんは悪びれた様子を一切見せず、不気味な笑みを浮かべて俺を共犯にしようとしてくる。


 それに俺は簡単に受け入れられるわけもなく――とりあえず事実確認を行う。


「つまりは、両思いってことでいいんだよね?」


 そう言った瞬間、先程までの余裕な流川さんの表情が崩れる。


「う、うん……そう思ってくれていい、けど……」


 彼女は一度深呼吸を挟んで心を落ち着かせた後、昔言った愚痴を吐くかのように不満をあらわにする。


「さすがに気づくの遅すぎじゃない? あんなに分かりやすくアピールしてたのに……」


 徐々に小さくなっていく彼女の声を聞いて、俺は改めて両思いなんだと実感する。


 確かに彼女からのアピールは凄かった。だけどあれは全て嘘だと思っていた。だって彼女は、


「まぁ、嘘だけど……」


 俺にだけ嘘をつく。


「もしかしてこれのせい?」


 彼女が先に答えを言う。


「うん……」


 それを聞いた流川さんは得心するように俯く。


 確かに簡単に鵜呑みにする俺の方にも問題はあるけど、なんせ彼女はアイドルだ。


 あれが本当だったら色々とまずいだろ。それに……変に期待するようなこともしたくなかった。


 過去のことがあったから。


 過去の彼女と同一人物と分かった今ではそれがただの皮肉にしか思えなかったけど。


「分かった。じゃあこれから嘘はつかないでおく」


 一体何が分かったのだろう……両思いだと分かった以上いよいよこの関係は世間にバレてはいけない。


 そんな中、もう嘘を言わないなんて余計に危険だ。


 それに俺はもう――


「大丈夫。これからも今まで通り嘘をついても――だってもう分かってるから」


 そのための事実確認でもあった。


 もう今の俺に彼女の嘘は通用しない。


「分かった。じゃあ今まで通りで…………」


 そこで長い沈黙が生まれる。


 好きな人と両思いだと分かった嬉しさよりも羞恥心でどうにかなってしまいそうだった。


 きっと流川さんも同じ気持ちだったと思う。


「…………」


 沈黙がそれを意味していた。


 そう思った矢先、突然温かい何かが手に触れる。


 それはやがて指の間を通っていき、いわゆる恋人繋ぎへと姿を変える。


 流川さんの手は思ったよりも小さくて、だけど色々な経験を積み重ねた立派な手だった。


「こんくらいはいいよね」


「……うん」


 それから俺たちはしばらくの間、無言で手を繋いだ。


 誰かに見られるかもしれないのに、そんなのお構いなしにただただ彼女と温度を共有し合った。

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