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クラスのアイドルは俺にだけ嘘をつく  作者: 砂糖流


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48/48

48話 邪な考え

 告白が成功して数ヶ月が経った――俺たちは相変わらず放課後に空き教室に集まって時間を共にする日々を送っていた。


 両思いと分かったところで、特に関係性が変わることもなかった。


 確かに互いが互いを意識している感覚はあるけど、ただそれだけ。


 今までとやることは何ら変わらないし、変えるつもりもない。


 今はただ時間が過ぎるのを待つ。そしてそれから…………その後は、どうなるんだ?


 高校を卒業したらきっと俺たちは離れ離れになる。


 これは叶わぬ恋なのだ。諦めなければいけない恋なのだ。


 それなのに少しだけ期待している自分がいた。


 もしも俺がもう一度彼女に告白して、これから一生を添い遂げるなんてことになったら……。


 行き過ぎた妄想が俺を更に期待させてくる。


 本当にこのままでいいのか? せっかく告白して両思いになれたのに、これで終わっていいのか?


 放課後の空き教室で一人ふけっていると、入口の方から微かに音が聞こえてくる。


 その音で胸が高鳴るのを感じながら、音の正体を確かめる。


 瞬間に俺は息を呑んだ。


 扉の方から覗くような形で顔を出しているのは、最近毎日のように会っている流川さんではなく、同じメンバーの如月さんだった。


「如月さん?」


 彼女は俺と目が合うや否や、観念するかのように覗かせていた素顔を完全に晒す。


「バレちゃった」


 彼女は言いながら空き教室に入ってきて、向かい合う形で俺の前の椅子に腰を下ろす。


「実は今日君に聞きたいことがあって来たの」


「聞きたいこと?」


 促すように反芻してみせると、彼女はその旨を伝えるべく薄紅色が施されて潤った口を開いた。


「実は最近さ。青澄が全くレッスンに来てないんだよね――前までは毎日のように来て熱心にアイドル活動に励んでいたのにバッタリとそれがなくなったの……」


 それを聞いた瞬間、先程までの高鳴っていた胸が萎縮し始める。


「どうしてそれを俺に?」


「君なら何か知ってると思ってね」


 徐々に萎んでいく俺の心はやがてある一つの考えが芽生えて、それは確信へと姿を変わる。


 彼女は……流川さんは……俺のために無理をして放課後この教室に来ていたんだ。


 何がもう一度告白だ……何が一生を添い遂げるだ……そんな浮かれた妄想なんてただの自己満でしかない。


 最近は自分のことばかりで彼女のことを完全に疎かにしていた。


 流川さんはずっとずっと一人で悩んでいたんだ。俺と一緒にいるのか……それともアイドル活動を続けるのか……。


 やっぱり俺は最低な人間だ。


 それに、


「もしかして……二人って――」


 如月さんは何かに気づいたかのように言い淀む。


 その内容とは、


「大丈夫。流川さんとは付き合ってないよ」


 さすがの俺もそこまで愚かじゃない。


 両思いだからと分かってすぐ付き合うなんてできるわけがない。


 だって彼女は……アイドルなんだから。


 それにもし仮に付き合ったとしても、その関係を隠し続けるのは至難の業だ。


 現に如月さんには勘繰られているわけだし。


 こんなんじゃ、すぐ世間にバレる。


 そうなってしまえば、彼女のアイドル人生は幕を閉じ、学校での居場所も失うことになるかもしれない。


 そうならない為には、彼女に本心を聞く必要があった。


 もう無理なんてさせない。どちらを選択したって構わない。


 俺は何があろうと彼女の味方だから。


「こめん。如月さん。俺ちょっと用事思い出したから行ってくる」


 聞いた如月さんは俺の急な行動に驚きつつも、最後は俺の背中に向かって、優しい声音で送り出してくれた。


「行ってらっしゃい」






最後までお読み頂きありがとうございます。


午前7時投稿。投稿はこの時間帯になると思います。


少しでも「面白い!」と感じましたら、ブックマークと★★★★★、よろしくお願いします!

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