クライマックス
アンティノオス:「おいおい、だれも弓に弦が張れないのか!」
何人かの求婚者たちが失敗している姿を見てアンティノオスは言った。
さらに数人が失敗し、美男子エウリュマコスの順番がやって来た。
エウリュマコス:「あんな坊やに出来て私に出来ないことなど!」
美しい顔を崩しながら、奮闘するエウリュマコスだったが、結局、弦を張ることは出来なかった。
皆が失敗する中、アンティノオスの順番がまわってきた。
アンティノオス:「今日は日が悪い、明日、弓の神アポロンに捧げ物をしてからにしよう」
そう言って、弓には手を触れなかった。
「私に試させて下さい」どこからか声がした。
皆の視線が集まるその先には、物乞いの姿があった。
アンティノオス:「お前のようなヤツが触って良いものではない!」
エウリュマコス:「この席に同席できたことだけでも、ありがたいと思っていただかないと」
求婚者たち:「物乞いがいい気になるな!」回りから多くのヤジが飛んできた。
ペネロペ:「やらせてみては、いかがかしら?」
物乞い:「あんたら、私が弓に弦を張ると何かまずいことでもあるのかい?」
エウリュマコス:「お前にペネロペ殿との婚姻の資格があるとは思えんが、我らの恥となる」
ペネロペ:「あら?他人の屋敷に上がり込んで、資産を蝕む方々に恥がおありなのでしょうか?」
アンティノオス:「なんだとこの女!」
ペネロペに殴りかかるアンティノオス、ペネロペは腕をあげて身構える。
バッシ!!
アンティノオスの拳をメントルが受け止める。
メントル:「いけませんね。女性に手をあげちゃ。物乞い殿、早く弓を!」
メントルとアンティノオスがにらみ合う中、物乞い姿のオデュッセウスが弓をとる。
テレマコス:「危険ですから、母上は自分の部屋に戻って下さい」
テレマコスに促されペネロペは部屋に戻った。
テレマコス:「事が終わるまで、絶対に部屋から出てはなりませんよ」
ペネロペ:「わかりました」
ペネロペは、たくましくなった息子の姿が嬉しかった。
物乞いは弓を見定め、グイ!と弓をしならすと簡単に弦を張ってみせた。
求婚者たち:「あのやろう、弓をしってるぞ」
物乞いは矢をつがえ、強弓を引くと、12本の斧のトンネルを見事に射ぬいた。
まわりの求婚者たちがどよめく
物乞い:「まだ、腕は落ちてはいなかったな」
メントルと睨み合っていたアンティノオスも、物乞いに視線を向ける
オデュッセウスは、テレマコスに視線を送り、テレマコスに武器を握らせた。
物乞い:「さて、次は何を射ようか」
物乞いの矢はアンティノオスに向けられた。
ハッと息をのむアンティノオス、そしてそのまま倒れ込んだ。
アンティノオスの喉には矢が突き刺さっていた。
まわりにいた求婚者たちは、武器や盾を探すが見当たらない。
求婚者:「このやろう!なんてことしやがる!不届き者が!」
一人の求婚者が、物乞いに飛びかかった。
物乞い:「それは、こっちの台詞だ!」
物乞いはボロの上着を脱ぎ捨て、飛びかかってくる求婚者に投げつけた。
そして、上着で前が見えなくなった求婚者を蹴飛ばし、物乞いは叫んだ。
物乞い:「俺はオデュッセウスだ!、この国の王だぞ!」
オデュッセウスのものすごい形相に、求婚者たちは震え上がる。
だが一人、冷静に対応する者がいた。美男子のエウリュマコスである。
エウリュマコス:「確かにあなたは本物のようだ、だが首謀者であったアンティノオスは死んだ。」
エウリュマコスは両手をあげて降参の意を示した。
オデュッセウス:「いや、お前たちを許すことは出来ん。俺と戦うか、逃げ切れるかだ!」
エウリュマコス:「そうですか・・・」
エウリュマコスは残念そうな表情をしたあと、求婚者たちに向かって叫んだ。
エウリュマコス:「皆殺しにするつもりだ!皆で戦うしかない!」
求婚者たちも覚悟を決めオデュッセウスに向かっていく。テレマコスとメントルがそれを防ぐ。
オデュッセウスの目の前にいたエウリュマコスも覚悟を決めてオデュッセウスに飛びかかった。
オデュッセウスの矢が、エウリュマコスの胸(心臓)と腹(肝臓)に差し込まれた。




