決戦の準備
夕食時、美男子エウリュマコスは外に出て夜風に当たっていた。
エウリュマコス:「チッ、おしいところで邪魔が入りやがった」
そこに、オデュッセウス扮する物乞いがやってくる。
物乞い:「旦那様、なにか食べ物を・・・」
エウリュマコス:「あっちへ行け!」
鼻を押さえながら、足で物乞いを蹴飛ばす。
それでもしつこくよってくる物乞いに、エウリュマコスは持っていたチキンを投げつけた。
そこへ、もう一人、本物の物乞いがやって来て、チキンをめぐって物乞い同士の争いになる。
この喧嘩が面白かったのか、いつしか求婚者たちのいい見世物になっていた。
その様子を傍らに、テレマコスとメントスが計画を実行する。
テレマコス:「うまくいっていますね」
メントル:「だが急いだ方がいい」
テレマコス:「大丈夫ですよ、勝利の女神様に言うのもなんですが、勝利は目前です!」
メントル:「勝利が目前という時が一番危ないのだ!」
少し、しょんぼりするテレマコス
メントル:「それと言っておくがな、女という生き物は、嫁いだ先を富ますことを一番に考え、元の家や夫や子供など二の次になるものだ」
テレマコス:「ちょっと怖いこと言わないで下さいよ」
メントル:「だったら急げ」
こうして二人は屋敷内の武器や防具を倉庫に押し込め鍵を掛けた。
ほどなくして、物乞い同士の喧嘩も終わり、オデュッセウス扮する物乞いにペネロペが近づいてくる。
どこかしらに最愛の夫オデュッセウスに似ていると思ったのかも知れない。
ペネロペ:「あなたは誰?」
物乞い:「それは、聞かないで下さい。辛くなります。」
ペネロペ:「辛いことは皆ありますから・・・私もご覧の通り求婚者たちに言い寄られ・・・いろいろ手を尽くして先伸ばしにしてきましたが・・・もうそろそろ誰かに決めなければなりません。」
黙り込んで下を向いている物乞いをじっと見つめるペネロペ
ペネロペ:(似ている、どこかオデュッセウスに似ている)
ペネロペ:「ど、どうか本当の事を教えて・・・あなたはどこからいらしたの?」
切実に訴えるペネロペだったがオデュッセウスの答えは・・・
物乞い:「私はクレタ島の生まれです」
寂しそうな表情を浮かべるペネロペ
物乞う:「私は以前、オデュッセウス様にあったことがあります。きっと戻ってこられますよ」
ペネロペ:「では、オデュッセウスはどのような格好をしていましたか?」
物乞い:「もうだいぶ以前の事なので覚えておりません・・・ですが、マントの留め金が見事で、猟犬が鹿を捕らえている黄金の留め金でした。」
ペネロペ:「そ、それは、確かに私が用意したものです。」
ペネロペの顔は明るくなった。
ペネロペ:「婆や、この方の足を洗ってあげて」
年老いた侍女のエウリュクレイアがやって来た。
エウリュクレイアは桶に水をいれながら、物乞いに話しかけた。
エウリュクレイア:「さっきの黄金の留め金だけど、その猟犬はねアルゴスと言ってオデュッセウス様が飼われていた犬なんだよ」
エウリュクレイアは物乞いの足を洗い始める。
エウリュクレイア:「アルゴスは、勇猛でねどんな獲物も逃がさない名犬だったんだよ・・・おや?」
エウリュクレイア:(オデュッセウス様の足に似ている・・・)
エウリュクレイアは物乞いの足をまじまじとみて、物乞いの膝のほうへ目をやった。
膝にはかつてオデュッセウスが狩りの時につけた傷跡があった。
そして、物乞いの顔を見て言った。
エウリュクレイア:「オデュッセウス様!」
物乞いは、口に一本指をたてて「シッー」と言ってエウリュクレイアを黙らせた。
物乞い:「まだ黙っていてくれ、計画があるんだ」
足を洗い終わるとエウリュクレイアは部屋から出ていった。
ペネロペ:「私夢をみたの」
ペネロペは物乞いに話しかける。
ペネロペ:「20匹のガチョウが小麦をついばんでいて、そこに大鷲が現れるの。大鷲はガチョウの首をへし折って、私にこう言うの心配することはない、ガチョウは求婚者たちで、大鷲はオデュッセウスだと」
物乞い:「近いうちに、求婚者たちがいなくなるお告げですよ」
ペネロペ:「明日、決めるわ。誰と結婚するか・・・私の最愛の人オデュッセウスが得意にしていた競技で・・・」




