20 ヒロインなのに戦います!
「メリナ、久しぶりですわね」
メリナは今日、久しぶりにフローレンスたちとお茶会をしていた。
席に着くなり、フローレンスが口を開いた。
「私たち心配していましたのよ」
その口調に、心配かけていたのだというのが感じられた。
他の三人も口々に言う。
「そうそう。全然誘いに乗らないし、何か元気もなさそうだったし」
「何かあったのではないかと」
「大丈夫なんですか~?」
四人が本当に自分を心配してくれていたのだと思うと、メリナは感謝の気持ちでいっぱいになった。
そして、何も言わずに避けて、心配かけてしまったことが申し訳なくなった。
「皆さんお久しぶりです。心配掛けてしまってごめんなさい」
頭を下げて謝ると、理由を話してくれると思っているのだろう、四人の視線を感じた。
このまま隠していても良いことはないと、メリナは意を決して口を開いた。
「私、嫌がらせを受けているんです」
「!?」
四人は驚き、目を見開いたり口に手を当てたりしている。
「一体誰がそんなことを!」
クリスティーナが一番に我に返り、怒りを露わにして叫んだ。
拳を握りしめ、もし目の前に嫌がらせの犯人がいたら食ってかかりそうな勢いである。
「許せません……!」
「私たちと親しくしているからかしら?……馬鹿なことを」
「お仕置き……ですわね~?」
静かに怒りを燃やすのはパルテナとフローレンスだ。
黒く笑うユリアは見なかったことにしたい。
四人が本気で怒ってくれていることにメリナは嬉しくなった。
そして、まだ四人にはばれていなかったのだと少し安心もした。
もしばれていたら彼女たちはきっと、直ぐに守ろうとしてくれていたに違いないが、それでは自分で解決したことにはならないからだ。
「皆さんありがとうございます」
にこにこと笑うメリナに、四人は意外そうな顔をする。
「腹が立たないんですか?」
パルテナが問いかけると、メリナは「めちゃくちゃ腹立ちました!」と元気に答えた。
その様子に、四人はいよいよ不思議そうに首を傾げる。
「最初は辛くて、皆さんにも迷惑かけたくなくて黙ってたんですけど、それは違うってクラウス様に言われたんです」
メリナは、友人たちに心配も迷惑も掛けたくないと思っていた。
でも、クラウスは友人だからこそ心配したいし迷惑になんて思わないと言ってくれた。そして『任せろ』と言ってくれたのだ。
だから今、フローレンスたちにも打ち明けることが出来て、戦おうとも思えている。
「私このままじゃいけないと思って。戦おうかなって思ってます!」
戦うことを決意したメリナは、前ほど嫌がらせに参っていなかった。
むしろどうやり返してやろうかとわくわくすらしていたのだ。
その気持ちから、にっこりと笑顔で話すメリナに、四人は顔を見合わせた。
「落ち込んではいないみたいですね」
「もっと早く言ってくれたらよかったのに」
「本当ですわ~!そしたら……ふふっ」
パルテナとクリスティーナはぽんとメリナの頭を撫でた。ユリアは可愛らしいのにどこか怪しく笑っている。
しかし、フローレンスは真剣な表情でメリナに問い掛けた。
「どうやって戦うつもりですの?」
「その前に確認したいんですけど、他に転生者っていますか?」
フローレンスの問い掛けに、メリナも笑いを引っ込めて真面目な顔をする。
何故そんなことを聞くのだろうと不思議そうにしながらも、フローレンスは答えた。
「いえ、知ってる限りではいませんわ。もし隠していたのなら分かりませんが、少なくともシナリオからずれた性格をしている私たちに違和感を感じていたり、接触してきたりする者はいなかったかと。怪しい動きをしている者も今のところはいませんわ」
それを聞いたメリナはほっと胸を撫で下ろした。
「なら良かった」
「どういうことですの~?」
不思議そうにしている四人に、メリナは自分が考えていたことを話す。
「いじめの内容が前世でよくあるようなものだったり、≪学ロマ≫でもあったようなものだったので、転生者なのかなと思っていたんです。シナリオと違うことが気に入らなかったとか、理由があるかなって」
一息に言ってから一旦言葉を切る。
そして、紅茶を一口飲んで口の中を潤すと「それに」と続けた。
「もし転生者で≪学ロマ≫のファンだったなら、嫌がらせする気持ちも分かるかもって思ったんです」
もしファンだったら、ヒロインのはずのメリナが攻略を全然せずに悪役令嬢たちと友人になり、関係ないモブ(クラウス様をそんな風に言いたくないけど)に現を抜かいていたら、腹が立っているのかもしれない。
それなら少し申し訳ないと思っていた。しかし、転生者ではないのなら、メリナが気にする必要は無くなるのだ。
「そういうことでしたの」
理由を聞いたことで、四人は納得できたようだった。
(まぁ、正直これ以上転生者はいないと思ってたけど)
既に五人転生者がいる上に、さらにいるとなると、この世界は転生者で構成されているんじゃないかと疑心暗鬼になるところだ。
質問の理由に納得はできたものの、まだどうやって戦うのかは聞いていないと、フローレンスはもう一度メリナに目を向ける。
「話を戻してもいいかしら?」
「はい」
メリナは頷くとにっこり微笑んだ。
「どうやって戦うんですの〜?」
「それはもちろん、実力行使です!!」
ユリアの問いに自信満々に言い放ったメリナに、その場の空気が凍る。
「えっと……それはつまり?」
クリスティーナは戸惑ったような声を上げた。何を言ってるんだろうと心配そうにメリナを見ている。
しかし、メリナは自信たっぷりに説明を始め出した。
「ほら、私って平民じゃないですか。だから下手に反論したり手を上げたりしちゃうとよくて退学悪くて処刑かなって思うんです」
だからこそメリナは今まで黙って嫌がらせを受けるしかなかったのだから、それはそうだろうと四人は頷く。
だからメリナが止めなければクラウスやフローレンスたちがどうにかしようとしたのだ。
「だからってクラウス様や皆さんの力を使っても、また同じようなことがある度にお願いするのかって考えるとちょっと違うなって」
しかし、メリナはそれを良しとしなかった。
そんなメリナに「では一体どうするんですか?」とパルテナが問い掛ける。
よく聞いてくれましたと言わんばかりに、メリナはニヤリと笑って声を張り上げた。
「私、幸い魔力はとても強いんです!」




