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noblesse;oblige  作者: 夏桜羅(原案・設定協力)、雪羅(原作・執筆担当)
第4章 連鎖 -butterfly effect-
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連鎖 -butterfly effect- 22

「もう、余計なものまで投げないでよねー」


 戦闘開始からすでに20分近く。ジンと会話を交わしてからでも、そこそこの時間が経っているが、ティナは未だにファランクスの前で立ち往生していた。

 ジンが、指揮官を潰すと言って突撃した結果、後方に取り残された(バリスタ)持ちの〈エクエス〉はティナへとその銃口を向けていた。

 最初に比べれば矢の数は少ないものの、掠ることさえ危険な矢は確実にティナの動きを阻害していた。

 危なげなく回避してはいるものの、完全に足止めされている。時間が経てば経つほどに有利になっていくのは敵の方だ。

 ティナたちが、8機ぽっきりしか戦力がないのに対し、マレルシャン子爵家の天馬騎士団は、領都の位置を考えれば、空輸を使えば、1時間足らずで増援を呼ぶことすらできるのだから。


『こちら、シェパード。聞こえるか?』

『遅い!』


 ティナは、通信の向こうにいるであろう白髪の傭兵に、反射的に不満を口にした。

 戦闘開始後数分で地上に出てきた割には、トロトロと後ろをうろつくばかりで、音沙汰なかったのだ。ティナの怒りももっともであると言えよう。

 とはいえ、元は二人で一個大隊を食う気だったのだから、援護をアテにするのは、それはそれでおかしな話なのだが。


『悪ィが、そっちには4機しか送れねェ。別働隊2機が領都内に侵入しやがった。しかも、〈ファルシオン〉っつたか? 第三世代だ。さすがに分が悪ィ。オレが直接対応する』

「どこが一個大隊なのよ、あんの嘘つき女!」

楽園(エデン)の貴族がそんな正直なわけねェだろ。素直に正面から来やがったから警戒してたら案の定ってやつだ。お嬢ちゃんたちも、ここの革命団(ネフ・ヴィジオン)を潰させるわけにはいかねェだろ』

「後詰めは任せました、わたしも突っ込みます!」


 シェパードが何か言っているが、ティナは完全に無視した。攻め手がないとか相性が悪いとか言っている余裕はない。

 可能な限り迅速に、かつ正確に、敵勢力を排除する。そう決意し、意識を切り替える。アレに人が乗っているという事実は今は忘れる。後悔は後ですればいい。


「邪魔、どいて?」


 片方の銃を背部に担架し、腰の剣を抜く。同時に地面を蹴り、正面からファランクスへと突っ込む。ある程度至近まで寄ってしまえば、誤射を恐れる(バリスタ)部隊は砲撃を行えない。

 突き出された槍を、スライディングするような形で下を抜けて回避、槍を外し、上半身に体重が傾いている〈エクエス〉の足を思いっきり蹴りつける。

 たたらを踏んだ〈エクエス〉を鋭い斬り上げが襲い、腕が宙を舞う。さらに、真横にいた〈エクエス〉へと銃を向け、至近距離での射撃。盾に阻まれるが、衝撃で機体は後ろに弾かれた。

 続いて、機体を捻り、腕を失い、盾だけとなった〈エクエス〉を背にし、自ら盾へと体重を預ける。シールドチャージを妨害しつつ、敵の盾を作ることで、一時的に後方からの攻撃を封じたのだ。無論、押し退けられてしまえば終わりだが、その隙を与える気はない。

 素早く手首を返し、剣を寄り掛かっている〈エクエス〉の脚部に突き刺し、自分は腰に懸架されたあるものを手に取り、文字通りの意味でのゼロ距離射撃で弾かれた〈エクエス〉に向け、奥の3機も巻き込むような位置へと投擲する。

 投げたのは──

 ──騎士散銃の予備弾倉

 宙を回転しながら落下するそれに、狙いを定める。


「ぶっ飛べ!」


 引き金を引く。薬莢が排出され、宙を舞う。

 散弾は6発の同種の弾が装填された弾倉を破壊し、その熱量を以って内部の弾丸に着火する。

 爆音が響いた。

 中空で破裂した弾倉は、全方位に向け散弾をばら撒き、それを至近距離で食らった4機は散弾の嵐に飲まれ、その装甲を孔だらけにして沈黙した。

 しかし──


「うわー」


 その代償として、飛び散った散弾を受けたティナの〈ティエーニ〉は、射撃と同時にコクピットを庇うのに使った腕をひしゃげさせ、他にもそこかしこに被弾したせいで、視界すみの機体ステータスは真っ赤になっていた。


「うん、これ今度から封印決定」


 そう言いながらも、反動を抑える壁代わりにしていた〈エクエス〉を軸に機体を反転させ、ついでに行きがけの駄賃とばかりに、半壊した腕を叩きつけて頭部を破壊。さらに、残っている腕で剣を振り抜き、飛び散った散弾によってダメージを受けたのか、反応の鈍い二機の〈エクエス〉の腕を切断する。


「でも、これで前は潰したわけだし、結果all right?」


 前衛は排除した。半ば自爆じみた攻撃のせいで機体の状態は最悪だが、動くならまだ戦える。

 地面を蹴って突っ込む。振り下ろした剣は容易く弾かれるが、ティナは、その反動を利用して、機体を回転させ、両サイドから迫っていた〈エクエス〉の剣を弾き返す。


「そこっ!」


 剣をかち上げられたことで、空いた胴体に向け、握っていた剣を投擲する。〈エクエス〉はギリギリで回避するが、〈ティエーニ〉が、剣を投げると同時に腰から抜き放った騎士散銃(ナイツマスケット)の銃口は体勢を崩したその機体を正確に捉えている。


一発目(ファースト)


 轟音。

 散弾の直撃を受けた〈エクエス〉が吹き飛ぶ。同時に、射撃を終えた銃を手放し、もう一本の剣を引き抜き、繰り出された剣を受け止める。

 剣と銃を巧みに組み合わせ、武器を切り替え(スイッチ)することで、手数を無理やり増やす、というごり押しもいいところな戦術ではあるが、前回の戦闘で弾切れを経験したティナは、使用弾数を減らしつつ、近接格闘戦での捌き手を持てるこの戦法は最適解だと考えていた。

 もっとも、結局、武器を使い捨てにするという発想から逃れられていないあたり、業は深い。いや単に性格の問題なのだろうが。


二発目(セカンド)


 囁くようにティナは告げると、鍔迫り合いになっていた〈エクエス〉が浮き上がり、ずり落ちるように前のめりに倒れた。

 足下に捨てた騎士散銃(ナイツマスケット)を踏み付け、引き金を引くのではなく、システムからの直接接続で射撃を敢行したのだ。

 とはいえ、しっかりホールドしていない状態で、凄まじい反動を持つ騎士散銃(ナイツマスケット)を使えば、どうなるかは言わずもがなである。

 半ばからへし折れた銃は後方に吹き飛び、もはや使い物にならなくなっていた。

 後方から近付いてきている後詰めの位置を確認。まさかティナやジンのように全速力で走ったりはしていないだろうから、合流まで数分といったところか。

 敵の数はまだまだ多い。中には片腕を失っている機体もあるが、まだその闘志は潰えていなかった。ジンが突破を優先したツケはすべてティナに降りかかるようにできているらしい。

 やれやれ、とため息をついたティナは、


「さてっと、もうちょっとがんばろっかー」


 そう言って、剣を構えた。


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