シコの6
「どど、どういうこと!?
おじさんが、いつの間にかスペル魔をビュッビュしてるし!」
叫んだのは、先攻を終えたため、特にやることもなくギャラリーの一人となっていたケイナ。
彼女が叫んでいる間、宙に向かって盛大にビュッビュされたスペル魔は、サノバが生み出した性壁内の夜空で星の輝きを受け、キラキラと光り輝いていた。
が、すぐにシュゴウッ! と、体育館内の吸引口へと吸い込まれる。
尺八システムは、展開中の性壁内にも問答無用で介入し、貴重な資源であるスペル魔を無駄なく回収することが可能なのだ。
『アッ……! アッ……!』
さておき、問題はベッドの上で指一本動かすことなく、スペル魔棒を突き出すかのようにピインと背筋を伸ばして果ててしまっているおじさんであった。
「モゴ……モゴモゴゴモゴゴゴゴ(わ……ワケがわからねえべ)!」
全身を這いずる触手により、豊満なオッパイを無限状に縛り上げられながら、アリサが漏らす。
なお、触手が口に突っ込んできて舌を撫で回しているので、何を言っているのかは誰にも判別不能だった。
判別はできないが、これは、このSEXバトルを観戦していた全員の総意であるはずだ。
ケイナとサノバの勝負には全く無関係であるはずのアリサをなぜか巻き込み、性壁展開による仮想世界で触手責めしていたと思ったら、ただベッドの上で寝ていたはずのおじさんがビュッビュして果てていた……。
手品にしても、タネというものの見当もつかず、いっそ化かされたような心地だったのである。
だが、さすがに現役の白銀公務淫魔ということだろう。
「ははあ、なるほど。
サノバさんは、疑似体験を使ったのね?」
女教師が、授業をする時そのままの顔で、アリサたちには分からぬことを言ってみせた。
「ふふん……さすがに、教職を務めるレベルの公務淫魔だと、一目で見抜きますか」
どうやら、やらしい気分と練り上げた魔力の合わせ技で生み出す半霊体の翼は、実際に空も飛べるようで……。
バッサバッサと背中のコウモリめいた翼を操ったサノバが、下へと降りてくる。
一方、アリサは相変わらずヌメヌメテカテカの触手に絡まれており、丸出しのパンティも粘液に濡れて透けそうな有様であった――解放して!
「そう、その通り……。
今回私は、おじさんに女性視点を味わわせることで、触れることすらなくビュッビュさせたんです」
「女性視点でビュッビュさせた!? どういうことか、説明しなさい!」
散々に触手に舌を撫で回され、「モゴー!」とうめいているアリサなんぞガン無視しながら、ケイナとサノバが向き合う。
ギリリと歯を噛み締めているケイナに対し、サノバの方は余裕の表情……。
「公務淫魔の方からスペル魔棒に触ってシコシコしてあげるだけが、ビュッビュさせる手段じゃないってことですよー?」
相も変わらず、口調はどこかやる気がなく、淡々としたもの。
しかし、表情は非常に挑発的で、低身長ゆえケイナを見上げる格好となっているその姿は、どこか小憎らしくすら感じられた。
「それが分からないって言ってるのよ!
ビュッビュさせるには、スペル魔棒への刺激が必要不可欠!
だからこそ、あたしたちはお手手でシコシコしてあげたり、口-in! でジュポジュポしてあげたりして、刺激を与えるんじゃないの!?」
「だからー。
それが浅はかなんですってー」
三つ編みを解いた結果、ゆるやかにウェーブしている長い黒髪をいじくりながら答えるサノバだ。
どうでもいいが、こうしていると、ただリボンを解いただけだというのに、小柄な彼女がひどく大人びて感じられる。
「んぐぐぐぐぐーっ⁉」
そして、さらにどうでもいいことだが、そろそろ呼吸が苦しいので、触手にお口を蹂躙させるのをやめさせて欲しいアリサだった。
「これ大事なことなんですけどー。
男の人がビュッビュする時って、必ずしも自分の肉体的刺激だけでビュッビュしてるわけじゃないんですよー?」
「肉体的刺激だけでビュッビュしてるわけじゃない……?
こう、SMプレイ的な話? あたしはアンマリクワシクナイケド……」
途中から急に小声となるケイナだ。
どうやら、言葉通りあまり詳しくないらしい……アリサもよく知らないけど!
「違うんだなー。そうじゃないんだなー」
やれやれ……という風に肩をすくめるサノバ。
ここまで挑発的な態度を取っているというのに、与える悪印象は小憎らしい止まりで、ウザいとか嫌いとか、極端にネガティブな方へ感情の針を傾けさせないのは、ひょっとしたら計算尽くかもしれない。
もっとも、ケイナに関しては思いっきり逆上させているが。
「いいですかー?
男の子にはねえ。女の子に感情移入するタイプの人もいるんですよ。
もっとハッキリ言うと、女の子がスケベなことになってる姿へ感情移入して、自分も同じようにスケベなことになってる気分となるんです。
こう……自分を重ね合わせるというか」
「じ、自分を重ね合わせるって、あたしらに!?
キモッ!」
ゾゾゾゾゾ……! という背筋の粟立つ音が聞こえそうな勢いで、自分の体を抱き締め、青ざめるケイナだ。
だが、そうしたいのは、実際におじさんから自分を重ねられたらしいアリサである……触手に絡め取られていて、それどころじゃないけど!
「べっつに、そんなに不思議なことじゃないですよー?
私のパパも、ジェイソン・ステイサムが活躍する映画を観てる時、同じ髪型として誇らしそうにしてますし」
「あんたのパパ、ハゲてるんだ……」
「他にも、例えば異世界に転生してチート能力を得て無双するウェブ小説とか、自分を半ば重ね合わせて楽しんだりするコンテンツも、隆盛を誇ってますしねー。
一種の疑似体験みたいな。ゲーム実況を見てるような感覚もあるでしょうけど」
「疑似体験って……。
だったら自分が触手にアレコレされればいいじゃない! 直接体験よ!」
「大事なのは、可愛い女の子が触手にヌルヌルされることなんですー。
誰も、汚いおっさんのまま、触手にまとわりつかれたくなんてありませんー」
「「「「「た……」」」」」
「「「「「確かに……」」」」」
なんという説得力……!
これには、ギャラリーの淫魔生徒たち全員がうなずいた!
「ま、そういうわけでー。
私の性壁展開で、可愛くてオッパイでかい女の子が触手にエロいことされてる様を疑似体験した結果、あのおじさんはスプラッシュ!
濃くて質の良いスペル魔を、ビュッビュしてくれたわけですねー」
「……はっ!?
そうよ! 大事なのは、スペル魔の質よ!
――先生!?」
ケイナが、女教師の方を見やる。
すでに、女教師はジャージのポケットからスマホを取り出しており……。
そこには、採取されたスペル魔の質を様々な角度から採点した点数が表示されているはずであった。
果たして、その結果は……!
「先手、フタタマドウ・ケイナ――187メーザン!」
「「「「「おおーっ!」」」」」
ギャラリーから、どよめきが漏れる。
実習で他の生徒が採取していたスペル魔は、確か50メーザン前後。
それを思えば、三倍以上の点数……!
なお、メーザンとは、スペル魔の点数を表す単位だ。
だが、ギャラリーのざわめきは、すぐに収まることとなる。
「後手、サノバ・ビッチ――223メーザン!
よって、このSEXバトルの勝者は、サノバ・ビッチ!
学内公務淫魔ランキングも、これに準じて変動するものとします!」
先生がそう言いながら、サノバの方にビシリと手を掲げたからだ。
「クフ……」
それを聞いたサノバは、一瞬だけ肩を揺らし……。
「クァーハッハッハッハッハ!
ザコ過ぎなんですけどぉーっ!?」
精一杯に背を仰け反らせ、自分より背の高いケイナを目線的には見下ろすような格好となり、哄笑したのであった。




