シコの4
「性壁展開!」
「これはまさしく、淫魔術の頂点だし!」
(はい解説きたあ!)
蹲踞しながら、すかさずギャラリーの言葉に脳内で反応するアリサである。
一体、何が彼女らをそこまで駆り立てるのか?
ひょっとして、解説上手であることは一人前の公務淫魔を目指す上で必須の条件なのか?
ともかく、普段のキャピキャピとした態度はどこかへしまい、緊迫した様子で語り始める淫魔生徒たちであった。
「極限まで高めたやらしい気分を、練り上げた魔力と合わせることで発現!
その際、淫魔特有の半霊体……羽根、角、尾といった部位が、可視化されるのが特徴!」
「中世に描かれたテンプレ淫魔のイメージは、この術の発現に居合わせたか、あるいは自身がビュッビュしてもらった画家の体験が元になっていると言われているし!」
「その効力は、一種の結界!
術者が思い描く最もスケベな仮想世界を、その場に上塗りするというものだし!」
「ただし、陰陽道の結界術などと異なるのは、あくまでも上塗りするだけで空間的に隔絶するものではなく、結界外部からでも普通に上書きされた世界を視認することが可能!」
「それは、プレイを見せつけることでよりやらしい気持ちになれるからでもあるし、自らの性壁こそがこの世で最もエロいと宣言するためでもあるし!」
「とにかく、生半可な実力で発現できる技じゃないっしょ!」
「手やお口でただシコシコするのとは、文字通り次元が違う奥義だし!」
(や……やっぱり、すっごい分かりやすいべ!)
なんという懇切丁寧さ……!
闇の違法淫魔は北極28号による衛生的なプレイをしないばかりか、曖昧模糊としたプランで法外なビュッビュ代を要求するというが、このフジコ女学園生に限って、そのような心配は無用ということだ!
「それにしても、まだ鋼鉄の……それも、入学したての一年生が、性壁展開するなんて……!」
「さすが、名門フタタマドウの娘……!
やはり規格外か……!」
「それで、どんなドスケベ世界を魅せるっていうの!?」
心を……あるいは乳首を浮き立たせている淫魔生徒たちをよそに、ケイナの性壁が現れ出す。
それはまるで、あぶり出しで文字を浮き上がらせるかのよう。
本来そこにあったかのような幻想の光景が、本物そのものの質感で、体育館の中に生み出されていくのだ。
そうして出現したのは……これは……これは……。
「教室!」
「しかも、夕陽に照らされた放課後の教室だし!」
そう、そこは学校の教室だった。
窓から差し込むのは、何もかもを橙色で染め上げる夕陽。
30センチ四方の木製タイルが敷き詰められた床の上に並ぶのは、誰もが馴染み深いパイプ製の机と椅子……。
黒板消しをかけた薄白い跡が残っている黒板を背にしたケイナが、蠱惑的という言葉を体現したかのような笑みを浮かべる。
そして、艷やかな唇を舐めながら、こう言ったのだ。
「ねえ……しよっか?」
「キマったー! これは、あまりに強すぎる一撃だし!」
「何しろ、ウチらは現役JK!
つまりこれは、プレイであってプレイにあらず!」
「そして、放課後誰もいない教室でJKから誘われるのは、全ての男子の夢!」
「いかにも非モテな青春時代送ってそうなあの脂ぎったおじさんにとっては、憧れの世界に他ならないし!」
もう興奮しすぎて、やかましくすらあるギャラリーたちだ。
だが、冷静にして的確な実況と解説は、間違いなく的を射ていた。
その証拠として、北極28号FXに乗り移ったおじさんが、ハァハァと荒い息を吐きながらベッドから降りたのである。
風船人形版ではできない高度な挙動!
そして、その股間に備わったスペル魔棒は、バキバキに――おっきしている!
いや、それだけではない!
「すごい……スペル魔が生成されすぎて、先走りしたのが垂れてきてるし……!」
「これは、質も量もハンパなさそう……!」
そうなのだ。
北極28号を通じて排出される純粋な魔力にしてエネルギー――スペル魔。
その未成熟な、いわば原液と呼ぶべきエネルギーが、興奮のあまりスペル魔棒の先端から垂れてきているのであった。
「んふ……」
チロリ、と……。
ケイナが自分の唇を舐める。
たかがそれだけの仕草が、なんという――ドエロさ!
唾液でテカリと艶めいた唇は、なまめかしいという言葉を体現したかのようだ。
そのような状態で、ケイナが一言。
「――きて」
もはや、誰かが何かを語る暇など、存在しなかった。
文字通り、電光石火、
あるいは、餌をぶら下げられた肉食獣か。
おじさんは、運動不足っぷりが露骨な裸体をぶよぶよと揺らしながらも、信じられぬほどの速度でケイナとの間合いを詰めたのである。
無論、これを迎えるケイナも、ただ突っ立っていたわけではない。
武道の達人がそうするかのような俊敏さで蹲踞し、これを迎えたのだ。
無論、先ほど艶やかに濡らした唇は、ぴったりとスペル魔棒の高さへと合わせられていた。
これこそ、長年クリ返していた蹲踞訓練の賜物であろう。
先生も、それがこうして実戦でイカされるからこそ、アリサに蹲踞しながらの見学を命じたというわけである。
「ん……う……ん」
――ジュポッ!
――ズッポ! ズッポ! ズッポ!
「おお!」
「キマった!」
「完璧な口-in!」
「しかも、喉への負担がハンパないひょっとこスタイルだし!」
ギャラリーたちが言う通り、ケイナが選択したのは公務淫魔最大の大技――口-in!
あくまでも愛し合う行為ではなく、スペル魔棒を介しての搾精行為であることを思えば、最もダイナミックに愛を与えつつ、全方位から棒に刺激を与えられる精技であった。
なお、衛生面を考慮し、この技を行使した場合は、施術者が徹底して除菌を行うよう精交省により義務付けられている!
「んっ! んっ! んっ! んっ!」
ひょっとこスタイル――スペル魔棒を喉奥までくわえ込み、頬を極限まですぼめた姿となったケイナが、さらにスパートを加えた。
こうなっては、おじさんももうたまらない。
――スプラッシュ!
「んがっ……!? んぐっ……!?」
ケイナの喉奥に、爆発的な勢いでスペル魔が注ぎ込まれる。
しかも……このおじさん……!
「ヘッドロックしている!」
「ケイナの頭を押さえ込んで、逃れられなくしてるし!」
そう、淫魔の命である髪ごとケイナの頭を両手で押さえ込み、身動きできなくしているのであった。
「落ち着いてください!
それだけ、おじさんのスペル魔棒に長く刺激が伝わり続け、最後まで濃いのがビュッビュされます!」
女教師が、ざわめく生徒たちに宣言した内容を証明するかのように……。
『ハレルヤ……』
己が精力をありったけケイナのお口に注ぎ込んだおじさんが、その場で倒れ、無機的なロボットめいた人形……北極28号FXへと戻る。
「――んっ! がぁはっ!」
それで解放されたケイナのお口からこぼれたのは、濃い……コールタールを真っ白に染め上げたかのようなスペル魔!
お口どころか、溢れて鼻の穴からすら漏れ出てきたそれは、ただちに体育館の尺八システムが吸引――無駄なく資源回収した。
「はぁっ……! はぁっ……!」
北極28号FXに宿っていたおじさんの半霊がラブホの方へと漂っていく中、スペル魔を吐き出し終えたケイナはなおもえずいていたが……。
「ふぅー……!」
どうにか呼吸を取り戻し、勝利の笑みを浮かべてみせる。
――ワッ!
それに沸き立つ、ギャラリーの淫魔生徒たち。
まだ先攻が終わっただけであるが、彼女らは、すでに勝敗は決したと考えているのだ。
それほどまでに圧倒的かつ、見事な精技。
「ふーん……。
まあまあですね」
しかし、対戦相手であるサノバのみは、唯一そう考えず、余裕の笑みを浮かべていたのであった。




