シコの3
――ピンポンパンポーン!
まだ二限目の授業中だった私立フジコ女学園に、五音構成鉄琴の世代無関係に懐かしさを感じさせる音色が響き渡る。
『SEXシステム運営委員会より、お知らせ。
ただいま、体育館にて一年槍万組所属のフタタマドウ・ケイナさんと同じく一年槍万組所属のサノバ・ビッチさんによるSEXバトルが承認されました。
SEXバトル観戦は、公務淫魔にとって何よりの勉強。
学園在籍生徒は、現在進行中のあらゆる授業を放棄して観戦に赴くことが許可されます』
同時に、SEXシステム運営委員会の校内放送。
精交省に登録されている公務淫魔たちは、鋼鉄から始まる階級だけでなく、その階級内でも厳格に順位を定められている。
これは、そのような成績システムがなければ、そもそも昇格降格の判断が不可能であるのだから、至極当然のこと。
「フタタマドウって、現神と同じ苗字じゃん?」
「バーカ、知らないの?
今年の一年に、その妹がいるんだし」
「入学式で新入生代表の挨拶してたっしょ?
今年の一年生で、一番の有望株だって」
二年生以上の上級生を筆頭に、そのような会話が学園内の至る所で交わされ、授業中の女教師たちも苦笑いだ。
「ってーことは、一年の中ではそのフタタマドウが一番成績優秀なんでしょ?
もし、サノバって生徒が、フタタマドウに勝ったら……」
「ジャイアントキリング成立だっし!
入学式から一週間でこれとか、今年の一年マジドラマチックっしょ!」
「てか、現実でそんなにうまいこといくー?
順当にフタタマドウが勝っておしまいじゃね?」
「だとしても、有望株の手の内を見とくのは、損しないっしょ」
キャイキャイワイワイと言葉を交わす淫魔生徒たち。
ことに、今のところ全員が鋼鉄階級である一年生たちは、より真剣だ。
フタタマドウ・ケイナを倒した一年生こそが、最も青銅昇格に近い生徒と考えていたからであった。
「っし、いくべ!」
「せんせー! SEXみてきまー!」
「対戦者の精技を見抜きしてきまー!」
学園内の至る所で、生徒たちが堂々と宣言して体育館へと向かう。なお、見抜きとは見稽古を意味する業界用語……すなわち淫語だ。
これは、通常のSEXバトルでは考えられない規模。
有望一年生VS無名一年生というカードは、今年度最初のビッグイベントとなったのである。
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「ルールは最も単純にして、互いの力量を知れるもの……。
ノーオプション&エンカウントルールとしますが、よろしいですね?」
「異議なし」
「問題ありません」
担任女教師の言葉に、ケイナとサノバが応じるのを、アリサは相変わらず蹲踞しながら眺めていた。
「ノーオプション&エンカウントルール……つまり、勝負が成立したこの状況のままでやり合うってことね」
「あーね。
公務淫魔は常在淫猥。
いついかなる時でも、スケベに振る舞えるようにしとくもんだしね」
「つまり、互いがどれだけドスケベであるのか、実力が赤裸々になるルールってことか」
女教師の前で距離を取り向かい合うケイナとサノバを見ながら、クラスメイトたちがささやき合う。
正直、一人前の公務淫魔になることはともかくとして、同じ公務淫魔同士で試合するSEXバトルについては、クリ……ではなくクソほども興味を抱いておらず、当然ルールも把握していないアリサにとっては、ありがたい解説であった。
「ルールの合意も得られました。
それでは、出ませい!
今回の――精算者様!」
女教師が、ビシリと右腕を上げる。
すると、その言葉に体育館内のSEXシステムが反応。
ケイナとサノバの間にあった床がカシャリと開き、そこから一台の……味も素っ気もないベッドがせり出してきたのだ。
いや、これは、ベッドと称していいものだろうか?
何かの特番で見た、昔の特撮ヒーローが第一話で縛り付けられていた手術台を彷彿とさせる代物であった。
そして、その上に乗せられているのは北極28号――ではない。
風船人形と呼ぶのが相応しかった北極28号と異なり、その全身は、明らかに高度な技術によって成形されたボディパーツによって構成されている。
まるで、SF映画に登場するロボット。
当然ながら、関節パーツなどもしっかりと造形されており、田舎の弟が遊ぶのに使っていたプラモデル(百円ショップ製)に匹敵するほどの関節可動域を感じさせた。
「あれが、北極28号……FX!」
「ウチらが実習で使ってるのと違って、関節なんかも備わっていて、より高度なプレイに耐えられる優れものだし!」
「あ! 精算者の半霊が降りてきた!」
相変わらず解説上手なクラスメイトたちが口にしたように、体育館の天井でSemi-spirit Kinetic Astral Transfer Reincarnation Operationシステム――通称スカトロシステムが作動!
ブリリッ! という半霊運搬機構の独特な音と共に精算者用宿舎で待機していた精算者の半霊をラッパ状の排出口から射出! 北極28号FXへと狙いあやまたず命中させた。
すると……おお……なんということか……!
無機質なロボットのごときであった北極28号FXの表面が、腹といい太ももといい、ぶよぶよとした脂に包まれ、しかも、ムダ毛の処理が一切されていないおじさんの肉体へと変じていく!
デッサン人形を彷彿とさせていた頭部も、やわらかい言い方をすると、恵比寿様のようなフェイスラインを描くおじさんのものに置き換わっていった!
頭髪が無残に抜け落ちていて、海外の人がそうするように剃り上げた方がマシなのではないかと問いたくなるバーコード頭となっているのが、哀愁を誘う!
まさに、生身のおじさんそのもの!
違うのは、本来珍なる棒が備わっているべき場所に、こればかりは風船人形版の北極28号と同じスペル魔棒が生えているということだけだ!
「すごい……!」
「マジで脂ぎったおじさんそのものだし……!」
「超美味しそう……!」
見守るクラスメイトたちに褒められ、北極28号FX――否、おじさんが無駄に得意げにフフンと鼻を鳴らす。
「おー、もう北極28号FXに精算者が降りてんじゃん!」
「やっぱ、半霊の再現度がえげつないよねー!」
「風船人形と違って運用費が高いから、ウチら鋼鉄はこういう時しか使わせてもらえないけど、排出されるスペル魔の質も量も桁違いだしねー!」
今度、大変分かりやすい解説の言葉を告げたのは、アリサのクラスメイトたちではない。
SEXシステム運営委員会の放送を受けて、観戦にやって来た生徒たちである。
(すげえ……上級生も混ざってる。やっぱり、ケイナさんは注目されてるんだあ……!)
蹲踞しながら、そんなことを思うアリサだ。
さすがは、名門フタタマドウ家のお嬢様であり、現神の妹というところであろう。
「あたしが先攻してもいー感じ?」
「べっつにいーよー。
こっちは早漏じゃないしー?」
またしても挑発的に煽るサノバに対し、ケイナがギリリと歯を食いしばった。
「じゃ……お言葉に甘えて」
だが、すぐに余裕の表情となり、ベッドの上に寝そべるおじさんの方へと一歩踏み出したのだ。
果たして、どんな技を使うのか?
「いきなり大技でいくのかな? フェラとか」
「王道通り、手コキとかで興奮を高める手もあるっしょ。
早くビュッビュさせればいいってもんじゃなく、より興奮させて出てくるスペル魔の質を高めるのが重要だし」
ギャラリーが口々に予想を言い合う。
だが、ケイナが見せた技は、そのどれとも違った。
背中からコウモリのごとき羽! 頭からは偶蹄目を思わせる一対の角! お尻からは先端部がハート型のキュートなシッポ! を、それぞれ生やしたのだ!
無論、いずれも実体ではない。
ケイナの魔力が極限まで高まった結果、可視化されるまでに至った半霊体である!
必勝の笑みを浮かべた名門出身の……生まれながらの売女が、静かにつぶやく。
「――性壁展開」




