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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
幕間16 探偵ライの考え

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幕間16-1

 マーガレットたちが立ち去った後、ライは応接室から仕事部屋に移動し、仕事用の椅子に座ってから深くため息をつく。

 ライとしてはマーガレットの口から『エルフの間で噂になっているあること』を引き出したかったのだが、それはかなわなかった。

「その様子ですと収穫はなかったようですね」

 そんなライに秘書であるエルフの女性……リリが声をかける。

「えぇ収穫はありませんでしたよ。残念ながら。ただ単にあちらに有意な情報を与えただけになってしまいましてね」

「そうですか。ともなると、ミカの大聖堂で見つかったという謎のマジックアイテムについては詳細不明なままと……」

「はい。彼女たちは『それ』について何か知っているような雰囲気でしたが、あまり問い詰めるわけにもいきませんからね。この件に関しては地道に調査していくほかないでしょうね」

 ライから見て、ルイス家から追いかけられるような要因はあるかという質問に対して、マーガレットは即座に否定しなかった。となると、何か思い当たる節はあるのだろう。だが、彼女はそれに関してお茶を濁すだけで明確には答えなかった。

 こうなると考えられるパターンは二つ。誰かに強力に口止めされているか、はたまた自らの利益を失いたくないがために保身に走っているか……いずれにしても『ルイス家がマーガレットを血眼になって探している』という状況を北の大陸の探偵であるカイがでっち上げている以上はボロを出さないためにもあまり深く突っ込むべきではない。

 あまり詳しい話は聞いていないのだが、北の大陸においてルイス家は科学の発展に関して強く推進する立場にあり、その存在が目障りだった北の大陸のエルフたちによって『行方不明の娘マーガレットを探さなければならない』という思い込みを植え付けられて行動した結果、ルイス家は資金不足になるまでマーガレットを探し続け結果的に貴族の位を剝奪されたというのが事の顛末だからだ。なので、根本的なことを言ってしまえばマーガレットは単純にルイス家をつぶすための駒として使われたに過ぎない。しかし、それを行うためにマーガレットについて調査していく段階で彼女の行動や周囲の状況にいくつか不審な点があったのもまた事実だ。彼女がミカの大聖堂で見つかったという隠し部屋の調査に加わった後から現在に至るまでこれまでとは違う行動パターンを取っているというのがどうしても気になるのだ。

 エルフ間で共有されている報告書によると、マーガレットはもともと北部連邦でのみ活動していて、魔導書やマジックアイテムの収集を目的とした旅をしていた。しかし、ミカの大聖堂の調査に加わったすぐ後に彼女はメアリ王国で身分証の作成を行い、北部連邦から旅立って東の大陸、南の大陸、そして西の大陸へと向かう船が出るこの町へと世界を一周するかの如く旅をし始めたのだ。それと同時にルッシの大聖堂やザドの大聖堂でも隠し部屋が見つかったという話が出回り、その発見にマーガレットがかかわっているのだという情報もライの耳に入ってきた。となれば、彼女たちの旅の目的は五つの大陸にある大聖堂を巡って隠し部屋に隠されている『何か』を探すというモノであるという推論は間違いではないだろう。

 そう考えれば、彼女たちの次の目的地は西の大陸にある『ラミーの大聖堂』であることはほぼ間違いない。

 こうなって来ると、ラミーの大聖堂に先回りしてスパイでも仕込んでおこうかなどと考えてしまうが、それをするほどのことでもないだろう。

「さてと……とりあえず今回の件についての報告書を書きましょうかね……」

「かしこまりました。準備いたします」

 マーガレットが何を求めているのか……それは結局わからないが、今回彼女に接触したことについて何も成果はなかったという内容の報告書を用意しなければならない。面倒な作業だが、こればかりは仕方がない。

 ライは報告書をしたためる紙を用意するために部屋を出るリリの後姿を見ながら小さく息をつく。

 果たして、マーガレットとアイは何を目的として旅をしているのだろうか? ライの……エルフたちの知的探求心はそこの一点に尽きるわけだが、そのあたりの謎が解明されることは来るのだろうか?

 ライはそう言ったことを考えながら席を立ち、部屋にある窓から空を見上げた。

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