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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第6章 北部主要都市チノ

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第31話

 マーガレットが喫茶店の臨時店員の依頼を受けてから約三日。店の名前は『期間限定 魔女喫茶』に代わり、素のままのマーガレットと、いかにも魔女っぽい恰好へと姿を変えた店主……リーエの二人での営業となっていた。担当としては実際に魔法が使えるマーガレットが接客担当、店のことが一通りできるリーエが裏方担当となっている。

「いらっしゃいませー」

 期間限定で本当に魔法が使える魔女が店員をやっているというのはそれなりに話題性があるらしく、リーエさん曰く普段よりも店は繁盛しているそうだ。これが北部連邦にいるころだったら、自らの身分の関係上そう言った目立ったことをやるのは難しかったのだが、ここは遠く離れた東部連邦だ。少々目立ったところであちらまで話題が行くことはないだろうし、そもそもほかの大陸に比べて魔法使いが多い北部連邦では商売すら成り立たない可能性がある。

 お店の仕組みとしては単純だ。まずはマーガレットが普通に注文を受け、それに従ってリーエさんが調理をし、調理し終わった料理を魔法で浮かせてそれぞれのお客さんが待っているテーブルに届けるというシステムになっている。

「マーガレットさん。三番にコーヒー二杯」

「はい。わかりました」

 さっそく、注文のコーヒーが出来上がったらしい。マーガレットはカウンターのそばに行き、そこからほかの客にぶつけないよう注意しながら三番テーブルまでコーヒーを飛ばして配膳する

「すごい。本当にコーヒーが飛んできた」

 三番テーブルの人は魔法で接客するということに半信半疑だったのか、その様子を見て驚き、笑っている。

「次は五番にサンドイッチと紅茶をお願い」

「はい」

 こうやって、仕事をしていくとあっという間に一日が終わっていく。リーエは普段よりも売り上げがいいからという理由で少々多めの給料を毎日払ってくれている。最も、マーガレットはこのあたりの相場に詳しくないので、本当に同業の人よりも給料が多いかどうかなど判別することはできないのだが……

「マーガレットさん。今日もありがとうね。これ、今日の分」

「はい。ありがとうございます」

 一通りの仕事を終え、マーガレットは給料を受け取ってアイが待っている宿へと向かう。

「さてと……この調子なら思ったよりも早くこの町を離れられそうですね……最も、アイが執筆にどれくらいの時間をかけるかという点も考慮しないといけないですけれど……」

 あくまでイメージであるが、本の執筆というのは大変な作業なはずだ。一応、歴史の記録という形で何かしらに文章を書いていくという作業に関しては慣れているとは思うのだが、それでもそれを万人に分かりやすく書くとなると相当な労力を費やすはずだ。そういった意味では、単なる思い付きとはいえ彼女には大変作業を押し付けてしまったのかもしれない。

 そう考えながら歩いていると、マーガレットの視界にケーキ屋の看板が入ってきた。

「……せっかくお給料をちゃんともらってるし、ケーキでも買って帰ろうかしら」

 マーガレットはそうつぶやいてケーキ屋へと入って行った。


*


 チノの町に到着してから約一か月。アイの書籍は思いのほか早く完成し、マーガレットの手元にも十分な路銀が貯蓄されてきていた。この調子なら、アイの書籍がそれなりに売れるという見込みさえ立てばではあるが、聖都ルッシまでの路銀を稼げる可能性すら出てきている。

 今日はアイが書いた書籍を出版社の人に確認してもらう日だ。合間合間にもちょこちょこと見てもらってはいるそうだが、完成形を見てもらうのは今日が初なのだという。そういった意味では今日は大切な日だ。同時に今日は喫茶店の定休日であるため、マーガレットは原稿を入れたカバンを大切そうに持つアイと共に出版社の入り口に立っていた。

「さて、行きましょうか」

「はい」

 二人で短い会話をした後にマーガレットたちは出版社へと入って行き、受付をいったん経てから編集部の応接室へと入って行く。

 そうしてしばらく経つと、編集担当のアロイスという男の人が入ってきてアイが原稿を預かり、ここで待っているようにと言って去って行った。すっかり、今日は原稿を渡すだけだと思っていたので、何かがあったのかとやきもきするマーガレットたちであったが、少し経つとアロイスは少なくない量の金貨が入った袋をマーガレットたちの前に置いた。

「えっと……これは何のお金でしょうか?」

 アイが質問すると、アロイスは笑顔で返答をする。

「いやー編集長とちょっと交渉しまして。エルフ直筆の歴史書なら絶対売れるということと、アイさんたちが早く旅立てるようにと言う二つの点で交渉しましてね。その結果、この金額をお支払いしておこうかという話になったんですよ」

「えっと、つまりもう印税を受け取ってもいいということですか?」

 アイが質問すると、アロイスは笑顔のままうなづく。

「はい。そういうことです」

 アロイスの返答にアイは満面の笑みを浮かべながら頭を下げる。

「ありがとうございます」

 それに続いてマーガレットも頭を下げて、その後にアイが金貨の入った袋を受け取る。どうやら、マーガレットの作戦は思っていたよりもうまくいったようだ。

 その後、事前にリーエから聞いておいた電話番号に宿に置いてあった電話で連絡をし、旅立つ準備ができたという旨の話をする。リーエはさみしいと言いながらも、それを承認してくれて『期間限定 魔女喫茶』はあと一週間で元の喫茶店に戻るということになった。

「さて、こっちも何とかなりそうだからアイはあと一週間、町の観光でもしていたらどう?」

「そうですね。お言葉に甘えさせていただきます」

 二人はそのような会話を交わしながら、少々夜更かしした後に眠りについた。

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