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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
プロローグ

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プロローグ

 北部連邦ナギサ共和国の首都である港町ナギサ。北部連邦最大の港町であり、異国からの貿易船が出入りするこの町の市場に一人の少女の姿があった。年齢は十代後半、さらさらとした銀髪にくりくりとしていて澄んだ青い瞳、黒い三角帽子と黒いローブを身にまとったその少女……魔女マーガレットは屋台で売られている異国から輸入された珍品を吟味しながら歩いていた。

「マーガレット様!」

 背後から見知らぬ声がかかったのはちょうど市場の中央に差し掛かろうとしていたころだった。

 マーガレットが振り向くと、そこには肩ぐらいまでの長さの黒髪と宝石のように輝く緑色の瞳、白いワンピースを身に着けた十歳前後の子供ぐらいの背格好をした少女が息を切らし、下を向いて立っていた。

「……どちら様ですか?」

 そう言いながら、マーガレットの視線は少女の耳に向かう。少女の耳は人間のそれとは違い、先端が長く伸びており、彼女が人間ではなくエルフであるということを物語っていた。

 人間よりはるかに長く生きる長命種であり、その特徴を生かして歴史の記録を好むエルフの少女は息を整えてからこちらへと視線を向ける。

「魔女のマーガレット様ですよね。私を……私を弟子にしてください!」

「はい?」

 あまりにも唐突な申し出にマーガレットは自らの耳を疑う。どうして、エルフの少女がわざわざ自分に弟子入りを志願してきているのか。あまりにも理解できない状況にどう答えていいのかわからないマーガレットに対し、エルフの少女は『週刊エルフ通信』なる雑誌を取り出して、しおりが挟んであるページをめくってマーガレットの前に突き出した。

『人間の魔女マーガレット ナギサ遺跡でマジックアイテムを発見! 遺跡の謎解明に一歩前進か』

 少女が突き出したページにはそのような題と共に遺跡の調査をしているマーガレットの写真が載っており、彼女はその状態のまま話し続ける。

「私、この記事を読んでマーガレット様に一目ぼれしまして、それでぜひマーガレット様の弟子になりたいなと思いまして、こうやって声をかけさせていただいた次第です」

「いやいや一目ぼれって……そもそも、あなた誰ですか?」

 少女が迫りくるのに対して、マーガレットが少し距離をとると、少女は少々冷静さを取り戻したのか、雑誌をカバンにしまい、コホンと小さく咳払いをする。

「大変失礼しました。私はアイ。見ての通りエルフで、マーガレット様の弟子になる予定です。マーガレット様がよくこの市場に足を運ぶと聞きまして、探していたんです」

「そんな予定勝手に立てないでほしいのだけど……とりあえず、私は弟子をとる予定はないのでこの話はお断りさせていただきます」

「いえ、しかしですね……」

「とにかく、弟子は取りません」

 マーガレットは話を続けようとするアイを押しのけてその場から立ち去った。


*


 アイの弟子入りの申し出を断ったのち、マーガレットは昼食をとるために市場の近くにある食堂に立ち寄った。

「あっマーガレット様! 席をとっておきましたよ」

 しかし、入店直後に大きな声を出して、笑顔でこちらに手を振っているアイの姿が視界に入り、店の扉を閉めた。

「……今日は別の店に行った方がよさそうね」

 そう呟いたのち、マーガレットは市場から少し離れた食堂へと向かった。

 その後も、休憩のために立ち寄った広場、遺跡の調査のために宿泊している宿、マジックアイテム収集のために調査している遺跡の入り口など様々なところにアイは現れ、マーガレットに声をかけ続けた。

「あぁもう降参よ降参。弟子になるならなるで勝手にして頂戴」

 そうした日々が数日続き、ようやくマーガレットは彼女から逃れることをあきらめ、アイを弟子として受け入れることになった。

「一応聞きたいのだけど、どうして私の動向が全部筒抜けになっているの?」

 私が疑問に思っていた点について質問してみるとアイは満足げな表情で答える。

「エルフの情報収集能力を舐めないでほしいのです」

「いや、情報収集って言っても限度があるでしょう……」

 マーガレットは厄介なことに巻き込まれたなと深く深くため息をついた。

お読みいただきありがとうございます。


一度投稿したものの、操作ミスで消してしまったので再投稿です。


この先もお読みいただけると幸いです。よろしくお願いします。

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