土方歳三 犬まで管理
裏庭に、笑い声が転がっていた
裏庭に、笑い声が転がっていた。
文字どおり、転がる勢いで。
「ほらシロ、こっちだ!」
鉄之助が小さな木切れを放ると、
シロは「待ってました」と言わんばかりに飛び出し、白い毛をばふっと揺らしながら一直線。
数瞬後、勝ち誇った顔で戻ってくると、木切れを鉄之助の前にぽとりと置いた。
「おお、賢いじゃねえか」
原田左之助が豪快に笑い、しゃがみこんでシロの背をわしわし撫でる。
永倉新八も負けじと頭をぐしゃぐしゃにして、
「隊の中で一番愛想がいいな。俺より上だ」
と胸を張った。
少し離れた縁側には、沖田と斎藤が並んで立っている。
「はしゃぎすぎじゃない? あれ」
沖田が肩をすくめる。
「お前も混ざればいいだろう」
斎藤は、いつもどおり淡々と言う。
「むりだよ。僕、獣の毛、体に合わないからさ」
そう言いながらも、沖田は目を細めた。
「でもさ、可愛いよねえ。シロも、テツも」
斎藤は返事をしない。
ただ、裏庭の光景を静かに眺めている。
シロが再び鉄之助の足元に戻ると、
原田と永倉に囲まれ、また撫でられる。
白い尻尾は忙しなく揺れ、止まる気配がない。
その日は、台所の方が少しだけ賑やかだった。
「おい、鉄之助、いいものもらったぞ」
原田が掲げたのは、煮た魚の頭。
「飯まだだよな。これもやってくれ」
――シロの餌係は、市村兄弟の仕事である。
原田や永倉が直接やることは、基本、ない。
以前、沖田総司が自分の食事をシロに食べさせ、
土方にしこたま叱られた前科があるためだ。
鉄之助は懐から帳面を取り出し、何やら記録している。
「? おい、テツ、それ……」
「副長の命令です」
それは
新撰組 犬 食餌管理帖
近藤勇 酒量管理帖 と、まったく同じ書式だった。
土方歳三は、近藤勇や沖田総司の体重ばかりか、
犬の体重まで管理せずにはいられぬ男だったらしい。
鉄之助は生真面目に従う。
シロは落ち着かない様子で座り、
鼻をひくひくさせながら鉄之助をじっと見ている。
吠えない。
ただ、期待を隠しきれない尻尾が、控えめに、しかし確実に揺れていた。
「ほら、もうすぐだぞ」
鉄之助が声をかけると、
シロはぴしっと座り直す。
待てる。
ちゃんと待てる。
その様子がおかしくて、原田と永倉は顔を見合わせて笑った。
「待て。待てだぞ」
器に移され、少し冷まされる間、
シロは一切動かない。
動かないが、目だけが真剣すぎて少し怖い。
「よし」
その一言で、シロはゆっくりと近づき、
大切そうに魚の頭を口にする。
骨を噛みしめる音が、静かな裏庭に響いた。
少し離れたところで、沖田が腕を組んで眺めている。
「なんていうか……人間より、しっかり管理されてるよね。シロ」
「ああ」
斎藤が短く答える。
「否定はできない」
シロは夢中で食べ終えると、
満足そうに伏せ、ゆっくりと息を吐いた。
魚の頭ひとつで、
裏庭には、確かな平和が戻る。
白い犬は、
今日も静かに、そして大事にされている。
ーーおまけ
いつもの縁側にて、
原田 「あのよ、 テツが 書いてた あの帳面だが」
永倉「新撰組 犬 食餌管理帳 ? 副長がかいてる 近藤勇 酒量管理帳 と同じやつだったな。」
原田 「ああ、 中身だがよ。 間食禁止! 拾い食い 禁止!って 赤字 で書いてあったんだが、」
沖田 「ふふふ、 じゃあ、 近藤先生のやつにも。
大きく 拾い食い 禁止って かいてあるのかもだね」
斎藤 「うむ、 ありえるな」
原田 「いや まさか、 だって 局長だぜ」
沖田 「ふふふ、僕は 書いてあるに 団子1本!」
斎藤「うむ、同じく…」
永倉「じゃあ 俺は 局長の尊厳を考えてだな、
書いてない に1本だ」
原田 「おれもだ」
沖田 「じゃあ こんど、 こっそり… ふふふ 」
ーーーーーおしまいー
近藤勇 酒量管理帳 とは 懐かし やらかし日記1話 2話 に出てきた帳面です。 まだ 続いているのかーー.と 作者本人も笑ってしまいました。




