新選組の縁側 蛍の光
屯所の裏。
夕涼みがてら縁側で麦茶を飲んでいると、
小さな光。
1匹の蛍が迷い込んだ。
「お、蛍か」
原田左之助が目を細める。
「へえ、京に来てから初めて見たなあ。綺麗だなあ」
沖田総司は蛍の光を追いながら、感心したように呟いた。
「なあ、あの蛍、なんで光ってんだろうな?」
永倉新八が首を傾げる。
「うーん、食い物に反応?」
「な、わけねえだろう!」
「サノさん、身もふたもないねえ」
沖田がくすりと笑う。
「理由なんかどうでもいいじゃん。意味があるとかないとかじゃなくて、ただ光るだけだよ。自然の神秘だよね」
斎藤一が眉をひそめた。
「意味なく光るのは無駄だ」
「おっ、厳しいねえ」
原田は笑いながら麦茶をあおる。
「じゃあよ、警告じゃねえか? 『俺に手ぇ出すな』ってな。」
「それなら逆効果じゃねえの?キラキラしたら みんなよってくるぞ」
永倉が吹き出した。
そして蛍を指さす。
「でもまあ、たぶんこいつらモテたいんだろ。夜の闇でピカッと光って、女蛍に『ここだぜ』ってアピールしてんだ」
「ああ、蝉と同じかあ」
沖田が頷く。
「蝉が鳴くのも、つがい探しだって聞いたことあるなあ。でもこっちの方がいいねえ。綺麗だし、静かだし」
「うるさい蝉より、鳴かぬ蛍のほうが身を焦がすってな」
永倉がぽつりと言った。
「おや」
原田がにやりとする。
「どこで覚えたんだ、そんな粋な文句」
「宴会で聞いた都々逸だよ」
永倉は少し照れくさそうに鼻をかいた。
「へえ、似合わねえ」
「うるせえ」
「じゃあお前は蝉だな、新八」
原田が茶化す。
「一日中うるせえし」
「なんだと」
「じゃあ僕は?」
沖田が笑いながら割り込む。
「光って、光って眩しすぎる蛍だよねえ」
「いや、お前もうるさい蝉だ」
即答したのは永倉だった。
「ひどいなあ」
沖田は肩を落とすふりをする。
その横で、斎藤は黙ったまま蛍を見つめていた。
「はじめくんは静かに燃える?蛍っぽいよねえ」
沖田が言う。
「おっ?」
永倉が身を乗り出した。
「おい斎藤、ってことはよ。
お前 叶わぬ想いに身を焦がしてる口か?」
斎藤は一瞬だけ視線を向ける。
「俺は無駄なことはせん」
ぴしゃりと言い切った。
「へっ、まだまだ だねえ」
永倉は大げさに肩をすくめる。
「俺は 無駄 大歓迎だぜ」
原田もニヤッと笑う。
「そうそう、無駄こそ人生なんだよん、斎藤」
「新八、おとなのセリフだね」
「ふふ〜ん、 まあ いろいろな」
蛍はふわりと光を残し、静かな宵の闇へと消えていった。
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