筍の皮騒動始末記
土方が 江戸に出張しているうちに、
京の屯所で始まっていた、「みんなで一緒に食事を楽しみましょう運動」
「いやあ、みんなで食べる飯はうまいな! 隊士同士、心も通う!」
近藤勇は 上機嫌だが このままでは…
土方は進言する
「……近藤さん、その“おかわり自由”をやめるべきだ」
しかし近藤は笑う。
「何を言う歳。食うことは生きることだぞ!
我ら新選組 明日の命の保証もない身だ。
腹一杯 食わせてやりたい
そして運動は本格化した。
屯所では毎晩、大鍋のすき焼き、鴨鍋、握り飯大会、甘味の日まで開催されていた。隊士たちは競うように食べた。
和気藹々と
「斬り合いの前に腹ごしらえ!」
「訓練後の団子は五臓六腑に染みる!」
「いやー、みんなで食う飯はうまいなあ!」
隊士は太り 勘定方は 痩せる
「……伊東さんよ、あんた、袴の紐食い込んでねえか?」
「いやあ、知的活動には糖分が必要でして」
藤堂平助の横腹も丸い。
山南に至っては走ると息が切れる。
“頭脳派”が軒並み太っていた。
帳簿係。戦略担当。弁舌担当。
みんな、ぷくぷく。
一方。
沖田総司は細いまま。
永倉新八も筋肉質。
斎藤一は相変わらず鋭利。
原田左之助は腹筋が割れている。
井上源三郎など、むしろ健康になっていた。
土方は考え込む。
「つまり……動く奴は無事で、座ってる奴から丸くなるのか……!」
その頃、近藤勇は縁側で大福を食べていた。
「歳も食べるか?」
「てめえは危機感を食え!!」
屯所に土方の怒号が響く。
翌日から、鬼の改革が始まった。
「伊東さんよ、 まず走れ!」
「なぜ私が!」
「剣客集団が聞いて呆れる体型だからだ!!」
「私は知略担当――」
「いや 伊藤甲子太郎は 江戸では、北辰一刀流免許皆伝の剣客だったはずだ。
思い出せ
腹が出てる知略家に威圧感はねえ!」
隊士たちは強制的に朝の走り込みへ投入された。
しかし。
伊東派はもう、重くなりすぎていた。
「はぁ……はぁ……」「休憩を提案します……」
土方は額を押さえる。
「駄目だこいつら……」
すると沖田が、にこにこしながら言った。
「土方さん。今の伊藤先生たちを急に走らせるのは無理ですよ。ゆっくり慎重に戻す必要があるんです」
「じゃあどうする」
「やっぱり、走らせるだけじゃなくて、その頭脳を使った方がいいと思うんです」
「頭脳か……」
「ええ。伊藤先生はとてもハイスペックなんです。剣も強いし、頭もいい。お金の計算とか、食事の管理とか、得意だと思いますよ」
土方は腕を組んだ。
「なるほどな……」
結論として、それは想像以上の結果になった。
伊藤甲子太郎は勘定方を掌握。
賄方の隊士たちをも見事に率いていく。
食卓の楽しみは、まあまあ残しながらも、
超高価な肉や白米は姿を消し、
豆や玄米などに置き換わった。
隊士たちの体の贅肉も、
新選組の赤字も、
ゆっくりと減っていった。
なお、団子だけは…
手軽で、うまくて、高カロリー。
それだけは、沖田総司がしっかり守り抜いた。




