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誠の皮しまつ

土間には、まだ筍が残っていた。

というより――皮の山が残っていた。


「……うーん、すごい量だなあ」


永倉新八が顔をしかめる。


「筍は、食える部分の割にゴミが多いよな」


武田観柳斎がすぐに反応した。


「ゴミ? 君たちは“皮”を不要と断じているのか?」


「だって皮ですし」


沖田総司が即答する。


しかし武田は首を振った。


「国家において、不要な資源など存在しない!」


――始まった。


全員がそう思った。


伊東甲子太郎が静かに続ける。


「文明とは余剰の再定義です。この皮にも価値がある可能性は否定できません」


「可能性の話かよ」


原田左之助が遠い目をする。


だが伊東は動じない。


「“食用外”という分類は、思考停止ですな」


「はあ?……」


そこへ山南敬助が静かに手を合わせた。


「では、“皮もいただく”というのはどうでしょうか」


空気が止まる。


「……え?」


永倉が固まる。


「いいだろう! 理論の検証だ!」


武田が即決する。


「実験としては興味深いですね」


伊東も頷く。


「無駄をなくす精神です」


山南も静かに続けた。


――地獄の合意だった。


「……遠慮する」


斎藤一が投げやりに言う。


誰も積極的ではない。

だが、大御所たちの本気の前に、どうにもならなかった。


皮を口に運ぶ。


「……硬いな」


「……苦いな」


「……これは、食感が問題だよね」


誰も本気で飲み込んでいない。

ほとんどが“咀嚼の儀式”だった。


 


数日後。


永倉がふと気づく。


「おい」


沖田を見る。


「お前、痩せてねぇか?」


原田も眉をひそめた。


「顔、明らかに細くなってるぞ」


斎藤が静かに言う。


「まさか本当に……食っていたのか」


沖田は困ったように笑った。


「いや、挑んだだけで、食べてはいないんだけど、

皮って噛み切れなくてさ……でも、ずっともぐもぐしてると、なんだか満腹になるというか……」


沈黙。


「筍の皮ダイエット……になっちゃったかも」


武田「……」


伊東「……」


山南「……」


原田がぽつりと言う。


「お前だけは、ダイエットしちゃいかん」


沖田は苦笑した。


その日を境に、

「皮もいただく運動」は自然消滅した。


なお、筍の皮は――


井上源三郎がきちんと乾かし、

新選組の風呂場の焚き付けとして使われたという。


結局、一番無駄がなかったのは、

たぶん井上だった。

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