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 曰く。

 このサンタモスカの街はクオリアル王国の領地にあり、街の周辺の土地はオリーン家が陛下からいただいたもの。だから、ここに国を築くことは認めない。

 

 曰く。

 領地の中に街を作るのはかまわない。しかし、もし作るのなら得た利益から税をとる必要があること。


 曰く。

 獣人が中心となる街は認められない。管理官として国から派遣される役人を配置すること。


 曰く。

 これらが認められなかった場合、武力行使による排除も辞さないこと。


 ノルベルト・オリーンから届いた書状にはそのようなことが書いてあった。

 僕は、それを読んですぐに、町のみんなを呼び集めた。




「……というわけなんだ。何か質問は?」


 若者衆を目の前にして、僕は淡々と説明した。

 みんなの表情を見ると、一様に険しい顔をしている。

 しばらく押し黙っていたけど、口火を切ったのはドロフェイだ。


「エンド様。発言をよろしいでしょうか?」

「うん、もちろん」

「一応、隣にある街ですから色々と調べております。ノルベルト・オリーンについて」


 僕は静かに頷くと、ドロフェイは目をつぶりぽつり、ぽつりと言葉を吐き出した。


「ノルベルト・オリーン。サンタモスカの街といくつかの村を治める貴族です。貴族位は伯爵。サンタモスカという大きな街を治めているだけあって、領地運営の手腕は評判がよく、王都での地位もそれなりだとか。港町があるため、諸外国との小競り合いもあるようですが、しっかりと国を守っているらしいのです。資金が潤沢なおかげか、軍備にもしっかりと予算を組み、大きな騎士団を編成しているとか。ちなみに、街の人口は五万人、騎士団は二千人。民兵も加えると、およそ一万もの戦力を持っているとのこと」

 

 改めて聞くと、大きな街だと心底思う。

 対して僕らの町はまだ移住者がいないから、六百五十人程度。そのうち戦えるものは数えたことないけど、二百人いないくらいだろうか。

 うん。

 この戦力差はなかなかだね。


「つまり、我らとの戦力さは五十倍……」

「そんなの、勝ち目ないにきまってるにゃー」


 犬人族のモモが青ざめた顔で、猫人族のニコルは仰向けに寝転んで互いに絶望を口にする。


「安住の地が突然地獄に早変わりとは、さすがに展開が早すぎねぇか?」

「どうしようー」


 鼠人族のチュータ、熊人族のブルカスタも同じように嘆いていた。

 だが、ガルガは違っていた。

 相変わらず鋭い視線を僕に向けて、じっくりと観察しているようだ。

 おそらく奇妙なのだろう。

 僕はとても落ち着いているし、焦ってもいない。

 

 でも、それも当然だ。

 僕は、国として認めさせると決めた。

 この場所も公表した。

 それならば、こなることは簡単に予想ができた。書状が来ただけでも大分緩い。


「おい、エンド」

「どうしたの、ガルガ」

「こいつらは諦めちまってる。俺だって。さすがに一万の兵と戦って勝てるわけがねぇと思ってる。だが、お前は違うのか? 手はあるのか?」


 きっとガルガは僕に期待してくれているのだろう。

 一対一でガルガに勝てるのはこの世界では僕だけだし、この世界の力、金の力、彼らがもっていなかった力を僕は持ってる。

 けど、もちろん僕一人じゃ勝てない。

 そんなのはわかり切っている。

 だから。


 そんな風に頼られても、何もしてあげられないんだ。


「正直、今のままじゃ無理だろうね。勝てない」

「お前が言ったんだぞ? 国として認めさせるって!!」


 突然立ち上がったガルガは、今にも殴りかかってくるような勢いで僕に詰め寄ってきた。

 後ろの面々をみるとやや非難めいた視線を向けてくる。

 そんな彼らの様子を見ていたレイカは、不機嫌そう呟いた。


「すっかり負け犬根性が染みついているのですね」

「あぁ!? あんだとぉ!!」


 ガルガがレイカに胸倉をつかんだ。

 後ろに座っていた若者衆の面々も、馬鹿にされた怒りで立ち上がる。

 だが、レイカはそんな彼らを冷たい視線で見下ろしているだけ。

 そんなレイカの様子にガルガ達は怒りを膨らませていった。


「誰が負け犬だ、誰がぁ!」

「わかっているのでしょう? それはあなた達です」

「そのような侮辱。捨て置けはせんぞ!」

「そうだにゃ。さすがのニコルも怒ったにゃ!!」

「俺らだって必死にやってきたんだよ! そんなこと、やっぱり人間にわかるはずないんだなぁ!」

「ひどいよー」


 一斉に避難の言葉を浴びたレイカだったが、やはり語ることは変わらない。

 どんどんと温度が下がる彼女の様子には誰一人として気づかない。


「危機に陥るや否や、主人であるエンド様に批判的なことをいい、現状に嘆く。ほら。負け犬以外の何物でもないでしょう?」

「この――――」


 今まさに、ガルガが拳を振り上げた。

 レイカはその拳をじっと見つめている。


 そんな二人の様子に、僕は一言だけ言葉を投げつけた。


「やめろ」


 僕の言葉に、ガルガを含めた皆が視線を向けた。

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