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 僕の言葉に会議の参加者達はひどく驚いていた。

 ガルガに至っては、怒りすら感じるほどだ。


「てめぇ……なめてんのか?」

「ガルガの強さはよく知ってるよ。でも、狐人族だって戦う種族なんでしょ? 僕はそう聞いてるけど」

「だからって、こんなガキ――」


 ガルガはルルルを下に見た発言をしようとしていた。

 だが、ルルルはそんなガルガの言葉を遮るように口を開く。


「ルルルは強くなったよ? ガルガはルルルと戦うのが怖い?」


 その言葉に、ガルガの額に浮き出ていた血管がこれでもかと怒張する。


「ガキが。後悔すんじゃねぇぞ」


 そう言って、ガルガは立ち上がった。

 そして、何をいうでもなく集落の外側にある草原へと歩いていった。

 僕らやルルルも、その後を追った。




 

 広い草原の真ん中。

 そこで、二人は向かい合っている。

 身長さは倍以上……力でも速度でもルルルは敵わない。

 だからこそ、僕はルルルにアドバイスをした。僕は知ってるからだ。ガルガよりもルルルがすぐれている部分を。


「じゃあ、行くぞ」

「うん。ルルルも遠慮しないからね!」

「よく言うぜ」


 ルルルの無邪気な態度にやや毒気が抜かれたのだろうか。

 先ほど挑発されたときよりも殺気は抑えられている。

 だが、本気を出すつもりなのだろう。

 集中しているのが外からみていてもわかった。


 二人とも、武器は持っていない。

 徒手空拳で戦うつもりなのだろう。


 静かに見合っている二人。

 その静寂を打ち破ったのはルルルだ。

 彼女は地面を蹴ると、一瞬でガルガの顔の前に躍り出た。そして、そのままの勢いで蹴りを繰り出す。

 が、当然のようにガルガは躱すと、ゆっくりとルルルに向かって腕を振り下ろした。


「確かにガキにしては早い……が、まだ甘ぇ」


 ガルガは疑っていなかった。

 この一撃で終わるということに。

 そして、予想通りその腕はルルルにぶち当たる。が、その腕はルルルの身体をすり抜けた。

 実態のないルルルはすぐにその場に雲散した。


「っ――!?」


 ルルルを殴りつけるという衝撃がなく、ややバランスを崩したガルガ。

 警戒するように、瞬時に周囲を見回した。


 しかし、彼の視界にはきっとルルルはいない。


 なぜなら、彼女はすでにガルガの死角に回り込んでいたからだ。

 彼の頭の後ろにいたルルルは、力いっぱい後頭部を蹴り飛ばす。

 有効なダメージにはならないだろうが、バランスを崩したガルガがたたらを踏む程度の威力はあった。


「この! くそがっ――ぁっ――!!!」


 数歩。

 よろけたガルガが勢いよく振り向いた瞬間。

 彼の足元が消失する。

 

 突然現れた体が全て入り込んでしまうような落とし穴に、当然のように落ちていくガルガ。

 そこに間髪いれずに、ルルルは現れる。

 なぜだか、さっきまでは持っていなかった大きな剣をもった姿で。


 まだ地面に到達しておらずどうにもできないガルガの顔面に、ルルルはその剣を一直線に突き刺した。

 

 




 きっと勝負はついただろう。

 僕は、落とし穴から出てこない二人の元に急いだ。


 すると、そこには、剣を突き立てるルルルと、その剣を辛うじて躱した寝そべったガルガが動かずにそこにいた。

 ガルガの頬には一筋の線が引かれており、本当にぎりぎりだったのが窺える。

 

 だが、あの一瞬ですべてを絞り出したのだろう。

 短時間、そして優勢に戦いを運んでいたルルルの消耗もひどいものだった。

 汗だらけであり、荒く息をしている。

 ルルルは、もう、持っていた剣を持ち上げることはできなそうだ。


「んっと……この勝負、まだ続ける? それとも引き分けかな?」


 僕が話しかけると、ルルルは小さく首を横に振った。

 ガルガと目が合うが、やはり戦いを続ける気はないようだ。

 そして、同時に口を開く。


「俺の負けだ」

「ルルルの負けだ」


 二人同時に自分の負けを宣言した。

 すると、ガルガもルルルもその目線を鋭くさせながら声を張り上げる。


「なに言ってんだ! てめぇみたいなガキにいいようにされたんだぞ!? ましてや傷つけられて、こんなの負け以外のなにものでもねぇ!」 

「ルルルは全部出し切って倒せなかった! ここが実戦ならルルルは死んでる。だからルルルの負けだ!」

「うるせぇ! ガキは素直に勝ちを譲ってもらってりゃあいんだよ!」

「そんな同情いらない! ルルルを侮辱するな!」

「あんだとぉ!?」

「なんだよ!!」


 互いに顔を近づけ威嚇しあっている。

 まあ二人の言い分にはうなずける部分はあるけど、これは勝敗をつけるための戦いじゃない。


 僕は言い争ってるガルガの肩に手を置くと、彼はばつが悪そうに顔をそむけた。


「どうかな? ついこの間までただの子供だったルルルだよ? 僕の力があれば、皆がここまで――いや、もっともっと強くなれる。僕は皆を守りたい。でも僕一人じゃ無理だ。皆にも強くなって、自分を守れるようになってほしい。それで……ガルガは無理だとおもう? 僕がやろうとしていることが」


 僕はじっと彼を見つめていた。

 彼だって、虎人族を代表する若者の一人。

 であるのなら――。


「しょうがねぇな……」

「しょうがないっていうのは?」

「わかったっていってんだよ!! こんなガキがこんなに強いなんて思わねぇじゃねぇか! だがな……次はねぇぞ。こんな最悪な負け方、してやらねぇ」

「ルルルだってもっともっと強くなるんだから! ガルガなんてすぐにぼこぼこだよ!」

「言ったな、このガキ!」

「へへっ」


 とりあえず、会議の面々――若者衆とでも名付けようかな?

 彼ら全員の了承は得られたみたいだ。


 本格的にこの国を強くするために。

 色々と頑張らないとね。


 僕はそんなことを考えながら、集落へ戻る道を歩き始めた。 

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