21.中古の村
「ここがロストギア中古販売で有名な村かー、物々しいな」
ベルク達の前には、細めの橋と大きな塀、それに門があった。いわゆる関所の役割をしているのだろう。サーモンタンクではギリギリの幅だが、アンナに任せればこれくらい余裕だ。
そのまま門の前まで走らせると、門番らしき人が現れ、声を掛けてきた。
「待った待った!このサイズの車両は村に入れられないよ!」
「なんでですか?」
「最近、ロストギア専門の盗賊団が現れててね、車両サイズ規制をしているのさ」
「なるほどー。でも、そうなると何処に停めればいいんですか?」
「少し離れた場所に停留地がある。そこで飲食や燃料補給までは出来るが、盗まれた時の保証はないから誰か留守番させて置くのが無難だよ」
「……だそうです。閣下。仕方がないので私は残って見張りをするので、出来るだけ早く済ませて来て下さい。私の閣下分が無くならないうちに!」
アンナがいつの間にか苦渋の決断をしたみたいな悲壮感に溢れていた。ベルクはさくっと任せてサーモンタンクから降りて、村へと入っていった。途中、マジ泣きする声が聞こえたが構わないでおく。いつものことだ。
村はそこそこ賑わっていて、事前情報通り傭兵やロストギアを扱うための技師だろうか? それに商人らしき人達で溢れており、活気があった。遠くにはロストギアをもした石像が見える。
「意外とにぎわってるです」
「関所のお陰で安全な商いが出来てるからでしょうね。で、まずはどうするの?」
「アンナがいないし……まずは酒場で情報収集かな」
酒場は歩いてすぐに見つかった。中は昼間っから酒を飲んでる傭兵たちで溢れていた。ベルクは臆さず酒場のマスターのところまでまっすぐ向かった。なんとなく二人を置いて。
「マスター。モルトビアを2つ」
「………」
「まだお嬢ちゃんにははやいんじゃねーの?」
酒場のマスターは何も言わず、モルトビアをジョッキでだす。モルトビアとはこの世界におけるビールで、どちらかといえばドイツビール的な存在だ。
ベルクは、受け取ったジョッキの一つを、隣でお嬢ちゃん扱いしてきた傭兵らしき人にカウンターを滑らせ渡す。正直ベルクがやってみたかっただけで、深い意味はない。
「俺は男だよ。まぁ、それはそれとして少しだけ教えてもらえない?」
「おっとそいつは失礼。んじゃ、酒の分だけ答えてやるよ」
「いいロストギア手に入れたいんだけど、どこかオススメあるかな?」
「そんなことかよ。大通りの一番奥にある『西日の陰る蜥蜴の尻尾亭』ってとこに腕のいいロストギア商人が入り浸ってるから、紹介状もってそこいきな」
「紹介状はどうすれば貰えるの?」
「そうだなぁ……あと四杯でやるよ」
ベルクは、この男をどこまで信用するか決めかねていたが、欲望に素直なところと、懐から取り出した紹介状で信頼することにした。この男がベルクを騙す必要がないからだ。
この世界の傭兵は信用がまず第一。裏切るなんて情報はすぐに流れて仕事がなくなるらしい。なのでギブアンドテイクな状況では信頼していい。
「なら、五杯奢るからついてきて紹介してよ」
「んじゃ、まだ呑んでない奢り分はツケの精算ってことでマスターよろしく。そういや、あんた名前は? 俺はイグナス」
「ベルク。まぁ覚えなくていいよ」
西日の陰る蜥蜴の尻尾亭は、確かに大通りの一番奥にあった。奥にあったが隣の店からだいぶ離れており、もはや奥というよりはずれだ。店もだいぶ寂れていて営業している気配はない。
「本当にこんな所にいるの? 廃墟にしか見えないけど」
「ホントだって、ほら!」
ベルク達は店内に入り中をぐるりと見渡した。中は意外と整っており、一人の老人がハンモックで寝ていた。
「おい、じーさん。客連れてきたぞ」
「あー? ふん、その辺の若造に売るもんはないわ。出てけ出てけ」
「いるけど、相手にしてくれないじゃないか!」
「あっれ? おっかしーな」
ハンモックで寝ていた老人はそのまま寝なおしていた。




