20.勇者たびに出る
「私、天道朔夜。聖キングストン学園のライトノベルアニメ同好会の幽霊部員をしてる高校二年生。なんか由緒ある家柄っぽい。ある日ママに言われて自宅の蔵の片付けをしていたら、なにやら怪しい光が……私がてゃーって飛びかかって掴んだら何故かこんな所に。一体どういうことなの」
「あの勇者様?」
「あ、ごめん。異世界行ったらこれ言わないとかなって。最近はほとんどないけど伝統芸能は守らなくちゃ!」
「はぁ、そういうものですか」
朔夜は、移動が暇だったので異世界ついたら言ってみたいことを実践してみていた。これで窓とかあれば違ったのだか、生憎地下室でずっと煉瓦造りの階段だ。少し遊びたくもなる。
それから一時間あまり階段を登ったところでようやく扉が見えた。ここに来てまさかのコンビニとかによくある自動ドアである。
「コンビニ!? 24時間営業なの?!」
「こんびにとは何でしょうか?」
「あー、こっちの話」
自動ドアはやはり自動ドアだった。朔夜は微妙な気持ちでそのままついて行き、大神官と思わしき老人の前に案内された。
「大神官様。勇者様です」
「どうも」
「おお、異世界より現れし勇者よ。我々は歓迎しよう」
どこからともなくパイプオルガンの音も聞こえる。よく見ると部屋の片隅にパイプオルガンが置いてあるのが見えたからこれだろう。演出好きなものだ。
「勇者には、魔王と共にこの世界を救っていただきたく存じます」
「魔王を倒すじゃなくて、協力するなの?」
「左様。予言の書によれば、近い未来に世界の破壊者が現れ世界を滅ぼす。しかし、異世界より現れし勇者が、この世界の勇者と魔王を導き世界を救う。と記されておる」
「なるほど、そういうパターンね」
朔夜は、特に深く考えず納得した。なぜなら仮にもライトノベルアニメ同好会の幽霊部員。そりゃ、異世界召喚くらい夢見ていた。ちょっと親の目が厳しい都合上、表向きは水泳部に所属しているが、それでも妄想くらいしているシチュエーションだ。
「現状の問題として、帝国が魔王狩りをやっていて勇者狩りもそろそろ行うという噂もある。ひとまずはこの魔王を守ってはくれぬか?」
「それな。いいよ、面白そう」
「うむ、ではこれを」
いつの間にか神官2人に持ってこさせていた物を大神官が受け取り、朔夜に渡す。朔夜が見た限りではとても古い錆びついた太めのUSBにも見えたが、少しの間を置いて、USBが赤い見た目で新品同様になったのだ。昨夜にはちょっとだけ見覚えがある。小さい頃従兄が見せてくれた特撮だかアニメだかにこんなのあったようななかったような、曖昧な記憶だ。
「これは何に使うの?」
「その伝説の剣の装飾部分に当てれば変身し、必殺が撃てるようになるのじゃ」
「変身、必殺」
朔夜は改めて伝説の剣を見る。確かに柄の部分辺りから広く結晶化している部分がある。これが装飾だろう。
「ち、ちなみに伝説の剣の名前はないの?」
「言い伝えによると、デスティニーブレードと言うようじゃ」
「デスティニーブレード」
「それと説明書じゃ、この世界の言葉ではないが異世界からきた勇者なら読めるじゃろう」
朔夜が説明書を受け取り、読んで見る。どう読んでも昔の玩具の説明書だ。所々手書きで変更点とか書いてある。いわゆる召喚チートが召喚に巻き込まれた玩具にもかかったみたいだ。
「ふぇぇ…玩具だよぉ……」
朔夜は少し頭が痛くなり、ちょっとだけ現実逃避した。がすぐに現実に戻る。切り替えの速さは長所だ。
「あ、で! とりあえず、どうすればいいの?」
「うむ、ひとまず転移装置で狙われている魔王近くに送ろう。一ヶ月分の旅費もセットでどうじゃ」
「それで、合流してなんだかんだすればオッケーね。楽勝じゃない。行ってきます」
こうして朔夜は旅立った。




