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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第二章 神なき力の目覚め
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55/71

神託ログ07『探す理由』

 トーマがいなくなった。


 その事実を聞いた瞬間、最初に頭へ浮かんだのはシオンだった。


 昨日、トーマを連れ出した男。


 黒い札を持っていた男。


 性質を持つ人間を、神々より先に見つけようとしている男。


 そして今、トーマが消えた工房には、新しい黒い札が残されている。


【106】


 裏側には、これまで見たことのない文字。


【育成者 一名確保】


 ここまで揃えば、普通なら疑う。


 いや。


 俺だって疑っている。


 でも、だからこそ。


「シオンを探します」


 そう口にした直後、俺は一度だけ息を止めた。


 違う。


「……いや」


 言い直す。


 レグルがこちらを見る。


「トーマを探します」


「何が違う?」


「全然違います」


 自分に言い聞かせるように答えた。


「シオンを犯人だって決めて探したら、たぶん最初からそういう証拠ばっかり探すから」


 昨日のトーマは、自分の意思でシオンについていった。


 そして、自分の意思で帰ってきた。


 少なくともトーマ本人はそう話していた。


 今回も同じとは限らない。


 逆に、今回は本当に連れ去られた可能性だってある。


 分からない。


 だから調べる。


 それだけだ。


「まず工房へ行きます。トーマが最後にどこにいたのか、誰と話して、何を持っていったのか。そこから見たい」


 レグルは数秒だけ俺を見つめ、それから頷いた。


「合理的だ」


「珍しく褒められた」


「珍しく合理的だったからな」


「一言余計じゃない!?」


 隣でリナが小さく笑う。


 ただ、その笑顔もすぐに消えた。


「レン。ソラは?」


 そうだった。


 職業管理院の奥では、さっき出会ったばかりの少女が休んでいる。


 自分の名前すら分からず、たった今、自分で“ソラ”という名前を選んだ少女。


 その右腕には、


【育成状態:覚醒】


【育成者:未接続】


 そんな意味不明な表示まで現れた。


 トーマを探したい。


 でも。


 ソラを放っていく?


「私が残りましょうか」


 フィリアの声だった。


「フィリア?」


『はい。彼女は心身ともに疲れています。今は追跡より、誰かがそばにいる方がいいでしょう』


「でもソラからフィリア見えないよね?」


『声を届けることはできます。彼女が望むのであれば、ですが』


 そこ。


 ちゃんと付ける。


 俺は少し笑った。


「じゃあ、聞いてからお願いする」


『はい』


「私も残る」


 今度はセレナ。


「珍しい」


『どういう意味よ!』


「絶対『追いかけるわよ!』って言うかと」


『言おうとしたわよ』


「言おうとはしたんだ」


『でも、あの子の右腕に出た表示が気になるもの。魔力じゃない。神力とも違う。それなら近くで観察した方がいいでしょ』


「観察って言い方すると怖いからね?」


『じゃあ見る』


「もっと怖い!」


 こういうところ。


 神様。


 まだまだ。


 人間への言葉選びが雑。


 でも。


 少しずつ。


 変わってる。


「俺は行くぞ」


 ガルド。


「追跡なら任せろ」


「ガルド追跡できるの?」


『馬鹿にするな。戦場じゃ敵の足跡を追うのも戦士の仕事だ』


「走るだけの神じゃなかった」


『お前、俺を何だと思ってる』


「走れって言う神」


『間違ってねえのが腹立つな』


 ヴォルグ、メルク、ノア、エリオスも同行することになった。


 ……四柱同行、二柱残留。


 あれ?


「一人足りなくない?」


『私です』


 ノア。


「いや、ノア数えた」


『では誰でしょう』


「神様七人いると出欠確認めんどくさいな!」


『教師か、お前は』


 ガルドに言われて。


 一瞬。


 変な感じ。


 した。


 教師。


 その言葉。


 妙に。


 懐かしい。


 でも。


 今。


 考える。


 こと。


 違う。


「エリオス、ヴォルグ、メルク、ガルド、ノア……」


『私は残りますよ』


「フィリア」


『私も』


「セレナ」


「七人いるじゃん」


 リナが呆れた。


「ほんとだ」


『先が思いやられるな』


「うるさいエリオス!」


          ◇ ◇ ◇


 ソラの部屋へ向かうと、彼女はベッドではなく窓際の椅子に座っていた。


 職業管理院の地上階に用意された、小さな休憩室。


 地下の検査室とは違い、ここには窓がある。


 窓の向こうを、ソラはずっと見ていた。


 青い空。


 自分で選んだ名前の由来。


 俺たちが入ると、ソラはゆっくり振り返った。


「レン」


「体、大丈夫?」


「うん」


「本当に?」


「……ちょっと疲れた」


「じゃあ大丈夫じゃないな」


 ソラは困ったように笑った。


「俺、少し外に行ってくる」


「どこ?」


「友達を探しに」


 言ってから。


 友達。


 で。


 いいのかな。


 昨日会ったばっかり。


 でも。


 まあ。


 いいか。


「その人も、私みたいな人?」


 ソラが聞いた。


「たぶん」


「たぶん?」


「性質は持ってる。でも、同じかどうかはまだ分からない」


「どんな人?」


「物を外す」


「物?」


「留め具とか、繋がってるところとか。俺の木剣も外された」


「壊れたの?」


「いや」


 そこ。


 大事。


「外れただけ」


 ソラはしばらく考えた。


「……優しい力だね」


「え?」


「だって」


 ソラは自分の右腕を見る。


「壊さないんでしょ?」


 俺は答えられなかった。


 そういう見方をしたことがなかった。


 トーマ自身は怖がっていた。


 父親との喧嘩で「全部外れればいい」と思ったら、周囲の物が外れ始めた。


 制御できなければ危ない。


 でも。


 壊す。


 ではない。


 外す。


「本人に言ってやって」


「会ったら?」


「うん」


「分かった」


 そこで俺は本題に入る。


「フィリアとセレナっていう神様が二人、ここに残ってくれるって」


「神様が?」


「うん。でも、嫌なら断っていい」


 ソラは少し考えた。


「見えないんだよね?」


「たぶん」


『今のところ、彼女との直接接続はありません』


 フィリア。


「声も?」


『通常は届きません』


「じゃあどうするの?」


『レンを介して一度、接続の許可を取ります』


 なるほど。


「ソラ」


「うん」


「神様の声、聞いてみる?」


 ソラの顔が固まった。


 やっぱり。


 怖い。


「嫌ならいいよ」


「……レンは?」


「聞こえる」


「怖くない?」


「最初はちょっと」


「今は?」


「うるさい」


『レン?』


「ほら」


 ソラが笑う。


「じゃあ」


 少し迷ってから。


「聞いてみたい」


「分かった」


 フィリア。


『ソラさん』


 俺を介して。


 接続。


 許可。


 求める。


『私の声を、あなたへ届けてもよろしいですか?』


 俺がそのまま伝える。


 ソラは頷いた。


「はい」


 その瞬間。


 何かが。


 繋がる。


 俺には。


 見えない。


 でも。


 ソラの表情。


 変わった。


『……聞こえますか?』


 フィリア。


 ソラの目が大きくなる。


「聞こえた」


『初めまして。フィリアと申します』


「……神様?」


『そう呼ばれています』


「本当に?」


『それを証明するのは、少し難しいですね』


 ソラ。


 俺。


 見る。


「神様なのに?」


「うちの神様そういうとこある」


『レン』


「褒めてる」


『そうですか?』


 ソラが笑った。


 良かった。


 そして。


 俺は気づく。


 右腕。


 黒い線。


 一瞬。


 光った。


「待って」


 ソラも見る。


 文字。


 浮かぶ。


【育成者:接続――】


「フィリア!」


『切ります』


 即座。


 接続。


 消える。


 文字。


 途中。


 消える。


 ソラ。


 腕。


 見つめる。


 俺。


 背中。


 冷える。


「今の……」


『私は何もしていません』


 フィリア。


 声。


 俺にだけ。


 戻る。


『声を届けるための最小限の接続です。育成者登録を行う意図はありませんでした』


「分かってる」


 でも。


 分かった。


 少なくとも。


 何か。


 神との接続。


 育成者。


 関係。


 してる。


「ソラ」


「うん」


「今の、怖かった?」


 少し。


 考える。


「びっくりした」


「もうやめとく?」


 また。


 考える。


「……フィリアさん」


「うん」


「悪い人?」


「それ俺に聞く?」


「レンが知ってるから」


 難しい。


 フィリア。


 優しい。


 助ける。


 でも。


 昔。


 俺たちに。


 言わなかった。


 こと。


 ある。


 優しいから。


 言わない。


 選択。


 する。


 こと。


 ある。


「悪い神様じゃない」


 俺は答えた。


「でも」


 少し考える。


「間違えることはある」


 フィリアは何も言わない。


「俺も」


「レグルさんも」


「たぶんソラも」


「間違える」


 ソラ。


 見る。


「じゃあ」


「また聞きたい」


「いいの?」


「うん」


「でも今度は」


 ソラ。


 言う。


「勝手に育成者にならないでって言って」


「自分で言いなよ」


「聞こえない」


「あ、そっか」


 不便。


 神様。


「フィリア」


『承知しました』


 もう一度。


 許可。


 接続。


『ソラさん』


「聞こえた」


『私は、あなたの育成者になることを望んで接続するわけではありません』


「うん」


『もし何かが勝手にそう決めようとした場合、私も拒否します』


 ソラは少し安心したように頷いた。


「じゃあ、いて」


『はい』


 それだけ。


 俺たち。


 部屋。


 出る。


 廊下。


 歩きながら。


 俺。


 思う。


 今。


 ソラ。


 自分。


 決めた。


 神様。


 そば。


 いて。


 って。


 それ。


 たぶん。


 大事。


          ◇ ◇ ◇


 トーマの工房へ戻った時、父親は店の前に立っていた。


 朝とは別人みたいだった。


 腕を組み、通りの向こうを何度も見ている。俺たちを見つけると、すぐに駆け寄ってきた。


「トーマは?」


「まだです」


 答えると、顔が落ちる。


「何があったか教えてください」


 工房へ入る。


 朝。


 トーマ。


 父親。


 話した。


 場所。


 今。


 トーマ。


 いない。


 その違い。


 妙に。


 重い。


「俺が」


 父親。


 言う。


「仕事してた」


「トーマは?」


「奥で椅子を直してた」


 昨日。


 外れた。


 やつ。


 かな。


「何時くらい?」


「お前らが出てって、一時間くらいだ」


「誰か来た?」


「客が二人」


「どんな?」


「近所の婆さんと、商人」


「他には?」


「……分からん」


 父親。


 顔。


 歪む。


「俺」


「仕事」


「してたから」


「気づいたら」


「いなかった」


 責めてる。


 自分。


「親父さん」


「何だ」


「トーマが出ていく時」


「何か持ってった?」


「……待て」


 工房。


 奥。


 行く。


 俺たち。


 ついてく。


 トーマ。


 作業台。


 木。


 道具。


 削り屑。


 途中。


 椅子。


「上着」


 父親。


 言う。


「ない」


「他は?」


「財布」


「分からん」


「靴は?」


「履いてる」


「それはそう」


「お前、馬鹿にしてんのか」


「してないです!」


 ガルド。


『足跡を見る』


「お願い」


 工房。


 裏。


 小さい。


 出入口。


 地面。


 土。


 ガルド。


 声。


 少し。


 真剣。


『一人だ』


「分かるの?」


『ここを出た時点ではな』


「方向は?」


『西』


 西。


 また。


 胸。


 ざわつく。


 でも。


 決めるな。


「ノア」


『はい』


「周辺の痕跡」


『解析します』


 メルク。


『レン』


「何?」


『先に財布だ』


「財布?」


『自分から長く出るなら、金を持つ。連れ去られたなら、持たない可能性が高い』


「なるほど」


 父親。


 確認。


 する。


 戻る。


「ない」


「財布?」


「ああ」


 自分で。


 持ってった。


 可能性。


 上がる。


「他」


 俺。


 工房。


 見る。


 何か。


 ない。


 トーマ。


 昨日。


 黒い札。


 触ろう。


 した。


 外せる。


 感じ。


 する。


 言った。


「黒い札」


 父親。


 見る。


「どこにあった?」


「あそこ」


 入口。


 近く。


 机。


「見つけたのは?」


「俺」


「最初からあった?」


「知らん」


 黒い札。


 置いた。


 誰。


 トーマ。


 自身?


 誰か。


 来た?


「親父さん」


「トーマ」


「何か言ってませんでした?」


「何か?」


「朝」


「俺たちが出たあと」


 父親。


 考える。


「……変なこと」


「何?」


「お前」


「探すって」


「何を?」


「お前を」


「俺?」


「そうじゃねえ」


 父親。


 苛立つ。


「お前が」


「何を探してるのか」


「聞いてきた」


 俺。


 止まる。


「何て答えた?」


「知らんって言った」


「その後?」


「『じゃあ俺が聞く』って」


 リナ。


 俺。


 見る。


「レン」


「うん」


 自分。


 行った。


 可能性。


 かなり。


 高い。


「誰に聞くつもりだったんだろ」


 リナ。


 言う。


 俺。


 頭。


 浮かぶ。


 シオン。


 黒い札。


 そして。


 昨日。


 トーマ。


 シオン。


 会った。


「シオン」


 でも。


 どこ。


 いる。


「西門」


 俺。


 言う。


「昨日」


「シオン」


「西側」


「いた」


「行こう」


 動く。


 その時。


「待って」


 リナ。


 腕。


 掴む。


「何?」


「レン」


「トーマを」


「連れ戻すの?」


「……え?」


「見つけたら」


「連れ戻す?」


「それは」


 当然。


 言いかける。


 止まる。


「だって」


「親父さん」


「心配してるし」


「うん」


「危ないかもしれない」


「うん」


「シオン」


「何者か」


「分からない」


「うん」


「なら」


 連れ戻す。


 正しい。


 だろ。


 でも。


 リナ。


 俺。


 見る。


「トーマが」


「自分で行ったとしても?」


「…………」


「昨日」


「レン」


「言ってた」


「本人に聞くって」


 胸。


 痛い。


「でも」


「今回は」


「育成者確保って」


「札も」


「ある」


「だから?」


「危険」


「かもしれない」


「かもしれない」


 リナ。


 返す。


「まだ」


「分からないよね」


「…………」


「レン」


 優しい。


 声。


 でも。


 逃がさない。


「心配してるから」


「決めてない?」


 刺さる。


 完全。


 刺さる。


 俺。


 トーマ。


 助けたい。


 思った。


 いつの間に。


 助ける。


 イコール。


 連れ戻す。


 なってた。


 本人。


 聞いてない。


「……ごめん」


「私に?」


「違う」


 トーマ。


 いない。


 でも。


「トーマに」


 父親。


 俺たち。


 話。


 聞いてる。


 怒る。


 かな。


 思った。


 でも。


「連れ戻さんでいい」


 言った。


「え?」


「無事か」


「確認してくれ」


 拳。


 握ってる。


「それで」


「自分で」


「行ったなら」


 苦しい。


 顔。


「話」


「聞いてやってくれ」


「いいんですか?」


「よくねえ」


 即答。


「今すぐ」


「首根っこ掴んで」


「連れて帰りたい」


 やっぱり。


「でも」


 父親。


 朝。


 トーマ。


 直してた。


 椅子。


 見る。


「あいつ」


「昨日」


「初めて」


「俺に」


「木工師だからじゃないって」


「言った」


 声。


 低い。


「俺」


「何も」


「分かってなかった」


「親父さん」


「だから」


 俺。


 見る。


「聞いてこい」


「何しに」


「行ったのか」


「分かりました」


「あと」


「はい」


「危なかったら」


「殴ってでも」


「連れて帰れ」


「どっち!?」


「親だから仕方ねえだろ!」


 強い。


 でも。


 分かる。


 たぶん。


 選択。


 尊重。


 する。


 って。


 心配。


 しない。


 こと。


 じゃない。


 止めない。


 こと。


 でも。


 ない。


 難しい。


 ほんと。


 難しい。


          ◇ ◇ ◇


 西門を出ると、町の喧騒が一気に遠くなった。


 舗装された街道はしばらく真っ直ぐ伸び、その先で緩やかに北西へ曲がっている。両側には低い草原が広がり、さらに遠くには森の濃い緑が見えた。


 昨日。


 トーマ。


 シオン。


 帰ってきた。


 道。


「ガルド」


『足跡は続いている』


「一人?」


『今のところな』


 俺たちは歩く。


 走りたい。


 でも。


 ガルド。


 足跡。


 見失う。


 から。


 ゆっくり。


 焦る。


 気持ち。


 抑える。


「レン」


 リナ。


「うん」


「さっき」


「怒った?」


「何に?」


「私に」


「何で?」


「止めたから」


 俺。


 少し。


 考える。


「一瞬」


「怒った」


「やっぱり」


「でも」


「自分に」


 たぶん。


 そっち。


「俺」


「本人に聞けって」


「偉そうに」


「レグルさんに」


「言ってた」


「うん」


「自分」


「秒で」


「忘れてた」


「秒ではないよ」


「優しい」


「半日くらい」


「もっとひどい!」


 リナ。


 笑う。


 俺も。


 少し。


 笑う。


「でも」


 リナ。


 前。


 見る。


「レンが」


「トーマを」


「心配してるのは」


「間違ってない」


「うん」


「だから」


「見つけよう」


「うん」


「その後」


「聞こう」


「うん」


 シンプル。


 それ。


 だけ。


 なのに。


 難しい。


 しばらく。


 歩く。


 やがて。


 ガルド。


 声。


 変わる。


『止まれ』


 止まる。


「何?」


『足跡が増えた』


「何人?」


『……四人』


 地面。


 俺。


 見ても。


 分からない。


 ガルド。


 説明。


『トーマの足跡に、三人が合流している』


「待ち伏せ?」


『分からん』


「争った跡は?」


『ない』


 そのまま。


 四人。


 西。


 向かってる。


「シオン?」


『足跡だけでは分からん』


 ノア。


『一つ補足します』


「何?」


『三名のうち一名は、歩幅が著しく小さい』


「子ども?」


『可能性があります』


 子ども。


 性質。


 持ち?


 嫌。


 予想。


 でも。


 まだ。


 分からない。


 歩く。


 さらに。


 三十分。


 街道。


 外れる。


 細い。


 道。


 森。


 入る。


 木々。


 日差し。


 遮る。


 温度。


 少し。


 下がる。


 鳥。


 鳴く。


 遠く。


 水。


 音。


「川?」


 リナ。


「たぶん」


 ガルド。


『近い』


「トーマ?」


『人の気配だ』


 俺。


 足。


 速く。


 なる。


 リナ。


 ついて。


 くる。


 木。


 抜ける。


 視界。


 開く。


 小さい。


 川。


 その横。


 石。


 積んだ。


 古い。


 小屋。


 四人。


 いる。


 一人。


 トーマ。


「トーマ!」


 呼ぶ。


 トーマ。


 振り返る。


「レン?」


 普通。


 怪我。


 ない。


 立ってる。


 安心。


 身体。


 先。


 動く。


「お前!」


 近づく。


「何して――」


 腕。


 掴みそう。


 なって。


 止める。


 トーマ。


 見る。


「……何してんの?」


「今止まっただろ」


「止まった」


「殴るつもりだった?」


「抱きしめるつもり」


「嘘つけ」


「半分」


「残り?」


「殴る」


「親父と同じじゃねえか!」


 生きてる。


 笑ってる。


 よかった。


 本当に。


 よかった。


 でも。


 他。


 三人。


 一人。


 シオン。


 壁。


 寄りかかってる。


「来たか」


「知ってた?」


「来ると思ってた」


「トーマ」


「自分で来た?」


 まず。


 聞く。


 トーマ。


 即答。


「来た」


「シオンに呼ばれた?」


「違う」


「脅された?」


「違う」


「黒い札は?」


「俺が置いた」


「お前!?」


 予想。


 外れる。


「何で!」


「お前なら」


「追ってくると思った」


「普通に置き手紙しろよ!」


「それだと」


「シオンの場所」


「バレるだろ」


「黒い札ならもっとバレるわ!」


 シオン。


「俺もそう言った」


「お前も止めろ!」


「俺が会った時にはもう置いてきてた」


 めちゃくちゃ。


「じゃあ」


 俺。


 息。


 整える。


「育成者一名確保」


「何?」


 トーマ。


 知らない。


 顔。


「書いたの」


「お前じゃない?」


「知らん」


 シオン。


 笑い。


 消える。


「見せろ」


「管理院」


「置いてきた」


「何て書いてあった」


 伝える。


【106】


【育成者 一名確保】


 シオン。


 明らか。


 表情。


 変わる。


「俺じゃない」


「黒い札」


「お前のじゃないの?」


「違う」


 ここ。


 やっと。


 はっきり。


 する。


「じゃあ誰の?」


「俺も探してる」


 シオン。


 言う。


「俺が使っている札は」


「拾ったものだ」


「……は?」


「最初に見つけたのは」


 シオン。


 横。


 見る。


 一人。


 女性。


 ミア。


 いる。


 音。


 消える。


 性質。


 持つ。


 彼女。


 そして。


 その隣。


 小さい。


 子ども。


 男の子。


 八歳。


 九歳。


 くらい。


 俺。


 見る。


 少年。


 シオン。


 後ろ。


 少し。


 隠れる。


「この子だ」


 シオン。


 言う。


「半年前」


「黒い札を」


「最初に拾った」


「半年前?」


 レグル。


 記録。


 三十七年前。


 黒い札。


 あった。


 でも。


 シオン。


 半年前。


 知った。


「名前は?」


 聞いて。


 すぐ。


 止まる。


 本人。


 聞く。


「君」


 しゃがむ。


「名前」


「聞いてもいい?」


 少年。


 シオン。


 見る。


 シオン。


 何も。


 言わない。


 少年。


 俺。


 見る。


「……ユウ」


「ユウ」


「うん」


「何歳?」


「九歳」


「職業は?」


 聞いて。


 また。


 これ。


 必要?


 少年。


 答える。


「まだ」


 この世界。


 職業。


 年齢。


 関係。


 ある。


 でも。


 今。


 重要。


 違う。


「ごめん」


「何で?」


「いや」


 俺。


 笑う。


「癖になってる」


 職業。


 聞く。


 世界。


 俺も。


 染まってる。


「ユウ」


「黒い札」


「どこで拾った?」


 少年。


 自分。


 胸。


 服。


 掴む。


「家」


「家?」


「うん」


「どこ?」


「ない」


「…………」


「今は」


「ない」


 シオン。


 代わり。


 説明。


「村ごと消えた」


「何?」


「半年前」


「西部」


「ラウナ村」


 ノア。


 即座。


『記録を検索します』


 少し。


 間。


『該当します』


「本当に?」


『半年前、ラウナ村で大規模地滑りが発生。住民八十三名のうち七十八名死亡、四名行方不明、一名生存』


 俺。


 ユウ。


 見る。


「一名……」


『生存者名』


 ノア。


 止まる。


『ユウ・ラナ』


 目の前。


 少年。


「地滑り」


 シオン。


 言う。


「そう記録されてる」


「違う?」


「ユウ」


 シオン。


 見る。


「話す?」


 少年。


 少し。


 考える。


 頷く。


「山」


 小さい。


 声。


「なくなった」


「山が?」


「うん」


「崩れた?」


 首。


 振る。


「なくなった」


 意味。


 分からない。


「朝」


「起きたら」


「お母さん」


「いた」


「お父さん」


「いた」


「妹」


「いた」


 少年。


 指。


 震える。


「外」


「出た」


「山」


「光った」


「それから」


 両手。


 握る。


「何も」


「なくなった」


 俺。


 言葉。


 出ない。


「ユウは?」


「いた」


「どうして?」


「分からない」


 シオン。


 少年。


 肩。


 触れない。


 でも。


 近く。


 いる。


「村跡で」


 シオン。


 言う。


「こいつを見つけた」


「シオンが?」


「ああ」


「その時」


「黒い札を」


「持ってた?」


「違う」


 ユウ。


 自分。


 胸元。


 手。


 入れる。


 小さい。


 布袋。


 出す。


 シオン。


「見せていいのか」


 ユウ。


 頷く。


 袋。


 開く。


 黒い。


 札。


 一枚。


 でも。


 今まで。


 違う。


 数字。


 ない。


 表。


 文字。


【見つけた】


 裏。


【まだ一人】


「……何これ」


「分からない」


 シオン。


 答える。


「ユウが」


「目を覚ました時」


「握ってた」


「誰が置いた?」


「分からない」


「ユウの性質は?」


 シオン。


 答えない。


 少年。


 見る。


「言っていい?」


 ユウ。


 首。


 振る。


「分かった」


 即。


 終わる。


 俺。


 それ以上。


 聞かない。


 でも。


 頭。


 動く。


 村。


 消えた。


 ユウ。


 一人。


 生きた。


 性質。


 ある。


 でも。


 何。


 分からない。


 黒い札。


 最初。


 シオン。


 作った。


 じゃない。


「じゃあ」


 俺。


 シオン。


 見る。


「107とか」


「お前が書いた?」


「違う」


「どういうこと?」


 シオン。


 自分。


 外套。


 内側。


 札。


 数枚。


 出す。


「こいつらは」


「勝手に変わる」


「……は?」


 一枚。


 俺。


 前。


 置く。


【106】


 同じ。


「朝」


「これは」


【107】


「だった」


 俺。


 息。


 止まる。


「トーマが」


「ここに来た後?」


「違う」


「変わったのは」


「ついさっき」


「何時?」


「お前らが」


「森に入る」


「少し前」


 トーマ。


 工房。


 消えた。


 時間。


 違う。


「じゃあ」


「106になったの」


「トーマじゃない?」


「少なくとも」


 シオン。


 言う。


「俺はそう思ってない」


 頭。


 混乱。


「でも」


「育成者一名確保」


「それは?」


「知らない」


「本当に?」


「信じる必要はない」


 シオン。


 俺。


 見る。


「自分で調べろ」


 相変わらず。


 でも。


 それ。


 俺。


 嫌い。


 じゃない。


「で」


 俺。


 トーマ。


 見る。


「お前」


「何しに来たの?」


 トーマ。


 少し。


 困る。


「それ」


「聞きに来た」


「何を?」


「俺」


 右手。


 見る。


「育成者なのか?」


「…………」


「朝」


 工房。


 俺たち。


 出た。


 後。


「急に」


「見えた」


「何が?」


 トーマ。


 言う。


「文字」


 胸。


 鳴る。


「どんな?」


「これ」


 トーマ。


 右手。


 上げる。


「今」


「出せる?」


「たぶん」


 目。


 閉じる。


 集中。


 する。


 しばらく。


 何も。


 ない。


 でも。


 右手。


 薄い。


 文字。


 浮かぶ。


【育成状態:覚醒】


 ソラ。


 同じ。


 次。


【育成者候補:――】


 文字。


 乱れる。


 そして。


【接続先:第109代】


「…………」


 俺。


 固まる。


「第109代」


 トーマ。


 俺。


 見る。


「お前だろ?」


「たぶん」


「だから」


「聞きに来た」


「何でシオンに!?」


「お前に聞いても」


「分からんだろ」


「正解だけど腹立つ!」


 リナ。


 横。


 笑う。


「それで」


「シオン」


「分かった?」


「何も」


「こいつもかよ!」


「俺を何だと思ってる」


「何でも知ってる怪しい奴」


「半分しか合ってない」


「どっち!?」


「怪しい奴」


「そこは認めるんだ!」


 ユウ。


 笑う。


 小さい。


 声。


 初めて。


 聞く。


 少し。


 空気。


 緩む。


 でも。


 俺。


 トーマ。


 表示。


 見る。


【接続先:第109代】


 俺。


 育成対象。


 なのに。


 接続先。


 俺。


 何。


 これ。


「トーマ」


「何?」


「俺と」


「繋がりたい?」


 トーマ。


 顔。


 思い切り。


 嫌。


 なる。


「言い方」


「違う!」


 リナ。


 笑い。


 堪えてる。


「育成!」


「もっと嫌だわ!」


「何で!?」


「お前に育てられるの!?」


「俺だって嫌だよ!」


「なら聞くな!」


 シオン。


「仲いいな」


「昨日会っただけ!」


 でも。


 笑って。


 止まる。


 俺。


 もう一回。


 聞く。


「真面目に」


「今」


「接続」


「したい?」


 トーマ。


 右手。


 見る。


 しばらく。


 考える。


「……したくない」


「分かった」


「いいの?」


「何で?」


「だって」


 表示。


 指す。


「接続先」


「お前」


「って」


「書いてある」


「書いてあるだけ」


 昨日。


 ソラ。


 言った。


 同じ。


「俺が」


「トーマに」


「繋げって」


「言う理由」


「ない」


「…………」


「必要になったら」


「その時」


「考えよう」


 トーマ。


 少し。


 安心。


 した。


 顔。


「そっか」


「うん」


 その瞬間。


 表示。


 消える。


 何も。


 起きない。


 やっぱり。


 選ばない。


 できる。


 少なくとも。


 今。


 は。


「じゃあ」


 俺。


 言う。


「帰ろう」


「え?」


「親父さん」


「死ぬほど」


「心配してる」


「……マジ?」


「首根っこ掴んで連れて帰れって」


「それ尊重どこ行った!?」


「親心」


「便利だな!」


「でも」


 俺。


 笑う。


「帰るかどうか」


「お前が」


「決めて」


 トーマ。


 しばらく。


 黙る。


 シオン。


 見る。


 ユウ。


 見る。


 ミア。


 見る。


 そして。


「帰る」


「うん」


「親父に」


「話す」


「うん」


「それから」


 俺。


 見る。


「また」


「調べる」


「一緒に?」


「仕方ないから」


「そこは素直に言え!」


 トーマ。


 笑う。


 俺も。


 笑う。


 よかった。


 連れ戻す。


 じゃない。


 帰る。


 選んだ。


 それ。


 全然。


 違う。


          ◇ ◇ ◇


「レン」


 帰ろうとした時。


 シオン。


 呼ぶ。


「何?」


「お前」


「一つ」


「勘違いしてる」


「何を?」


「俺たちが」


「性質持ちを」


「集めてると」


「思ってるだろ」


「違うの?」


「違う」


 シオン。


 ユウ。


 見る。


「俺が」


「探してるのは」


「性質持ちじゃない」


「じゃあ」


「何?」


「消える奴だ」


「……消える?」


「神から」


「観測から」


「職業から」


 そして。


「育成から」


 俺。


 眉。


 寄せる。


「育成から?」


「そう」


「どういう意味?」


「まだ」


「分からない」


「お前も分からんのかい!」


「だから探してる」


 そう。


 だった。


 こいつ。


 何でも。


 知ってる。


 わけ。


 じゃない。


「半年前」


 シオン。


 続ける。


「ユウを見つけた時」


「一つ」


「おかしなことがあった」


「何?」


「こいつの村」


「ラウナ村」


「記録上」


「八十三人」


「住んでた」


「うん」


「でも」


 シオン。


 俺。


 見る。


「村に」


「残ってた」


「墓」


「八十四」


 風。


 吹く。


 木。


 葉。


 揺れる。


「一人」


「多い?」


「ああ」


「古い墓?」


「違う」


「地滑りの」


「翌日」


「作られた」


「誰が?」


「分からない」


 嫌。


 感じ。


「墓に」


「名前」


「なかった」


「全員?」


「違う」


 シオン。


 言う。


「一つだけ」


「名前がなかった」


「それが」


「八十四人目?」


「ああ」


「中は?」


「空だ」


 俺。


 言葉。


 出ない。


「それと」


 シオン。


 外套。


 中。


 紙。


 一枚。


 出す。


 古い。


 汚れ。


 ある。


「墓の中に」


「これが」


 俺。


 受け取らない。


 まず。


 見る。


 文字。


【育成対象:完了】


 その下。


【育成者:回収済】


「…………」


 トーマ。


 隣。


 覗く。


「回収?」


 俺。


 頭。


 黒い札。


 思い出す。


【育成者 一名確保】


 同じ。


 言葉。


 違う。


 でも。


 近い。


「シオン」


「何だ」


「これ」


「誰が書いた?」


「知らない」


「神?」


「知らない」


「西の人たち?」


「知らない」


「黒い札の奴?」


「知らない」


「何なら知ってるの!?」


「お前よりは知ってる」


「腹立つ!」


 でも。


 笑えない。


 育成。


 終わる。


 育成者。


 回収。


 何。


 それ。


 人。


 育てる。


 終わったら。


 育てた側。


 回収。


 される?


「レン」


 シオン。


 声。


 少し。


 低く。


 なる。


「お前」


「第109代」


「なんだろ」


「……うん」


「なら」


 紙。


 指す。


「108以前が」


「どこにいる?」


 俺。


 止まる。


 旧。


 職業固定試験。


 百八。


 対象。


 それ。


 俺の。


 第109代。


 同じ。


 番号。


 とは。


 限らない。


 何度も。


 確認。


 した。


 だから。


 結びつけない。


 でも。


「第109代」


 代。


 って。


 ことは。


 前。


 いる。


 当たり前。


 なのに。


 俺。


 ほとんど。


 知らない。


「先輩」


 いる。


 第001。


 でも。


 それ。


 第108代。


 とは。


 限らない。


 他。


 は?


「知らない」


 俺。


 答える。


「だろ」


「シオンは?」


「知らない」


「お前もかい!」


「だから」


 シオン。


 笑わない。


「探してる」


「性質持ちを?」


「違う」


 もう一度。


「育成を」


 風。


 止む。


「誰が」


「誰を」


「何のために」


「育てて」


「終わったら」


「どこへ」


「行くのか」


 シオン。


 俺。


 真っ直ぐ。


 見る。


「俺は」


「それを」


「探してる」


 俺。


 何も。


 言えない。


 今まで。


 育成。


 俺。


 神様。


 七柱。


 ドタバタ。


 走る。


 魔法。


 仕事。


 剣。


 助ける。


 考える。


 それ。


 だった。


 でも。


 同じ。


 言葉。


 別。


 場所。


 出る。


 育成状態。


 育成者。


 回収。


「シオン」


「何だ」


「一個」


「聞いていい?」


「答えるかは」


「俺が決める」


「それでいい」


 俺。


 紙。


 見る。


「お前」


「育成者?」


 シオン。


 初めて。


 完全。


 表情。


 消える。


 長い。


 沈黙。


 ユウ。


 シオン。


 見る。


 ミア。


 視線。


 落とす。


 トーマ。


 俺。


 見る。


「シオン?」


 もう一度。


 呼ぶ。


 シオン。


 やっと。


 口。


 開く。


「……昔はな」


 心臓。


 鳴る。


「誰の?」


 シオン。


 答えない。


 代わり。


 袖。


 捲る。


 左腕。


 そこ。


 古い。


 傷。


 みたい。


 黒い。


 文字。


 ある。


 ほとんど。


 消えてる。


 でも。


 読める。


【育成者資格:剥奪】


 トーマ。


 息。


 飲む。


 俺。


 シオン。


 見る。


「何した?」


 聞く。


 シオン。


 少し。


 笑う。


 今まで。


 見た。


 笑い。


 違う。


 自嘲。


 みたい。


「育成対象を」


 一度。


 言葉。


 止まる。


「殺した」


 誰も。


 動かなかった。


 冗談。


 言ってる。


 顔。


 じゃない。


 俺。


 さっきまで。


 シオン。


 怪しい。


 でも。


 本人。


 選択。


 尊重。


 する。


 奴。


 思い始めてた。


 トーマ。


 返した。


 ミア。


 選ばせた。


 ユウ。


 嫌。


 言ったら。


 性質。


 話さなかった。


 その。


 男。


 今。


 言った。


 育成対象を。


 殺した。


「……どういう意味?」


 やっと。


 声。


 出る。


 シオンは袖を戻した。


「そのままの意味だ」


「誰を?」


「今は話さない」


「何で!」


 思ったより。


 強い。


 声。


 出る。


 ユウ。


 びくっ。


 する。


 俺。


 すぐ。


「ごめん」


 ユウ。


 首。


 振る。


 でも。


 シオン。


 見る。


「それ」


「聞いて」


「はいそうですかって」


「帰れるわけない」


「帰れ」


「無理」


「トーマを」


「父親のところへ」


「連れて帰るんだろ」


「それは」


「トーマが」


「自分で」


「帰る」


「俺は」


「残る」


「レン」


 リナ。


 呼ぶ。


 でも。


 俺。


 止まれない。


「シオン」


「お前」


「誰か」


「殺したの?」


「ああ」


「何で?」


「今は」


「言わない」


「じゃあ」


「俺」


「お前」


「信用できない」


「最初から」


「信用しろとは」


「言ってない」


 腹。


 立つ。


 でも。


 こいつ。


 最初から。


 ずっと。


 同じ。


「なら」


 俺。


 言う。


「調べる」


「勝手にしろ」


「お前のことも」


「勝手にしろ」


「育成のことも」


「そうしろ」


「黒い札も」


「俺も探してる」


「じゃあ」


 言葉。


 止まる。


 敵。


 なのか。


 味方。


 なのか。


 聞きそう。


 なった。


 でも。


 それ。


 二つ。


 しか。


 ない。


 わけ。


 じゃない。


「……また」


「聞きに来る」


 シオン。


 少し。


 目。


 細める。


「ああ」


「その時」


「答える?」


「俺が決める」


「ほんと腹立つな!」


「知ってる」


 俺。


 背。


 向ける。


 トーマ。


「帰る?」


「ああ」


 リナ。


 続く。


 森。


 戻る。


 でも。


 十歩。


 くらい。


 歩いた。


 ところ。


「レン」


 シオン。


 呼ぶ。


 振り返る。


「何?」


「一つだけ」


 シオン。


 言う。


「教えてやる」


「何を?」


「俺が」


「育成対象を」


「殺した時」


 目。


 笑ってない。


「神は」


「止めなかった」


 七柱。


 何も。


 言わない。


「それどころか」


 シオン。


 続ける。


「俺は」


「神に」


「褒められた」


 背中。


 冷える。


「……何で?」


「だから」


 シオン。


 言う。


「神を」


「先に」


「信じるな」


 俺。


 返事。


 できない。


 シオン。


 それ以上。


 何も。


 言わない。


 森。


 風。


 吹く。


 葉。


 音。


 する。


 俺。


 歩き出す。


 隣。


 リナ。


 何も。


 聞かない。


 トーマも。


 黙ってる。


 七柱も。


 静か。


 それ。


 今。


 一番。


 怖い。


 いつもなら。


 誰か。


 何か。


 言う。


 ガルド。


 怒る。


 セレナ。


 否定。


 する。


 ノア。


 補足。


 する。


 フィリア。


 悲しそう。


 声。


 出す。


 でも。


 誰も。


 言わない。


 俺。


 歩きながら。


 空。


 見る。


 木。


 隙間。


 青。


 見える。


 ソラ。


 名前。


 思い出す。


 育成。


 誰か。


 育てる。


 それ。


 いい。


 こと。


 だと。


 どこか。


 思ってた。


 俺自身。


 七柱。


 育てられて。


 できる。


 こと。


 増えた。


 救われた。


 こと。


 いっぱい。


 ある。


 でも。


 もし。


 育成。


 する側。


 間違えたら。


 もし。


 育成対象。


 選ぶ。


 答え。


 間違えたら。


 そして。


 もし。


 殺すことすら。


 育成の。


 一つ。


 だと。


 誰かが。


 決める。


 なら。


 俺は。


 初めて。


 育成。


 という言葉。


 そのものを。


 少しだけ。


 怖いと思った。

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