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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第二章 神なき力の目覚め
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52/71

神託ログ04『誰のための保護』

 扉が叩き破られた瞬間、古い倉庫の中へ夜の冷気が流れ込んだ。


 乾いた木片が床を滑り、積もっていた埃が白く舞い上がる。蝶番の片方が壁から外れ、重い扉が斜めに傾いたまま止まった。


 その向こうに立っていたのは、六人。


 全員が濃紺の外套をまとっている。胸元には銀色の徽章。円の中央を一本の縦線が貫き、その左右に三本ずつ短い線が刻まれていた。


 先頭に立つ男だけは外套の前を開いていた。


 四十代くらいだろうか。短く整えられた黒髪には少しだけ白いものが混じり、腰には細身の剣を下げている。ただ、その手は柄に触れていなかった。


 男は壊れた扉を一度見たあと、倉庫の奥にいる二人へ視線を移した。


「職業管理院、特別査定部。主任査定官、レグル・ハイゼンだ」


 低く、よく通る声だった。


 威圧するために張り上げているわけではない。


 それでも、倉庫の空気が一段重くなったように感じられた。


「未登録性質保有者、二名を確認した。神託および職業秩序に基づき、両名を保護する」


 シオンは机に片手を置いたまま、その言葉を聞いていた。


 向かいではミアが椅子から立ち上がっている。


 彼女の口が動く。


 ――保護。


 音は出ない。


 彼女の周囲では、音そのものが消えてしまう。


 けれど、シオンにはその唇の動きだけで十分だった。


「ああ」


 シオンは小さく笑った。


「便利な言葉だろ?」


 レグルの眉がわずかに動いた。


「何がだ」


「保護」


 シオンは椅子を引き、ゆっくりと立ち上がる。


「連れていく時にも使える。閉じ込める時にも使える。本人が嫌がっても、“危険から守るためだ”と言えば聞こえがいい」


「誤解しているようだな」


「じゃあ聞こう」


 シオンは笑みを消した。


「本人に聞いたのか?」


 倉庫の中が静まり返った。


 いや。


 もともと静かだった。


 ミアの性質の影響がどこまで届いているのか、入口付近で割れた木片が床へ落ちても、その音すら途中で消えている。


 その異様な静寂の中で、レグルだけは表情を変えなかった。


「保護対象の意思確認は、身柄を確保した後に行う」


「それを聞いてるんじゃない」


「なら何だ」


「この女に」


 シオンがミアを示した。


「お前たちに守ってほしいか、聞いたのか」


 レグルは答えなかった。


 その沈黙だけで、シオンには十分だった。


「ほらな」


「……我々には、未確認の異常現象から市民を守る義務がある」


「市民?」


 シオンが鼻で笑う。


「その中に、こいつは入ってないのか?」


 後方にいた査定官の一人がわずかに身じろぎした。


 レグルは振り返らない。


「当然、含まれている」


「なら、まずこいつを市民として扱え」


「扱っている」


「番号じゃなく?」


 その一言。


 レグルの目が、ほんの少し細くなった。


 シオンは机の上に置かれていた黒い札を指先で弾いた。


【107】


「お前たちも数えてるんだろ」


 レグルは答えない。


「神様より早く見つけて、職業制度より早く囲って、“保護しました”ってか」


「……その札をどこで手に入れた」


「質問してるのは俺だ」


「こちらもだ」


 二人の視線がぶつかる。


 ミアだけが、その間に立っていた。


 彼女はシオンを見る。


 次に、レグルを見る。


 そして。


 机の上へ指を滑らせた。


 埃に文字が残る。


 ――私は帰りたい。


 レグルの視線がそこへ落ちた。


 初めて。


 彼の表情が動いた。


「帰る場所は?」


 ミアは指を動かす。


 ――家。


「家族は?」


 ――いる。


「性質発現後、家族に危害を加えたことは?」


 ミアの指が止まった。


 ほんの一瞬。


 それから。


 ――ない。


「他人には?」


 また。


 止まる。


 シオンがミアを見る。


 ミアは答えない。


 レグルはその沈黙を見逃さなかった。


「三日前」


 静かに言った。


「東市場で、商人二名が一時的な聴覚異常を訴えた。翌日、中央通りでは馬車の御者が警告音を聞き取れず、歩行者と接触しかけた」


 ミアの肩が震えた。


 シオンの目から笑みが消える。


「死傷者はいない」


 レグルは続けた。


「だが、次もそうだと言い切れるか?」


 ミアは答えられなかった。


「我々は、お前を怪物と呼びに来たわけではない」


 レグルの声は、意外なほど穏やかだった。


「だからこそ、制御方法が分かるまで保護する」


 シオンはしばらく何も言わなかった。


 今度は。


 簡単には笑えなかった。


 レグルの言葉には。


 筋が通っている。


 少なくとも、全部が嘘ではない。


「……なるほど」


 シオンが呟く。


「何だ」


「思ってたよりまともだった」


 後方の査定官が露骨に顔をしかめた。


「貴様――」


「下がれ」


 レグルが止める。


 シオンは肩をすくめた。


「だから余計に厄介だ」


「何?」


「お前たちは正しい」


 シオンは言った。


「少なくとも、一部は」


 ミアを見る。


「こいつの力は危険だ。本人も制御できてない。放っておけば誰かが傷つく可能性もある」


 そして。


 レグルを見る。


「でも」


 一歩。


 前へ出る。


「正しいからって」


 もう一歩。


「本人より先に、本人の人生を決めていい理由にはならない」


 レグルの手が、初めて剣の柄へ触れた。


          ◇ ◇ ◇


 眠れなかった。


 いや。


 正確には、一度寝た。


 でも目を閉じると、黒い札が浮かんだ。


【107】


 そして。


【2】


 シオンが持っていた札の裏側にあった数字。


 トーマから聞いた話を何度思い返しても、その意味は分からない。


 百七。


 神に見つかっている数。


 二。


 何の数だ。


 シオンとミア?


 見つけた性質持ち?


 保護した人数?


 仲間?


 考え始めると、次から次へと仮説だけが増えていく。


 そのどれにも証拠がない。


「……寝よ」


 俺は毛布を頭まで被った。


 五秒。


 十秒。


「無理」


『でしょうね』


「うわっ!」


 頭の中へ突然声が響いて、毛布を跳ね上げた。


「ノア!」


『はい』


「夜中に急に喋るのやめて!」


『レンが呼びました』


「呼んでない!」


『三十二秒前に“ノアならどう考える”と発言しています』


「独り言!」


『私の名称を含む呼びかけと判断しました』


「神様の呼び出し判定どうなってんの!?」


 静かな夜。


 少しだけ。


 笑う。


 それで。


 ほんの少し。


 頭。


 軽くなる。


 ……また。


 短くなってる。


 俺はベッドの上で身体を起こし、窓の外へ目を向けた。


 大神殿の客室から見える町は、昼間とはまるで別の場所のようだった。大通りの店はほとんど明かりを落とし、遠くに見えるのは夜番のための街灯と、宿屋らしい建物の窓から漏れる淡い橙色の光だけだ。


 この町のどこかで。


 普通に眠っている人たちがいる。


 明日も仕事へ行く人。


 家族と朝飯を食べる人。


 自分の職業に満足している人。


 嫌いな人。


 疑ったことすらない人。


 その中に。


 突然、自分でも分からない力が目を覚ました人間がいるかもしれない。


 百九人。


 いや。


 その数字だって、本当に正しいか分からない。


「ノア」


『はい』


「トーマみたいな人」


「今までいなかったのかな」


『質問の範囲を指定してください』


「この世界で」


『性質そのものを保有していた人間、という意味であれば、存在していた可能性は高いです』


「じゃなくて」


 俺は膝を抱えた。


「急に変なことができるようになって」


「怖くなって」


「誰にも相談できなくなった人」


 ノアはすぐには答えなかった。


『……いた可能性はあります』


「だよな」


 職業なら。


 職業院へ行けばいい。


 怪我なら。


 神殿。


 魔法なら。


 魔法を教える人。


 武器なら。


 鍛冶屋。


 でも。


 どれでもないもの。


 神様にも分からないもの。


 そんな力を持った時。


 どこへ行けばいい。


 トーマは。


 たまたま。


 俺に会った。


 ミアは?


 三日前から。


 音。


 消えて。


 診療所へ行って。


 その後。


 いなくなった。


「相談所」


 口に出してみる。


 昼間。


 思いついた。


 まだ。


 名前もない。


 場所もない。


 何をするかも。


 ちゃんと。


 決まってない。


『作りますか?』


「……うん」


『理由は?』


「分からないから」


『何がですか』


「全部」


 自分で言って。


 笑う。


「だから」


「分からない人が来て」


「分からない奴らが」


「一緒に考える場所」


『非効率的です』


「だよな」


『しかし』


 ノアの声が少しだけ柔らかくなったように聞こえた。


『合理性がないとは言っていません』


「それ褒めてる?」


『評価しています』


「分かりづら」


 でも。


 悪くない。


 明日。


 やろう。


 そう思って。


 もう一度。


 横になった。


 今度は。


 少しだけ。


 眠れた。


          ◇ ◇ ◇


 翌朝。


「場所がありません」


「…………」


 アリアの一言で。


 俺の壮大な計画は開始三秒で止まった。


 大神殿の食堂。


 朝食。


 パン。


 スープ。


 ゆで卵。


 俺。


 リナ。


 トーマ。


 アリア。


 そして声だけ七柱。


「神殿でやるんじゃないの?」


 俺が聞く。


「何をする場所なのか、まだ決まっていませんから」


「相談」


「何の?」


「性質」


「性質とは?」


「……よく分からない力」


「よく分からないものを相談する場所を大神殿内に?」


「はい」


「許可が下りると思いますか?」


「…………」


 正論。


 強い。


 トーマがパンをちぎりながら笑った。


「無職相談所でいいじゃん」


「まだ言う!?」


「分かりやすい」


「俺しか相談できないだろ!」


「俺も無職になれば?」


「お前、木工師好きなんだろ!」


 トーマの手。


 止まる。


「あ」


 やった。


 俺も。


 止まる。


「ごめん」


「……いや」


 トーマは手の中のパンを見た。


 昨日。


 言ってた。


 木工。


 嫌いじゃない。


 むしろ。


 好き。


 でも。


 一生。


 それだけ。


 決められるのが嫌。


「好きだよ」


 トーマが言う。


 昨日より落ち着いた声だった。


「木の匂いも好きだし、何もない板から椅子とか机ができるのも好きだ」


 パンを置く。


 自分の手。


 見る。


「親父に教えてもらったことも」


「全部嫌いなわけじゃない」


「うん」


「でも」


 指を曲げる。


 昨日。


 物を外した。


 同じ。


 手。


「木工師だから木工やるのと」


「俺が木工やりたいからやるの」


「同じなのかなって」


 誰も。


 すぐ。


 答えなかった。


 その沈黙は、気まずいものではなかった。


 むしろ。


 簡単に答えないための沈黙だった。


 フィリア。


 声。


『同じ行動でも』


『違うのかもしれませんね』


 トーマには聞こえない。


「フィリアが」


 俺が伝える。


「同じことしてても、違うかもしれないって」


「……そっか」


「俺もそう思う」


「お前は?」


「無職」


「参考にならねえ」


「ひどくない!?」


 リナがスープを飲みながら笑う。


「私は分かるかも」


 トーマが見る。


「お前」


「職業リナだっけ?」


「そう」


「それも意味分かんねえけど」


「私も」


「本人も!?」


 リナは笑ったあと、腰に置いた剣へ視線を落とした。


「でも、剣は好き」


「狩剣士じゃなくても?」


「うん」


「職業の補助なくても?」


「前より下手になったけど」


 少し。


 悔しそう。


 でも。


「好き」


 それだけは。


 迷わない。


 トーマはしばらくリナを見ていた。


 そして。


 小さく。


「……工房」


 言う。


「帰る?」


 俺。


 聞く。


「今日」


「親父と話す」


「うん」


「怖いけど」


「うん」


「一緒に来る?」


「え?」


「お前」


 トーマが俺を指す。


「変な説明得意そうだから」


「どこ見てそう思った!?」


「神様七人と無職と性質を昨日一日で説明した」


「説明できてなかったよ!」


「でも俺、まだいる」


 言われて。


 止まる。


 確かに。


 トーマ。


 いる。


「じゃあ」


 俺。


 言う。


「行く」


「いいの?」


「相談所」


「最初の相談」


「最後まで」


「付き合う」


 トーマ。


 少し。


 目。


 逸らした。


「……ありがと」


 小さい。


 声。


 聞こえた。


 俺。


 何も。


 言わない。


 こういう時。


 からかうと。


 たぶん。


 殴られる。


「レン」


 リナ。


 呼ぶ。


「何?」


「顔」


「何?」


「嬉しそう」


「言うな!」


 トーマがこっちを見る。


 危ない。


「何でもない!」


「気持ち悪いな」


「何で!?」


          ◇ ◇ ◇


 その頃。


 倉庫では。


 剣が抜かれた。


 レグルではない。


 後方。


 若い査定官。


 シオンが一歩前へ出た瞬間、反射的に刃を抜いた。


「動くな!」


 シオン。


 止まる。


「レグル」


「何だ」


「教育した方がいいぞ」


 若い査定官の顔が赤くなる。


「貴様!」


「剣を抜く相手くらい選べって」


「性質保有者が何を――」


「やめろ、ディン」


 レグルの声。


 若い男――ディンは歯を食いしばりながらも、剣を下げた。


 ただ。


 鞘には戻さない。


 シオンはそれを見てから。


「性質保有者」


 呟く。


「便利だな」


「何がだ」


「名前」


 レグル。


 見る。


「人間って言わなくて済む」


 ディンが再び剣を上げかける。


 今度は。


 レグルが手で止めた。


「挑発に乗るな」


「ですが」


「命令だ」


「……はい」


 シオン。


 少し。


 意外そう。


「本当にまともだな」


「褒め言葉として受け取っておこう」


「でも」


 シオンの視線が。


 レグルの胸。


 銀色。


 徽章。


 向く。


「そのまともな奴が」


「何で特別査定部なんかにいる」


 レグルの表情。


 初めて。


 はっきり。


 変わった。


「……知っているのか」


「何を?」


「特別査定部を」


「名前くらいは」


「嘘だな」


 今度。


 シオン。


 黙る。


 レグルが一歩。


 倉庫。


 入る。


「特別査定部は、一般には存在を公表されていない」


 ミアの目が動く。


 シオン。


 笑う。


「へえ」


「どこで知った」


「さて」


「答えろ」


「本人の意思確認は?」


「何?」


「俺」


 シオン。


 自分。


 指す。


「喋りたくない」


「…………」


「尊重してくれる?」


 ディンが。


 また。


 動く。


 レグル。


 止める。


 でも。


 今度。


 目。


 冷たい。


「お前は保護対象ではない」


「差別?」


「未登録性質保有者の誘拐、秘匿、移送に関与している疑いがある」


 シオンの笑み。


 止まる。


「誘拐?」


「三日前」


 レグルが言う。


「ミア・セレスが診療所から姿を消した」


 ミア。


 見る。


「その夜」


「お前と似た特徴の男が」


「彼女と共に町を出る姿を確認されている」


 シオン。


 ミア。


 見る。


「誘拐された?」


 ミア。


 首。


 横。


 振る。


「だそうだ」


「彼女の証言は後ほど正式に取る」


「今取れよ」


「今は安全確保が先だ」


「またそれか」


「では」


 レグル。


 初めて。


 声。


 少し。


 強くなる。


「ここで聞こう」


 ミア。


 見る。


「ミア・セレス」


 彼女の肩。


 僅か。


 動く。


「三日前」


「自らの意思で」


「この男と町を出たのか?」


 ミア。


 頷く。


「脅迫は?」


 首。


 振る。


「金銭の授受は?」


 振る。


「性質を利用すると言われたか?」


 振る。


「では」


「なぜ」


 ミアの指。


 机。


 動く。


 埃。


 文字。


 残る。


 ――怖かったから。


 レグル。


 読む。


 ――音が消えた。


 ――人に迷惑をかけた。


 ――神殿へ行った。


 ――分からないと言われた。


 ――家へ帰った。


 そこで。


 指。


 止まる。


 少し。


 震える。


 ――母が。


 文字。


 途中。


 消す。


 もう一度。


 ――母が、私を怖がった。


 倉庫。


 誰も。


 動かない。


 ミア。


 書く。


 ――だから逃げた。


 ――この人は。


 シオン。


 見る。


 ――何も聞かなかった。


 シオン。


 眉。


 上げる。


 ――一緒に来るか。


 ――それだけ。


 最後。


 大きく。


 ――私は自分で来た。


 レグルは。


 長い。


 時間。


 文字。


 見ていた。


「……分かった」


 言う。


 ディンが驚く。


「主任?」


「誘拐の疑いについては保留する」


「しかし!」


「本人が否定した」


「性質による精神干渉の可能性があります!」


 空気。


 変わる。


 シオン。


 ディン。


 見る。


 笑ってない。


「今」


「何て言った?」


「可能性を述べたまでだ」


「こいつが」


 シオン。


 ミア。


 示す。


「自分で選んだって言った」


「それ自体が操作された可能性を――」


「ディン」


 レグル。


 止める。


 でも。


 遅かった。


 ミアの顔。


 変わってる。


 悲しい。


 でも。


 それ以上。


 怒ってる。


 彼女の周囲。


 空気。


 歪む。


 いや。


 音。


 消えていく。


 まず。


 外。


 虫。


 次。


 風。


 木。


 軋む。


 音。


 消える。


 ディンの呼吸。


 消える。


 レグルが何か叫ぶ。


 聞こえない。


 完全な。


 無音。


 ミア自身。


 驚く。


 止めようと。


 両手。


 耳。


 押さえる。


 意味。


 ない。


 範囲。


 広がる。


 倉庫。


 全部。


 包む。


 外。


 査定官。


 口。


 動く。


 声。


 ない。


 異常。


 恐怖。


 広がる。


 ディン。


 剣。


 構える。


 ミア。


 怯える。


 さらに。


 音。


 消える。


 悪循環。


 シオン。


 動く。


 ミアの前。


 立つ。


 口。


 動かす。


 聞こえない。


 だから。


 手。


 出す。


 掌。


 上。


 何も。


 持ってない。


 ミア。


 見る。


 シオン。


 自分の胸。


 指す。


 次。


 ミア。


 指す。


 最後。


 扉。


 指す。


 選べ。


 そう。


 言ってる。


 ミアの目。


 揺れる。


 逃げる?


 残る?


 戦う?


 降伏?


 誰も。


 答え。


 くれない。


 ミア。


 息。


 吸う。


 そして。


 自分。


 指す。


 扉。


 指す。


 外。


 シオン。


 頷く。


 走る。


 ディン。


 止めようと。


 剣。


 横。


 出す。


 その瞬間。


 シオンが。


 右手。


 上げる。


 何か。


 した。


 剣。


 止まる。


 違う。


 ディン。


 止まった。


 身体。


 動く。


 でも。


 一歩。


 前へ。


 出ない。


 まるで。


 そこに。


 見えない。


 壁。


 ある。


 ディン。


 目。


 見開く。


 シオン。


 その横。


 通る。


 ミア。


 続く。


 レグル。


 追わない。


 ただ。


 シオン。


 右手。


 見てる。


 シオンも。


 性質。


 持ってる。


 でも。


 何。


 した。


 誰も。


 分からない。


 倉庫。


 出る。


 直前。


 シオン。


 振り返る。


 レグル。


 見る。


 口。


 動く。


 音。


 ない。


 でも。


 レグルには。


 読めた。


 ――次は本人に聞け。


 そして。


 二人。


 夜。


 消える。


          ◇ ◇ ◇


 朝食を終え。


 俺たちは。


 トーマの工房へ。


 向かう。


 町の南。


 職人。


 多い。


 区画。


 朝。


 早い。


 もう。


 音。


 する。


 金属。


 叩く。


 音。


 木。


 削る。


 音。


 人。


 呼ぶ。


 声。


 パン。


 焼く。


 匂い。


 なんか。


 好き。


 こういう。


 場所。


「トーマ」


「何」


「緊張してる?」


「してない」


「歩くの遅い」


「してない」


「さっきから右手と左手一緒に――」


「うるさい!」


 してる。


 リナ。


 後ろ。


 笑ってる。


 俺。


 少し。


 安心。


 トーマ。


 昨日。


 会った。


 だけ。


 なのに。


 なんか。


 ずっと。


 いる。


 感じ。


 する。


 工房。


 見える。


 看板。


【トーマ木工房】


「お前の名前じゃん」


「親父もトーマ」


「ややこし!」


「俺は二代目」


「職業は?」


「親父も木工師」


「さらにややこしい!」


 トーマ。


 足。


 止まる。


 笑い。


 消える。


 扉。


 開いてる。


 中。


 暗い。


 仕事。


 時間。


 なのに。


 音。


 しない。


「親父?」


 トーマ。


 入る。


 俺。


 リナ。


 続く。


 木。


 匂い。


 濃い。


 壁。


 道具。


 綺麗。


 並んでる。


 椅子。


 机。


 棚。


 途中。


 作品。


 いくつ。


 も。


 そして。


 奥。


 一人。


 男。


 座ってる。


 五十。


 くらい。


 大きい。


 手。


 太い。


 指。


 木屑。


 ついてる。


「……帰ったか」


 低い。


 声。


 トーマ。


 止まる。


「親父」


「昨日」


「どこ行ってた」


「…………」


「探した」


 トーマ。


 顔。


 上げる。


 父。


 怒ってる。


 でも。


 目。


 赤い。


 寝てない。


 たぶん。


「ごめん」


 トーマ。


 言う。


 父。


 立つ。


 近づく。


 俺。


 少し。


 構える。


 殴る?


 でも。


 トーマ。


 動かない。


 父。


 手。


 上げる。


 そのまま。


 トーマの頭。


 掴む。


「馬鹿野郎」


 声。


 震える。


「……ごめん」


「馬鹿」


「うん」


「何が」


 父。


 言う。


「全部外れればいいだ」


 トーマ。


 固まる。


「聞いてた?」


「工房中」


 父。


 見る。


 壊れた。


 棚。


 外れた。


 椅子。


 散らばった。


 工具。


 床。


「全部」


「外れたわ」


「……ごめん」


「直せ」


「え?」


「お前が」


「直せ」


 トーマ。


 父。


 見る。


「でも」


「俺」


「また」


「外すかも」


「なら」


 父。


 言う。


「また直せ」


「…………」


「木工師だろ」


 トーマ。


 顔。


 歪む。


 それ。


 昨日。


 喧嘩。


 原因。


 同じ。


 言葉。


 俺。


 口。


 開こう。


 でも。


 止める。


 トーマ。


 自分で。


 来た。


 自分で。


 話す。


 俺。


 代わり。


 言う。


 違う。


「親父」


 トーマ。


 言う。


「俺」


「木工師だから」


「木工」


「やるんじゃない」


 父。


 黙る。


「俺が」


「木工」


「好きだから」


「やる」


 声。


 震える。


 でも。


 言う。


「それじゃ」


「駄目?」


 長い。


 沈黙。


 父。


 トーマ。


 見る。


 そして。


「……何が違う」


 トーマ。


 笑う。


 泣きそう。


 笑い。


「俺も」


「昨日まで」


「分からんかった」


 父。


 ため息。


 大きい。


「面倒くせえ」


「ごめん」


「謝るな」


「どっちだよ」


「知らん」


 親子。


 似てる。


 めちゃくちゃ。


 似てる。


 俺。


 笑う。


 父。


 俺。


 見る。


「誰だ」


「レンです」


「職業は」


「なしです」


「帰れ」


「早い!」


 リナ。


 吹く。


 トーマ。


 笑う。


 父。


 眉。


 寄せる。


 でも。


 少し。


 口元。


 動いた。


 その時。


 外。


 足音。


 複数。


 止まる。


 工房。


 前。


 俺。


 振り返る。


 濃紺。


 外套。


 三人。


 胸。


 銀色。


 徽章。


 知らない。


 でも。


 嫌な。


 感じ。


 先頭。


 女。


 三十代。


 髪。


 後ろ。


 束ねる。


 紙。


 持ってる。


「トーマ・ベルク」


 トーマ。


 父。


 見る。


「俺です」


「職業管理院です」


 女。


 徽章。


 見せる。


「昨日」


「あなたの周辺で」


「職業技能では説明できない」


「異常現象が」


「複数」


「確認されました」


 空気。


 変わる。


 トーマの父。


 前。


 出る。


「何だ」


「息子が」


「何した」


「現在」


 女。


 言う。


「未登録性質の発現が」


「疑われています」


 俺。


 目。


 見開く。


 早い。


 何で。


 もう。


 知ってる。


「安全確認のため」


 女。


 トーマ。


 見る。


「同行してください」


 トーマ。


 後ろ。


 一歩。


 父。


 前。


 一歩。


「どこへ」


「職業管理院」


「何する」


「検査です」


「何日」


「未定です」


「帰れるのか」


 女。


 少し。


 止まる。


「安全が」


「確認されれば」


 トーマの顔。


 青くなる。


 俺。


 昨日。


 聞いた。


 言葉。


 シオン。


 言ってた。


 神に。


 見つかる。


 前。


 そして。


 今。


 職業管理院。


 来た。


「本人」


 俺。


 口。


 出る。


 女。


 俺。


 見る。


「何ですか」


「本人」


「行きたいって」


「言ってないです」


「あなたは?」


「レン」


「職業」


「なし」


 女。


 止まる。


 俺。


 思う。


 最近。


 これ。


 強い。


「関係者ですか」


 俺。


 トーマ。


 見る。


 昨日。


 会った。


 だけ。


 友達?


 仲間?


 相談。


 受けた。


 何。


 なんだろ。


 俺。


 決める。


「相談相手」


「です」


 女。


 俺。


 見る。


「では」


「部外者です」


 その言葉。


 胸。


 少し。


 刺さる。


 でも。


 正しい。


 法的。


 たぶん。


 何も。


 ない。


 俺。


 神官。


 じゃない。


 管理者。


 拒否。


 検査官。


 臨時。


 終わった。


 職業。


 なし。


 本当に。


 何も。


 ない。


 だから。


 俺。


 トーマ。


 見る。


「どうする?」


 女。


 眉。


 寄せる。


「同行は必要です」


「あなたに聞いてません」


 俺。


 言う。


 女。


 黙る。


「トーマ」


 もう一度。


 聞く。


「どうしたい?」


 トーマ。


 職業管理院。


 見る。


 父。


 見る。


 俺。


 見る。


 右手。


 見る。


 怖い。


 当たり前。


 自分でも。


 制御。


 できてない。


 昨日。


 荷車。


 壊しかけた。


 俺の。


 木剣。


 外した。


「……検査は」


 トーマ。


 言う。


「受けたい」


 俺。


 少し。


 驚く。


「うん」


「俺の力」


「危ない」


「うん」


「何なのか」


「知りたい」


「うん」


「でも」


 職員。


 見る。


「帰れないのは」


「嫌だ」


 女。


 答える。


「検査結果によります」


「じゃあ」


「行かない」


 後ろ。


 職員。


 動く。


「拒否は認められません」


 父。


 前。


 出る。


 リナ。


 剣。


 触る。


 俺。


 手。


 上げる。


「待って」


 全員。


 止めたい。


 戦う。


 まだ。


 早い。


「理由」


 俺。


 女。


 見る。


「拒否できない理由」


「未登録性質が」


「公共の安全を」


「脅かす可能性が」


「あるためです」


「可能性?」


「はい」


「実際に」


「怪我人」


「出ました?」


「確認されていません」


「物は?」


「荷車一台」


「壊れてません」


 トーマ。


 言う。


「留め具」


「外れただけ」


 女。


 トーマ。


 見る。


「だから」


 俺。


 続ける。


「検査」


「必要なのは」


「分かる」


 自分。


 言って。


 少し。


 驚く。


 でも。


 そう。


 必要。


 トーマ。


 力。


 危ない。


 何でも。


 本人。


 選べば。


 いい。


 だけ。


 じゃない。


 他人。


 巻き込む。


 なら。


 社会。


 止める。


 必要。


 ある。


「でも」


「検査することと」


「いつ帰れるか分からない場所に」


「連れてくこと」


「同じですか?」


 女。


 初めて。


 すぐ。


 答えない。


 俺。


 続ける。


「ここで」


「できない?」


「設備がありません」


「じゃあ」


「俺たちも」


「一緒に行く」


「認められません」


「何で?」


「規定です」


 来た。


 規定。


 嫌い。


 だから。


 壊す?


 違う。


 落ち着け。


 規定。


 ある。


 理由。


 ある。


 知らない。


 まだ。


「その規定」


「誰を守るため?」


 女。


 俺。


 見る。


「全市民です」


「トーマも?」


「当然です」


「じゃあ」


 俺。


 言う。


「トーマが怖いって」


「言ってることも」


「守ってください」


 沈黙。


 工房。


 木。


 匂い。


 外。


 人。


 通る。


 朝。


 普通。


 生活。


 続いてる。


 その中。


 俺たち。


 立ってる。


 正しい。


 何。


 分からない。


 でも。


 分からないから。


 聞く。


 女。


 長く。


 俺。


 見る。


 そして。


「……上官へ」


「確認します」


 後ろ。


 職員。


 驚く。


「査定官」


「五分」


 女。


 外。


 出る。


 俺。


 息。


 吐く。


 トーマ。


 俺。


 見る。


「お前」


「すげえな」


「何が?」


「神様にも」


「職業管理院にも」


「同じことするんだな」


「何?」


「めんどくさい質問」


「褒めてる?」


「半分」


「残り半分は?」


「めんどくさい」


「やっぱり!」


 父。


 俺。


 見る。


「無職」


「はい」


「飯」


「食ってくか」


「急に好感度上がった!」


          ◇ ◇ ◇


 五分。


 より。


 少し。


 長かった。


 女。


 戻る。


 顔。


 さっき。


 より。


 硬い。


「条件付きで」


 言う。


「トーマ・ベルク本人の」


「任意同行として」


「検査を行います」


 トーマ。


 顔。


 上げる。


「任意?」


「はい」


「途中で」


「帰れる?」


「検査により」


「緊急隔離が必要と」


「判断されない限り」


「本人の意思で」


「退去できます」


 完全。


 じゃない。


 でも。


 さっき。


 より。


 いい。


「同行者」


「一名まで」


 リナ。


 俺。


 見る。


「行って」


「いいの?」


「うん」


 俺。


 トーマ。


 見る。


「俺でいい?」


「他に誰がいるんだよ」


「親父」


「店壊す」


「おい!」


 父。


 怒鳴る。


 トーマ。


 笑う。


 少し。


 緊張。


 解ける。


「じゃあ」


 俺。


 言う。


「行こう」


 職業管理院。


 初めて。


 行く。


 今まで。


 職業院。


 見た。


 神殿。


 見た。


 古い。


 管理機構。


 見た。


 でも。


 今度。


 人間が。


 今。


 職業。


 管理。


 してる。


 場所。


 その中で。


 性質。


 どう。


 扱われてる。


 知らない。


 知りたい。


 怖い。


 でも。


 行く。


          ◇ ◇ ◇


 同じ頃。


 町の北。


 古い倉庫。


 レグル。


 床。


 しゃがむ。


 シオン。


 ミア。


 逃げた。


 追跡班。


 外。


 探してる。


 ディン。


 苛立つ。


「なぜ」


「追わなかったんです」


「追っている」


「我々が!」


「それでいい」


「主任なら」


「止められたはずです」


 レグル。


 床。


 見る。


 足跡。


 二人。


 そして。


 途中。


 不自然。


 消える。


「ディン」


「はい」


「昨夜」


「南部で」


「新しい反応が」


「あったな」


「はい」


「名前は」


「トーマ・ベルク」


「職業は?」


「木工師」


「同行命令は」


「すでに」


「出しています」


 レグル。


 立つ。


「取り消せ」


「……は?」


「強制同行を」


「取り消せ」


「なぜです!」


「昨夜」


 レグル。


 ミア。


 書いた。


 文字。


 残る。


 床。


 見る。


【私は自分で来た】


「一つ」


「間違えた」


 ディン。


 理解。


 できない。


 顔。


「何を」


「保護対象を」


 レグル。


 言う。


「対象として」


「見すぎた」


 ディン。


 眉。


 寄せる。


「彼らは危険です」


「可能性はある」


「なら!」


「危険な可能性がある人間は」


 レグル。


 振り返る。


「人間ではなくなるのか?」


 ディン。


 黙る。


「……いいえ」


「なら」


 レグル。


 外套。


 整える。


「次は」


「最初に」


「本人へ聞く」


 歩く。


 出口。


 向かう。


「どちらへ?」


「南」


「トーマ・ベルクのところですか?」


「ああ」


「なぜ主任が」


 レグル。


 止まる。


 少し。


 考える。


「報告が」


「一つ」


「上がっている」


「何の?」


「トーマ・ベルクの」


「性質発現時」


「現場に」


「いた男」


 書類。


 出す。


 ディン。


 読む。


【名称:レン】


【職業:なし】


 その下。


【旧管理機構との接触歴あり】


【臨時検査官記録あり】


【第109代育成対象】


 そして。


 最後。


【性質:ブレイカー】


 ディンの顔。


 変わる。


「ブレイカー……?」


「昨日」


 レグル。


 言う。


「シオンが」


「妙なことを言った」


『神様より早く見つけて』


 あの言葉。


「神が」


「性質保有者を」


「探していると」


「思っていた」


「違うんですか?」


「分からない」


「だが」


 レグル。


 書類。


 閉じる。


「神々が育てている人間が」


「性質保有者の側に」


「現れた」


 偶然。


 かもしれない。


 違う。


 かもしれない。


「確認する」


「何を?」


 レグル。


 扉。


 出る。


「神が」


「性質を」


「集め始めたのか」


 朝日。


 眩しい。


 目。


 細める。


「それとも」


 一歩。


 外。


 出る。


「レンという人間が」


「勝手に」


「集まり始めているのか」


          ◇ ◇ ◇


 職業管理院。


 到着。


 俺。


 建物。


 見上げる。


「……でか」


 職業院。


 より。


 でかい。


 神殿。


 ほど。


 派手。


 じゃない。


 灰色。


 石。


 四階。


 窓。


 少ない。


 入口。


 広い。


 人。


 多い。


 職業変更。


 相談。


 技能補助。


 異常。


 登録。


 書類。


 いろいろ。


 掲示。


 ある。


 ここ。


 この世界。


 生きる人。


 職業。


 支える。


 場所。


 たぶん。


 悪い。


 場所。


 じゃない。


 むしろ。


 必要。


 なんだと思う。


 だから。


 余計。


 ちゃんと。


 見たい。


「レン」


 トーマ。


 呼ぶ。


「何?」


「帰りたくなってきた」


 顔。


 青い。


「俺も」


「お前も!?」


「役所っぽい場所苦手」


「そこ!?」


 入口。


 入る。


 受付。


 女。


 書類。


 渡す。


「トーマ・ベルク」


「未登録性質」


 その言葉。


 周り。


 何人か。


 見る。


 トーマ。


 肩。


 縮む。


 俺。


 少し。


 前。


 出る。


 隠す。


 つもり。


 ない。


 でも。


 視線。


 多い。


「こちらへ」


 案内。


 奥。


 廊下。


 一般。


 窓口。


 違う。


 階段。


 下。


「地下?」


「検査区画です」


 トーマ。


 俺。


 見る。


「聞いてない」


「俺も」


 階段。


 降りる。


 一段。


 二段。


 空気。


 冷たい。


 音。


 減る。


 壁。


 厚い。


 扉。


 鉄。


 嫌。


 感じ。


 する。


「レン」


「うん」


「俺」


「やっぱ」


 その時。


 奥。


 何か。


 音。


 した。


 ドン。


 重い。


 音。


 次。


 声。


「離せ!」


 男。


 叫び。


 トーマ。


 止まる。


 俺も。


 止まる。


「今の」


 案内。


 職員。


 顔。


 強張る。


「進んでください」


「誰?」


「関係ありません」


「性質持ち?」


「進んでください」


 また。


 ドン。


「俺は!」


 声。


 聞こえる。


「何もしてない!」


 トーマの顔。


 完全。


 変わる。


「レン」


「うん」


「帰る」


 俺。


 頷く。


「分かった」


 職員。


 前。


 立つ。


「検査前です」


「任意」


「ですよね?」


「…………」


「本人」


「帰るって」


「言いました」


 職員。


 黙る。


 その時。


 後ろ。


 階段。


 足音。


 一人。


 ゆっくり。


 降りてくる。


 濃紺。


 外套。


 銀。


 徽章。


 四十代。


 男。


 俺。


 知らない。


 男。


 俺。


 知ってる。


 みたい。


 真っ直ぐ。


 見る。


「レン」


 名前。


 呼ばれる。


「……誰?」


「レグル・ハイゼン」


 男。


 止まる。


「職業管理院」


「特別査定部」


「主任査定官だ」


 特別。


 査定部。


 嫌な。


 響き。


「君に」


 レグル。


 言う。


「聞きたいことがある」


「何?」


「神々は」


 俺の後ろ。


 何も。


 いない。


 場所。


 見る。


 まるで。


 そこに。


 七柱。


 いる。


 知ってる。


 みたいに。


「性質保有者を」


「集めて」


「何をするつもりだ?」


 俺。


 しばらく。


 意味。


 分からない。


「…………」


 そして。


 思う。


 あ。


 これ。


 めちゃくちゃ。


 誤解。


 されてる。


「俺」


 息。


 吐く。


「昨日」


「初めて」


「性質持ちに」


「会ったんですけど」


 レグルの目。


 細くなる。


「証明できるか?」


 できない。


 たぶん。


 ここ。


 俺が。


 何を言っても。


 相手。


 すぐ。


 信じない。


 逆。


 同じ。


 俺も。


 こいつ。


 信じられない。


 だったら。


「その前に」


 俺。


 言う。


「俺も」


「聞いていい?」


「何だ」


 地下。


 奥。


 また。


 音。


 する。


 ドン。


 さっき。


 男。


 声。


 今度。


 聞こえない。


 俺。


 そっち。


 指す。


「誰を」


「保護してるんですか?」


 レグルの表情が。


 止まった。

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