↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第二章 神なき力の目覚め
PR
51/71

神託ログ03『神様より先に』

「一人」


男が言った。


「神より先に」


トーマは椅子に座ったまま、男を睨んでいた。


手足は縛られていない。


扉にも鍵はない。


窓もある。


外へ出ようと思えば、たぶん出られる。


だからこそ。


気味が悪かった。


「何が一人だ」


「お前だよ」


「意味分かんねえ」


「そうだろうな」


男は壁に背を預けた。


年齢は三十前後。


黒髪。


細身。


武器らしいものは持っていない。


そして。


影がある。


月明かりを受けて、床に長く伸びている。


トーマは知らない。


レンが昨日会った男には、影がなかったことを。


だから。


目の前の男が何者なのか。


判断する材料は、ほとんどなかった。


「名前は?」


トーマが聞く。


男が少し笑った。


「聞くのか」


「普通聞くだろ」


「そうか」


妙な返事。


「シオン」


「職業は?」


「ない」


トーマの眉が動く。


「……お前も?」


「も?」


「今日、会った奴が」


言いかけて。


止まる。


男――シオンの口元が、わずかに上がった。


「レンか」


トーマが立った。


「何で知ってる」


「座れ」


「何で知ってる!」


「座らなくてもいい。ただ、大声を出しても誰も来ない」


「……ここどこだ」


「町の外れだ」


「何で俺を連れてきた」


「確認するため」


「だから何を!」


シオンは答えなかった。


代わりに。


机の上へ、小さな木箱を置いた。


「開けてみろ」


「……は?」


「開けろ」


「鍵は?」


「ない」


箱には蓋がある。


金具もある。


だが。


確かに鍵穴はない。


トーマは近づかない。


「嫌だ」


「なぜ?」


「怪しいから」


「正しい」


「…………」


「レンに教わったか?」


トーマの顔が歪む。


「何であいつのこと知ってる」


「今日、お前は何を教わった」


「答えろよ!」


「力を使う前に、何を考えろと言われた?」


トーマ。


黙る。


――何を外すのか。


――細かくしよう。


――怖いから。


昼間。


レンが言った。


シオンは箱を指す。


「開けてみろ」


「……触って?」


「どちらでもいい」


トーマは近づいた。


箱。


見る。


嫌な感じ。


しない。


でも。


レンなら。


たぶん。


すぐ使わない。


トーマは箱を手に取った。


普通に。


蓋。


引く。


開かない。


金具。


動かす。


開かない。


「壊れてんのか?」


「違う」


「じゃあ何だ」


「開かない箱だ」


「説明になってねえ」


「なら」


シオンが言う。


「外せ」


トーマの右手。


わずかに震えた。


◇ ◇ ◇


「追う」


そう言った。


でも。


走り出さなかった。


走りたい。


今すぐ。


町中。


探したい。


西へ。


向かいたい。


黒い紙を置いた奴を。


捕まえたい。


でも。


俺。


知ってる。


焦って。


選ぶと。


見えなくなる。


「アリア」


「はい」


「まず確認したい」


大神殿。


トーマが使っていた客室。


アリア。


リナ。


俺。


そして。


七柱。


「トーマが」


「自分で出ていった可能性」


リナが俺を見る。


「あると思う?」


「分からない」


「窓から?」


「それも分からない」


連れていかれた。


そう。


思った。


でも。


拘束された跡。


ない。


争った跡。


ない。


窓。


壊れてない。


血。


ない。


「だから」


俺。


言う。


「決めつけない」


アリア。


頷く。


「正しいと思います」


床。


黒い文字。


【神より先に】


そして。


俺の部屋。


置かれた紙。


【一〇七】


【二人目】


【次は、外す者】


気持ち悪い。


でも。


一番。


気になる。


「ノア」


『はい』


「一〇九から一〇八」


「一〇八から一〇七」


「減ってる」


『はい』


「同じ数字だと思う?」


ノアはすぐに答えなかった。


『現時点では』


『断定できません』


「うん」


『しかし』


声。


少し。


硬い。


『無関係と判断することも危険です』


俺。


頷く。


一〇九。


性質保有個体。


その後。


一〇八。


そして。


黒い紙。


一〇八。


今日。


一〇七。


偶然。


かもしれない。


偶然じゃない。


かもしれない。


「アリア」


「観測数」


「確認できる?」


「……確認します」


アリアが古い観測端末へ向かう。


俺。


待つ。


数秒。


長い。


表示。


浮かぶ。


【性質保有個体】


【観測数:109】


一瞬。


安心。


する。


でも。


次。


【現在応答数:107】


「…………」


一致。


した。


リナが息を呑む。


「減ってる」


「うん」


昨日。


一〇八。


今。


一〇七。


黒い紙。


同じ。


「トーマが」


リナ。


言う。


「一人?」


「かもしれない」


「じゃあ」


「もう一人は?」


分からない。


俺たちが。


トーマ。


見つける前。


一〇八。


だった。


つまり。


すでに。


一人。


応答。


消えていた。


そして。


今日。


トーマが。


消えた。


直後。


一〇七。


もし。


同じなら。


「誰かが」


俺。


言う。


「性質持ちを」


「観測できない状態にしてる」


【創世神エリオス】


『……可能性はある』


「どうやって?」


『分からない』


「神様でも?」


『分からない』


エリオス。


隠さない。


それ。


少し。


嬉しい。


でも。


今は。


嬉しがってる場合。


じゃない。


「トーマ」


「生きてる?」


フィリア。


聞く。


長い。


沈黙。


『分かりません』


胸。


締まる。


フィリアが続ける。


『私は』


『トーマさんと生命接続を結んでいません』


「だから?」


『離れた場所から生命状態を確認することはできません』


そうか。


神様。


何でも。


分かる。


わけじゃない。


知ってた。


でも。


こういう時。


それが。


怖い。


「レン」


リナ。


俺の腕。


軽く。


叩く。


「まだ死んだって決まってない」


「うん」


危ない。


また。


先。


行った。


悪い方。


勝手に。


決めた。


「ごめん」


「誰に?」


「自分」


「変なの」


リナ。


言う。


でも。


少し。


笑った。


◇ ◇ ◇


「外せ」


シオンが言う。


トーマは箱を見る。


「何を」


「自分で考えろ」


「知らねえよ」


「なら使うな」


トーマ。


顔。


上げる。


「は?」


「分からないものに力を使うな」


「お前が使えって言ったんだろ!」


「言われたから使うのか?」


「…………」


シオンは笑わない。


「神に言われたら?」


トーマの顔から。


少し。


怒りが消える。


「レンに言われたら?」


「……あいつは」


「何だ」


「無理に使えって言わなかった」


「そうか」


シオン。


箱。


取る。


「なら」


「一つ目は合格だ」


「何の試験だよ」


「人間でいられるか」


トーマ。


眉。


寄る。


「さっきから」


「それ何なんだ」


「性質」


シオン。


初めて。


その言葉。


口にした。


「職業ではない」


「神から与えられた力でもない」


「だが」


「力を得た人間は」


「すぐに間違える」


「何を」


「自分が」


一歩。


近づく。


「特別な存在になったと」


トーマ。


黙る。


「神も同じだ」


シオン。


言う。


「力がある」


「知識がある」


「長く生きる」


「だから」


「選んでいいと思う」


トーマの頭。


レン。


浮かぶ。


変な奴。


神様七人。


連れてる。


なのに。


ずっと。


分からない。


言ってた。


「……レンは」


「違った」


シオン。


止まる。


「何が」


「あいつ」


「全然」


「分かってなかった」


「…………」


「神様も」


「全然」


「分かってなかった」


「…………」


「役に立たねえなって言ったら」


「七人キレた」


シオンの眉が。


ほんの少し。


動く。


「……七人?」


「らしい」


「お前には聞こえないのか」


「聞こえねえよ」


「そうか」


シオン。


考える。


何か。


予定と。


違ったような。


顔。


「レンは」


「神を信じているか?」


「知らん」


「見ていてどう思った」


トーマ。


考える。


今日。


一日。


だけ。


それでも。


「……聞いてた」


「神の言うことを?」


「違う」


トーマ。


首。


振る。


「神様にも聞いて」


「女にも聞いて」


「俺にも聞いて」


「最後」


「自分で決めてた」


シオン。


黙った。


「そうか」


「何だよ」


「いや」


「面倒な奴だと思っただけだ」


「それは俺も思う」


初めて。


意見。


合った。


◇ ◇ ◇


捜索。


始める。


まず。


トーマの部屋。


ヴォルグ。


床。


窓。


確認。


『破壊痕はない』


「窓から出た?」


『可能性はある』


ノア。


『窓枠に微量の土』


「外?」


『この神殿周辺の土とは成分が異なる可能性があります』


「場所まで分かる?」


『試料が不足しています』


アリア。


地図。


持ってくる。


町。


周辺。


土。


違い。


西。


乾いてる。


北。


石。


多い。


南。


畑。


東。


川。


「セレナ」


「魔法の跡は?」


『ない』


「ガルド」


「人が運ばれた跡」


『見えん』


「メルク」


『市場で聞き込みます』


俺。


止まる。


「え?」


『人が動けば、お金も物も動きます』


声。


落ち着いてる。


『宿』


『馬車』


『食料』


『外套』


『部屋』


『何かを準備すれば』


『誰かに金が渡る』


なるほど。


「メルク」


『はい』


「めちゃくちゃ神様っぽい」


『商神です』


ちょっと。


かっこいい。


「フィリア」


『私は診療所へ』


「何で?」


『もし性質が突然発現している方が他にもいるなら』


フィリア。


言う。


『体調不良だと思って』


『診療所へ来ている可能性があります』


なるほど。


俺。


七柱。


見る。


声。


しか。


聞こえないけど。


一人。


一人。


違う。


昔。


俺。


神様。


聞けば。


答え。


出る。


思ってた。


違う。


七柱。


いるから。


七つ。


見方。


ある。


答え。


七個。


あるんじゃない。


見えるもの。


増える。


「俺たちは?」


リナ。


聞く。


「人」


「人?」


「聞く」


「誰に?」


俺。


床。


見る。


黒い。


文字。


【神より先に】


神様。


見えないもの。


人間なら。


見てる。


かもしれない。


◇ ◇ ◇


聞き込み。


最初。


成果。


なし。


二人目。


なし。


三人目。


「知らないねえ」


四人目。


「夜は寝てた」


五人目。


「若い男?」


六人目。


「見てない」


七人目。


「パン買う?」


「買います」


「レン」


「腹減った」


「捜索中」


「食べながら探せる」


買った。


うまい。


八人目。


なし。


九人目。


「ああ」


止まる。


老人。


西門。


近く。


露店。


「見たよ」


「誰を?」


「若い兄ちゃん」


「どんな?」


「茶色い髪」


トーマ。


「一人?」


「いや」


俺とリナ。


顔。


見る。


「誰と?」


「黒髪の男」


「どっちが」


「無理やり?」


「いや」


老人。


首。


傾げる。


「普通に」


「歩いてたがね」


「…………」


連れ去り。


じゃない?


「トーマ」


「嫌がってました?」


「さあ」


「でも」


老人。


言う。


「途中で」


「何度か」


「後ろ」


「振り返ってたな」


「何時?」


「鐘が十回」


夜。


遅い。


「どっちへ?」


老人。


指。


西。


境界。


方向。


心臓。


鳴る。


また。


西。


「行く?」


リナ。


聞く。


「行く」


即答。


でも。


「境界までは」


「うん」


「越えない?」


「今は」


「うん」


昨日。


決めた。


状況。


変わった。


でも。


焦りだけで。


全部。


変える。


それも。


違う。


◇ ◇ ◇


箱。


まだ。


机。


上。


「で」


トーマ。


言う。


「俺」


「いつ帰れる」


「いつでも」


シオン。


答える。


「じゃあ帰る」


立つ。


扉。


向かう。


開ける。


普通に。


開く。


廊下。


誰も。


いない。


出口。


見える。


「…………」


本当に。


帰れる。


「何なんだよ」


振り返る。


シオン。


椅子。


座る。


「何で」


「俺を」


「ここに連れてきた」


「言った」


「確認だ」


「俺の力?」


「それもある」


「他は?」


シオン。


トーマ。


見る。


「レン」


「は?」


「レンが」


「お前をどう扱うか」


トーマ。


顔。


険しくなる。


「俺を」


「餌にした?」


「そうだ」


即答。


トーマ。


拳。


握る。


「ふざけんな」


「怒るか」


「当たり前だろ!」


「なら」


シオン。


静か。


「帰れ」


「…………」


「俺は止めない」


トーマ。


扉。


立つ。


出る。


その前。


止まる。


「お前」


「レンを」


「殺す気か」


「ない」


「じゃあ何だ」


「見る」


「何を」


「どこまで」


シオン。


言う。


「神から離れられるか」


トーマ。


昼。


思い出す。


レン。


神様。


七人。


いる。


でも。


あいつ。


神。


言うこと。


全部。


聞いてない。


「お前」


「勘違いしてねえ?」


シオン。


眉。


上げる。


「何を」


「レン」


「あいつ」


「神様から」


「離れたいんじゃ」


「ないと思うぞ」


初めて。


シオンの顔。


少し。


変わる。


「何?」


「知らんけど」


トーマ。


肩。


すくめる。


「一人で立つ」


「とか」


「そういう顔」


「してなかった」


昨日。


知らない。


境界。


会話。


トーマ。


知らない。


なのに。


同じ。


言葉。


近く。


行く。


「じゃあ」


「何だ」


「知らん」


「知らないのか」


「今日会ったばっかだぞ!」


もっとも。


「でも」


トーマ。


言う。


「あいつ」


「神様」


「いらないって」


「言われたら」


「たぶん」


「怒るぞ」


シオン。


長く。


黙る。


そして。


「面白い」


「気持ち悪いな」


「よく言われる」


トーマ。


扉。


出る。


「トーマ」


呼ばれる。


振り返る。


シオン。


黒い。


小さな札。


投げる。


トーマ。


受け取る。


「何だこれ」


【一〇七】


「お前は」


シオン。


言う。


「百七番目じゃない」


「は?」


「残っている数だ」


トーマ。


目。


見開く。


「何が」


「神に」


シオン。


笑う。


「見つかっている数」


◇ ◇ ◇


西門。


越える。


夜道。


俺。


リナ。


走る。


七柱。


ついてる。


メルク。


情報。


来る。


『レン』


「何?」


『黒髪の男が』


『昨日』


『保存食を購入しています』


「量は?」


『二人分』


「どこで?」


『西門付近です』


一致。


フィリア。


『レン』


「うん」


『診療所で』


声。


いつもより。


硬い。


『奇妙な患者の記録を』


『見つけました』


「どんな?」


『三日前』


『自分の周囲だけ』


『音が消えると』


足。


少し。


遅くなる。


「性質?」


『分かりません』


「名前は?」


フィリア。


答える。


『ミア』


「今は?」


『行方が』


間。


『分かりません』


一人目。


頭。


浮かぶ。


一〇九。


一〇八。


そして。


一〇七。


「アリア!」


声。


飛ばす。


「一〇八になったの」


「いつ!?」


少し。


して。


ノア。


代わり。


答える。


『記録を照合しました』


『三日前です』


「…………」


ミア。


三日前。


行方。


不明。


観測。


一〇八。


今日。


トーマ。


消える。


一〇七。


繋がった。


まだ。


確定。


じゃない。


でも。


偶然。


で。


済ませるには。


重なりすぎる。


「レン」


リナ。


前。


指す。


人影。


一人。


歩いてくる。


茶色い。


髪。


「トーマ!」


走る。


トーマ。


顔。


上げる。


「……レン?」


生きてる。


身体。


傷。


ない。


俺。


止まる。


息。


切れる。


安心。


した。


腹。


立った。


両方。


一緒。


「お前!」


「何だよ」


「勝手にいなくなるな!」


「俺も好きで――」


トーマ。


止まる。


「……いや」


「何?」


「ごめん」


素直。


言われる。


怒り。


行き場。


失う。


「無事?」


リナ。


聞く。


「うん」


「怪我は?」


「ない」


「何された?」


トーマ。


黒い札。


出す。


【一〇七】


俺。


見る。


「同じ」


「お前も?」


「紙」


出す。


一〇七。


二枚。


トーマ。


息。


吐く。


「俺」


「たぶん」


「誘拐されたわけじゃない」


「どういうこと?」


「話す」


「長い?」


「長い」


「じゃあ歩きながら」


「どこへ?」


俺。


西。


見る。


境界。


まだ。


先。


「神殿」


トーマ。


意外そう。


「追わないのか?」


「誰を?」


「シオン」


初めて。


名前。


出る。


「そいつ」


「どこ?」


トーマ。


後ろ。


指す。


「さっきまで」


「いた」


「なら」


「追える」


「うん」


「でも」


俺。


黒い札。


見る。


「先に」


「お前の話」


「聞く」


トーマ。


黙る。


「いいのか?」


「何が?」


「逃げるぞ」


「逃げるかも」


「じゃあ」


「でも」


俺。


言う。


「今」


「知らない奴を追うより」


「知ってる奴の話」


「聞く」


トーマ。


変な顔。


する。


「何?」


「いや」


「シオンが」


「お前のこと」


「面倒な奴って」


「会ってないのに!?」


リナ。


吹く。


「合ってる」


「お前は味方しろ!」


◇ ◇ ◇


帰り道。


全部。


聞く。


シオン。


名前。


職業。


なし。


性質。


知ってる。


トーマ。


試した。


人間。


か。


確認。


した。


そして。


レン。


見てる。


「俺を?」


「うん」


「何で?」


「知らん」


「そこ聞けよ!」


「聞いたわ!」


トーマ。


怒る。


そして。


最後。


札。


意味。


「残っている数」


俺。


言う。


「神に見つかってる」


「らしい」


「……変だな」


「何が?」


俺。


足。


止める。


神に。


見つかっている。


数。


でも。


観測。


してるの。


誰?


古い。


観測機構。


神様。


なのか?


神性。


使ってる?


それとも。


神。


という。


言葉。


別。


意味?


「ノア」


『はい』


「性質持ち一〇九人」


「七柱」


「知ってた?」


『いいえ』


「観測機構」


「見つけるまで?」


『はい』


「じゃあ」


「神に見つかってる数」


「って」


ノア。


黙る。


エリオス。


代わる。


『我々七柱を』


『指していない可能性がある』


また。


知らない。


何か。


増えた。


◇ ◇ ◇


大神殿。


深夜。


会議。


俺。


リナ。


トーマ。


アリア。


七柱。


机。


二枚。


黒い。


一〇七。


そして。


診療記録。


ミア。


二十二歳。


職業。


歌唱師。


症状。


【本人周囲における音響消失】


三日前。


来院。


その後。


所在不明。


「最初の一人」


俺。


言う。


「ミアの可能性」


アリア。


頷く。


「高いと思います」


「でも」


「確定じゃない」


「はい」


トーマ。


腕。


組む。


「シオンは」


「性質持ちを集めてるのか?」


「分からない」


「西の奴ら?」


「分からない」


「昨日の影ない男と仲間?」


「分からない」


トーマ。


俺。


見る。


「お前」


「分からない多くない?」


「俺も困ってる」


リナ。


笑う。


「通常運転」


ひどい。


でも。


一つ。


違う。


今日。


朝。


俺たち。


性質持ち。


百七人。


どこか。


いる。


思ってた。


今。


違う。


誰か。


その人たち。


知ってる。


誰か。


動いてる。


しかも。


少なくとも。


二種類。


いる。


影のない男。


シオン。


そして。


俺に。


戻れ。


来るな。


死ぬぞ。


言った。


知らない声。


同じ。


とは。


限らない。


「一個」


俺。


言う。


「決めたい」


みんな。


見る。


「性質持ちを」


「俺たちから」


「探さない」


トーマ。


驚く。


「何で?」


「探せる方法」


「あるかもしれない」


「でも」


「勝手に」


「見つけるの」


「嫌だから」


ミア。


助け。


必要。


かもしれない。


でも。


だから。


百七人。


全部。


覗く。


違う。


「ただ」


続ける。


「困ってる人が」


「自分から来られる場所」


「作れないかな」


アリア。


目。


少し。


見開く。


「場所?」


「うん」


「力」


「急に」


「出た」


「神様」


「分からない」


「職業院」


「分からない」


「誰に聞けばいいか」


「分からない」


昨日。


トーマ。


そうだった。


俺も。


ずっと。


そうだった。


「だったら」


「ここに来れば」


「少なくとも」


「一緒に」


「分からないって言える」


沈黙。


最初。


笑った。


リナ。


「それ」


「相談所?」


「たぶん」


トーマ。


「無職が?」


「うん」


「神殿で?」


「うん」


「神様七人と?」


「うん」


「怪しすぎるだろ」


「俺も今思った」


メルク。


声。


『名称が必要ですね』


「そこ?」


『重要です』


セレナ。


『変なのはやめてよ』


ガルド。


『性質道場!』


「却下」


フィリア。


笑う。


ヴォルグ。


『工房』


「違う」


ノア。


『未分類性質相談窓口』


「役所!」


リナ。


「無職相談所」


「俺の相談になるだろ!」


トーマ。


初めて。


大きく。


笑う。


アリア。


口元。


押さえる。


そして。


エリオス。


静かに。


言う。


『レン』


「何?」


『それは』


『我々が』


『育てるのか』


少し。


考える。


「違う」


俺。


答える。


「一緒に」


「考える」


「それだけ」


『そうか』


「うん」


『なら』


エリオス。


言う。


『私も』


『そこで』


『学びたい』


少し。


驚く。


創世神。


学ぶ。


言った。


「いいよ」


俺。


笑う。


「育成対象」


「増えたな」


『……私も対象なのか?』


「今さら?」


七柱。


ざわつく。


第二章。


やっぱり。


こういうの。


必要。


◇ ◇ ◇


同じ夜。


町。


離れた。


古い。


倉庫。


シオン。


一人。


戻る。


奥。


女。


座ってる。


若い。


二十代。


口。


動く。


でも。


音。


しない。


シオン。


見る。


「ミア」


女。


顔。


上げる。


指。


動かす。


文字。


机。


なぞる。


――どうだった。


「外す者は」


シオン。


外套。


脱ぐ。


「神殿へ戻した」


ミア。


眉。


寄せる。


――なぜ。


「本人が」


「戻ったからだ」


――止めなかった?


「止める理由がない」


ミア。


指。


止まる。


――レンは。


シオン。


少し。


笑う。


「追ってこなかった」


――怖がった?


「違う」


椅子。


座る。


「トーマを」


「先に選んだ」


ミア。


しばらく。


動かない。


そして。


机。


指。


滑らせる。


――西の人たちは?


シオン。


笑み。


消える。


「まだ知らない」


――伝える?


「いや」


即答。


「俺たちは」


「俺たちで動く」


ミア。


頷く。


シオン。


窓。


見る。


西。


遠い。


境界。


「神を捨てろと言う奴らも」


「神に戻せと言う奴らも」


「同じだ」


ミア。


見る。


「どっちも」


シオン。


言う。


「本人より先に」


「答えを決める」


机。


上。


黒い札。


一枚。


【107】


シオン。


裏返す。


裏。


別の。


数字。


【2】


「二人」


小さく。


言う。


「これで」


「二人」


その時。


倉庫。


外。


足音。


シオン。


振り返る。


一人。


じゃない。


二人。


三人。


もっと。


囲まれてる。


ミア。


立つ。


シオン。


目。


細める。


扉。


向こう。


声。


「開けろ」


静かな。


声。


「未登録性質保有者」


「二名を確認した」


シオンの顔から。


完全に。


笑み。


消える。


「……早いな」


扉。


向こう。


金属。


擦れる。


音。


「職業管理院」


「特別査定部だ」


「神託および職業秩序に基づき」


「両名を」


一拍。


「保護する」


シオン。


その言葉。


聞いて。


小さく。


笑った。


「保護」


ミア。


見る。


そして。


扉。


向こう。


言う。


「本人に」


「聞いたのか?」


返事。


ない。


シオン。


立つ。


「ほらな」


机。


黒い札。


掴む。


「また」


「本人より先に」


扉が。


叩き破られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。