神託ログ44『私の剣』
「カイルが」
「生きてる?」
アリア。
頷く。
「正確には」
「保護対象として」
「現在も存在しています」
「それ」
「生きてるって」
「意味じゃない?」
「断定できません」
やっぱり。
そこ。
大事。
二百年前。
保護対象。
存在。
でも。
人間として。
生きてる。
とは。
限らない。
「先輩に」
「伝えよう」
「起こしますか?」
「二百年寝てたから」
「大丈夫」
リナ。
「その理屈」
「便利すぎない?」
「本人が」
「使ってた」
「じゃあいいか」
よくない。
気も。
する。
◇ ◇ ◇
先輩の。
部屋。
扉。
叩く。
返事。
ない。
もう一回。
「先輩」
返事。
ない。
「入るよ」
開ける。
ベッド。
先輩。
寝てる。
「めっちゃ寝てる」
リナ。
「二百年寝た人」
「まだ寝るんだ」
「人間だからね」
アリア。
「起こします」
容赦。
ない。
「起きてください」
「…………」
「カイルが」
「見つかりました」
先輩。
目。
開く。
早い。
「どこだ」
「母なる根」
身体。
起こす。
「生きてるのか」
アリア。
「不明です」
「記録では」
「保護対象として」
「存在しています」
先輩。
止まる。
「保護対象」
「ああ」
「知ってる?」
「その言葉は」
男。
顔。
曇る。
「昔」
「使ってた」
「誰に?」
「死なせたくない」
「対象に」
「人間?」
「人間も」
「も?」
「動物」
「植物」
「精霊」
「生命を」
「維持する必要がある」
「もの」
「じゃあ」
「生きてる可能性は」
「ある」
「でも」
先輩。
ベッド。
降りる。
「人間のままとは」
「限らない」
◇ ◇ ◇
出発。
七時間後。
アリア。
きっちり。
六時間。
休んだ。
「本当に」
「六時間だった」
「約束しましたので」
「寝れた?」
「四時間二十七分」
「細かい」
大神官。
準備。
早い。
禁足地。
母なる根。
調査。
名目。
同行。
神官。
三名。
護衛。
二名。
俺。
リナ。
アリア。
先輩。
「人数」
「多くない?」
リナ。
「禁足地だからな」
大神官。
「むしろ少ない」
「神様は?」
「まだ切ってる」
「大丈夫?」
「不安」
正直。
言う。
「でも」
「今は」
「繋がない」
「うん」
七柱。
頼れる。
何度も。
助けられた。
でも。
いないと。
何も。
できない。
それも。
違う。
◇ ◇ ◇
神殿。
北東。
道。
進む。
最初。
普通。
森。
鳥。
いる。
虫。
鳴く。
風。
ある。
半日。
過ぎる。
植物。
変わる。
紫。
「ムラサキネムリ」
道。
脇。
一輪。
二輪。
さらに。
進む。
増える。
「やっぱり」
「繋がってる?」
アリア。
しゃがむ。
葉。
裏。
見る。
「三本の」
「白い葉脈」
同じ。
村。
見た。
もの。
「持っていく?」
「採取します」
袋。
入れる。
先輩。
紫の。
花。
見る。
「これ」
「昔もあった」
「母なる根の周り?」
「ああ」
「毒あるの」
「知ってた?」
「毒?」
「知らない?」
「薬草だった」
「…………」
アリア。
顔。
上げる。
「二百年前は?」
「少量なら」
「熱を下げる」
「薬にしてた」
「大量なら?」
「腹を壊す程度」
今。
違う。
子ども。
危なかった。
黒い水。
毒。
環境。
変わった。
植物も。
変わった。
可能性。
ある。
◇ ◇ ◇
夜。
野営。
焚き火。
先輩。
火。
見る。
「レン」
「何?」
「お前」
「魔法」
「使えるのか」
「一応」
「一応?」
「魔力3」
「弱いな」
「知ってる!」
リナ。
笑う。
「見せて」
「何で?」
「二百年前の」
「魔法と」
「違うかもしれない」
それ。
ちょっと。
気になる。
枝。
一本。
置く。
普通の。
火。
指。
向ける。
「――灯れ」
小さい。
火。
ぽっ。
出る。
先輩。
「ちっさ」
「言うと思った!」
リナ。
「私も」
「最初そう思った」
「仲間増えた」
嬉しくない。
先輩。
火。
見る。
「普通だ」
「何が?」
「魔力を」
「使ってる」
「分かる?」
「ああ」
「昔の」
「管理者だから?」
「たぶん」
「じゃあ」
異常な。
火。
見せる?
迷う。
「もう一個」
「ある」
「魔法?」
「分からない」
「危険?」
「燃えない」
「火なのに?」
「ああ」
先輩。
顔。
変わる。
「見せろ」
「今?」
「小さく」
「できるか」
「分からない」
「じゃあ」
「やめろ」
早い。
「見たいんじゃ?」
「危険なら」
「やるな」
「まとも」
「失礼だな」
少し。
笑う。
でも。
先輩。
続ける。
「その力」
「何?」
「自分で」
「名前つけた?」
「まだ」
「誰かに?」
「知らないやつに」
「壊す者って」
「それは」
「名前じゃない」
「え?」
「呼び方だ」
火。
見ながら。
言う。
「名前は」
「自分で決めろ」
◇ ◇ ◇
翌日。
さらに。
北東。
白い。
根。
地面。
出始める。
最初。
指。
くらい。
次。
腕。
くらい。
さらに。
進む。
人。
胴。
くらい。
「でかい」
リナ。
触れようと。
する。
「待って」
俺。
止める。
「村の根と」
「同じなら」
「生きてる」
「そっか」
手。
引く。
先輩。
しゃがむ。
「変わってない」
「二百年前と?」
「ああ」
「大きさは?」
「でかくなってる」
「変わってるじゃん」
「見た目が」
「紛らわしい」
白い。
表面。
薄い。
脈。
動く。
生き物。
植物。
どっち。
分からない。
でも。
確かに。
命。
感じる。
フィリア。
いたら。
分かる。
だろう。
呼びたい。
でも。
まだ。
呼ばない。
自分で。
見る。
◇ ◇ ◇
昼。
前。
森。
開く。
「…………」
声。
出ない。
巨大な。
白い。
樹。
違う。
樹。
みたいな。
根。
地面。
突き破って。
何本も。
絡まり。
空。
向かってる。
幹。
ない。
枝。
ない。
葉。
ない。
根。
だけ。
なのに。
高さ。
神殿。
塔。
近い。
「これが」
大神官。
「母なる根だ」
周囲。
紫。
花。
一面。
風。
吹く。
紫。
揺れる。
綺麗。
なのに。
怖い。
「カイル」
先輩。
前。
出る。
「どこだ」
返事。
ない。
「カイル!」
声。
森。
響く。
何も。
ない。
アリア。
記録板。
出す。
「保護対象の」
「位置を」
「確認します」
板。
光る。
【保護対象】
【一名】
【状態】
【継続】
【位置】
表示。
矢印。
下。
「地下」
俺。
言う。
「また地下」
リナ。
「最近多いね」
「俺も思った」
◇ ◇ ◇
入口。
探す。
見つからない。
先輩。
白い。
根。
間。
歩く。
「昔は」
「ここに」
「穴があった」
「塞がった?」
「二百年だぞ」
「そりゃ」
「塞がるか」
リナ。
地面。
見る。
「ここ」
「何?」
「風」
しゃがむ。
根。
隙間。
小さい。
穴。
手。
かざす。
「下から」
「来てる」
「さすが」
「狩剣士」
リナ。
止まる。
俺。
しまった。
みたいな。
顔。
した。
らしい。
「何その顔」
「いや」
「言っていいよ」
「え?」
「狩剣士」
リナ。
剣。
柄。
触る。
「嫌いじゃないから」
「…………」
「私」
「狩剣士だし」
一拍。
「でも」
「それだけじゃない」
笑う。
「だから」
「いい」
「そっか」
「うん」
小さい。
会話。
でも。
大きい。
気が。
した。
◇ ◇ ◇
根。
傷つけない。
よう。
土。
掘る。
護衛。
神官。
全員。
作業。
一時間。
穴。
広がる。
階段。
出る。
石。
古い。
人工。
「また施設」
アリア。
目。
輝く。
「嬉しそう」
「記録が」
「ありそうなので」
「怖い」
先輩。
階段。
見る。
「ここだ」
「覚えてる?」
「ああ」
「カイルと」
「最後に」
「来た場所」
降りる。
◇ ◇ ◇
地下。
白い。
根。
壁。
天井。
床。
全部。
這ってる。
でも。
壊して。
ない。
石。
避けて。
伸びてる。
「賢い?」
リナ。
「分からない」
「意思ある?」
「分からない」
「分からない多い」
「それでいい」
前。
なら。
嫌だった。
答え。
欲しかった。
今。
少し。
慣れた。
通路。
奥。
扉。
ある。
古い。
文字。
先輩。
止まる。
「ここ」
「カイル?」
「ああ」
扉。
開かない。
取っ手。
ない。
中央。
手。
形。
窪み。
「認証?」
アリア。
「可能性があります」
「俺?」
「触らない方がいい?」
全員。
俺。
見る。
「何」
リナ。
「触る人だから」
「まだ言う?」
先輩。
「俺がやる」
手。
置く。
何も。
起きない。
「権限」
「なくなった?」
「たぶん」
アリア。
試す。
何も。
大神官。
何も。
リナ。
「私も?」
「待って」
俺。
扉。
見る。
文字。
薄い。
掠れてる。
『保護対象以外』
『入室――』
最後。
読めない。
「保護対象」
「カイルだけ?」
「じゃあ」
「外から入れない?」
先輩。
「昔は」
「俺も入れた」
「管理者だったから?」
「ああ」
「今は」
「違う」
「じゃあ」
俺。
手。
出す。
「やっぱり」
「俺?」
リナ。
「触るんだ」
「他ないでしょ」
「慎重に」
「はい」
手。
置く。
冷たい。
一秒。
【個体確認】
嫌な。
予感。
【名称】
【レン・アルヴェイン】
次。
【職業】
【なし】
次。
【管理者権限】
【拒否済】
「覚えてる」
【誓約継承】
【保留】
「それも」
次。
長い。
間。
【性質】
文字。
揺れる。
【未確定】
その下。
【部分一致】
【通行を許可】
カチ。
扉。
開く。
「性質で?」
アリア。
「そのようです」
「何と」
「一致した?」
表示。
消える。
「分からない」
また。
それ。
◇ ◇ ◇
中。
狭い。
部屋。
中央。
白い。
根。
一本。
太い。
そこから。
繭。
みたいな。
もの。
吊られてる。
人。
いる。
「カイル」
先輩。
走る。
「待って!」
根。
触る。
前。
止める。
「状態」
「分からない」
「でも!」
「先輩」
強く。
言う。
「二百年」
「待った」
「あと少し」
「確認して」
男。
拳。
握る。
止まる。
「…………分かった」
アリア。
記録板。
見る。
【保護対象】
【名称:カイル】
【生命状態】
【維持】
「生きてる」
「はい」
「人間?」
表示。
次。
【分類】
【対象外】
「対象外?」
先輩。
「どういう意味だ」
「不明です」
「職業?」
「表示されません」
「名前は」
「ある」
俺。
言う。
カイル。
二百年。
名前。
残ってる。
◇ ◇ ◇
繭。
中。
男。
若い。
二百年。
経ってる。
ように。
見えない。
三十。
くらい。
黒い。
髪。
痩せてる。
胸。
わずか。
動く。
「カイル」
先輩。
呼ぶ。
反応。
ない。
もう一度。
「カイル」
指。
少し。
動く。
「聞こえてる」
リナ。
「たぶん」
先輩。
声。
震える。
「俺だ」
「…………」
「分かるか」
カイル。
目。
開かない。
でも。
口。
少し。
動く。
「…………遅い」
先輩。
止まる。
「…………」
「遅すぎる」
かすれた。
声。
「悪い」
「二百年だぞ」
「悪い」
「パン」
「硬くなってるだろ」
「元から硬い」
カイル。
口元。
少し。
上がる。
先輩。
泣く。
声。
出さず。
泣く。
「生きてた」
「お前もな」
「俺」
「寝てた」
「知ってる」
「何で?」
「根は」
「いろいろ」
「教える」
◇ ◇ ◇
「出せる?」
俺。
聞く。
カイル。
ゆっくり。
目。
開く。
俺。
見る。
止まる。
「…………」
「初めまして」
カイル。
目。
見開く。
「アルヴェイン」
「…………」
先輩。
俺。
見る。
「知ってるのか!?」
カイル。
俺。
顔。
見る。
長い。
長い。
時間。
「名前は?」
「レン」
「レン」
何度か。
口。
中。
転がす。
「そうか」
「俺を」
「知ってる?」
「知らない」
また。
それ。
「でも」
「アルヴェインは?」
「知ってる」
「何?」
カイル。
目。
閉じる。
「その前に」
「何?」
「俺を」
「ここから」
「出すな」
「…………」
先輩。
「何で?」
「根が」
「俺を」
「生かしてる」
「外したら?」
「死ぬ」
即答。
先輩。
顔。
固まる。
「治せない?」
「神様なら?」
俺。
言う。
カイル。
目。
開く。
「神を」
「呼ぶな」
「やっぱり?」
「ああ」
「何で?」
「母なる根は」
「神から」
「俺を」
「隠してる」
◇ ◇ ◇
「隠す?」
アリア。
「誰から?」
「七柱」
「今の?」
「知らない」
「二百年前の?」
「それも」
「もう」
「分からない」
「八つ目?」
カイル。
顔。
変わる。
「その呼び方」
「誰から聞いた」
「俺たちが」
「そう呼んでる」
「未登録の接続」
「八つ目の紋章」
「声」
カイル。
「声を」
「聞いたのか」
「うん」
「何て?」
「管理者」
「壊す者」
「とか」
カイル。
目。
閉じる。
「やっぱり」
「始まった」
「何が?」
「二回目」
「…………」
「二回目?」
「二百年前が」
「一回目」
「何の?」
カイル。
答えない。
代わり。
俺。
見る。
「レン」
「はい」
「職業は?」
「なし」
「神との接続は?」
「七柱と」
「普段は」
「今は?」
「切ってる」
「管理者権限」
「断った」
カイル。
初めて。
はっきり。
笑う。
「よし」
「何が?」
「一個」
「間に合った」
◇ ◇ ◇
「アルヴェインって」
「何?」
俺。
聞く。
カイル。
「最初の名前」
「仕組みの?」
「違う」
「先輩は」
「仕組みの名前って」
「こいつは」
「そう思ってた」
先輩。
「違うのか」
「ああ」
「じゃあ」
カイル。
俺。
見る。
「神が」
「人に」
「名前を与える前」
一拍。
「人が」
「自分たちの力に」
「付けた名前だ」
「力?」
「ああ」
「どんな?」
「性質」
「それの名前?」
「もっと前」
「性質って」
「言葉すら」
「なかった頃」
カイル。
ゆっくり。
言う。
「人は」
「できることに」
「名前を付けてた」
「火を扱える」
「速く走れる」
「傷を癒せる」
「物を作れる」
「何かを」
「壊せる」
胸。
鳴る。
「アルヴェインは?」
カイル。
俺。
目。
見る。
「壊す」
「…………」
「正確には」
一拍。
「繋がりを」
「選んで」
「切る力」
◇ ◇ ◇
誰も。
声。
出ない。
俺。
黒い。
接続。
切った。
燃えない。
火。
“燃えない”。
壊した。
木剣。
俺に。
反応。
職業。
分類。
入らない。
「ブレイカー」
口。
勝手に。
出る。
カイル。
「何だそれ」
「今」
「思った」
「英語か?」
先輩。
「たぶん」
カイル。
先輩。
見る。
「お前」
「英語」
「まだ覚えてるのか」
「少し」
「俺より」
「記憶あるな」
「そこ張り合う?」
カイル。
笑う。
そして。
咳。
する。
白い。
根。
光る。
呼吸。
戻る。
「大丈夫?」
「根が」
「いる間は」
「アルヴェイン」
「続き」
カイル。
俺。
見る。
「それは」
「人の名前じゃなかった」
「でも」
「俺の名字」
「ああ」
「何で?」
「誰かが」
「お前に」
「与えた」
「誰?」
「知らない」
「でも」
「一つだけ」
「言える」
「何?」
「アルヴェインは」
「家名じゃない」
「…………」
「なら」
「レン・アルヴェインって」
カイル。
少し。
悲しそうに。
笑う。
「たぶん」
「名前と」
「性質を」
一拍。
「一緒にされた」
◇ ◇ ◇
「レンが」
「名前」
リナ。
「アルヴェインが」
「力?」
「可能性は高い」
カイル。
「じゃあ」
俺。
「俺」
「最初から」
「壊す者として」
「登録されてた?」
「その可能性もある」
嫌。
胸。
奥。
ざらつく。
名前。
まで。
役割。
だった。
「誰が」
「登録した?」
「分からない」
「何のため?」
「分からない」
「俺を」
「呼んだのは?」
「分からない」
「第109代は?」
「知らない」
また。
分からない。
でも。
一個。
分かった。
俺の。
名字。
かもしれない。
もの。
俺の。
役割。
かもしれない。
「…………嫌だな」
声。
出る。
リナ。
「何が?」
「アルヴェイン」
「嫌い?」
「分からない」
「でも」
「誰かに」
「お前は壊す奴だって」
「名前にされたなら」
一拍。
「嫌」
リナ。
少し。
考える。
「じゃあ」
「使わなきゃいい」
「名字を?」
「うん」
「そんな簡単?」
「名前でしょ」
「…………」
「レンって」
「呼ばれたい?」
「うん」
「じゃあ」
「レン」
終わり。
みたいに。
言う。
◇ ◇ ◇
カイル。
リナ。
見る。
「お前」
「名前は?」
「リナ」
「職業」
一瞬。
間。
「狩剣士」
「好きか?」
「好き」
「剣も?」
「好き」
「戦うのも?」
「…………」
少し。
止まる。
「好きな時もある」
「嫌な時も」
「ある」
「それでいい」
カイル。
言う。
「職業は」
「道具だ」
「剣と」
「同じ?」
「似てる」
「使えば」
「助けてくれる」
「握り方を」
「間違えれば」
「自分も切る」
リナ。
腰。
剣。
見る。
「でも」
「これ」
「私の剣」
「ああ」
「職業も」
「私の?」
カイル。
答える。
前。
止まる。
「それは」
「俺が決めることじゃない」
リナ。
目。
丸く。
する。
それから。
笑う。
「そっか」
◇ ◇ ◇
「カイル」
先輩。
「約束」
「覚えてるか」
カイル。
先輩。
見る。
「覚えてる」
「俺」
「守れなかった」
「ああ」
即答。
「そこ」
「優しくしないんだ」
俺。
「二百年」
「待ったからな」
「ごめん」
先輩。
言う。
カイル。
黙る。
「本当に」
「ごめん」
「…………」
「俺が」
「管理者を」
「選んだ」
「お前を」
「追った」
「記録を」
「消そうとした」
「名前を」
「奪った」
「たくさん」
「俺が」
「もういい」
カイル。
止める。
「でも」
「謝罪は」
「後だ」
「…………」
「今」
「やることがある」
「何?」
カイル。
俺。
見る。
「二百年前」
「終わらせられなかった」
「ものを」
一拍。
「今度は」
「終わらせる」
◇ ◇ ◇
「八つ目?」
「違う」
「職業制度?」
「違う」
「じゃあ」
「神との」
「繋がり方だ」
「…………」
「神が」
「悪いんじゃない」
「人が」
「悪いんでもない」
「繋がること自体が」
「悪いわけでもない」
「じゃあ」
「何?」
カイル。
白い。
根。
見る。
「切れないことだ」
「切れない?」
「一度」
「神と」
「強く繋がった人間は」
「自分から」
「離れられなかった」
「祝福」
「神託」
「職業」
「管理者」
「全部」
「神と人を」
「繋ぐ仕組みになった」
「それを」
「切れるようにする」
「誰が?」
カイル。
俺。
見る。
「アルヴェイン」
◇ ◇ ◇
「だから」
「壊す力?」
「ああ」
「全部」
「切る?」
「違う」
強い。
声。
「そこを」
「間違えるな」
「何でも」
「切る力じゃない」
「必要な繋がりまで」
「切れば」
「人は死ぬ」
村。
白い。
根。
思い出す。
切ったら。
死ぬ。
「選ぶ」
俺。
言う。
カイル。
頷く。
「何を繋いで」
「何を切るか」
「誰が決める?」
「使う本人」
「違う」
「え?」
「繋がってる」
「両方だ」
「…………」
「片方だけで」
「決めるな」
「神と人なら」
「神と人」
「人と職業なら?」
「本人と」
「仕組み」
「人と人なら?」
カイル。
少し。
笑う。
「二人で話せ」
「普通」
「普通が」
「一番難しい」
それ。
分かる。
◇ ◇ ◇
「リナ」
カイル。
呼ぶ。
「何?」
「剣」
「見せてくれ」
リナ。
腰。
剣。
抜く。
カイル。
見る。
「いい剣だ」
「分かる?」
「神官だったが」
「剣も使った」
「強かった?」
先輩。
「弱かった」
「お前よりは強い」
「俺」
「剣士じゃない」
「言い訳」
二百年。
経って。
これ。
友達。
だ。
「握って」
カイル。
言う。
リナ。
握る。
「何を」
「感じる?」
「重さ」
「他」
「手に馴染む」
「他」
「…………」
リナ。
目。
閉じる。
「安心する」
「何で?」
「ずっと」
「持ってるから」
「職業が」
「狩剣士だから?」
リナ。
目。
開く。
「違う」
即答。
「私が」
「この剣を」
「使ってきたから」
カイル。
頷く。
「それだ」
「何?」
「剣は」
「職業が」
「握ってるんじゃない」
一拍。
「お前が」
「握ってる」
リナ。
剣。
見る。
◇ ◇ ◇
白い。
根。
一本。
ゆっくり。
伸びる。
リナの。
剣。
触れる。
「え」
根。
剣。
絡まない。
刃。
なぞる。
光。
淡く。
走る。
アリア。
記録板。
反応。
する。
【個体観測】
【名称:リナ】
【職業:狩剣士】
いつもの。
表示。
その下。
新しい。
項目。
【性質観測】
文字。
揺れる。
「リナ」
「うん」
【剣適性】
【高】
【戦闘適性】
【高】
【護衛傾向】
【高】
リナ。
「いっぱい」
「出る」
【自己定義】
止まる。
「自己定義?」
アリア。
「古い観測項目です」
「何が出る?」
文字。
揺れる。
【狩剣士】
リナ。
息。
止まる。
「職業と」
「同じ」
俺。
言う。
カイル。
「まだだ」
次。
文字。
出る。
【剣士】
次。
【旅人】
次。
【友人】
リナ。
俺。
見る。
「友人」
「俺?」
「知らない」
「そこ」
「俺でいいじゃん」
「うるさい」
次。
【未確定】
次。
【変化中】
リナ。
笑う。
「何これ」
「決まってない」
俺。
言う。
「うん」
嬉しそう。
「決まってない」
◇ ◇ ◇
突然。
記録板。
表示。
変わる。
【職業情報】
【再照合】
「待って」
アリア。
「これは」
【名称:リナ】
【職業:狩剣士】
点滅。
一回。
二回。
三回。
「リナ」
「剣離して」
「うん」
でも。
白い。
根。
先に。
動く。
記録板。
光。
強く。
なる。
【職業情報】
【固定を解除】
「解除!?」
リナ。
「待って!」
俺。
根。
触ろうと。
する。
カイル。
「触るな!」
「でも!」
「見ろ!」
表示。
変わる。
【職業】
文字。
消える。
リナ。
顔。
真っ白。
「私」
「大丈夫」
「狩剣士」
消える。
空白。
一秒。
二秒。
「戻して!」
リナ。
初めて。
叫ぶ。
「私」
「狩剣士だから!」
胸。
痛い。
それ。
何度も。
聞いた。
言葉。
「リナ!」
「嫌!」
「私」
「これ」
剣。
握る。
「好きなの!」
「分かってる!」
「じゃあ!」
「戻して!」
俺。
何を。
すれば。
カイル。
「リナ!」
「何!」
「誰が」
「狩剣士を」
「取った!」
「表示!」
「表示が消えただけだ!」
「でも!」
「剣は!?」
リナ。
止まる。
「お前の剣は」
「消えたか!」
見る。
手。
ある。
「振れるか!」
剣。
構える。
「振れる!」
「戦えるか!」
「戦える!」
「剣が」
「好きか!」
「好き!」
「なら」
記録板。
光。
戻る。
【職業】
文字。
出る。
リナ。
息。
止まる。
【リナ】
「…………」
誰も。
声。
出ない。
【職業:リナ】
「何」
「これ」
アリア。
記録板。
見る。
「分類では」
「ありません」
「じゃあ」
「壊れた?」
「不明です」
カイル。
笑う。
「壊れたんじゃない」
「じゃあ」
「古い仕組みが」
「答えただけだ」
「何に?」
カイル。
リナ。
見る。
「誰が」
「その剣を」
「握ってるか」
◇ ◇ ◇
リナ。
表示。
見る。
【職業:リナ】
「私が」
「職業?」
「違う」
俺。
言う。
「たぶん」
「職業って欄に」
「リナしか」
「入らなかった」
「何それ」
「分からん」
「雑」
でも。
リナ。
笑う。
泣いてる。
少し。
「狩剣士」
「なくなった?」
カイル。
「確認してみろ」
「どうやって?」
「剣を」
「振れ」
リナ。
一歩。
離れる。
剣。
構える。
踏み込む。
速い。
空気。
切る。
前より。
変わらない。
いや。
俺には。
分からない。
「どう?」
俺。
「普通」
「そこ」
「もっと褒めて」
「速かった」
「遅い」
カイル。
「身体は」
「覚えてる」
「技能も」
「消えてない」
「じゃあ」
「狩剣士は?」
「お前が」
「必要なら」
「名乗ればいい」
「…………」
「神具に」
「書かれなくても」
「職業欄に」
「出なくても」
一拍。
「お前が」
「自分の剣を」
「狩剣士として」
「振りたいなら」
「誰も」
「止められない」
リナ。
剣。
胸。
前。
持つ。
長い。
沈黙。
「私」
「うん」
「狩剣士」
「うん」
「でも」
俺。
見る。
「リナ」
「うん」
「どっちが先?」
リナ。
少し。
笑う。
「リナ」
◇ ◇ ◇
その瞬間。
白い。
根。
大きく。
脈打つ。
ドクン。
部屋。
揺れる。
「何!?」
アリア。
記録板。
見る。
【固定解除】
【一件】
次。
【旧誓約】
【一部達成】
「誓約?」
先輩。
「人の生を」
「職により」
「決定しない」
二百年前。
約束。
一つ。
今。
初めて。
実行。
された。
カイル。
目。
閉じる。
「やっと」
「何?」
「一個」
「返せた」
「約束を?」
「ああ」
外。
地面。
響く。
遠く。
巨大な。
母なる根。
全体。
動いてる。
みたい。
音。
する。
そして。
俺の。
頭。
奥。
七柱。
切ってる。
はず。
なのに。
声。
『――返した』
知らない。
声。
「何を」
『――一つ』
「誰」
『――次は』
一拍。
『――お前だ』
目の前。
記録板。
勝手に。
切り替わる。
【対象変更】
【名称:レン・アルヴェイン】
【職業:なし】
【性質観測】
【開始】
「待って」
カイル。
顔。
変わる。
「レン!」
「板から離れろ!」
離れる。
でも。
表示。
消えない。
【既知性質】
【照合】
一つ。
文字。
浮く。
【破壊】
次。
【否定】
次。
【切断】
次。
【拒絶】
「拒絶?」
先輩。
「お前」
「管理者」
「断ったからか」
次。
【保護】
「保護?」
俺。
「俺」
「そんな」
カイル。
「性質は」
「能力だけじゃない」
次。
【選択】
文字。
止まる。
全部。
消える。
新しい。
一行。
【統合名称】
嫌な。
予感。
する。
「名前」
「付けられる?」
俺。
一歩。
下がる。
「嫌だ」
板。
文字。
出そう。
なる。
「待て」
俺。
言う。
「俺の力なら」
一拍。
「俺が」
「名前つける」
記録板。
止まる。
「…………」
カイル。
笑う。
「言え」
「今?」
「今だ」
俺。
考える。
壊す。
だけ。
じゃない。
何でも。
壊す。
違う。
繋がり。
見る。
切る。
選ぶ。
拒む。
守る。
俺が。
決める。
「ブレイカー」
記録板。
一度。
光る。
【統合名称】
【ブレイカー】
胸。
鳴る。
俺が。
付けた。
初めて。
誰かじゃない。
神様じゃない。
仕組みじゃない。
俺。
「これが」
カイル。
言う。
「名前だ」
「能力の?」
「ああ」
「俺の名前じゃない?」
「違う」
「お前は」
「レン」
一拍。
「それは」
「お前の力」
【名称:レン・アルヴェイン】
表示。
揺れる。
アルヴェイン。
部分。
点滅。
一度。
消える。
「え」
【名称:レン】
だけ。
残る。
俺。
息。
止まる。
「名字」
「消えた」
リナ。
俺。
見る。
「レン」
呼ぶ。
「……うん」
返事。
する。
カイル。
笑う。
「ほら」
「何?」
「残った」
「何が」
「お前が」
「振り向く方」
◇ ◇ ◇
記録板。
最後。
一度だけ。
強く。
光る。
【名称:レン】
【職業:なし】
【性質:ブレイカー】
三つ。
並ぶ。
初めて。
だった。
名前。
職業。
力。
全部。
別々に。
書かれた。
「これが」
「本来の形?」
俺。
聞く。
カイル。
「本来なんて」
「知らない」
「え」
「昔の仕組みが」
「正しいとも」
「限らない」
「…………」
「古いから」
「正しい」
「神が作ったから」
「正しい」
「人が作ったから」
「正しい」
カイル。
首。
振る。
「全部」
「同じ間違いだ」
「じゃあ」
「これは?」
表示。
指す。
「今のお前を」
「今の仕組みが」
「そう観測した」
「それだけ?」
「ああ」
「それだけか」
「それでいい」
なんか。
少し。
安心。
する。
表示。
俺。
じゃない。
俺を。
見た。
結果。
それだけ。
◇ ◇ ◇
アリア。
ものすごい。
勢い。
書いてる。
「アリア」
「話しかけないでください」
「はい」
怖い。
リナ。
横。
来る。
「レン」
「何?」
「ブレイカー」
「うん」
「ちょっと」
「かっこつけた?」
「…………」
「つけた?」
「少し」
「やっぱり」
「いいだろ!」
「別に」
笑う。
「レンが」
「決めたなら」
「うん」
「いいと思う」
ちょっと。
嬉しい。
◇ ◇ ◇
その時。
カイル。
急に。
咳き込む。
「カイル!」
白い。
根。
光。
弱い。
先輩。
駆け寄る。
「どうした!」
「根が」
「起きた」
「さっきのせい?」
「違う」
カイル。
天井。
見る。
「母なる根が」
「何かを」
「感じてる」
「何を?」
地面。
震える。
一回。
二回。
三回。
記録板。
表示。
変わる。
【外部接続】
【検出】
「神?」
アリア。
「不明です」
【接続数】
【七】
全員。
止まる。
「七柱?」
俺。
「呼んでない」
【接続元】
七つ。
紋章。
出る。
知ってる。
フィリア。
ガルド。
セレナ。
ノア。
メルク。
ヴォルグ。
エリオス。
「神様」
来た。
俺。
繋いで。
ない。
でも。
母なる根に。
七柱。
繋がろうと。
してる。
カイル。
顔。
青く。
なる。
「切れ」
「何を?」
「接続」
「でも」
「神様だよ」
「だからだ!」
白い。
根。
震える。
七つ。
光。
根。
中。
入ってくる。
カイル。
苦しそうに。
身体。
反る。
「カイル!」
「母なる根は」
「二百年」
「神性接続を」
「拒絶してた」
「何で今!」
「お前だ!」
「俺?」
「ブレイカーを」
「観測したから」
記録板。
文字。
増える。
【神性側より】
【性質情報への接続要求】
「俺の力を」
「神様が見ようとしてる?」
「おそらく」
「見せたら?」
カイル。
「分からない!」
「じゃあ」
「切る?」
「それも」
「お前が決めろ!」
また。
選ぶ。
七柱。
信じてない。
わけじゃない。
むしろ。
信じたい。
助けられた。
教えて。
もらった。
一緒に。
笑った。
でも。
今。
勝手に。
俺の。
性質へ。
繋がろうとしてる。
「嫌だ」
俺。
言う。
「俺が」
「見せるって」
「言ってない」
手。
記録板。
触れる。
「ブレイカー」
どう。
使う。
分からない。
でも。
意識。
する。
七本。
糸。
みたいな。
もの。
見える。
気。
する。
全部。
切る?
違う。
神様との。
繋がり。
そのもの。
嫌じゃない。
今。
性質へ。
伸びてる。
部分。
だけ。
「ここ」
指。
一本。
動かす。
燃えない。
火。
一瞬。
指先。
灯る。
熱。
ない。
炎。
七本。
糸。
触れる。
切れる。
音。
ない。
一斉。
じゃない。
一本。
二本。
三本。
七本。
消える。
【神性側接続】
【拒否】
白い。
根。
震え。
止まる。
カイル。
呼吸。
戻る。
「できた」
俺。
手。
見る。
魔力。
減ってない。
やっぱり。
魔法。
じゃない。
「全部」
「切った?」
リナ。
「違う」
「神様との」
「繋がりは?」
目。
閉じる。
遠い。
七柱。
気配。
ある。
「残ってる」
「じゃあ」
「俺の性質を」
「覗こうとした」
「接続だけ」
カイル。
俺。
見る。
驚いてる。
「それだ」
「何?」
「アルヴェイン」
「いや」
俺。
首。
振る。
「ブレイカー」
一拍。
カイル。
笑う。
「ああ」
「ブレイカーだ」
◇ ◇ ◇
静か。
戻る。
その直後。
頭。
中。
声。
聞こえる。
今度。
知ってる。
『レン!』
フィリア。
焦ってる。
「フィリア?」
リナ。
「繋がった?」
「違う」
「向こうから」
『無事ですか!?』
「無事」
『よかった……』
「さっき」
「俺の性質」
「見ようとした?」
沈黙。
『…………はい』
正直。
「何で?」
『あなたの』
『接続状態が』
『突然変化したため』
「心配した?」
『はい』
「だから」
「勝手に?」
『…………はい』
胸。
少し。
痛い。
フィリア。
悪意。
ない。
分かる。
助けたい。
知りたい。
守りたい。
だから。
勝手に。
見る。
「フィリア」
『はい』
「嫌だった」
長い。
沈黙。
『……ごめんなさい』
「うん」
『怒っていますか』
「少し」
『そうですか』
「でも」
「切った」
『分かりました』
「神様との」
「繋がり全部じゃない」
『はい』
「覗こうとした」
「ところだけ」
また。
沈黙。
『レンさん』
「何?」
『それを』
『できるように』
『なったのですね』
声。
嬉しい。
でも。
少し。
寂しそう。
「たぶん」
『なら』
一拍。
『次からは』
『聞きます』
「何を?」
『繋いでもいいですか、と』
「…………うん」
それ。
で。
いい。
◇ ◇ ◇
『他の六柱にも』
『伝えます』
「ガルド」
「絶対」
「勝手に来そう」
遠く。
『聞こえているぞ!』
「いるじゃん!」
リナ。
「ガルド?」
「いる」
『心配したんだぞ!』
「ありがとう!」
『だが!』
「何!」
『その』
『ブレイカーという名!』
「うん」
『悪くない!』
「そこ!?」
『俺なら』
『もっと強そうに――』
「切るよ?」
『すまん』
早い。
リナ。
笑う。
先輩。
笑う。
カイル。
咳しながら。
笑う。
なんか。
久しぶり。
ちゃんと。
笑った。
気が。
する。
◇ ◇ ◇
でも。
アリア。
笑ってない。
記録板。
見る。
「レン」
「何?」
「もう一つ」
「出ています」
「何が?」
表示。
下。
小さい。
文字。
【性質:ブレイカー】
その下。
【初回観測】
【――二百年前】
笑い。
止まる。
「…………え?」
「今日」
「初めて」
「名前つけたよ?」
「はい」
「じゃあ」
「二百年前って」
「分かりません」
カイル。
顔。
変わる。
先輩。
立つ。
「見せろ」
板。
覗く。
【初回観測個体】
文字。
欠ける。
ノイズ。
走る。
一瞬。
番号。
出る。
【試験対象番号:〇〇一】
「…………」
俺。
息。
止まる。
〇〇一。
二百年前。
職業分類。
失敗。
表示名称。
なし。
「同じ」
「性質?」
俺。
聞く。
カイル。
答えない。
代わり。
記録板。
次。
出る。
【性質名称】
【未登録】
「ブレイカーじゃない」
アリア。
「はい」
「同じ性質だけど」
「名前がなかった?」
「その可能性があります」
俺が。
今日。
名前。
つけた。
力。
二百年前。
誰か。
持ってた。
「先輩?」
男。
首。
振る。
「分からない」
「自分じゃない?」
「覚えてない」
「カイル?」
「俺じゃない」
「じゃあ」
「〇〇一って」
誰。
記録板。
最後。
一行。
出る。
【初回観測個体】
【名称情報】
【削除済】
やっぱり。
名前。
ない。
でも。
その下。
小さく。
残る。
古い。
備考。
アリア。
読む。
「……これは」
「何?」
声。
震える。
「対象本人による」
「記録です」
「本人?」
「はい」
「何て?」
アリア。
ゆっくり。
読む。
『この力に』
『名前はつけない』
次。
『名前をつければ』
『役割になる』
次。
『役割になれば』
『また誰かが』
『それを人に押しつける』
胸。
重く。
なる。
俺。
今日。
名前。
つけた。
ブレイカー。
嬉しかった。
自分で。
決めた。
でも。
二百年前の。
誰かは。
決めなかった。
理由。
あった。
最後。
一文。
『だから』
『次の奴が』
『自分で決めろ』
「…………」
俺。
板。
見る。
次の奴。
俺。
なのか。
分からない。
〇〇一と。
俺。
同じ人。
なんて。
証拠。
ない。
転生。
繰り返し。
そんな。
話も。
まだ。
ない。
でも。
二百年前。
名前を。
つけなかった。
誰か。
今日。
俺。
名前を。
つけた。
「ブレイカー」
もう一度。
言う。
今度は。
少し。
重い。
「変える?」
リナ。
聞く。
「何を?」
「名前」
考える。
変えても。
いい。
明日。
嫌に。
なったら。
変えても。
いい。
だって。
俺が。
決めた。
名前。
なら。
俺が。
決め直せる。
「今は」
「これでいい」
「そっか」
「うん」
カイル。
目。
閉じる。
「それでいい」
「何が?」
「名前は」
「檻じゃない」
一拍。
「呼びたくなくなったら」
「変えればいい」
その。
言葉。
胸。
落ちる。
◇ ◇ ◇
リナ。
剣。
鞘。
戻す。
俺。
見る。
「レン」
「何?」
「私の」
「職業」
「うん」
「今」
「リナなんだよね」
「表示は」
「変なの」
「変だね」
「でも」
少し。
笑う。
「嫌いじゃない」
「うん」
「狩剣士も」
「やめない」
「うん」
「剣も」
「使う」
「うん」
「でも」
「狩剣士だから」
「使うんじゃない」
剣。
柄。
握る。
「私が」
「この剣を」
「使いたいから」
その。
顔。
今まで。
一番。
リナ。
らしい。
気が。
した。
◇ ◇ ◇
「帰ったら」
リナ。
言う。
「何?」
「剣」
「手入れする」
「急だね」
「私の剣だから」
「職業じゃなく?」
「私の」
「はい」
一拍。
「レン」
「何?」
「触らないでね」
「触らないよ」
「前」
「勝手に持った」
「借りただけ!」
「重かったでしょ」
「めちゃくちゃ」
「私のだから」
得意げ。
「はいはい」
「何その返事」
「リナの剣です」
「よろしい」
白い。
根。
向こう。
カイル。
笑ってる。
先輩も。
笑ってる。
二百年前。
失敗。
した。
人たち。
今。
ここ。
いる。
俺たち。
同じ。
失敗。
するか。
分からない。
でも。
同じ。
答え。
選ぶ。
必要も。
ない。
俺は。
レン。
力は。
ブレイカー。
リナは。
リナ。
剣は。
リナの剣。
それで。
今は。
十分。
――その時。
リナの。
剣。
鞘の中で。
小さく。
鳴った。
カチ。
一度。
まるで。
返事。
する。
みたいに。




