神託ログ39「謝罪では戻らない」
黒い。
判定板。
光。
消える。
部屋。
静か。
なる。
透明な。
破片。
床。
転がったまま。
『返してくれて、ありがとう。』
その文字。
頭。
残ってる。
「触らないで」
アリア。
言う。
「分かってる」
「今度は」
「本当に?」
リナ。
「信用低すぎない?」
「積み重ね」
「何の?」
答え。
ない。
悲しい。
ユリウス。
閉鎖通路。
入口。
見る。
「鍵は」
「完全に外れている」
「開ける?」
俺。
聞く。
「開けない」
即答。
「ですよね」
「許可がない」
「そこ?」
「そこだ」
やっぱり。
この人。
信用できる。
◇ ◇ ◇
透明な。
破片。
アリア。
専用の。
布。
使って。
回収。
する。
「これ」
「何だと思う?」
「分かりません」
「俺の世界の」
「物かも」
「根拠は?」
「文字」
「材質は?」
「分からない」
「用途は?」
「分からない」
「では」
「現時点では」
「あなたの世界の文字が」
「記されている透明片」
「はい」
正確。
大事。
「返して」
「って」
リナ。
「誰が?」
「分からない」
「何を?」
「管理権限」
「だと思う」
「思う?」
「推測」
アリア。
小さく。
頷く。
最近。
俺。
成長。
してる。
気がする。
主に。
分からない。
って。
言える。
方向に。
◇ ◇ ◇
「一つ」
「気になる」
ユリウス。
言う。
「何?」
「管理権限を」
「返還した」
「うん」
「返還先が」
「存在するなら」
俺。
見る。
「元々」
「誰かのものだった」
「…………」
アリア。
「あるいは」
「何かの」
「人とは」
「限らない?」
「はい」
黒い。
判定板。
見る。
八つ目。
紋章。
もう。
出てない。
「七柱じゃない」
リナ。
「たぶん」
「八柱目?」
「それも」
「まだ分からない」
ガルド。
『神とは限らんぞ』
「うん」
「ガルド?」
リナ。
「そう」
「何て?」
「神とは限らないって」
リナ。
少し。
考える。
「じゃあ」
「あの紋章」
「何?」
「分からない」
「今日」
「そればっかり」
「正解」
◇ ◇ ◇
扉。
外。
急に。
足音。
走って。
来る。
一人。
じゃない。
「ユリウス様!」
若い。
神官。
飛び込む。
顔。
真っ青。
「どうした」
「西棟で」
「異常が」
「何が起きた」
「神具が」
「止まりました」
「どの神具」
「職業登録」
「祝福」
「神託受信」
息。
切れてる。
「全部です」
部屋。
空気。
変わる。
「いつから」
「今です」
「同時に?」
「はい」
ユリウス。
俺。
見る。
嫌な。
視線。
「俺?」
「まだ何も」
「言っていない」
「顔が」
「言ってる」
「確認する」
ユリウス。
部屋。
出る。
「待って」
俺。
「来るな」
「でも」
「ここにいろ」
「理由」
「安全のためだ」
「俺の?」
ユリウス。
一瞬。
止まる。
「全員の」
それだけ。
言って。
走る。
◇ ◇ ◇
「管理権限」
「返したから?」
リナ。
小声。
「分からない」
でも。
タイミング。
良すぎる。
俺が。
NO。
押した。
権限。
返した。
その直後。
神殿の。
神具。
停止。
「ノア」
『はい』
「俺のせい?」
『因果関係は』
『確認できません』
「可能性は?」
『あります』
「どれくらい?」
『数値化できません』
「……うん」
胸。
重い。
もし。
俺が。
管理者。
受けてたら。
止まらなかった?
もし。
俺が。
返さなかったら。
今。
普通に。
動いてた?
「レン」
リナ。
「まだ」
「決めないで」
「何を?」
「自分のせいって」
「顔」
「分かりやすい」
また。
顔。
◇ ◇ ◇
数分。
して。
鐘。
鳴る。
一回。
二回。
三回。
神殿。
中。
ざわめき。
聞こえる。
「何の鐘?」
アリア。
顔。
固い。
「神具停止時の」
「緊急鐘です」
「そんなの」
「あるんだ」
「あります」
「よく起きる?」
「私が」
「ここへ来てからは」
「初めてです」
「アリアさん」
「何年?」
「九年」
初。
胸。
さらに。
重く。
なる。
「行こう」
俺。
言う。
「どこへ?」
「西棟」
「ユリウスに」
「待てと言われました」
「でも」
「行って」
「何ができます?」
止まる。
何。
できる。
分からない。
魔法。
ちっさい。
剣。
弱い。
神具。
知識。
ない。
俺が。
行って。
余計。
壊す。
可能性。
ある。
「…………待つ」
「はい」
悔しい。
でも。
待つ。
◇ ◇ ◇
待つ。
五分。
十分。
長い。
誰も。
戻らない。
「フィリア」
『はい』
「怪我人」
「いる?」
『この距離では』
『詳細まで』
『分かりません』
「神殿全体は?」
『多くの生命反応が』
『動いています』
「死んだ人?」
『…………』
「フィリア?」
『今』
『一つ』
声。
変わる。
「何?」
『生命反応が』
『急激に』
『弱くなりました』
立つ。
「場所」
『西』
「行く」
アリア。
「レン」
「今度は行く」
「ユリウスが」
「人が」
「死ぬかもしれない」
「あなたが行けば」
「助かるんですか」
止まる。
痛い。
でも。
正しい。
「フィリア」
「俺が行けば」
「何かできる?」
『分かりません』
「フィリアなら?」
『近づけば』
『状態を確認できます』
「治せる?」
『分かりません』
それでも。
ゼロ。
じゃない。
「フィリアを」
「近づけたい」
アリア。
「フィリア様は」
「あなたを介さなくても」
「今」
「生命反応しか」
「分からない」
「近くなら」
「もっと分かる」
フィリア。
『はい』
「行く」
リナ。
立つ。
「私も」
アリア。
ため息。
「私も行きます」
「いいの?」
「あなたたちだけで」
「行かせる方が」
「危険です」
信用。
ない。
◇ ◇ ◇
廊下。
走る。
ガルド。
『足元見ろ!』
「分かってる!」
『曲がり角!』
「見えてる!」
『人!』
「うわっ!」
神官。
避ける。
「助かった!」
『おう!』
こういう時。
戦神。
便利。
西棟。
近づく。
人。
増える。
「下がって!」
「神具から離れて!」
声。
飛ぶ。
部屋。
一つ。
人。
集まってる。
「ユリウス!」
アリア。
呼ぶ。
中。
見る。
ユリウス。
いる。
床。
膝。
ついてる。
「…………」
嫌な。
感じ。
する。
「ユリウス?」
返事。
ない。
近づく。
「待て!」
別の。
神官。
止める。
「神具が」
「暴走した」
「暴走?」
「停止じゃないの?」
「一度止まり」
「その後」
「再起動した」
「何が起きた?」
神官。
答え。
詰まる。
俺。
ユリウス。
見る。
白い。
神官服。
胸。
赤い。
「…………」
血。
◇ ◇ ◇
「フィリア!」
『見ています!』
「生きてる?」
『はい』
「治せる?」
『近くへ!』
俺。
行こうと。
する。
神官。
腕。
掴む。
「危険だ!」
「離して!」
「神具がまだ」
部屋。
奥。
巨大な。
白い。
石。
職業石。
似てる。
でも。
もっと。
大きい。
光。
点滅。
してる。
【接続】
【切断】
【接続】
【切断】
文字。
繰り返す。
「セレナ」
『魔力が乱れてる』
「俺が行ったら?」
『分からない』
「ユリウス」
「このままだと?」
フィリア。
『危険です』
選ぶ。
時間。
ない。
「リナ」
「何?」
「俺」
「行く」
「分かった」
止めない。
「でも」
「神具には触らないで」
「うん」
「絶対」
「うん」
神官。
腕。
振りほどく。
ユリウス。
近づく。
「フィリア」
『胸部に』
『深い損傷』
「何で?」
『分かりません』
「治癒」
『始めます』
光。
淡い。
ユリウス。
包む。
呼吸。
浅い。
「ユリウス」
俺。
肩。
触る。
「聞こえる?」
目。
少し。
開く。
「……来るなと」
「言った」
「ごめん」
「規則を」
「守れ」
「今それ?」
「大事だ」
「死にそうなのに?」
「だからだ」
この人。
本当に。
この人。
◇ ◇ ◇
「何があった?」
俺。
聞く。
ユリウス。
息。
苦しそう。
「神具が」
「止まった」
「うん」
「再起動を」
「試した」
「誰が?」
「私だ」
「何で」
「祝福を」
「待っている」
「子どもがいた」
視線。
部屋。
端。
少年。
いる。
母親。
抱いてる。
十二歳。
くらい。
職業。
祝福。
受ける。
年。
「今日」
「だった?」
「遠い村から」
「来た」
「何日も」
「かけて」
「だから」
「再起動した?」
「ああ」
「それで?」
ユリウス。
目。
巨大な。
神具。
見る。
「接続先が」
「変わった」
「何?」
「七柱へ」
「繋がるはずが」
息。
詰まる。
「別の」
「何かへ」
背中。
冷える。
「八つ目?」
ユリウス。
「知らん」
「紋章は?」
「見た」
「丸に」
「割れた線?」
ユリウス。
目。
開く。
「なぜ」
「知ってる」
「俺も見た」
「…………」
「その後?」
「切ろうとした」
「接続を?」
「ああ」
「そしたら」
胸。
血。
見る。
「神具から」
「何か」
「飛んだ?」
「違う」
ユリウス。
首。
少し。
振る。
「私の」
「神術が」
「私を」
「傷つけた」
「…………」
◇ ◇ ◇
ノア。
『術式の』
『反転』
「そんなこと」
「ある?」
『通常はありません』
「通常」
もう。
嫌い。
その。
言葉。
フィリア。
治癒。
続ける。
でも。
ユリウス。
顔色。
戻らない。
「フィリア?」
『傷は』
『閉じています』
「じゃあ」
『生命反応が』
『戻りません』
「何で?」
『分かりません』
「毒?」
『違います』
「出血?」
『抑えています』
「じゃあ!」
声。
大きく。
なる。
『分からないんです!』
フィリア。
初めて。
強い。
声。
俺。
止まる。
『傷は』
『治しています』
『でも』
『命が』
『戻ってこない』
「…………」
フィリア。
声。
震えてる。
『なぜ』
『なぜですか』
生命神。
本人。
聞いてる。
誰にも。
答え。
ない。
◇ ◇ ◇
ユリウス。
俺。
見る。
「レン」
「何?」
「神具に」
「触るな」
「触らない」
「絶対に」
「うん」
「検査も」
「しない」
「……そうしろ」
「ユリウス」
「何だ」
「死なないで」
「命令か」
「要請」
「断れるな」
「…………」
少し。
口元。
動く。
「なら」
「考える」
「そこ」
「規則に厳しくなくていい」
でも。
その。
冗談。
最後。
だった。
ユリウス。
目。
閉じる。
「フィリア」
『…………』
「フィリア」
『待って』
「何を?」
『まだ』
光。
強く。
なる。
「フィリア!」
『まだです!』
ユリウス。
胸。
傷。
もう。
ない。
血。
止まってる。
皮膚。
戻ってる。
なのに。
息。
弱い。
一回。
長く。
吐く。
次。
来ない。
「…………」
「ユリウス?」
来ない。
「フィリア」
『…………』
「治して」
『治しています』
「じゃあ」
「何で」
『治しています!』
「なら!」
『傷は!』
フィリア。
声。
割れる。
『治っているんです!』
「…………」
静か。
なる。
ユリウス。
動かない。
フィリア。
小さい。
声。
『生命反応』
一拍。
『消失しました』
◇ ◇ ◇
何も。
聞こえない。
周り。
人。
いる。
泣く。
声。
ある。
神官。
何か。
叫んでる。
でも。
遠い。
俺。
ユリウス。
見る。
さっき。
喋ってた。
規則。
守れ。
言ってた。
俺。
信用できる。
って。
思った。
数時間。
前。
会った。
ばかり。
なのに。
死んだ。
「フィリア」
返事。
ない。
「フィリア」
『……はい』
「もう一回」
『レンさん』
「もう一回」
「やって」
『できません』
「何で」
『亡くなっています』
「生命神だろ」
口。
出る。
言った。
瞬間。
分かる。
最低。
だ。
でも。
止まらない。
「生命神」
「なんだろ」
『はい』
「じゃあ」
『私は』
フィリア。
声。
小さい。
『死者を』
『戻せません』
「…………」
『命を』
『作れません』
『終わった命を』
『始め直すことは』
『できません』
「でも」
「傷」
「治した」
『はい』
「じゃあ何で」
『分かりません』
また。
分からない。
今。
一番。
聞きたくない。
◇ ◇ ◇
巨大な。
神具。
急に。
光。
消える。
【接続】
文字。
消える。
完全。
停止。
「レン!」
リナ。
俺。
腕。
掴む。
「離れよう」
「でも」
「今」
「触ったらダメ」
「触らない」
「顔が」
「触る顔」
「…………」
「お願い」
リナ。
強く。
言う。
「今は」
「やめて」
俺。
ユリウス。
見る。
原因。
知りたい。
何で。
死んだ。
神具。
何した。
八つ目。
何。
管理権限。
返した。
俺。
関係。
ある?
もし。
俺が。
返さなかったら。
神具。
止まらなかった?
ユリウス。
再起動。
しなかった?
死ななかった?
「俺のせい?」
口。
出る。
リナ。
「分からない」
「でも」
「俺が」
「分からない!」
強い。
声。
「今」
「決めないで」
「…………」
「レンが」
「権限返したからか」
「神具が止まったからか」
「ユリウスが再起動したからか」
「八つ目の何かが原因か」
「まだ」
「何も分からない」
「だから」
俺。
腕。
掴んだまま。
「勝手に」
「自分のせいにしないで」
「…………」
正しい。
でも。
苦しい。
◇ ◇ ◇
アリア。
ユリウス。
横。
膝。
つく。
眼鏡。
外す。
何も。
言わない。
「アリアさん」
返事。
ない。
「…………」
俺も。
言えない。
謝る?
何を。
俺が。
殺した。
まだ。
分からない。
でも。
ごめん。
言いたい。
それ。
誰のため。
俺が。
楽に。
なりたい。
だけ。
かも。
しれない。
「ユリウスは」
アリア。
突然。
言う。
「規則に」
「うるさかった」
「うん」
「本当に」
「面倒だった」
「うん」
「私が」
「記録を」
「勝手に持ち出すたび」
「怒った」
「やってたんだ」
「必要でしたから」
「それ」
「怒られる」
「はい」
アリア。
ユリウス。
手。
見る。
「でも」
声。
少し。
震える。
「必ず」
「手伝ってくれた」
「…………」
「怒った後に」
「規則の中で」
「できる方法を」
「探してくれた」
「今日も」
旧礼拝堂。
再申請。
通す。
言った。
「そういう人」
「だったんだ」
「はい」
過去形。
重い。
◇ ◇ ◇
少年。
泣いてる。
母親。
頭。
下げる。
「私たちの」
「せいです」
「違います」
アリア。
即答。
「でも」
「息子の祝福を」
「違います」
今度。
強い。
「ユリウスが」
「自分で」
「選びました」
母親。
泣く。
アリアも。
泣かない。
でも。
手。
震えてる。
「だから」
「あなたたちが」
「奪わないでください」
「何を?」
「ユリウスの」
「選択を」
俺。
顔。
上げる。
「自分たちのせいだったと」
「言えば」
「彼が」
「自分で決めて」
「動いたことまで」
「なくなってしまう」
胸。
刺さる。
俺も。
同じ。
こと。
しようと。
してた。
全部。
俺のせい。
って。
言えば。
簡単。
だった。
でも。
ユリウス。
自分で。
再起動。
選んだ。
理由。
子ども。
待ってた。
だから。
動いた。
その。
選択。
俺の。
罪悪感で。
塗りつぶす。
違う。
◇ ◇ ◇
「アリアさん」
「何です」
「調べよう」
アリア。
俺。
見る。
「何を」
「全部」
「また全部?」
「今度は」
「具体的に」
指。
一つ。
「神具が」
「止まった原因」
二つ。
「再起動で」
「接続先が変わった理由」
三つ。
「ユリウスの神術が」
「反転した理由」
四つ。
「八つ目」
五つ。
「俺が返した」
「管理権限との関係」
「…………」
「でも」
息。
吸う。
「決めつけない」
「俺のせいとも」
「神殿のせいとも」
「八つ目のせいとも」
「調べるまで」
アリア。
長く。
俺。
見る。
「分かりました」
◇ ◇ ◇
夜。
神殿。
一室。
俺。
リナ。
二人。
いる。
今日は。
外。
出られない。
神具。
異常。
大神官。
命令。
いや。
要請。
神殿内。
待機。
「眠れそう?」
リナ。
「無理」
「私も」
窓。
外。
暗い。
「ユリウス」
「うん」
「会ったばっかだった」
「うん」
「なのに」
「きつい」
「うん」
「リナ」
「何?」
「俺」
「管理権限」
「返さない方が」
「よかったかな」
リナ。
すぐ。
答えない。
「分からない」
「うん」
「でも」
「返す時」
「何で返した?」
「何するか」
「分からなかったから」
「責任」
「持てないと思った」
「誰かを」
「助けるつもりで」
「余計なこと」
「したくなかった」
「じゃあ」
リナ。
俺。
見る。
「その時のレンは」
「そう決めた」
「うん」
「今」
「結果見て」
「間違いだったって」
「変える?」
「…………」
「分からない」
「なら」
「まだ変えなくていい」
「結果が悪かったから」
「選択まで全部」
「間違いになるとは」
「限らないでしょ」
「…………」
強い。
こいつ。
「狩剣士だから?」
「今回は」
「私だから」
「…………」
少し。
笑う。
「そっちの方が」
「いい」
「何が?」
「何でもない」
◇ ◇ ◇
夜。
深い。
眠れない。
七柱。
静か。
いつも。
誰か。
喋る。
のに。
今日。
静か。
「フィリア」
呼ぶ。
返事。
少し。
遅い。
『はい』
「ごめん」
『何がですか』
「生命神なら」
「って」
『…………』
「言っちゃいけなかった」
『いいえ』
「よくない」
『私も』
『同じことを』
『思いました』
「え?」
『私は』
『生命神なのに』
声。
震える。
『どうして』
『救えないのか』
「…………」
『傷は』
『治した』
『出血も』
『止めた』
『身体は』
『戻した』
『なのに』
長い。
間。
『ユリウスさんは』
『戻りませんでした』
「フィリア」
『私は』
一拍。
『治せない神様です』
前。
聞いた。
言葉。
治せない。
神様。
あの時。
意味。
違った。
治療。
選ばない。
こと。
治せない。
もの。
ある。
こと。
今日。
もっと。
重い。
『レンさん』
「うん」
『もし』
『私が』
声。
小さい。
『次は』
『絶対に救うと』
『言い始めたら』
「止める」
即答。
フィリア。
少し。
息。
吐く。
『お願いします』
「うん」
『でも』
「何?」
『諦めることも』
『止めてください』
「…………」
「分かった」
それ。
難しい。
でも。
分かった。
◇ ◇ ◇
次の朝。
ほとんど。
寝てない。
アリア。
来る。
顔。
同じ。
寝てない。
「おはよう」
「おはようございます」
「寝た?」
「二時間」
「勝った」
「何時間?」
「三時間」
リナ。
「私六時間」
「強い」
アリア。
紙。
束。
机。
置く。
「昨夜」
「神具の」
「停止記録を」
「確認しました」
「何か分かった?」
「一つ」
「何?」
「神具が」
「止まった時刻」
紙。
見る。
「あなたが」
「管理権限を」
「返還した時刻と」
胸。
重く。
なる。
「同じ?」
アリア。
首。
振る。
「違います」
「…………」
「神具停止の方が」
「先です」
「どれくらい?」
「約四分」
俺。
何も。
言えない。
「じゃあ」
リナ。
「レンが」
「返したから」
「止まったんじゃない」
「少なくとも」
アリア。
「時間上は」
「その因果関係は」
「成立しません」
力。
抜ける。
椅子。
座る。
安心。
した。
自分。
嫌。
になる。
ユリウス。
死んだ。
のに。
俺。
原因。
じゃない。
かも。
それで。
安心。
した。
「レン」
リナ。
「安心していいよ」
「…………」
「でも」
「いい」
「何で」
「自分が」
「殺したかもしれないって」
「思ってたんでしょ」
「うん」
「違う可能性」
「高くなった」
「安心していい」
「ユリウスが」
「戻るわけじゃない」
「うん」
リナ。
少し。
間。
「でも」
「レンが苦しみ続けても」
「ユリウスは戻らない」
言葉。
止まる。
アリア。
目。
伏せる。
「その通りです」
静か。
声。
「謝っても」
「責めても」
「原因が分かっても」
一拍。
「ユリウスは」
「戻りません」
痛い。
でも。
逃げたくない。
◇ ◇ ◇
「もう一つ」
アリア。
紙。
出す。
「停止の」
「四分前」
「何かあった?」
「はい」
「神殿の」
「最下層から」
「信号?」
「神託に似た」
「接続要求が」
「発生しています」
「誰から?」
「不明」
「七柱?」
「照合不一致」
「八つ目」
「可能性はあります」
「内容は?」
アリア。
紙。
俺へ。
向ける。
記号。
並ぶ。
読めない。
でも。
最後。
一部。
文字。
ある。
日本語。
「…………」
「読めますか」
「一部」
『返還』
次。
『確認』
次。
『再接続』
「何て?」
俺。
読む。
「返還」
「確認」
「再接続」
「誰を?」
「分からない」
「続き」
その下。
一文。
『次の管理者を――』
途中。
切れてる。
「…………」
アリア。
「何と?」
「次の管理者を」
「その後」
「ない」
リナ。
「レン?」
「分からない」
でも。
嫌な。
予感。
する。
管理権限。
返した。
返還。
確認。
その前。
神具。
停止。
つまり。
何か。
順番。
俺たち。
思ってた。
逆。
かもしれない。
俺が。
返したから。
始まった。
んじゃない。
何かが。
始まった。
から。
俺に。
管理権限。
渡そうと。
した?
「アリアさん」
「はい」
「俺が」
「管理者に」
「選ばれた時刻」
「調べられる?」
「判定板に」
「記録が残っていれば」
「調べて」
「分かりました」
「それと」
俺。
立つ。
「旧礼拝堂」
アリア。
止まる。
「行く?」
リナ。
「行きたい」
「許可」
「まだ」
「じゃあ?」
「取る」
「誰から?」
俺。
扉。
見る。
「大神官」
昨日。
会わなかった。
今日。
会う。
ユリウス。
死んだ。
だから。
もう。
聞きたい。
じゃない。
聞かなきゃ。
いけない。
「話」
「してくる」
◇ ◇ ◇
大神官。
部屋。
前。
立つ。
リナ。
アリア。
一緒。
昨日。
条件。
出した。
三人。
いや。
本当なら。
四人。
ユリウスも。
いる。
はず。
だった。
扉。
見る。
胸。
痛い。
「レン」
「うん」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「うん」
「でも」
「行く」
扉。
叩く。
中。
声。
「入りなさい」
開く。
広い。
部屋。
奥。
老人。
一人。
白い。
神官服。
立ってる。
大神官。
俺。
見る。
最初の。
言葉。
「ユリウスの件は」
「残念だった」
俺。
止まる。
残念。
その。
言葉。
軽い。
って。
思った。
でも。
違う。
人によって。
悲しみ方。
違う。
決めつけるな。
「はい」
大神官。
続ける。
「だからこそ」
机。
上。
一枚。
紙。
置く。
「これ以上」
「神殿の秩序を」
「乱さないでもらいたい」
「…………」
リナ。
顔。
変わる。
アリア。
黙る。
俺。
紙。
見る。
【レン・アルヴェイン】
名前。
ある。
【古記録閲覧禁止】
【旧礼拝堂立入禁止】
【旧式神具接触禁止】
「俺だけ?」
「そうだ」
「理由」
「危険だからだ」
「誰に?」
「全員に」
「具体的に」
大神官。
俺。
見る。
「君が」
「来てから」
一拍。
「神殿で」
「異常が」
「起きすぎている」
それ。
否定。
できない。
「だから」
「俺が原因?」
「可能性を」
「排除できない」
「それは」
「分かる」
「なら」
「でも」
俺。
紙。
見たまま。
言う。
「ユリウスが」
「死んだ理由」
顔。
上げる。
「調べない理由には」
「ならない」
大神官。
黙る。
「俺を」
「危険だと思うなら」
「見張ってください」
「拘束してもいい」
リナ。
「よくない」
「必要ならね」
「でも」
一歩。
前。
「記録を」
「消さないで」
大神官。
目。
細く。
なる。
「誰が」
「消したと言った」
「まだ」
「誰も」
「じゃあなぜ」
「消えてるから」
二百年前。
〇〇一。
名前。
記録。
切り取られた。
日本語。
翻訳。
ない。
旧礼拝堂。
閉鎖。
拾得物。
移動。
「謝罪して」
「終わりにしたくない」
「ユリウスが」
「死んだ」
「俺が」
「原因じゃないとしても」
「神殿が」
「原因じゃないとしても」
「何かが」
「起きた」
「それを」
一拍。
「残念だった」
「で終わらせないでください」
部屋。
静か。
なる。
大神官。
俺。
長く。
見る。
「君は」
「何を求めている」
「答え」
「それを知って」
「何をする」
昨日。
アリア。
同じ。
こと。
聞いた。
「選びます」
「何を」
「その時」
「決める」
「答えによっては」
「神々を」
「否定することになる」
「それも」
「その時決める」
「神殿を」
「敵に回すかもしれない」
「それも」
怖い。
でも。
言う。
「答え見てから」
「決めます」
大神官。
少し。
笑う。
初めて。
「厄介だな」
「よく」
「言われます」
「そうだろう」
◇ ◇ ◇
大神官。
机。
引き出し。
開ける。
鍵。
一つ。
出す。
黒い。
古い。
鍵。
「何です?」
「旧礼拝堂」
アリア。
息。
呑む。
「許可するのですか」
「条件付きだ」
「条件」
「私も行く」
「…………」
リナ。
「信用していい?」
真正面。
聞く。
大神官。
「しなくていい」
リナ。
少し。
驚く。
「見て」
「判断しなさい」
俺。
その。
言葉。
聞く。
嫌いじゃない。
「いつ?」
「今だ」
「早い」
「気が変わる前に」
「行くぞ」
「大神官って」
「そんな感じ?」
アリア。
「初めて見ます」
◇ ◇ ◇
旧礼拝堂。
閉鎖通路。
入口。
戻る。
昨日。
ユリウス。
立ってた。
場所。
空いてる。
目。
逸らしそうに。
なる。
逸らさない。
大神官。
鍵。
差す。
一回。
回す。
重い。
音。
扉。
開く。
冷たい。
空気。
上がる。
「全員」
大神官。
「勝手に」
「触れるな」
俺。
「俺見て言った?」
「主に」
「信用」
リナ。
「ちょっと」
「またそれ」
階段。
下。
降りる。
古い。
石。
壁。
白い。
根。
ない。
黒い。
水。
ない。
でも。
村の。
地下。
施設。
思い出す。
材質。
少し。
似てる。
「アリアさん」
「私も」
「思いました」
「まだ」
「何も言ってない」
「古い施設でしょう」
「うん」
大神官。
振り返る。
「施設?」
「後で」
「話します」
「今話せ」
「長い」
「なら後だ」
話。
早い。
◇ ◇ ◇
下。
着く。
扉。
大きい。
古い。
大神官。
開ける。
中。
旧礼拝堂。
椅子。
ない。
祭壇。
ない。
普通の。
礼拝堂。
じゃない。
中央。
床。
巨大な。
円。
その。
周り。
七つ。
紋章。
七柱。
そして。
中央。
八つ目。
丸。
割れた。
縦線。
「…………」
リナ。
剣。
握る。
「同じ」
アリア。
「記録に」
「ありません」
俺。
大神官。
見る。
「知ってた?」
老人。
黙る。
「知ってたんですね」
「存在は」
「何の紋章?」
「分からない」
「本当に?」
「本当だ」
中央。
八つ目。
紋章。
その上。
何か。
ある。
透明な。
板。
いや。
違う。
薄い。
四角。
俺。
近づかない。
見る。
「…………」
文字。
ある。
日本語。
「レン?」
「読める」
大神官。
顔。
変わる。
「何と」
俺。
読む。
一行。
『接続に失敗した場合、神を呼ぶな。』
次。
『人間だけで再起動しろ。』
「…………」
アリア。
「続きは?」
ある。
『神が介入すると――』
そこ。
削られてる。
読めない。
「消されてる」
「誰が?」
「分からない」
そして。
一番。
下。
別の。
文字。
『ユリウス』
「…………」
息。
止まる。
「何?」
リナ。
「名前」
「誰の?」
「ユリウス」
全員。
止まる。
「何で」
アリア。
声。
震える。
「二百年前の」
「文字に」
「違う」
俺。
見る。
その。
一行。
他より。
新しい。
傷。
新しい。
「これ」
「最近書かれた」
「いつ?」
「分からない」
大神官。
近づく。
「その下は」
「ある」
読む。
『ユリウスへ。』
次。
『再起動するな。』
誰も。
動かない。
昨日。
ユリウス。
再起動。
した。
そして。
死んだ。
「警告」
リナ。
「ユリウスに」
「向けて?」
「たぶん」
「見てない?」
アリア。
「旧礼拝堂は」
「閉鎖されていました」
「じゃあ」
「誰が」
「ここに書いた?」
答え。
ない。
その時。
フィリア。
声。
する。
『レンさん』
「何?」
『ここに』
『生命反応があります』
「どこ?」
『下です』
「また地下?」
『違います』
フィリア。
声。
迷う。
『この部屋』
「誰も」
「いないけど」
『一人』
『います』
「どこ」
『中央』
八つ目。
紋章。
見る。
『その下です』
大神官。
「あり得ない」
「何で?」
「この下に」
「空間はない」
図面。
思い出す。
空白。
ある。
正式な。
記録。
ない。
場所。
「あるかもしれない」
俺。
言う。
「開ける?」
リナ。
「待って」
今度。
すぐ。
行かない。
「フィリア」
「人?」
『生命反応だけでは』
『断定できません』
「強い?」
『弱いです』
「死にそう?」
『…………』
「フィリア?」
『分かりません』
また。
分からない。
でも。
ユリウス。
昨日。
失った。
だから。
焦る。
助けなきゃ。
って。
思う。
でも。
それ。
正しい?
誰か。
分からない。
何か。
分からない。
開けたら。
どうなる。
分からない。
「レン」
リナ。
「どうする?」
俺。
八つ目。
紋章。
見る。
「調べる」
「開ける?」
「まだ」
大神官。
少し。
俺。
見る。
「意外だ」
「みんな」
「俺を何だと思ってるんです?」
「昨日までなら」
「開けていただろう」
「…………」
否定。
できない。
◇ ◇ ◇
アリア。
床。
調べる。
ユリウス。
いない。
本当なら。
こういう。
時。
規則。
確認。
する。
人。
だった。
「謝っても」
「戻らない」
俺。
小さく。
言う。
リナ。
「うん」
「原因」
「分かっても」
「戻らない」
「うん」
「じゃあ」
「何で調べるんだろ」
リナ。
少し。
考える。
「次」
「…………」
「次の人を」
「同じ目に」
「遭わせないため」
単純。
でも。
たぶん。
それ。
「アリアさん」
「はい」
「ユリウス」
「再起動する時」
「何て言ってた?」
アリア。
止まる。
「私は」
「見ていません」
「そっか」
大神官。
「私が」
「聞いた」
全員。
見る。
「何て?」
老人。
目。
伏せる。
「神具が」
「停止したと」
「報告を受けた時」
「私は」
「再起動を」
「許可した」
「…………」
「ユリウスは」
「反対した」
「え?」
「原因を」
「確認してからだと」
「じゃあ」
「何で」
大神官。
拳。
握る。
「私が」
「急がせた」
「祝福を待つ」
「子どもたちがいる」
「神殿の機能を」
「止めるわけにはいかない」
「そう言った」
アリア。
「それで」
「ユリウスが?」
「最後は」
「自分で」
「再起動を引き受けた」
部屋。
静か。
なる。
大神官。
「私の」
「判断だ」
「私が」
「殺した」
その。
言葉。
昨日の。
俺。
同じ。
「違う」
口。
出る。
大神官。
俺。
見る。
「何が違う」
「まだ」
「原因分かってない」
「だが」
「私が急がせなければ」
「それは」
「そうかもしれない」
「なら」
「でも」
一歩。
近づく。
「全部」
「自分のせいにしたら」
昨日。
アリア。
言った。
言葉。
思い出す。
「ユリウスが」
「自分で選んだことまで」
「奪うことになる」
大神官。
止まる。
アリア。
俺。
見る。
「俺も」
「昨日」
「同じこと」
「しようとした」
「管理権限」
「返したから」
「ユリウスが死んだって」
「でも」
「時間調べたら」
「違った」
「だから」
息。
吐く。
「謝るのは」
「原因分かってからでも」
「遅くない」
「…………」
「いや」
少し。
考える。
「違うな」
「謝るなら」
「謝っていい」
「でも」
「謝ったことで」
「終わらせない」
大神官。
長く。
黙る。
そして。
小さく。
「そうだな」
◇ ◇ ◇
アリア。
床。
一部。
止まる。
「ここ」
八つ目。
紋章。
中央。
細い。
隙間。
ある。
「開く?」
「構造上は」
「鍵」
「見当たりません」
黒い。
判定板。
ない。
持って。
来てない。
よかった。
気も。
する。
その時。
俺の。
木剣。
腰。
少し。
震える。
「…………」
「レン?」
「木剣」
手。
添える。
温かい。
「何で?」
ヴォルグ。
『分からん』
「抜く?」
『待て』
珍しい。
ヴォルグ。
止める。
「何?」
『剣が』
『反応してるんじゃない』
「え?」
『お前に』
『何かが』
『反応してる』
床。
八つ目。
紋章。
薄く。
光る。
「下がって!」
リナ。
全員。
下がる。
光。
線。
走る。
中央。
文字。
浮かぶ。
【再接続】
「…………」
次。
【管理者】
【不在】
次。
【代行】
長い。
間。
【検索】
「嫌な予感」
俺。
言う。
【候補】
文字。
出る。
【レン・アルヴェイン】
「断る」
即答。
大神官。
「何を」
「前にも」
「出た」
「管理者?」
「はい」
「受けない」
床。
文字。
変わる。
【管理権限】
【不要】
「え?」
次。
【代行権限のみ】
【一時付与】
「いらない」
【拒否可能】
「できるんだ」
リナ。
「じゃあ拒否」
俺。
言う。
でも。
その前。
次。
一行。
出る。
【生命維持機構】
【停止まで】
数字。
【00:04:59】
「…………」
一秒。
減る。
【00:04:58】
フィリア。
『レンさん』
声。
変わる。
『下の生命反応が』
『弱くなっています』
「…………」
最悪。
選択。
来た。
代行。
受ける。
何が。
起きる。
分からない。
拒否。
できる。
でも。
拒否したら。
五分。
誰か。
死ぬ。
かもしれない。
昨日。
ユリウス。
失った。
焦るな。
でも。
待ちすぎるな。
「神様」
俺。
呼ぶ。
「答え」
「ある?」
誰も。
すぐ。
答えない。
ノア。
『ありません』
エリオス。
『私にも』
「そっか」
じゃあ。
俺。
決める。
八つ目。
紋章。
見る。
【00:04:41】
謝っても。
戻らない。
だから。
次。
同じ。
後悔。
しないため。
今。
選ぶ。
必要。
ある。
俺は。
床。
前。
しゃがんだ。




