神託ログ38「神様の仕事、お断りします」
【所有者】
【レン・アルヴェイン】
「…………」
もう一回。
見た。
変わらない。
【所有者】
【レン・アルヴェイン】
「いや」
俺。
首。
振る。
「違う」
リナ。
「何が?」
「俺」
「落としてない」
「うん」
「二百年前」
「生まれてない」
「うん」
「この神殿」
「今日初めて来た」
「うん」
「じゃあ」
「違う」
アリア。
黒い。
判定板。
見る。
「表示は」
「一致と出ています」
「表示が」
「間違ってる」
「その可能性はあります」
「あるよね?」
「あります」
よし。
大事。
表示。
イコール。
事実。
じゃない。
俺。
それ。
もう。
知ってる。
「何を」
「拾得物として」
「検出した?」
アリア。
判定板。
確認。
「表示されていません」
「場所は?」
「ありません」
「じゃあ」
「俺の物ってことしか」
「分からない?」
「正確には」
アリア。
俺。
見る。
「この神具が」
「あなたの所有物だと」
「判定した何かが」
「存在する」
「それだけです」
「うん」
その。
言い方。
助かる。
◇ ◇ ◇
――コン。
床。
下。
また。
音。
リナ。
剣。
握る。
「呼ぶんだよね?」
「うん」
アリア。
「警備を呼びます」
「信頼できる?」
「…………」
止まる。
「アリアさん?」
「通常なら」
「今日」
「その言葉」
「信用できない」
「同感です」
北方大神殿。
俺を。
旧礼拝堂へ。
近づけるな。
誰か。
古い。
日本語の紙。
置いた。
拾得物。
消えた。
今。
床下。
音。
警備。
呼べば。
安全。
とは。
限らない。
でも。
俺たちだけ。
行くのも。
違う。
「アリアさんが」
「信用できる人」
「一人だけ」
「呼べる?」
「一人」
アリア。
考える。
「います」
「誰?」
「ユリウス」
「神官?」
「はい」
「どんな人?」
「規則に」
「うるさいです」
「信用できそう」
リナ。
「何で?」
「こういう時」
「規則守る人」
「大事じゃない?」
アリア。
少し。
笑う。
「同意します」
◇ ◇ ◇
十分。
くらい。
して。
男。
来る。
三十代。
背。
高い。
白い。
神官服。
顔。
怖い。
「アリア」
「ユリウス」
「立入禁止資料を」
「閲覧させたと聞いた」
第一声。
それ。
「信用できそう」
俺。
小声。
リナ。
「怒られてるけどね」
ユリウス。
俺たち。
見る。
「あなたが」
「レン・アルヴェイン?」
「はい」
「職業院で」
「神具を破損させた」
「俺が」
「壊したみたいに」
「言わないでもらえます?」
「事実として」
「あなたが触れた直後に」
「破損した」
「…………」
「信用できそう」
リナ。
「今」
「俺に厳しいだけ」
ユリウス。
「何の話だ」
「こっちの話です」
◇ ◇ ◇
事情。
説明。
する。
全部。
じゃない。
必要な。
範囲。
日本語。
二百年前。
拾得物。
黒い判定板。
床下。
音。
そして。
【所有者:レン・アルヴェイン】
ユリウス。
最後まで。
黙って。
聞く。
「確認する」
「はい」
「あなたは」
「旧礼拝堂へ」
「行きたい」
「行きたいです」
「しかし」
「許可は却下された」
「はい」
「だから」
「閉鎖通路から」
「侵入しようとしている」
「してない!」
「してないね」
リナ。
「そこ大事!」
アリア。
「私が証言します」
ユリウス。
俺。
見る。
「では」
「なぜ私を呼んだ」
「行かないため」
「…………」
「俺たちだけだと」
「何かあった時」
「判断偏るから」
ユリウス。
少し。
黙る。
「分かった」
「信じた?」
「侵入しようとする人間が」
「わざわざ」
「規則にうるさい私を」
「呼ぶ理由は薄い」
「アリアさん」
「人選完璧」
「でしょう」
ユリウス。
「褒めてない」
◇ ◇ ◇
床。
確認。
する。
アリア。
棚。
動かす。
その下。
金属。
輪。
ある。
「隠し扉?」
「管理用です」
「開ける?」
ユリウス。
「開けない」
「ですよね」
「まず」
「音の原因を」
「確認する」
「どうやって?」
ユリウス。
膝。
つく。
床。
手。
置く。
目。
閉じる。
淡い。
光。
「神術?」
フィリア。
『生命探知に近いものです』
「ユリウスも?」
『神官であれば』
『簡易的な術式を』
『扱う者はいます』
ユリウス。
目。
開く。
「下に」
「人間の反応はない」
「じゃあ」
「誰が叩いてた?」
「分からない」
「魔物?」
「生命反応は」
「ない」
リナ。
「もっと嫌」
「同意」
その時。
――コン。
全員。
床。
見る。
ユリウス。
もう一度。
探知。
「反応なし」
――コン。
「音は」
「するのに?」
「はい」
アリア。
「機械?」
俺。
「装置とか」
ノア。
『可能性はあります』
「じゃあ」
「合図じゃなくて」
「何かが動いてる音?」
「あり得ます」
ユリウス。
立つ。
「閉鎖通路の」
「管理記録を確認する」
「どこ?」
「ここにある」
アリア。
棚。
奥。
冊子。
持ってくる。
◇ ◇ ◇
古い。
図面。
広げる。
北方大神殿。
断面。
みたい。
「でか」
地下。
思ったより。
深い。
今。
いる。
古記録庫。
その下。
閉鎖通路。
さらに。
下。
旧礼拝堂。
その。
もっと。
下。
空白。
「ここ何?」
俺。
指。
さす。
アリア。
「記録がありません」
「図面なのに?」
「はい」
「じゃあ」
「何で空間だけある?」
「分かりません」
ユリウス。
「増築前の」
「基礎部分だろう」
アリア。
「推測?」
「推測だ」
「了解」
ユリウス。
俺。
見る。
「何だ」
「ちゃんと」
「推測って言う人」
「好きです」
「気持ち悪い」
「ひどい」
リナ。
笑う。
少し。
緊張。
抜ける。
◇ ◇ ◇
閉鎖通路。
記録。
読む。
アリア。
「最後に」
「開放されたのは」
「二十三年前」
「何で?」
「補修」
「異常?」
「なし」
「その前」
「三十一年前」
「理由」
「拾得物回収」
「…………」
俺。
止まる。
「拾得物?」
「はい」
「何を?」
アリア。
次。
行。
読む。
「透明片」
「…………」
リナ。
「さっき」
「なくなったやつ?」
「記録番号が」
「同じです」
「じゃあ」
「三十一年前にも」
「旧礼拝堂に落ちてた?」
「違います」
アリア。
指。
置く。
「保管庫から」
「消失」
「後日」
「閉鎖通路内で」
「発見」
「…………」
「勝手に」
「移動した?」
「記録上は」
「誰かが」
「持ってった可能性」
「あります」
「その人は?」
「不明」
また。
不明。
でも。
同じ。
透明片。
今。
また。
消えた。
「じゃあ」
リナ。
床。
見る。
「下にある?」
誰も。
答えない。
◇ ◇ ◇
黒い。
判定板。
光。
強く。
なる。
【拾得物】
【所有者照合:一致】
次。
【位置情報】
「出る?」
文字。
揺れる。
【下層】
「やっぱり」
アリア。
「待って」
次。
【回収を推奨】
「推奨?」
ユリウス。
「旧式判定板に」
「その機能はあるのか」
アリア。
「知りません」
「検査官用なんだよね?」
「はい」
「落とし物」
「探す機能?」
「聞いたことがありません」
次。
【回収後】
【管理権限を返還してください】
「…………」
俺。
「誰に?」
表示。
変わる。
【管理者】
長い。
間。
【レン・アルヴェイン】
「は?」
今度。
声。
揃った。
俺。
リナ。
アリア。
「管理者?」
ユリウスだけ。
低い。
声。
「何の」
次。
【職業分類補助機構】
【暫定管理者】
【レン・アルヴェイン】
「俺」
「検査官じゃなかった?」
アリア。
「さっきは」
「検査官権限でした」
「昇進?」
リナ。
「嬉しくない」
「待て」
ユリウス。
判定板。
近づく。
「この表示を」
「信用するな」
「うん」
俺。
即答。
ユリウス。
少し。
驚く。
「意外そうな顔」
「もっと」
「食いつくと思った」
「今日」
「それ二回目」
でも。
本当に。
信用。
しない。
俺。
管理者。
そんな。
覚え。
ない。
◇ ◇ ◇
「ノア」
『はい』
「管理者って」
「分かる?」
『現行の職業制度に』
『個人へそのような権限を』
『直接付与する仕組みは』
『確認できません』
「昔は?」
『不明です』
「エリオス」
『私も』
『知らない』
「七柱の仕事?」
エリオス。
少し。
間。
『職業制度の管理は』
『我々の役割の一部だ』
「じゃあ」
「俺に出てる管理者」
「七柱と同じ?」
『分からない』
「上?」
『分からない』
「下?」
『分からない』
「何も分からない」
『すまない』
「責めてない」
今。
本当に。
責める。
気。
ない。
むしろ。
嫌な。
予感。
する。
◇ ◇ ◇
「もし」
俺。
言う。
「俺が」
「この管理権限」
「受けたら」
「何ができる?」
アリア。
「分かりません」
ノア。
『不明です』
「じゃあ」
「受けない」
リナ。
「早い」
「分からない権限」
「いらないだろ」
「成長した」
「でしょ?」
「ちょっとだけ」
「ちょっとか」
判定板。
表示。
変わる。
【管理権限の返還には】
【拾得物の回収が必要です】
「いや」
俺。
「だから」
「いらないって」
次。
【管理者不在】
【一部機能停止中】
「俺のせいみたいに」
「言うな」
次。
【管理者による】
【再起動を推奨】
「しません」
声。
出して。
言う。
何も。
起きない。
「聞こえてる?」
リナ。
「知らない」
「じゃあ」
「何で声出したの」
「気持ち」
◇ ◇ ◇
ユリウス。
図面。
見てる。
「旧礼拝堂へ」
「行く必要はある」
「え?」
俺。
見る。
「許可」
「却下されたけど」
「だから」
「正式に」
「再申請する」
「通る?」
「通す」
「強い」
アリア。
「ユリウスは」
「こういう人です」
「規則にうるさいんじゃ?」
「規則に従って」
「規則を使います」
「めっちゃ信用できる」
ユリウス。
「やめろ」
「何で?」
「気味が悪い」
「ひどいな」
◇ ◇ ◇
その時。
扉。
叩く。
三回。
普通の。
ノック。
全員。
ちょっと。
びくっ。
なる。
「普通の音で」
「びっくりした」
リナ。
「俺も」
アリア。
扉。
開けない。
「誰です」
「大神官補佐です」
男。
声。
外。
アリア。
ユリウス。
見る。
ユリウス。
頷く。
扉。
開く。
男。
入る。
五十代。
灰色。
髪。
白い。
神官服。
装飾。
多い。
「ユリウス」
「はい」
「なぜ」
「ここにいる」
「異常報告を」
「受けました」
「誰から」
「アリアから」
男。
アリア。
見る。
「私は」
「報告していません」
空気。
変わる。
「…………」
大神官補佐。
少し。
止まる。
「では」
「誰から?」
ユリウス。
「こちらが」
「聞きたい」
男。
笑う。
「行き違いでしょう」
「そうですか」
ユリウス。
顔。
変わらない。
「それで」
「何の用です」
「レン・アルヴェインを」
「大神官がお呼びです」
「俺?」
「はい」
「何で?」
「お話があると」
「内容」
「直接」
「一人で?」
男。
「可能であれば」
「無理です」
即答。
リナ。
「早い」
「今日は」
「知らない人に」
「ついていかない日」
「子ども?」
「大事」
男。
俺。
見る。
「大神官からの」
「正式な召喚です」
「命令?」
「要請です」
「断れる?」
「…………」
間。
「要請なら」
俺。
「断れますよね」
男。
笑顔。
少し。
固い。
「もちろん」
「じゃあ」
「今は行きません」
「理由を」
「伺っても?」
「ここで」
「やることあるんで」
「何を?」
「それ」
「あなたに言う必要あります?」
リナ。
小声。
「強くなった」
「ちょっと怖い?」
「ちょっと」
◇ ◇ ◇
男。
判定板。
見る。
ほんの。
一瞬。
顔。
変わる。
俺。
見逃さない。
「これ」
「知ってます?」
「旧式の」
「神具ですね」
「管理者って」
「知ってる?」
「存じません」
早い。
「表示」
「見ました?」
「いいえ」
見た。
たぶん。
でも。
決めない。
「じゃあ」
「大神官に」
「伝えてください」
「何と?」
俺。
少し。
考える。
「俺も」
「話はしたい」
「ただし」
「リナ」
「アリアさん」
「ユリウスさん」
「同席」
「それは」
「無理なら」
「会わない」
男。
目。
細く。
なる。
「神殿の」
「内部事情に関わる話です」
「俺の名前」
「内部で回してるのに?」
「…………」
「俺」
「当事者ですよね」
男。
答えない。
「それと」
俺。
続ける。
「旧礼拝堂」
「立入許可」
「再申請します」
「認められません」
「早いですね」
「危険です」
「何が?」
「老朽化」
「それ以外」
「ありません」
「本当に?」
「はい」
即答。
また。
「じゃあ」
「透明な拾得物が」
「二回も」
「そこへ移動した理由」
男。
止まる。
ほんの。
一瞬。
でも。
今度。
全員。
見た。
「……何の話です?」
ユリウス。
前。
出る。
「あなたは」
「知っているな」
「何を」
「旧礼拝堂を」
「神官ですから」
「違う」
ユリウス。
声。
低い。
「閉鎖理由を」
沈黙。
◇ ◇ ◇
「帰ってください」
アリア。
言う。
男。
見る。
「記録官が」
「大神官補佐へ」
「命令するのですか」
「ここは」
「私の管理区域です」
「許可なく」
「閲覧資料へ近づくことを」
「認めません」
強い。
アリア。
ちょっと。
かっこいい。
男。
俺。
最後。
見る。
「レン・アルヴェイン」
「はい」
「あなたは」
「自分が」
「何をしているのか」
「分かっていますか」
「分かってません」
男。
少し。
驚く。
「だから」
「調べてます」
「知らない方が」
「幸せなこともあります」
「それ」
「最近」
「一番嫌いな言葉です」
男。
黙る。
「神々は」
「あなたを」
「導いている」
「はい」
「なら」
「任せればいい」
「それは」
「神様の仕事でしょう」
「…………」
「俺の仕事じゃない」
男。
「では」
「あなたは」
「何をする」
「自分のこと」
「自分で決めます」
「神々の導きを」
「拒むと?」
七柱。
静か。
聞いてる。
俺。
答える。
「必要なら」
「拒みます」
男。
顔。
固く。
なる。
「神に」
「逆らうことになります」
「違う」
自分でも。
驚く。
くらい。
すぐ。
出た。
「神様が」
「決めるべきことと」
「俺が」
「決めること」
一拍。
「分けるだけです」
「それが」
「間違っていたら?」
「選び直す」
「責任は?」
「俺が持つ」
怖い。
本当は。
そんな。
簡単じゃない。
でも。
誰かに。
渡したくない。
「神様の仕事」
「俺に」
「押しつけないでください」
男。
何も。
言わない。
「俺も」
「神様の仕事」
「勝手に奪わない」
「だから」
判定板。
見る。
【管理者】
そんな。
表示。
出ても。
「神様の代わり」
「やる気ないです」
◇ ◇ ◇
大神官補佐。
帰る。
扉。
閉まる。
しばらく。
誰も。
喋らない。
「…………」
俺。
息。
吐く。
「怖かった」
リナ。
「急に弱くなった」
「ずっと怖かった!」
「顔」
「強かったよ」
「演技!」
アリア。
「半分くらい」
「本気だったでしょう」
「七割」
「増えた」
ユリウス。
「馬鹿だな」
「え?」
「大神官補佐へ」
「あそこまで言う人間は」
「久しぶりに見た」
「怒られる?」
「怒られる」
「帰ろうかな」
「遅い」
つらい。
◇ ◇ ◇
「神様」
俺。
呼ぶ。
「さっき」
「聞いてた?」
ガルド。
『全部な』
「怒った?」
『何でだ』
「導き」
「拒むって」
セレナ。
『内容によるわ』
メルク。
『損なら止める』
「商神だな」
ヴォルグ。
『自分で選べ』
フィリア。
『私は』
『レンさんが』
『嫌だと言える方が』
『安心します』
ノア。
『命令と』
『助言は異なります』
「うん」
最後。
エリオス。
『レン』
「何?」
『一つだけ』
『訂正する』
「何を?」
『神の仕事を』
『奪う必要はない』
「うん」
『だが』
『神の仕事だからと』
『人が考えることを』
『やめる必要もない』
「…………」
『我々が間違えば』
『止めろ』
『お前が間違えば』
『我々が止める』
『それでいい』
少し。
笑う。
「神様っぽい」
ガルド。
『俺たち神だぞ!?』
「忘れてた」
『おい!』
◇ ◇ ◇
ユリウス。
閉鎖通路。
再申請。
手続き。
始める。
アリア。
拾得物。
記録。
調べる。
リナ。
俺。
見張る。
「何で俺?」
「勝手に」
「何か触らないように」
「信用」
「ちょっとある」
「ちょっとか」
俺。
黒い。
判定板。
前。
座る。
表示。
まだ。
【管理者:レン・アルヴェイン】
「…………」
「違う」
小さく。
言う。
すると。
表示。
変わる。
【管理権限を】
【受諾しますか】
【YES/NO】
「選べるんだ」
リナ。
「みたい」
「押す?」
「うん」
今度。
迷わない。
NO。
触れる。
光。
揺れる。
【確認】
【管理権限を拒否しますか】
【YES/NO】
「しつこい」
もう一度。
YES。
【警告】
【管理者不在により】
【一部機能が停止します】
「それでも?」
リナ。
「うん」
「困る人」
「いるかもよ」
手。
止まる。
それ。
嫌。
でも。
だから。
受ける?
何をするか。
分からない。
責任。
知らない。
誰が。
作ったか。
分からない。
そんな。
権限。
俺が。
持つ。
方が。
怖い。
「分からないものを」
「引き受けて」
「誰か助けた気になる方が」
「危ない」
フィリア。
何も。
言わない。
でも。
たぶん。
聞いてる。
「拒否する」
YES。
押す。
【管理権限】
【返還】
一瞬。
光。
消える。
そして。
【管理者】
【不在】
「終わった」
リナ。
「たぶん」
次。
表示。
出る。
【暫定検査官権限は】
【維持されます】
「そっちは残るんだ」
「検査官」
「レン」
「嫌な響き」
でも。
管理者。
じゃない。
少し。
ほっと。
する。
その瞬間。
――ガチャン。
床。
下。
大きな。
音。
「何!?」
アリア。
振り返る。
ユリウス。
床。
見る。
閉鎖通路。
入口。
金属。
輪。
勝手に。
浮いてる。
「開いた?」
「いや」
ユリウス。
近づく。
「鍵が」
「外れた」
「俺」
「何もしてない」
「見てた」
リナ。
「今回は」
「本当に」
「今回はって何」
アリア。
図面。
見る。
「管理権限を」
「返したから?」
ノア。
『可能性はあります』
「何で?」
『不明です』
金属。
蓋。
隙間。
少し。
開く。
下。
暗い。
そこから。
何か。
転がる。
カラン。
床。
止まる。
透明。
小さな。
破片。
「…………」
アリア。
息。
呑む。
「消えた」
「拾得物」
俺。
しゃがまない。
近づかない。
見る。
だけ。
透明な。
破片。
その。
内側。
今まで。
見えなかった。
小さな。
文字。
ある。
日本語。
「レン」
リナ。
「読める?」
「…………うん」
一文字。
じゃない。
短い。
文章。
『返してくれて、ありがとう。』
「何て?」
俺。
すぐ。
答えられない。
返した。
管理権限。
誰に。
返した?
神様?
七柱。
違う。
少なくとも。
あいつら。
何も。
知らない。
「レン?」
「返してくれて」
喉。
鳴る。
「ありがとう」
部屋。
静か。
なる。
その直後。
黒い。
判定板。
最後に。
一度だけ。
光った。
【管理権限】
【返還先を確認】
「…………」
次。
【所有者】
文字。
出ない。
代わり。
知らない。
記号。
一つ。
八つ目の。
紋章。
丸。
その中。
縦に。
一本。
割れた。
形。
そして。
判定板。
完全に。
沈黙。
した。
俺は。
透明な。
落とし物。
見た。
二百年前。
誰かが。
落とした。
はずの。
もの。
なのに。
それは。
まるで。
ずっと。
待っていた。
みたいだった。
俺が。
神様の。
代わりに。
ならないと。
決める。
その時を。




