神託ログ37「神殿の落とし物」
『神殿は、もう神のものじゃない。』
紙。
一枚。
床。
その文字を。
俺は。
もう一度。
読んだ。
意味は。
変わらない。
「……誰が置いた?」
リナ。
廊下。
見る。
誰も。
いない。
左右。
長い。
石造りの。
通路。
足音。
なし。
扉。
閉まってる。
「アリアさん」
「はい」
「ここ」
「誰でも入れる?」
「いいえ」
「じゃあ」
「入れる人は?」
「記録官」
「上位神官」
「管理権限を持つ者」
「何人?」
「現在」
「十一名」
「多いな」
「ですが」
アリア。
紙。
見る。
「この記録庫へ」
「今日」
「入室申請を出したのは」
「私たちだけです」
「申請なしなら?」
「規則上は」
「入れません」
「規則上は」
「はい」
規則。
守る人間しか。
止められない。
言葉。
でもある。
「紙」
「いつからあった?」
リナ。
「さっき」
「音する前はなかった」
「うん」
「じゃあ」
「誰か近くにいた」
「たぶん」
「追う?」
一瞬。
考える。
「追わない」
リナ。
少し。
驚く。
「いいの?」
「今追って」
「俺たち全員」
「ここ離れる方が嫌」
黒い。
旧式判定板。
古い。
記録。
二百年前の。
日本語。
全部。
ここ。
置いたまま。
「まず」
「これ守る」
アリア。
俺。
見る。
「賛成です」
◇ ◇ ◇
紙。
直接。
触らない。
アリアが。
薄い。
木板。
二枚。
使って。
挟む。
「指紋とか」
「取れない?」
「シモン?」
「あ」
ない。
たぶん。
そういう。
技術。
「触った跡」
「魔力痕なら」
「調べられる可能性があります」
「セレナ」
【魔法神セレナ】
『見てるわ』
「分かる?」
『微量の魔力はある』
「誰の?」
『そこまでは』
『分からない』
「神様の?」
『違うと思う』
「思う?」
『断定はできない』
「了解」
ちゃんと。
推測。
として。
聞く。
「ノア」
【知識神ノア】
『はい』
「紙は?」
『一般的な紙に見えます』
「この神殿のもの?」
『判断できません』
「文字は?」
『認識できません』
やっぱり。
七柱。
読めない。
俺だけ。
読める。
『検査するな。』
『神殿は、もう神のものじゃない。』
「…………」
これ。
俺に。
向けて。
書いた。
可能性。
高い。
だって。
他の人。
読めない。
なら。
「アリアさん」
「何です?」
「これ」
「誰かが今日書いたとは」
「限らないよね」
アリア。
止まる。
「どういう意味です?」
「二百年前に」
「書かれたものを」
紙。
見る。
「今日」
「ここへ置いたかもしれない」
「…………」
リナ。
「誰かが」
「ずっと持ってた?」
「それか」
「どこかに隠してた」
アリア。
紙。
端。
見る。
「紙そのものの」
「年代を調べます」
「できる?」
「専門の記録官なら」
「誰?」
「私です」
「かっこいい」
「記録官ですから」
少し。
得意そう。
初めて。
見た。
◇ ◇ ◇
アリア。
机。
上。
紙。
照明。
当てる。
厚さ。
見る。
繊維。
見る。
匂い。
嗅ぐ。
「食べないよね?」
「食べません」
「レン」
リナ。
「静かに」
「はい」
待つ。
しばらく。
アリア。
顔。
上げる。
「古いです」
「どれくらい?」
「正確には」
「分かりません」
「でも?」
「少なくとも」
「最近作られた紙ではありません」
「二百年?」
「そこまでは」
「断定できません」
「数十年単位?」
「可能性はあります」
「じゃあ」
「今日」
「書いたんじゃない?」
「インクも」
「新しくありません」
「…………」
リナ。
「昔の手紙を」
「誰かが今置いた」
「その可能性が高いです」
誰か。
古い。
日本語。
持ってた。
俺が。
来るまで。
あるいは。
俺が。
ここへ。
来るまで。
「俺」
「来るの知ってた?」
誰に。
聞いた。
わけでもない。
でも。
口。
出た。
アリア。
答えない。
リナも。
答えない。
答え。
ない。
◇ ◇ ◇
「一回」
「黒い板」
「止められない?」
俺。
旧式判定板。
見る。
まだ。
表示。
残ってる。
【検査対象:北方大神殿】
【YES/NO】
「アリアさん」
「NOなら」
「安全?」
「通常なら」
「検査を終了します」
「通常なら」
「はい」
最近。
その。
通常。
俺に。
当てはまった。
試し。
ない。
「何もしない」
「って選択は?」
「時間経過で」
「終了する可能性もあります」
「じゃあ」
「触らない」
リナ。
「えらい」
「褒め方が」
「子ども」
「昨日より成長」
「それ」
「俺が言ってたやつ」
アリア。
「少し」
「安心しました」
「俺」
「そんな危険人物?」
二人。
黙る。
「答えて?」
◇ ◇ ◇
「この紙」
「保管場所」
「分かる?」
俺。
聞く。
アリア。
「同じ形式の紙を」
「探します」
「日本語の?」
「文字ではなく」
「紙質です」
「なるほど」
棚。
一つ。
一つ。
確認。
する。
俺と。
リナも。
手伝う。
「これは?」
「違います」
「これは?」
「新しい」
「これは?」
「それは帳簿」
「紙は?」
「違います」
「難しいな」
「記録官を」
「何だと思ってるんです?」
「本を」
「いっぱい読む人」
「半分くらいしか」
「合っていません」
「半分合ってた」
しばらく。
探す。
アリア。
一冊。
薄い。
冊子。
止まる。
「これ」
「同じ?」
「近い」
棚。
上。
札。
ある。
「何の棚?」
「神殿内」
「拾得物」
「…………」
「落とし物?」
リナ。
「はい」
「古記録庫に?」
「長期間」
「持ち主が現れず」
「処分できなかった物です」
「何で」
「処分できない?」
アリア。
冊子。
開く。
「神具」
「宗教資料」
「判別不能品」
ページ。
めくる。
「分類できないものは」
「ここへ」
「分類できないもの」
俺。
「仲間」
リナ。
「レンの棚」
「人を」
「落とし物にしないで」
◇ ◇ ◇
拾得物。
記録。
見る。
古い。
一覧。
「紙」
「いつ拾われた?」
アリア。
指。
追う。
「…………」
止まる。
「何?」
「記録が」
「あります」
「いつ?」
「百九十八年前」
「ほぼ」
「二百年前」
「はい」
「場所」
アリア。
読む。
「北方大神殿」
「旧礼拝堂」
「拾った人」
「記録なし」
「持ち主」
「不明」
「内容」
「判読不能」
俺。
紙。
見る。
「これだ」
たぶん。
同じ。
日本語。
「他にも」
「落とし物ある?」
「同時期に?」
「うん」
アリア。
記録。
追う。
一つ。
二つ。
三つ。
「あります」
「何個?」
「五点」
「見たい」
「全部?」
「全部」
アリア。
ため息。
「あなた」
「本当に」
「質問多い?」
「いえ」
鍵。
束。
持つ。
「面倒です」
「悪化した」
◇ ◇ ◇
拾得物。
保管庫。
さらに。
地下。
「まだ下あるの?」
リナ。
「北方大神殿は」
「古い建物の上に」
「増築を繰り返しています」
「地下何階?」
「正式には四層」
「正式じゃないのは?」
アリア。
止まる。
「あります」
「何層?」
「分かりません」
「…………」
「今」
「聞かなかったことにして」
「無理」
「ですよね」
階段。
下りる。
鉄。
扉。
鍵。
二つ。
魔力。
認証。
一つ。
「厳重」
「拾得物ですから」
「落とし物に」
「厳重すぎない?」
「中には」
「危険物もあります」
「先に言って」
「今言いました」
この人。
強い。
◇ ◇ ◇
中。
棚。
箱。
大量。
全部。
番号。
振られてる。
アリア。
帳簿。
見る。
「百九十八年前」
「同日」
「旧礼拝堂」
「五点」
「一つ目」
箱。
出す。
小さい。
「開けます」
「はい」
中。
金属。
板。
半分。
割れてる。
「何これ」
リナ。
「不明です」
俺。
見る。
文字。
ない。
でも。
形。
どこか。
変。
薄い。
平たい。
角。
丸い。
「…………」
触らない。
見る。
だけ。
「レン?」
「知らない」
「見覚えは?」
「ない」
次。
二つ目。
布。
古い。
茶色。
元の。
色。
分からない。
「服?」
「布片です」
何も。
分からない。
三つ目。
小さい。
透明な。
破片。
「ガラス?」
リナ。
「材質不明」
アリア。
「加工方法も」
「当時の記録では不明」
俺。
近づく。
透明。
少し。
曲がってる。
「…………」
見覚え。
ある。
気が。
する。
でも。
断定。
できない。
「何か分かる?」
「たぶん」
「何かの容器」
「根拠は?」
「曲がり方」
「推測?」
「推測」
アリア。
頷く。
「続けます」
四つ目。
紙。
束。
「これ」
胸。
鳴る。
日本語。
ある。
「読める」
「何て?」
でも。
ほとんど。
黒く。
汚れてる。
読める。
ところ。
少ない。
『……失敗した。』
次。
『俺は……』
消えてる。
次。
『職業は……』
消えてる。
次。
『神……』
破れてる。
「少ししか」
「読めない」
アリア。
「読める部分だけ」
俺。
伝える。
「〇〇一?」
リナ。
「可能性はある」
「同じ人?」
「分からない」
決めない。
まだ。
「最後」
アリア。
五つ目。
箱。
一番。
小さい。
手のひら。
くらい。
開く。
中。
「…………」
俺。
止まる。
「何?」
リナ。
小さな。
金属。
輪。
その先。
細長い。
金属。
板。
「これ」
知ってる。
「何です?」
アリア。
俺。
手。
出しかけて。
止める。
「触っていい?」
「待って」
アリア。
魔力。
確認。
「反応なし」
セレナ。
『私も』
『魔力は感じない』
「触る」
「慎重に」
指。
触れる。
冷たい。
持ち上げる。
金属。
輪。
二つ。
細い。
板。
「鍵?」
リナ。
「違う」
「じゃあ?」
俺。
ひっくり返す。
片側。
小さい。
刃。
「爪切り」
「…………」
「ツメキリ?」
「爪」
「切るやつ」
リナ。
自分の。
爪。
見る。
「これで?」
「うん」
「小さくない?」
「爪だから」
「剣の方が」
「早くない?」
「怖すぎる」
二百年前。
北方大神殿。
落とし物。
爪切り。
この世界。
来て。
初めて。
見た。
完全に。
俺の。
世界の。
日用品。
「アリアさん」
「はい」
「これ」
声。
少し。
震える。
「俺の世界の」
「道具です」
アリア。
息。
止まる。
「確実?」
「たぶん」
「…………」
「ごめん」
「百%って言いたいけど」
爪切り。
見る。
「似たものが」
「この世界に」
「絶対ないとは」
「言えない」
アリア。
少し。
目。
見開く。
「そこで」
「断定しないんですね」
「最近」
「怒られるんで」
ヴォルグ。
『誰にだ』
「主に神様」
◇ ◇ ◇
爪切り。
側面。
傷。
ある。
文字。
小さい。
「…………」
「レン?」
目。
近づける。
アルファベット。
じゃない。
数字。
「読める?」
アリア。
「数字」
「何と?」
「一〇九」
「百九?」
「うん」
109。
胸。
妙に。
ざわつく。
「何の数字?」
「分からない」
「製品番号?」
「かもしれない」
「持ち主が」
「刻んだ?」
「それもある」
でも。
109。
今の。
俺。
【第109代育成対象】
思い出す。
「…………」
「神様」
呼ぶ。
「俺」
「第何代だっけ」
ノア。
『第109代です』
部屋。
冷える。
気が。
した。
「どうしたの?」
リナ。
「これ」
「一〇九って」
「書いてある」
「…………」
アリア。
爪切り。
見る。
「あなたも」
「109」
「うん」
「偶然?」
「分からない」
数字。
同じ。
だけ。
それ以上。
まだ。
ない。
「前の」
「108代は?」
俺。
聞く。
ノア。
『記録上』
『存在します』
「〇〇一?」
『結びつける根拠はありません』
「うん」
そこ。
大事。
〇〇一。
育成対象。
108。
同じ。
とは。
限らない。
「第109代って」
「何を数えてる?」
ノア。
沈黙。
「ノア?」
『育成対象として』
『登録された個体の』
『通算番号です』
「いつから?」
『現行記録上の』
『第一代から』
「何年前?」
『…………』
「分からない?」
『最古記録の』
『年代情報が』
『欠落しています』
「またか」
アリア。
「その話」
「詳しく」
「後で」
爪切り。
見る。
109。
偶然。
かもしれない。
でも。
捨てられない。
◇ ◇ ◇
「五点」
俺。
確認。
する。
「金属板」
「布」
「透明な破片」
「日本語の紙」
「爪切り」
「全部」
「同じ日に?」
「はい」
「同じ場所?」
「旧礼拝堂」
「誰が拾ったか」
「分からない」
「はい」
「旧礼拝堂」
「今ある?」
アリア。
黙る。
「ある?」
「あります」
「行ける?」
「通常は」
「立入禁止です」
「理由」
「老朽化」
「それだけ?」
アリア。
答えない。
「アリアさん」
「もう一つ」
「何?」
「旧礼拝堂は」
「北方大神殿の」
「最下層にあります」
「正式な四層より?」
「下です」
「さっき」
「何層あるか分からないって」
「はい」
「そこ?」
「その一つです」
リナ。
「行くの?」
俺。
考える。
行きたい。
めちゃくちゃ。
でも。
今。
勝手に。
行く。
違う。
「許可」
「取れる?」
アリア。
「難しいです」
「誰の?」
「大神官」
「会える?」
「申請はできます」
「じゃあ」
「申請する」
リナ。
「忍び込まない?」
「俺を」
「何だと思ってる?」
「ちょっと安心」
「信用を」
「取り戻してる」
「ちょっとね」
ちょっと。
◇ ◇ ◇
拾得物。
全部。
元。
戻す。
爪切り。
最後。
箱。
入れる。
手。
止まる。
「レン?」
「これ」
「何?」
「二百年」
「ここにあったんだよね」
「記録上は」
「持ち主」
「戻ってこなかった」
「そうですね」
その人。
どうなった。
死んだ。
帰った。
消えた。
捕まった。
逃げた。
分からない。
でも。
爪。
切る。
くらい。
普通の。
生活。
してた。
人。
だった。
かもしれない。
試験対象〇〇一。
日本語。
次に来る俺。
同じ。
人。
かもしれない。
違う。
かもしれない。
「戻そう」
箱。
閉じる。
◇ ◇ ◇
記録庫。
戻る。
黒い。
判定板。
見る。
表示。
消えてる。
「終わった?」
アリア。
確認。
「待機状態です」
「よかった」
「検査は?」
「しない」
リナ。
即答。
「俺に聞いて?」
「する?」
「今日はしない」
「よし」
アリア。
紙。
一枚。
出す。
「旧礼拝堂」
「立入申請」
「今書く?」
「はい」
「理由」
「何て?」
「史料調査」
「異世界人の」
「落とし物探し」
「却下されます」
「ですよね」
書く。
名前。
レン・アルヴェイン。
職業。
欄。
止まる。
「…………」
リナ。
覗く。
「なし」
「分かってる」
書く。
【職業:なし】
前なら。
嫌。
だった。
今。
少し。
慣れた。
良いのか。
悪いのか。
分からない。
「提出してきます」
アリア。
紙。
持つ。
「どれくらい?」
「早ければ」
「今日中」
「遅ければ?」
「数日」
「長い」
「神殿ですから」
「理由になってる?」
「なっています」
アリア。
部屋。
出る。
俺。
リナ。
残る。
◇ ◇ ◇
「レン」
「何?」
「109」
「うん」
「気になる?」
「めちゃくちゃ」
「偶然かも」
「うん」
「でも」
「偶然じゃないかも」
「うん」
「便利だね」
「その返事」
「今」
「何も決められないから」
リナ。
机。
寄りかかる。
「私なら」
「怖いかも」
「俺も怖い」
「何が一番?」
少し。
考える。
「誰かに」
「決められてたこと」
「何を?」
「俺が来ること」
「俺が109になること」
「俺が」
「なしになること」
「全部」
もし。
二百年前。
誰かが。
知ってた。
なら。
俺の。
選択。
どこから。
俺の。
もの。
だった。
「でも」
リナ。
「何?」
「今日」
「検査しなかったの」
「レンでしょ」
「…………」
「誰かに」
「決められてた?」
「いや」
「旧礼拝堂」
「勝手に行かないって」
「決めたのも?」
「俺」
「じゃあ」
リナ。
肩。
すくめる。
「今は」
「レンじゃん」
「…………」
単純。
でも。
ちょっと。
効く。
「ありがとう」
「狩剣士だから」
「絶対関係ない」
◇ ◇ ◇
一時間。
くらい。
して。
アリア。
戻る。
早い。
「許可?」
俺。
立つ。
アリア。
顔。
固い。
「却下されました」
「早っ」
「理由は?」
「老朽化」
「危険区域」
「それだけ?」
「表向きは」
「表向き」
アリア。
扉。
閉める。
鍵。
かける。
「何?」
「申請書を」
「提出した時」
声。
小さい。
「大神官補佐から」
「言われました」
「何て?」
「レン・アルヴェインを」
「旧礼拝堂へ」
「近づけるな」
「…………」
「俺」
「名指し?」
「はい」
「何で?」
「聞きました」
「答えは?」
「ありません」
リナ。
立つ。
「じゃあ」
「向こう」
「レンのこと知ってる」
「少なくとも」
「名前は」
アリア。
続ける。
「それだけではありません」
「何?」
「拾得物の」
「確認をしました」
「さっきの?」
「はい」
「五点」
「そのうち」
アリア。
一瞬。
言葉。
止める。
「一つ」
「なくなっています」
「…………」
「何が?」
嫌な。
予感。
する。
「紙?」
「違います」
「金属板?」
「違う」
「爪切り?」
「あります」
「じゃあ」
アリア。
俺。
見る。
「透明な破片です」
「…………」
「いつ?」
「分かりません」
「さっき」
「俺たち見たよね?」
「はい」
「その後?」
「保管庫を」
「施錠しました」
「鍵は?」
「私が持っています」
「他に開けられる人」
「上位管理権限なら」
「いる?」
「います」
「誰?」
アリア。
答えようと。
した。
その時。
――コン。
音。
机。
下。
「…………」
全員。
止まる。
リナ。
剣。
抜く。
「何」
「分からない」
もう一度。
――コン。
机。
じゃない。
床。
下。
「地下?」
アリア。
顔。
青い。
「この下は」
「何?」
「正式な」
「記録庫ではありません」
三回目。
――コン。
――コン。
今度。
二回。
まるで。
合図。
俺。
床。
見る。
「アリアさん」
「この下」
「何がある?」
長い。
沈黙。
「旧礼拝堂へ」
「続く」
「閉鎖通路です」
「…………」
リナ。
「許可」
「却下されたよね」
「うん」
また。
――コン。
床。
下。
誰か。
いる。
「どうする?」
リナ。
聞く。
俺。
すぐ。
答えない。
行きたい。
でも。
罠。
かもしれない。
紙。
検査するな。
旧礼拝堂。
近づけるな。
落とし物。
一つ。
消えた。
そして。
床。
下。
音。
情報。
足りない。
「アリアさん」
「はい」
「この部屋」
「他の出口ある?」
「ありません」
「床下へ」
「行く方法」
「あります」
「開けないで」
リナ。
俺。
見る。
「お」
「何?」
「同じ意見」
「珍しい?」
「ちょっと」
まず。
人。
呼ぶ。
それから。
確認。
する。
俺。
一人で。
行かない。
そう。
決めた。
瞬間。
床。
下。
音。
止まる。
静か。
なる。
そして。
黒い。
旧式判定板。
勝手に。
光った。
「…………」
誰も。
触ってない。
表示。
一行。
【拾得物を検出】
「落とし物?」
次。
【所有者照合】
長い。
沈黙。
【一致】
「誰と?」
アリア。
声。
震える。
文字。
変わる。
【所有者】
一拍。
【レン・アルヴェイン】
「…………は?」
俺。
何も。
落としてない。
少なくとも。
この神殿では。
なのに。
二百年前から。
ここに。
あった。
落とし物。
その。
何かを。
旧い。
判定板は。
俺のものだと。
言った。




