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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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33/71

神託ログ33 五十人分の一秒

『その施設は』


『我々が』


『管理を引き継ぐ以前のものだ』



エリオスの。


声。



地下。



古い扉。



その向こうから。



黒い水。



染み出している。



足元では。



白い根。



それを。



吸い続けてる。



そして。



背後。



五十人近い。



村人。



根に。



繋がれたまま。



眠ってる。



「管理を」


「引き継ぐ以前?」



俺。



聞く。



「誰から?」



『今は』


「今は、じゃない」



言葉。



被せる。



「誰から?」



沈黙。



「エリオス」



『…………』



「答えて」



『確証がない』



「知らない?」



『記録が』


『欠けている』



「じゃあ」


「分かってることだけ」



エリオス。



少し。



黙る。



『その施設は』


『現行の神殿管理機構とは』


『異なる形式で作られている』



「七柱が」


「作ったんじゃない」



『そうだ』



「いつ?」



『正確には分からない』



「何のため?」



『それもだ』



「…………」



分からない。



また。



でも。



今。



それを。



全部。



聞いてる。



時間。



ない。



黒い水。



一滴。



落ちる。



白い根。



黒く。



染まる。



フィリア。



『レンさん』



「うん」



『根の生命反応が』


『また低下しています』



「どれくらい?」



『先ほどの治癒で』


『持ち直しました』



一拍。



『ですが』


『長くは保ちません』



「人は?」



『根と連動しています』



「…………」



優先。



決める。



過去。



じゃない。



今。



「エリオス」



『何だ』



「この話」


「あとで全部聞く」



『…………』



「逃げないでね」



長い。



間。



『約束しよう』



「よし」



俺。



扉。



見る。



「今は」


「こっち」



◇ ◇ ◇



「開ける方法」



俺。



金属の。



扉。



見る。



取っ手。



ない。



鍵穴。



ない。



中央。



丸い。



窪み。



その周り。



文字。



「ノア」



『解析を続けています』



「どれくらい?」



『不明です』



「急いで」



『はい』



リナ。



扉。



近く。



しゃがむ。



「これ」


「触っていい?」



「待って」



セレナ。



『魔力反応を確認するわ』



少し。



間。



『…………薄い』



「ある?」



『ある』



「動いてる?」



『ほとんど』


『死んでるような状態』



「魔道具?」



『似ているけれど』


『構造が違う』



「また違う」



この世界。



来てから。



違う。



分からない。



記録がない。



多すぎる。



「ヴォルグ」



『見ている』



「壊さず開けられる?」



『現物に触れられん』



「見た感じ」



『分からん』



「潔いな」



『分からんものを』


『分かったふりするな』



「…………」



昔。



言われた。



言葉。



「そうだった」



俺。



扉。



見る。



分からない。



なら。



分からないまま。



扱う。



◇ ◇ ◇



グレン。



後ろ。



落ち着かない。



「まだか」



「もう少し」



「妻が」



「分かってる」



「本当に?」



声。



強い。



「お前の妻じゃないから」


「分からない」



グレン。



止まる。



俺も。



言ってから。



少し。



痛い。



でも。



嘘。



言えない。



「俺には」


「グレンさんと同じ怖さは」


「分からない」



「…………」



「だから」


「エナさんだけ」


「特別にすることも」


「できない」



グレン。



拳。



握る。



「五十人」


「いる」



「…………」



「全員」


「誰かの大事な人だ」



「分かってる」



グレン。



低い。



声。



「分かってるよ」



怒ってる。



俺に。



状況に。



自分に。



たぶん。



全部。



「でも」


「俺は」


「エナを助けたい」



「うん」



「他の奴より」


「妻を助けたい」



「うん」



「悪いか」



「悪くない」



即答。



グレン。



顔。



上げる。



「俺だって」


「大事な人がいたら」


「たぶんそうなる」



公平。



なんて。



外から。



言うのは。



簡単。



でも。



選ぶ。



側。



家族。



いたら。



俺は。



公平で。



いられるか。



分からない。



「だから」


「グレンさんは」


「エナさんのこと考えて」



俺。



村人。



見る。



「俺は」


「今ここにいる全員のこと」


「考える」



グレン。



何も。



言わない。



短剣。



鞘へ。



戻す。



「……早くしろ」



「うん」



◇ ◇ ◇



『レン』



ノア。



「分かった?」



『一部だけ』



「教えて」



『扉の中央部』


『円形の機構』



「これ?」



『はい』



『認証装置の可能性があります』



「認証」



嫌な。



言葉。



最近。



聞き覚え。



ある。



職業院。



職業石。



神殿。



接続。



「何を認証する?」



『不明です』



「触ったら?」



『危険性を否定できません』



「壊れる?」



『装置が』


『あるいはレンが』



「俺も!?」



リナ。



「やめよ」



即答。



「まだ触らない」



「“まだ”いらない」



「選択肢は」


「残しときたい」



「レン」



「分かってる」



触った。



職業石。



割れた。



俺。



この世界の。



仕組み。



相性。



悪すぎる。



「別の方法」



扉。



端。



見る。



隙間。



狭い。



黒い水。



そこから。



漏れる。



「水だけ」


「先に逃がせない?」



ヴォルグ。



『どこへだ』



「…………」



そう。



毒。



移す。



だけ。



なら。



意味。



ない。



「容器」



メルク。



『量が分からん』



「村に樽」



『仮に受けられても』


『処分方法がない』



「土に」



フィリア。



『広げてはいけません』



「ですよね」



一つ。



塞ぐ。



一つ。



開ける。



全部。



次。



問題。



出る。



「面倒くさい」



リナ。



「世界って?」


「今は扉」



「そっちか」



◇ ◇ ◇



白い根。



また。



震える。



人。



一人。



咳。



する。



「フィリア」



『低下しています』



「あとどれくらい?」



『時間では』


『言えません』



「急に落ちる可能性?」



『あります』



焦る。



でも。



焦って。



扉。



壊したら。



もっと。



悪く。



なる。



「何か」


「できること」



俺。



周り。



見る。



根。



人。



花。



虫。



水。



扉。



全部。



別々。



見てた。



でも。



繋がってる。



根が。



人。



支えてる。



根虫。



毒性反応。



集まる。



紫の花。



毒。



吸う。



根虫の。



餌。



なら。



「花」



「え?」



リナ。



「紫の花」


「増やせない?」



ノア。



『短時間での生育は』


『困難です』



「違う」


「外にあるやつ」


「持ってくる」



リナ。



「畑の?」



「うん」



「根虫の餌なら」


「少しでも」


「負担減らせない?」



ノア。



『可能性はあります』



「フィリア?」



『根虫の活動が』


『生命維持に関係しているなら』



「やる価値ある?」



『あります』



「リナ」



「行ってくる」



「一人で?」



「私の方が速い」



「…………」



否定。



できない。



「直接触らないで」



「分かってる」



「葉の裏」


「白い筋三本」



「覚えてる」



「似てるやつ」



「持ってこない」



「頼む」



リナ。



走る。



穴。



向こう。



消える。



俺。



残る。



グレン。



村人。



神様。



古い。



扉。



「…………」



急に。



心細い。



ガルド。



『俺がいるぞ!』



「お前」


「こういう時だけ」


「ちょっと助かるな」



『こういう時だけ!?』



少し。



笑う。



◇ ◇ ◇



待つ。



長い。



本当は。



十分も。



経ってない。



でも。



長い。



一人。



また。



咳。



別の。



人。



身体。



震える。



フィリア。



『レンさん』



「うん」



『危険な方が』


『増えました』



「何人」



『七人』



増えた。



「根は?」



『弱っています』



「治癒」


「もう一回」



『できます』



「じゃあ」



『ですが』



「何?」



『先ほどと同じ方法では』


『レンさんの負担が大きい』



「どれくらい?」



『分かりません』



「死ぬ?」



『させません』



即答。



「そこだけ」


「強いな」



『当たり前です』



「じゃあやる」



『待ってください』



「何で?」



『先ほど』


『私が根へ治癒を流した時』



「うん」



『レンさんを』


『中継しました』



「そうだね」



『そのため』


『根に繋がった人々の反応が』


『一時的に』


『レンさんへ重なりました』



「…………」



あの。



重さ。



五十人。



生命。



押し寄せた。



感覚。



「それが?」



『危険です』



「俺に?」



『はい』



「でも」


「根には効いた」



『効きました』



「人も安定した」



『はい』



「じゃあ」



『同じことを』


『繰り返していいとは』


『言っていません』



フィリア。



声。



強い。



「…………」



『身体だけではありません』



「何?」



『他者の生命反応を』


『一度に受けることは』



少し。



間。



『精神にも』


『影響する可能性があります』



「具体的には?」



『分かりません』



「記憶混ざるとか?」



『可能性を』


『否定できません』



「感情?」



『それも』



「…………」



怖い。



普通に。



怖い。



自分。



どこまで。



自分。



なのか。



最近。



それ。



ばっかり。



考えてる。



職業。



名前。



力。



そこへ。



五十人。



混ざる。



冗談。



じゃない。



「やめとく?」



自分に。



聞く。



答え。



すぐ。



出ない。



それで。



いい。



怖い。



ものは。



怖い。



◇ ◇ ◇



「レン」



グレン。



「何?」



「お前」


「何ができる」



「今?」



「ああ」



「分からない」



「神様が」


「いるんだろ」



「いる」



「何でも」


「できるんじゃないのか」



「できないよ」



「…………」



「神様も」


「知らないことある」



「治せないこともある」



「間違うこともある」



「じゃあ」


「何のためにいる」



難しい。



質問。



フィリア。



黙ってる。



ガルドも。



セレナも。



誰も。



答えない。



俺。



少し。



考える。



「一人で」


「考えなくていいように」


「かな」



『…………』



七柱。



静か。



「答え」


「くれるんじゃなくて」



「違う見方」


「くれる」



「それで」


「最後は?」



「俺が決める」



グレン。



「大変だな」



「めちゃくちゃ」



「神様なんて」


「いない方が楽かもな」



「それ」


「本人たち聞いてる」



「…………」



グレン。



少し。



気まずそう。



なる。



ガルド。



『俺は気にせん!』



メルク。



『俺もだ』



セレナ。



『少し気にする』



「一人」


「気にしてる」



グレン。



初めて。



少し。



笑う。



◇ ◇ ◇



「戻った!」



声。



リナ。



袋。



抱えて。



走ってくる。



「早っ!」



「狩剣士だから」



「久々に聞いた!」



「何が?」



「こっちの話」



袋。



中。



紫の。



花。



土ごと。



いくつか。



「根ごと?」



「抜くなって」


「前に言ってなかった?」



「よく覚えてたな」



「だから」


「周りの土ごと取った」



「完璧」



「どこ置く?」



「根虫の」


「多いところ」



フィリア。



『右側です』



俺。



伝える。



「こっち」



花。



置く。



少し。



待つ。



何も。



ない。



「…………」



「失敗?」



「待つ」



さらに。



少し。



白い。



根。



間。



細い。



動き。



「来た」



根虫。



一匹。



二匹。



人の。



身体。



出る。



わけじゃない。



根。



表面。



這ってた。



個体。



花へ。



集まる。



「食べてる?」



リナ。



小さな。



口。



葉。



削る。



「食べてる」



ノア。



『活動量が』


『上昇しています』



「根は?」



フィリア。



『わずかに』


『安定しました』



「よし」



小さい。



でも。



効いた。



「もっと」


「持ってくる?」



「いや」



俺。



止める。



「全部取ったら」


「畑側がどうなるか」


「分からない」



「そっか」



「これで」


「少し時間」


「買えたかも」



◇ ◇ ◇



でも。



黒い水。



止まらない。



時間。



買った。



だけ。



「扉」



俺。



見る。



認証装置。



丸い。



窪み。



「ノア」



『はい』



「解析」



『進展があります』



「教えて」



『認証には』


『魔力情報』


『生命情報』


『および』


少し。



止まる。



「何?」



『分類情報を』


『使用している可能性があります』



「分類」



嫌な。



予感。



「職業?」



『近い概念です』



「…………」



リナ。



「何て?」



「たぶん」


「人を何かで分類して」


「鍵にしてる」



「じゃあ」


「私なら?」



「待って」



「狩剣士」



「だからこそ待って」



職業。



なし。



俺。



触ったら。



何が。



起きる。



「リナなら」


「普通に認証される可能性?」



ノア。



『あります』



「危険は?」



『あります』



「どっちでもあるんかい」



『未知の装置です』



当然。



「俺は?」



長い。



沈黙。



「ノア」



『予測できません』



「…………」



だよな。



「リナ」



「何?」



「触ってもらうの」


「ありかもしれない」



「いいよ」



即答。



「軽いな!」



「レンより」


「普通なんでしょ?」



「たぶん」



「じゃあ私」



「怖くない?」



リナ。



少し。



黙る。



「怖いよ」



「…………」



「でも」


「怖くないふりして」


「触る方が危ないでしょ」



「そうだな」



リナ。



手。



見る。



「触って」


「変だと思ったら」


「すぐ離す」



「うん」



「レン」



「何?」



「何かあったら」


「手、離していいよね?」



「もちろん」



言って。



少し。



木剣。



思い出す。



手を。



離すな。



でも。



あれは。



いつでも。



何でも。



離すな。



じゃない。



離す。



離さない。



それも。



選ぶ。



「危なかったら」


「絶対離して」



「分かった」



リナ。



扉。



近づく。



丸い。



窪み。



手。



伸ばす。



触れる。



――カチ。



音。



「っ」



「リナ!」



「大丈夫」



丸い。



部分。



淡く。



光る。



「動いた」



文字。



浮かぶ。



ノア。



読む。



『生命情報』


『確認』



次。



『魔力情報』


『確認』



次。



少し。



間。



『分類情報』



光。



強く。



なる。



リナ。



息。



呑む。



『確認』



「通った?」



『はい』



次。



表示。



出る。



【権限照合】



沈黙。



【該当なし】



光。



消える。



「…………」



「開かない」



リナ。



手。



離す。



「大丈夫?」



「うん」



「痛くない?」



「ない」



「変な声とか」



「ない」



「よかった」



でも。



開かない。



「権限」



俺。



呟く。



「人なら」


「誰でもいいんじゃない」



ノア。



『そのようです』



「管理者」



『あるいは』


『それに準ずる何か』



「この村に」


「いる?」



グレン。



首。



振る。



「知らない」



詰んだ。



◇ ◇ ◇



白い。



根。



また。



震える。



「フィリア」



『まだ保っています』



「花」


「効いてる?」



『はい』



でも。



時間。



ない。



扉。



開かない。



権限。



ない。



「壊すしか」


「ない?」



リナ。



聞く。



ヴォルグ。



『最後の手段だ』



「最後?」



『まだ一つある』



「何?」



『レンだ』



「…………」



「俺?」



『お前は』


『分類情報が』


『通常と違う』



「なし」



『ああ』



「それ」


「通ると思う?」



『知らん』



「ですよね」



『だが』


『普通の鍵で開かん扉に』


『普通ではない鍵を試す』


「理屈」


「雑じゃない?」



『試すかどうかは』


『お前が決めろ』



「…………」



また。



それ。



リナ。



「私は」


「やめた方がいいと思う」



「理由は?」



「職業石」


「割ったから」



「俺が割ったみたいに」


「言わないで!」



「触った後」


「割れた」



「事実が強い!」



でも。



正しい。



危険。



俺。



触る。



装置。



壊れる。



かもしれない。



俺。



壊れる。



かもしれない。



扉。



開く。



かもしれない。



「フィリア」



『はい』



「あと」


「どれくらい」



『分かりません』



「危険な人は?」



『九人』



増えた。



時間。



考える。



余裕。



減ってる。



「…………」



俺。



扉。



前。



立つ。



手。



伸ばす。



止まる。



怖い。



「レン」



リナ。



「やめてもいいよ」



「うん」



「戻って」


「助け呼ぶ方法もある」



「うん」



「大神殿」


「まだ遠いけど」



「うん」



間に合う。



保証。



ない。



触る。



保証。



ない。



どっち。



選んでも。



危険。



正解。



ない。



なら。



何を。



基準に。



選ぶ。



俺。



後ろ。



見る。



人。



五十人。



正確な。



数。



まだ。



知らない。



名前。



ほとんど。



知らない。



人生。



知らない。



でも。



生きてる。



一秒。



一秒。



今も。



生きてる。



俺の。



一秒。



一人分。



でも。



今。



ここでは。



俺が。



迷う。



一秒。



その間。



五十人。



同じ。



一秒。



使ってる。



五十人分の。



一秒。



「…………」



重いな。



「レン?」



「いや」



息。



吐く。



「触る」



リナ。



「決めた?」



「うん」



「理由は?」



「待つ方が」


「今は怖い」



それだけ。



正しい。



からじゃない。



成功する。



からでも。



ない。



待って。



悪くなる。



可能性。



今。



動く。



危険。



比べて。



俺が。



こっち。



選んだ。



「危なかったら」


「引っ張って」



リナ。



「分かった」



俺。



丸い。



窪み。



触れる。



――カチ。



「…………」



光。



つく。



リナの。



時と。



同じ。



【生命情報】



一拍。



【確認】



【魔力情報】



長い。



沈黙。



【確認不能】



「え」



セレナ。



『レン!』



次。



【分類情報】



光。



揺れる。



【該当なし】



「…………」



やっぱり。



なし。



次。



本来。



権限照合。



来る。



はず。



でも。



来ない。



文字。



消える。



全部。



暗く。



なる。



「失敗?」



リナ。



俺。



手。



離そうと。



する。



その瞬間。



――ドクン。



「っ!」



心臓。



じゃない。



扉。



奥。



何か。



鳴る。



光。



戻る。



今度。



白。



じゃない。



黒。



文字。



浮かぶ。



【分類不能】



【既存権限との照合を中止】



「ノア」



『読めています』



「次は?」



文字。



変わる。



【暫定接続】



「接続?」



エリオス。



『手を離せ!』



「え?」



『今すぐ離せ!』



俺。



手。



動かす。



でも。



離れない。



「何これ!」



リナ。



俺の。



腕。



掴む。



「引くよ!」



「待って!」



「待たない!」



引く。



離れない。



「くそ!」



光。



腕。



上がる。



痛い。



違う。



何か。



流れ込む。



声。



音。



息。



「っ……!」



一気に。



来る。



寒い。



痛い。



苦しい。



眠い。



喉。



渇く。



怖い。



会いたい。



帰りたい。



「エナ」



「母さん」



「痛い」



「まだ」



「死にたくない」



「…………!」



声。



じゃない。



感覚。



人。



人。



人。



五十。



近い。



全部。



一瞬。



俺。



中。



通る。



「レン!」



リナ。



叫ぶ。



聞こえる。



でも。



遠い。



フィリア。



『接続されています!』



「誰と!」



『全員です!』



「…………」



五十人。



根。



根虫。



花。



白い。



根。



全部。



俺。



通って。



扉。



繋がる。



一秒。



たった。



一秒。



なのに。



長い。



五十人分の。



怖さ。



五十人分の。



生きたい。



一秒。



「レン!」



俺。



歯。



食いしばる。



「離さない」



リナ。



「何言ってるの!」



「今だけ!」



何か。



分かる。



言葉。



じゃない。



扉。



向こう。



黒い。



水。



流れ。



場所。



根。



伸びてる。



場所。



そして。



止める。



場所。



「ノア!」



『はい!』



「右!」



「何が!?」



「扉の」


「右下!」



リナ。



見る。



「何もない!」



「押して!」



「どこ!」



「下から」


「三つ目!」



何の。



三つ目。



自分でも。



分からない。



でも。



見える。



感覚。



ある。



リナ。



壁。



触る。



「ここ!?」



「もう少し右!」



「ここ!」



「そこ!」



リナ。



押す。



――ガコン。



音。



金属。



板。



沈む。



黒い。



水。



流れ。



一瞬。



止まる。



「っ!」



白い。



根。



震える。



扉。



表示。



変わる。



【緊急排出経路】



【切替】



ノア。



『流路が変わります!』



「どこへ!?」



『確認中!』



「安全!?」



『不明!』



「レン!」



リナ。



「どうする!」



繋がってる。



感覚。



奥。



別の。



空洞。



人。



いない。



根。



少ない。



石。



層。



何か。



受ける。



場所。



ある。



「切り替えて!」



「もう押した!」



「じゃあ」



音。



する。



――ゴォ。



扉。



向こう。



水。



動く。



黒い。



染み。



止まる。



白い。



根。



黒。



広がらない。



「フィリア!」



『根の低下』


『止まりました!』



「人!」



『安定しています!』



「全員!?」



『はい!』



その瞬間。



手。



離れる。



俺。



後ろ。



倒れる。



「レン!」



リナ。



受け止める。



頭。



痛い。



吐きそう。



息。



できる。



「生きてる?」



リナ。



「たぶん」



「たぶんやめて!」



「生きてる」



「よし」



目。



閉じる。



五十人。



声。



消える。



感情。



消える。



俺。



一人。



戻る。



怖い。



でも。



少し。



寂しい。



そう。



感じて。



さらに。



怖くなる。



「フィリア」



『はい』



「俺」


「俺?」



『はい』



即答。



『レンさんです』



「よかった」



リナ。



「何それ」



「あとで」



息。



整える。



◇ ◇ ◇



黒い。



水。



止まった。



完全に。



消えた。



わけじゃない。



別の。



流路。



移った。



だけ。



ノア。



確認。



続けてる。



「安全?」



『少なくとも』


『現在』


『人々と根への流入は』


『止まっています』



「切り替え先は?」



『施設内部の』


『隔離槽と思われます』



「容量」



『不明です』



「つまり」


「また溢れるかも」



『はい』



終わって。



ない。



でも。



時間。



できた。



「人」


「外せる?」



フィリア。



『すぐには』


『おすすめしません』



「根から?」



『はい』



『生命状態が』


『安定するまで』


『段階的に行うべきです』



「分かった」



グレン。



エナ。



見る。



「助かる?」



フィリア。



声。



俺だけ。



聞こえる。



『保証はできません』



俺。



グレン。



見る。



「まだ」


「分からない」



「…………」



「でも」


「さっきより」


「状態は安定してる」



グレン。



頷く。



「それでいい」



たぶん。



本当は。



よくない。



助かる。



言って。



ほしい。



でも。



俺は。



言えない。



◇ ◇ ◇



しばらく。



して。



エナ。



目。



開く。



「…………」



グレン。



「エナ」



「…………うるさい」



「まだ何も言ってないぞ」



「顔が」


「うるさい」



「顔!?」



俺。



笑う。



リナも。



笑う。



グレン。



泣く。



エナ。



弱く。



笑う。



その。



声。



聞いて。



他の。



村人。



一人。



また。



一人。



目。



開く。



全員。



じゃない。



でも。



少しずつ。



戻る。



「何人?」



俺。



聞く。



フィリア。



『四十六名』



「え?」



『この空洞に』


『繋がっている人間です』



「四十六」



五十人。



くらい。



村。



でも。



ここ。



四十六。



「グレンさん」



「何だ」



「村」


「何人だった?」



「正確には」


「五十一」



「グレンさん」


「ミアさん」



「二人」



「ここ」


「四十六」



リナ。



「合わせて四十八」



「三人」


「足りない」



空気。



変わる。



「誰?」



グレン。



顔。



強張る。



指。



折る。



「村長」



「それと」


「双子の兄弟」



「年齢」



「十二」



「…………」



リナ。



立つ。



「探す?」



俺も。



立とうと。



する。



膝。



力。



入らない。



「レンは」


「座ってて」



「でも」



「今」


「歩けないでしょ」



「歩ける」



立つ。



ふらつく。



リナ。



「歩けてない」



「…………」



正論。



強い。



「俺が行く」



グレン。



「怪我」



「妻は」


「ここにいる」



エナ。



弱い。



声。



「行って」



グレン。



見る。



「子ども」


「探して」



「…………ああ」



リナ。



「私も行く」



「お願い」



俺。



言う。



「無理しないで」



リナ。



「それ」


「レンに言われたくない」



「今日だけは」


「反論できない」



二人。



空洞。



別の。



道。



探しに。



行く。



俺。



残る。



村人。



四十六人。



白い。



根。



古い。



扉。



◇ ◇ ◇



「フィリア」



『はい』



「さっき」


「五十人くらい」


「一気に」


「来た」



『はい』



「怖かった」



『……はい』



「でも」



言うか。



迷う。



「全員」


「生きたいって」


「思ってた」



フィリア。



黙る。



「たぶん」


「言葉じゃないけど」



『生命は』


『生きようとします』



「うん」



「でも」


「それだけじゃなかった」



家族。



顔。



帰りたい。



ご飯。



食べたい。



痛い。



寒い。



怖い。



名前。



知らない。



人。



一瞬。



だけ。



でも。



そこに。



人生。



あった。



「二人」


「選ばなくて」


「よかった」



フィリア。



沈黙。



長い。



『今回は』



「うん」



『そうだったかもしれません』



「今回は」



大事。



言葉。



「次も」


「同じじゃない」



『はい』



「全部助けるって」


「意地張ったら」


「逆に死なせることもある」



『はい』



「でも」


「選ぶ前に」


「まだ手がないか」


「探すのは」


「やめたくない」



フィリア。



少し。



笑った。



気が。



する。



『それなら』



「うん」



『私も』


『一緒に探します』



「ありがとう」



◇ ◇ ◇



しばらく。



して。



遠く。



足音。



「レン!」



リナ。



声。



俺。



顔。



上げる。



「いた!?」



リナ。



戻る。



顔。



険しい。



後ろ。



グレン。



誰か。



背負ってる。



子ども。



一人。



「一人?」



「双子の弟」



「状態は?」



フィリア。



『生きています』



「よかった」



「もう一人は?」



リナ。



首。



振る。



「まだ」



「村長は?」



「いない」



グレン。



子ども。



下ろす。



「別の穴がある」



「どこへ?」



「もっと奥」



「追える?」



「ああ」



俺。



立つ。



今度。



壁。



使う。



「行く」



リナ。



「本気?」



「本気」



「ふらふら」



「でも」


「行く」



「何で」



「俺が」


「ここまで来るって」


「決めたから」



「…………」



リナ。



ため息。



「じゃあ」


「肩貸す」



「助かる」



「無理したら」


「置いてく」



「それは困る」



木剣。



拾う。



手。



握る。



まだ。



震える。



でも。



持てる。



古い。



扉。



振り返る。



表示。



消えてる。



ただ。



最後。



一瞬。



文字。



見えた。



ノア。



「今」


「何か出た?」



『……はい』



「何?」



少し。



間。



『接続履歴』



「内容」



『一件』


『追加されました』



「俺?」



『はい』



「消せる?」



『分かりません』



「…………」



嫌な。



予感。



する。



でも。



今。



後回し。



残り。



二人。



村長。



双子の。



兄。



「行こう」



俺。



言う。



リナ。



頷く。



「うん」



五十人分の。



一秒。



あれを。



正解だった。



なんて。



言うつもり。



ない。



ただ。



あの一秒で。



俺は。



知った。



数字。



じゃない。



四十六。



でも。



五十。



でも。



一人。



一人。



全部。



違う。



だから。



残り。



二人を。



数字の。



端数には。



したくなかった。

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