神託ログ31 助ける前に
――ピー。
三度目の。
笛。
近い。
家の。
外。
俺は。
木剣を。
握る。
リナは。
扉の横。
剣を。
構える。
床には。
怪我をした。
男。
息が。
荒い。
「来た」
男が。
震える。
「来た」
「何が来た?」
答えない。
いや。
答えられない。
顔。
真っ青。
「リナ」
「うん」
「外」
「見える?」
リナ。
窓。
壁際から。
少しだけ。
覗く。
「…………」
「何かいる?」
「人」
「何人?」
「一人」
「一人?」
「広場に」
「立ってる」
「さっきの男?」
「違う」
俺も。
窓。
近づく。
「気をつけて」
「うん」
少しだけ。
見る。
夕暮れ。
誰もいなかった。
広場。
井戸の。
横。
人影。
一人。
立っている。
背。
低い。
細い。
顔。
見えない。
「子ども?」
リナ。
「分からない」
人影。
動かない。
「笛」
「持ってる?」
「見えない」
その時。
人影。
ゆっくり。
こちらを。
向く。
「っ」
反射的に。
身を。
引く。
見られた。
気がした。
【戦神ガルド】
『来るぞ』
声。
低い。
さっきまで。
騒がしかった。
ガルド。
違う。
「分かる?」
『いや』
「じゃあ」
『勘だ』
「勘かよ」
でも。
身体。
固くなる。
外。
足音。
一歩。
二歩。
こっちへ。
来る。
リナ。
剣。
握る。
「レン」
「待って」
「でも」
「まだ」
「敵か分からない」
「…………」
リナ。
頷く。
足音。
近づく。
男。
床で。
震える。
「やめろ」
「え?」
「入れるな」
「知ってる人?」
「違う」
「じゃあ」
「何で?」
「同じだ」
「何が?」
男。
目。
見開く。
「みんな」
「同じに」
――トン。
扉。
音。
止まる。
誰か。
外。
いる。
「誰ですか」
俺。
声。
出す。
返事。
ない。
「怪我人がいます」
沈黙。
「この村の人ですか?」
返事。
ない。
リナ。
目。
扉。
離さない。
俺。
木剣。
握る。
――トン。
もう一度。
「…………」
何だ。
ノック?
「開ける?」
リナ。
小声。
「少しだけ」
「私が開ける」
「頼む」
リナ。
片手。
扉。
触る。
剣。
構えたまま。
ゆっくり。
開く。
少し。
隙間。
「誰?」
リナ。
聞く。
その瞬間。
扉。
向こう。
人影。
崩れた。
「っ!」
リナ。
飛び退く。
――ドサ。
床。
倒れる。
「…………」
女。
だった。
若い。
二十代。
くらい。
「大丈夫!?」
俺。
近づく。
「待って!」
リナ。
女。
見る。
「武器」
「ない」
「フィリア!」
【生命神フィリア】
『生きています』
「怪我?」
『外傷は』
『ほとんどありません』
「じゃあ何で」
女。
身体。
小さく。
震えてる。
呼吸。
浅い。
「毒?」
『分かりません』
「生命反応は?」
『弱っています』
俺。
止まる。
紫の。
植物。
触れた。
子ども。
思い出す。
「手」
女の。
手。
見る。
紫。
ない。
「違うか」
フィリア。
『レンさん』
「何?」
『首を』
「首?」
女。
髪。
どける。
「…………」
赤い。
小さな。
腫れ。
虫刺され。
みたいな。
「これ?」
『その周囲の』
『生命反応が不自然です』
「不自然?」
『局所的に』
『乱れています』
リナ。
しゃがむ。
「虫?」
「かもしれない」
床の。
男。
急に。
叫ぶ。
「触るな!」
「え?」
「そいつに」
「触るな!」
身体。
起こそうと。
する。
傷。
痛む。
「動かないで!」
「虫だ!」
男。
女。
指す。
「中にいる!」
「…………」
「中?」
「身体の」
「中だ!」
背中。
冷える。
女。
首。
赤い。
腫れ。
その下。
何か。
――動いた。
「…………」
「リナ」
「見えた」
皮膚の。
下。
細い。
何か。
動く。
「うわ」
思わず。
声。
出る。
リナ。
剣。
構える。
「切る?」
「待って!」
「でも」
「皮膚の下だぞ!」
「だから」
切ったら。
女も。
傷つく。
「フィリア」
「分かる?」
『異物です』
「生き物?」
『はい』
「取れる?」
『位置が』
『深すぎます』
「治癒で?」
『できません』
「じゃあ」
皮膚の。
下。
細い。
膨らみ。
ゆっくり。
首から。
肩へ。
動く。
女。
苦しそうに。
息。
する。
「これ」
「何なんだよ」
床の。
男。
震える。
「根虫」
「ねむし?」
「根の」
「虫」
「知ってる?」
「知ってる」
「この村で?」
男。
頷く。
「いつから?」
「三日前」
「三日前……」
分かれ道。
男。
言った。
道が。
崩れた。
三日前。
同じ。
でも。
まだ。
繋げない。
「何が起きた?」
「最初は」
「家畜だった」
男。
息。
整えながら。
話す。
「山羊が」
「倒れた」
「身体に」
「細い虫が」
「入ってた」
「どこから?」
「分からない」
「その次は?」
「人」
「何人?」
男。
黙る。
「何人」
「…………」
「たくさん」
「村の人は?」
「いなくなった」
「それ」
「根虫が原因?」
「分からない!」
男。
叫ぶ。
「朝になったら」
「いなかった!」
「家も」
「荷物も」
「全部そのまま!」
「俺は」
「探した」
「森も」
「畑も」
「道も」
「それで怪我を?」
「違う」
男。
腕。
見る。
「転んだ」
「…………」
思ったより。
普通の。
理由。
でも。
男。
続ける。
「その後」
「右の道から」
「戻ってきた」
「右?」
俺。
反応。
する。
「分かれ道の?」
「ああ」
「何しに?」
「人を」
「探しに」
「何かあった?」
男。
口。
閉じる。
「…………」
「見た?」
「分からない」
「何が?」
「人の」
「声」
「声?」
「聞こえた」
「どこで?」
「地面」
「…………」
何。
言ってる。
男。
頭。
抱える。
「地面の下から」
「みんなの声がした」
部屋。
静か。
なる。
◇ ◇ ◇
女。
呻く。
「今は」
俺。
言う。
「この人」
地面の。
声。
村人。
消えた。
全部。
気になる。
でも。
今。
目の前。
女。
生きてる。
「根虫」
「どうする?」
男。
「殺せ!」
「どうやって?」
「切れ!」
「この人ごと?」
「違う!」
「じゃあ」
「どうやって!」
男。
答えられない。
リナ。
「私なら」
剣。
見る。
「皮膚の浅いところなら」
「切って出せるかも」
「深いところは?」
「無理」
「フィリア」
『首に近づいています』
「…………」
「どこ?」
『肩から』
『再び上へ』
女。
皮膚。
動く。
首。
向かう。
「まずい?」
『重要な血管』
『気道』
『神経』
『危険な領域です』
「止めたい」
でも。
どうやって。
火?
無理。
普通の火。
人。
焼く。
変な火。
何を。
壊すか。
分からない。
使えない。
木剣。
論外。
「ノア」
『はい』
「根虫について」
「記録ある?」
『照合しています』
少し。
間。
『類似する寄生性生物の』
『記録があります』
「弱点」
『強い光』
『高温』
『特定の薬草成分』
『ただし』
「個体が同じか」
「分からない?」
『はい』
「高温は無理」
『宿主も損傷します』
「光」
セレナ。
『魔法で出せる』
「強さは?」
『虫だけに効く保証はない』
「薬草」
『手元にありません』
「…………」
時間。
ない。
女。
呼吸。
さらに。
浅い。
「何か」
「ないのか」
焦る。
頭。
回らない。
助けたい。
でも。
分からない。
「レン」
リナ。
声。
「見て」
「何?」
「虫」
「見てる」
「違う」
リナ。
女の。
首。
指す。
「動き」
「…………」
皮膚の。
下。
膨らみ。
首へ。
進む。
でも。
途中。
止まる。
少し。
戻る。
また。
首へ。
止まる。
「何してる?」
「分からない」
「真っ直ぐ」
「進んでない」
確かに。
「フィリア」
『生命反応にも』
『変化があります』
「虫?」
『女性です』
「悪くなった?」
『いいえ』
「え?」
『わずかに』
『安定しています』
「…………」
何で。
根虫。
入ってるのに。
安定?
「根虫が」
「何かしてる?」
『可能性はあります』
「悪いこと?」
『分かりません』
また。
分からない。
でも。
重要。
「リナ」
「うん」
「まだ切らない」
「分かった」
床の。
男。
「何言ってる!」
「今」
「この人」
「少し安定した」
「虫がいるんだぞ!」
「だからって」
「今すぐ殺すのが」
「正しいとは限らない」
「そんなの」
「俺にも分からない!」
声。
強く。
なる。
「でも」
「分からないまま」
「この人の首を切る方が」
「俺は怖い」
男。
黙る。
俺も。
怖い。
虫。
気持ち悪い。
取った方が。
正しそう。
でも。
それは。
見た目。
だけ。
「ノア」
『はい』
「観察する」
『推奨します』
「フィリア」
「悪化したら言って」
『はい』
「リナ」
「もし皮膚の浅いところに来たら」
「切れる」
「頼む」
「うん」
待つ。
一分。
長い。
女。
呼吸。
少し。
落ち着く。
根虫。
動く。
首。
向かう。
戻る。
肩。
向かう。
そして。
右腕。
下。
進む。
「何で」
俺。
女の。
腕。
見る。
指。
何か。
握ってる。
「…………」
小さい。
葉。
「これ」
紫。
葉。
「紫の植物?」
リナ。
「知ってるの?」
「街で」
「子どもが触って倒れた」
「毒?」
「分からない」
でも。
薬師。
言ってた。
普通なら。
触れただけで。
あそこまで。
ならない。
何か。
おかしい。
女の。
手。
紫の。
葉。
根虫。
その腕へ。
進んでる。
「偶然?」
ノア。
『判断できません』
「…………」
女。
指。
少し。
開く。
葉。
床。
落ちる。
その瞬間。
根虫。
動き。
変わる。
速い。
腕。
下へ。
葉。
近くへ。
「追ってる?」
リナ。
「そう見える」
根虫。
皮膚の。
下。
手首。
近く。
来る。
「浅い」
リナ。
言う。
「今なら」
「切れるかも」
「待って」
「でも」
「あと少し」
根虫。
手首。
掌。
近く。
紫の。
葉。
ある。
場所へ。
来る。
「何してる?」
フィリア。
『女性の生命反応』
『さらに安定しています』
「…………」
おかしい。
虫が。
悪い。
なら。
何で。
近づくほど。
安定する。
「この虫」
俺。
呟く。
「本当に」
「殺していいのか?」
誰も。
答えない。
◇ ◇ ◇
女。
目。
開く。
「…………」
「聞こえますか?」
「……ここ」
声。
弱い。
「村です」
「あなたは?」
「ミア……」
「ミアさん」
「動かないで」
「…………」
「身体に」
「虫が入ってる」
言うか。
迷った。
でも。
本人。
こと。
隠したくない。
ミア。
目。
見開く。
「根虫……?」
「知ってる?」
頷く。
「怖い?」
首。
少し。
振る。
「え?」
「殺さないで」
「…………」
床の。
男。
「何言ってる!」
「待って」
俺。
ミア。
見る。
「何で?」
「分からない」
「でも」
ミア。
苦しそうに。
息。
する。
「これが」
「入ってから」
「胸の」
「痛いのが」
「少し」
「楽になった」
「…………」
「胸?」
フィリア。
『確認します』
少し。
間。
『肺付近に』
『弱い異常があります』
「根虫は?」
『その周辺を』
『通過しています』
「何か」
「取った?」
『分かりません』
でも。
ミア。
本人。
楽に。
なった。
と言う。
「リナ」
「うん」
「切らない」
リナ。
剣。
下げる。
「分かった」
男。
「正気か!」
俺。
男。
見る。
「この人が」
「殺さないでって言った」
「でも!」
「本人が」
「そう言った」
「…………」
フィリア。
静か。
聞いてる。
治したい。
でも。
選ぶのは。
誰。
あの日。
教わった。
「危険になったら」
「その時」
「また考える」
ミア。
小さく。
頷く。
正解。
か。
分からない。
でも。
今。
決めた。
◇ ◇ ◇
夜。
村の。
一軒。
灯り。
つける。
ミア。
横。
寝かせる。
怪我した。
男。
名前。
聞いた。
「グレン」
「グレンさん」
「何だ」
「村の人」
「何人くらい?」
「五十人くらい」
「…………」
五十。
消えた。
「全員?」
「たぶん」
「たぶん?」
「俺が」
「全員の家を」
「見たわけじゃない」
「そうか」
「でも」
「誰にも会わなかった」
「ミアさんは?」
「村の外で」
「倒れてた」
「どこ?」
「北の畑」
「根虫は?」
「その時には」
「いたと思う」
「何で?」
「首が」
「動いてた」
「…………」
グレン。
根虫。
嫌ってる。
当たり前。
見た目。
怖い。
村人。
消えた。
同時期。
現れた。
なら。
原因だと。
思う。
「右の道」
俺。
聞く。
「地面から声」
「聞いたって言ったよね」
「ああ」
「誰の?」
グレン。
黙る。
「知ってる声?」
「ああ」
「誰?」
少し。
間。
「妻」
「…………」
「他にも」
「村長」
「隣の家の」
「婆さん」
「子ども」
「みんな」
「どこから?」
「森の中」
「地面の下」
「場所」
「分かる?」
「分かる」
リナ。
俺を見る。
俺も。
リナ。
見る。
右。
怪しい男。
地面の。
声。
消えた。
村人。
根虫。
紫の。
植物。
全部。
近い。
でも。
まだ。
繋がらない。
「明日」
「見に行く」
グレン。
「やめろ」
「何で?」
「戻ってこられない」
「グレンさん」
「戻ってきたよね?」
「…………」
「何があった?」
グレン。
顔。
下げる。
「逃げた」
「何から?」
「根」
「…………」
「根?」
「地面から」
「出てきた」
「白い」
「太い」
「根が」
腕。
掴んだ。
「それで」
「怪我?」
「ああ」
「切った?」
「短剣で」
「根は?」
「動いてた」
「植物?」
「知らない」
グレン。
震える。
「でも」
「声がした」
「妻の」
「助けてって」
「根の」
「下から」
部屋。
静か。
なる。
俺。
ミア。
見る。
眠ってる。
手。
近く。
紫の。
葉。
ある。
根虫。
今。
どこ。
フィリア。
『腹部付近です』
「状態は?」
『安定しています』
「悪化なし?」
『はい』
「…………」
根虫。
何なんだ。
◇ ◇ ◇
朝。
ミア。
熱。
下がる。
「昨日より」
「楽」
「本当?」
「うん」
フィリア。
『生命反応も』
『昨日より安定しています』
根虫。
まだ。
いる。
なのに。
「ミアさん」
「紫の葉」
「どこで?」
「北の畑」
「生えてる?」
「最近」
「増えた」
「いつから?」
「一週間くらい」
「触った?」
「うん」
「その後」
「倒れた?」
「たぶん」
「根虫は?」
「分からない」
時系列。
分からない。
でも。
見たい。
「案内」
「できる?」
リナ。
「レン」
「無理はさせない」
ミア。
首。
振る。
「場所」
「言える」
「ありがとう」
村。
北。
畑。
近い。
俺と。
リナ。
向かう。
グレン。
来る。
「一人で残るよりマシだ」
「怪我人なんだけど」
「歩ける」
「無理したら」
「フィリアが怒る」
「誰だ」
「神様」
「は?」
「気にしないで」
◇ ◇ ◇
畑。
荒れてる。
作物。
一部。
枯れてる。
その。
端。
紫。
「…………」
花。
小さい。
紫の。
花。
いくつも。
咲いてる。
「これ」
俺。
しゃがむ。
触らない。
前。
街。
近くで。
見た。
紫の。
植物。
似てる。
「同じ?」
リナ。
「たぶん」
ノア。
『形状特徴は』
『高い一致を示します』
「やっぱり」
グレン。
「最近」
「急に増えた」
「元は?」
「山の方に」
「少し」
「湿ったところに」
「生える花だ」
薬師。
言ってた。
同じ。
本来。
山。
湿地。
なのに。
街の。
北。
東。
そして。
この村。
「西じゃない」
俺。
呟く。
「何?」
「いや」
無理に。
繋げない。
花。
見る。
その。
根元。
土。
少し。
盛り上がってる。
「リナ」
「うん」
「これ」
足跡。
じゃない。
細い。
筋。
土の。
下。
何か。
通った。
みたいな。
線。
紫の。
花。
一つ。
二つ。
三つ。
その線。
続く。
畑。
外。
森。
方向。
「根虫?」
リナ。
「大きさ」
「近いかも」
「花を」
「食べる?」
「知らない」
「ノア」
『照合します』
少し。
待つ。
長い。
「ノア?」
『該当記録を』
『確認しました』
「あるの!?」
『古い』
『生態記録です』
「何て?」
ノア。
少し。
間。
『この花は』
「うん」
『根虫の』
一拍。
『餌です』
「…………」
「餌?」
リナ。
「根虫が」
「これ食べるの?」
『記録上は』
『はい』
「じゃあ」
俺。
花。
見る。
紫の。
植物。
毒。
かもしれない。
そう。
思ってた。
根虫。
人に。
寄生する。
敵。
だと。
思ってた。
でも。
根虫は。
この花を。
食べる。
ミアは。
花を。
持ってた。
根虫は。
その方向へ。
動いた。
そして。
ミアの。
身体は。
少し。
安定した。
「待って」
俺。
立つ。
「根虫が」
「人を襲ってるんじゃなくて」
リナ。
「何?」
「何か別の理由で」
「人の中に」
「入ってるとしたら?」
グレン。
「何言ってる」
「まだ」
「分からない」
「でも」
「殺す前に」
「知りたい」
紫の。
花。
向こう。
森。
続く。
土の。
細い。
筋。
「グレンさん」
「何だ」
「昨日」
「声を聞いた場所」
グレン。
顔。
強張る。
「この先?」
森。
見る。
しばらく。
黙る。
そして。
頷く。
「ああ」
「どれくらい?」
「歩いて」
「一時間くらい」
リナ。
剣。
確認。
する。
俺。
木剣。
握る。
「行く?」
リナ。
聞く。
怖い。
もちろん。
怖い。
五十人。
消えた。
地面。
声。
白い。
根。
人の。
身体。
入る。
虫。
普通なら。
帰る。
でも。
今。
分かった。
こと。
一つ。
根虫は。
紫の。
花を。
食べる。
敵。
そう。
決めるには。
まだ。
知らなすぎる。
「行く」
俺。
言う。
「でも」
「何?」
「根虫」
「見つけても」
一拍。
「すぐ殺さない」
グレン。
「レン!」
「危険なら」
「止める」
「襲ってきたら」
「戦う」
「でも」
紫の。
花。
見る。
「何してるか」
「分からないうちに」
「敵だって」
「決めたくない」
グレン。
納得。
してない。
それで。
いい。
俺も。
正しいか。
分からない。
「リナ」
「うん」
「嫌なら」
「ここに残っても」
「行くよ」
即答。
「いいの?」
「レン一人で行かせる方が」
「怖い」
「俺」
「そんな信用ない?」
「西の森」
「一人で行った人」
「…………」
強い。
何も。
言えない。
「行こ」
「うん」
森。
入る。
土。
細い。
筋。
紫の。
花。
点々。
続く。
まるで。
道。
みたいに。
奥へ。
奥へ。
俺たちを。
導く。
そして。
森。
深く。
入った。
ところ。
リナ。
止まる。
「レン」
「何?」
「聞こえる」
「何が?」
「…………」
耳。
澄ます。
風。
葉。
鳥。
その。
下。
小さい。
声。
「…………けて」
「え?」
もう一度。
「たすけて」
女。
声。
地面。
下。
俺。
息。
止まる。
グレン。
顔。
真っ青。
「妻だ」
「…………」
「この声」
「妻だ」
地面。
見る。
土。
普通。
でも。
その下。
何か。
いる。
「ノア」
『はい』
「人の反応」
「分かる?」
『私には』
『生命反応の直接探知はできません』
「フィリア」
『…………』
「フィリア?」
返事。
遅い。
『います』
「何人?」
沈黙。
「フィリア」
『一人では』
声。
震える。
『ありません』
「何人?」
長い。
間。
『多数』
「生きてる?」
『…………』
「フィリア!」
『生きています』
グレン。
膝。
落ちる。
「生きてる……」
五十人。
消えた。
村人。
地面の。
下。
生きてる。
「どこ?」
フィリア。
『深いです』
「掘れる?」
『待ってください』
「何で?」
『人だけでは』
『ありません』
「…………」
地面。
少し。
動く。
土。
割れる。
白い。
何か。
ゆっくり。
出る。
根。
太い。
人の。
腕ほど。
白い。
根。
グレン。
短剣。
抜く。
「こいつだ!」
「待って!」
根。
地面。
這う。
俺たち。
向かう。
リナ。
剣。
構える。
俺も。
木剣。
抜く。
でも。
根。
俺たちを。
襲わない。
紫の。
花。
一本。
その。
近く。
伸びる。
根。
花。
触れる。
その瞬間。
地面の。
下。
声。
少し。
大きく。
なる。
「たすけて」
「ここ」
「おかあさん」
「さむい」
いくつもの。
声。
重なる。
俺。
動けない。
「これ」
「何なんだよ」
フィリア。
声。
震える。
『レンさん』
「何?」
『この根』
少し。
間。
『人々の生命反応と』
『つながっています』
「…………」
「どういう意味?」
『分かりません』
「切ったら?」
フィリア。
答えない。
「フィリア」
『分かりません』
それだけで。
十分。
だった。
切れない。
まだ。
切れない。
「グレンさん」
短剣。
振り上げてる。
腕。
掴む。
「離せ!」
「今は」
「切らないで!」
「こいつが」
「妻を!」
「分からない!」
「声が」
「根の下から」
「だから!」
俺。
グレン。
見る。
「この根が」
「捕まえてるのか」
一拍。
「生かしてるのか」
「まだ」
「分からない!」
グレン。
止まる。
「…………」
白い。
根。
動く。
地面。
下。
多数の。
生命。
紫の。
花。
根虫。
全部。
一つの。
場所。
集まってる。
敵。
そう。
呼ぶのは。
簡単。
剣。
振るうのも。
たぶん。
簡単。
でも。
殺したら。
戻せない。
間違って。
切ったら。
その後で。
本当は。
助けていた。
なんて。
分かっても。
遅い。
俺は。
木剣。
下げる。
「まず」
声。
震える。
でも。
言う。
「調べる」
リナ。
剣。
少し。
下げる。
「うん」
グレン。
短剣。
まだ。
握ってる。
でも。
振らない。
白い。
根。
ゆっくり。
地面へ。
戻っていく。
その先。
土の。
隙間。
奥。
暗い。
穴。
見える。
人が。
一人。
通れる。
くらい。
「入口?」
リナ。
呟く。
地面の。
下。
声。
また。
聞こえる。
「たすけて」
でも。
今度は。
その。
言葉。
本当に。
助けを。
求めているのか。
それとも。
何かが。
ただ。
繰り返しているのか。
俺には。
まだ。
分からなかった。




