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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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30/71

神託ログ30 道は、二本あった

標識。


北方大神殿。


左。



根元。


新しい土。



倒れた草。



誰かが。


最近。


動かした。



「…………」



俺は。


標識と。



二本の道を。



交互に見る。



左。



少し。


広い。



人が。


何度も。


通ったような。



道。



右。



細い。



草も。



少し。



伸びている。



「ダリオさん」



「何だ」



「本当に」


「前は左だった?」



「ああ」



即答。



「最後に通ったのは?」



「二月くらい前だ」



「その時」


「標識は?」



「ここより」


「もう少し向こうだった」



ダリオ。



道の。



脇。



指す。



少し。



離れた。



場所。



土。



色。



違う。



「元は」


「あそこに立ってた」



「向きは?」



「左」



「じゃあ」


「動かしたけど」


「方向は変えてない?」



「見た限りはな」



リナ。



しゃがむ。



標識の。



根元。



触る。



「土」


「まだ柔らかい」



「分かる?」



「狩りで」


「足跡見るから」



「狩剣士」


「便利だな」



「でしょ」



リナ。



周り。



見る。



「人の足跡」


「いくつか」



「新しい?」



「たぶん」



「何人?」



「そこまでは」


「分からない」



ちゃんと。



分からない。



言う。



最近。



それ。



大事。



「ノア」



【知識神ノア】


『はい』



「何か分かる?」



『現在得られている情報のみでは』


『標識を移動させた理由は特定できません』



「道は?」



『保有する地理情報では』


『北方大神殿へ至る主要街道は左です』



「主要街道」



『はい』



「右は?」



『古い地図では』


少し。



間。



『北側の集落へ向かう支道が存在します』



「大神殿には?」



『直接は向かいません』



「じゃあ左?」



『地理情報のみで判断するなら』



「…………」



ノア。



言い方。



変えた。



正解。



じゃない。



情報。



くれる。



「ありがとう」



『どういたしまして』



ガルド。



『怪しいなら右行こうぜ!』



「お前は黙ってて」



『何でだ!?』



「情報じゃなくて」


「好奇心だから」



『冒険だぞ!』



「大神殿行くんだよ!」



ダリオ。



俺を。



見る。



「神様か?」



「戦神が」


「右行きたがってる」



「戦神って」


「道選びに向いてなさそうだな」



『何だと!?』



「俺もそう思う」



『レン!!』



少し。



緊張。



抜ける。



でも。



標識。



動かした。



誰か。



いる。



理由。



分からない。



◇ ◇ ◇



「俺は」


ダリオ。



言う。



「ここで東だ」



分かれ道。



少し。



手前。



さらに。



細い。



道。



東。



続いてる。



「本当に」


「ここで別れ?」



「ああ」



荷台。



降りる。



荷物。



背負う。



やっぱり。



重い。



「ありがとうございました」



「坂押したからな」



「それ以上に」


「いろいろ」



ダリオ。



笑う。



「詩人の話か?」



「運送屋の話」



「詩人だ」



「仕事は運送」



「分かってきたじゃないか」



リナも。



「ありがとうございました」



「ああ」



ダリオ。



馬車。



乗る。



少し。



進んで。



止まる。



「レン」



「何?」



「道ってのはな」



「うん」



「正しい方を」


「選べる時ばっかじゃない」



「…………」



「知らない道なら」


「なおさらだ」



「じゃあ」


「どうする?」



ダリオ。



少し。



笑う。



「間違えたって分かったら」



一拍。



「戻れ」



「…………」



「それだけ?」



「それだけだ」



手綱。



鳴らす。



馬車。



東へ。



進む。



「じゃあな!」



「また!」



遠ざかる。



荷馬車。



見る。



詩人。



運送屋。



ダリオ。



たぶん。



どっちも。



正しい。



「行こ」



リナ。



「うん」



二本。



道。



残る。



左。



右。



どっち。



選ぶ。



◇ ◇ ◇



「左でいいと思う」



俺。



言う。



「理由は?」



リナ。



聞く。



「ノアの地図」



「うん」



「ダリオさんの記憶」



「うん」



「標識も」


「動かされてはいるけど」


「向きは左」



「うん」



「今ある情報だと」


「左」



「私も」



「じゃあ」



左へ。



行こうと。



した。



その時。



「おーい!」



声。



後ろ。



振り向く。



男。



一人。



走ってくる。



年。



三十くらい。



茶色の。



上着。



腰。



短剣。



旅人。



みたい。



「待ってくれ!」



男。



息。



切らす。



「北へ行くのか?」



「はい」



「大神殿?」



「そうです」



男。



顔。



曇る。



「左はやめとけ」



「…………」



リナ。



目。



細くなる。



「何で?」



「先で」


「道が崩れてる」



「崩れてる?」



「ああ」



「いつ?」



「三日前」



「雨?」



「たぶんな」



「たぶん?」



男。



少し。



止まる。



「俺が見た時には」


「もう崩れてた」



「どこで?」



「ここから」


「半日くらい」



「通れない?」



「無理だ」



「迂回は?」



「右から行け」



男。



右。



指す。



「そっちなら」


「遠回りだが」


「北へ抜けられる」



「…………」



俺。



右。



見る。



さっき。



ノア。



言った。



古い地図では。



北側の集落へ。



向かう。



支道。



大神殿へ。



直接は。



行かない。



「その道」


「北方大神殿まで続いてる?」



「続いてる」



「直接?」



「……途中で」


「街道に合流する」



「どこで?」



「先だ」



「どのくらい?」



「一日くらい」



曖昧。



「あなた」


「どこから来たんですか?」



男。



俺を見る。



「北だ」



「大神殿?」



「近く」



「職業は?」



「それ関係あるか?」



「ないかも」



男。



少し。



苛立つ。



「とにかく」


「左はやめとけ」



「分かりました」



「なら右へ」



「まだ決めてません」



男。



止まる。



「何でだ?」



「考えるから」



「崩れてるって」


「言ってるだろ」



「はい」



「なら」


「右だ」



「それを」


「決めるのは」


「俺です」



空気。



少し。



変わる。



リナ。



俺の。



半歩。



前。



出る。



手。



剣。



近く。



「…………」



男。



それ。



見る。



「好きにしろ」



吐き捨てる。



ように。



言う。



「俺は」


「忠告したからな」



男。



右の道へ。



入る。



数歩。



進む。



振り返る。



「左へ行けば」


「後悔するぞ」



そして。



歩いて。



行く。



見えなく。



なる。



「…………」



俺。



息。



吐く。



「怖」



リナ。



「最後の一言」


「いらなかったね」



「完全に怪しい人の台詞」



【戦神ガルド】


『追うか!?』



「追わない!」



『何でだ!』



「だから!」


「好奇心で動くな!」



リナ。



「戦神?」


「戦神」



「元気だね」



「ずっと」



◇ ◇ ◇



道の。



脇。



座る。



「整理する」



リナ。



「うん」



「左」



指。



一本。



「標識では大神殿」



「ダリオさんも」


「前は左」



「ノアの地図も」


「主要街道は左」



「うん」



「ただし」


「男が」


「三日前に崩れたと言った」



「右」



二本目。



「古い支道」



「北の集落へ向かう」



「男は」


「大神殿の街道に合流すると言った」



「うん」



「標識は」


「誰かに動かされてる」



「方向は左のまま」



「うん」



「男」


「怪しい」



「かなり」



「でも」



俺。



止まる。



「怪しいから」


「言ってること全部嘘」


「って決めるのも」


「危ないよな」



リナ。



「そうだね」



男が。



怪しい。



左が。



崩れている。



両方。



本当。



可能性も。



ある。



「ノア」



『はい』



「最近」


「この辺で大雨あった?」



『私が取得可能な』


『周辺環境記録では』


『三日前に』


『大規模な降雨は確認できません』



「小さい雨は?」



『ありました』



「道」


「崩れるくらい?」



『地盤状態によります』



「つまり」


「分からない」



『はい』



「リナ」



「何?」



「地面見れる?」



「どっちの?」



「両方」



リナ。



立つ。



左。



道。



しゃがむ。



土。



触る。



足跡。



見る。



次。



右。



「左」


「人も馬車も」


「最近通ってる」



「三日前より後?」



「そこまでは」


「分からない」



「右は?」



「人」


「少ない」



少し。



進む。



「さっきの男の足跡」



「それ以外?」



「古いのが」


「いくつか」



「…………」



決め手。



ない。



「神様」



俺。



呼ぶ。



「どう思う?」



ガルド。



『右!』



「理由」



『怪しい奴がいる!』



「却下」



『何でだ!』



セレナ。



『左』



「理由」



『既存情報が多い』



メルク。



『俺も左だ』



「理由」



『右へ行く利益が』


『あの男の証言に依存しすぎている』



ヴォルグ。



『左』



「理由」



『道は使われている』



フィリア。



『私は……』



「うん」



『左です』



「理由」



『右へ進んだ男性が』


『心配です』



「そっち!?」



『怪我をしているように見えました』



「え?」



リナ。



俺。



見る。



「何?」



「フィリアが」


「さっきの男」


「怪我してたって」



「どこ?」



『右脚です』



『庇っていました』



「リナ」


「気づいた?」



「……少し歩き方変だった」



「言ってよ!」



「古傷かと思った」



「なるほど」



ノア。



『左を推奨します』



「理由」



『現時点で』


『確認可能な情報の一致度が高いためです』



最後。



「エリオス」



『私は』


少し。



間。



『答えない』



「え?」



『お前が決めろ』



「…………」



「ずるくない?」



『そうかもしれない』



「認めるんだ」



でも。



俺。



少し。



笑う。



そう。



だった。



ここへ。



来た。



理由。



自分で。



知りたいから。



なら。



道も。



自分で。



決める。



「左」



俺。



言う。



リナ。



「決まり?」



「うん」



「もし」


「本当に崩れてたら?」



「戻る」



ダリオ。



言ってた。



間違えたって。



分かったら。



戻ればいい。



「じゃあ」


「行こ」



左へ。



歩き出す。



◇ ◇ ◇



一時間。



何も。



ない。



「…………」



二時間。



何も。



ない。



「…………」



「レン」



「何?」



「静かだね」



「やめて」


「そういうの言うと」


「何か起きる」



「そんなことある?」



「俺にはある」



道。



普通。



崩れて。



ない。



「男」


「嘘だった?」



「まだ」


「半日先って言ってた」



「そうだった」



歩く。



途中。



車輪。



跡。



ある。



古い。



でも。



道。



使われてる。



昼。



休憩。



「ここまで」


「普通」



「うん」



パン。



食べる。



「右」


「行った方がよかったかな」



口。



出る。



リナ。



「もう?」



「いや」


「気になって」



「レンが左って決めたんでしょ」



「そうだけど」



「じゃあ」


「今は左」



「…………」



「違うって分かったら」


「戻ればいい」



ダリオと。



同じ。



「リナ」


「ダリオさんの詩」


「聞いてた?」



「聞いてたよ」



「覚えてる?」



「道は足の下」



「名は背中」



「そう」



「どっち見るか」


「旅人が決める」



「覚えてるじゃん」



「レンより」


「記憶いいかも」



「それはない」



ノア。



『比較しますか?』



「しなくていい!」



◇ ◇ ◇



午後。



道。



少し。



細く。



なる。



木々。



増える。



「崩れてない」



「うん」



男が。



言った。



半日。



もう。



近い。



「警戒する?」



「してる」



リナ。



剣。



触る。



俺も。



木剣。



握る。



前。



なら。



怖くて。



神様。



聞いてた。



敵。



いる?



危険?



今も。



聞きたい。



でも。



聞く前に。



見る。



道。



木。



音。



足元。



「…………」



鳥。



いる。



虫。



いる。



西の森。



みたいな。



異様な。



静けさ。



ない。



「普通だな」



リナ。



「普通」



少し。



進む。



その時。



道。



脇。



何か。



見える。



「止まって」



リナ。



低い。



声。



俺。



止まる。



「何?」



「足跡」



しゃがむ。



土。



見る。



「新しい?」



「うん」



「何人?」



「一人」



「どっち向き?」



リナ。



見る。



「北」



「さっきの男?」



「違うと思う」



「何で?」



「靴の形」



「なるほど」



さらに。



進む。



木。



一本。



布。



引っかかってる。



「これ」



薄い。



布。



破れ。



古く。



ない。



「誰か」


「通った?」



「たぶん」



さらに。



先。



道。



開ける。



「…………」



俺。



止まる。



「リナ」



「うん」



「道」



「あるね」



崩れて。



ない。



普通に。



続いてる。



「嘘だった?」



「たぶん」



でも。



何で。



右へ。



行かせた。



俺たちを。



右へ。



誘導。



したかった?



「…………」



ガルド。



『やっぱり追えばよかったな!』



「今は言うな!」



でも。



胸。



ざらつく。



右へ。



行った。



男。



あいつ。



何者。



だった。



◇ ◇ ◇



夕方。



「今日」


「どこまで行く?」



リナ。



「宿場」


「あるんだよな?」



ノア。



『地図上では』


『この先に小規模な集落があります』



「どれくらい?」



『一時間以内』



「そこまで行こう」



足。



少し。



疲れてる。



でも。



日が。



落ちる前に。



着きたい。



歩く。



道。



下る。



木々。



抜ける。



そして。



見えた。



家。



「着いた」



俺。



少し。



安心。



でも。



リナ。



返事。



しない。



「リナ?」



「…………」



「どうした?」



リナ。



集落。



見る。



俺も。



見る。



家。



十軒。



二十軒。



もっと。



ある。



畑。



井戸。



小さな。



広場。



でも。



「人」



いない。



「…………」



誰も。



いない。



煙。



上がってない。



声。



ない。



家畜。



いない。



子ども。



いない。



風。



だけ。



通る。



「ノア」



『はい』



「ここ」


「宿場?」



『地図上では』


『有人集落として記録されています』



「いつの情報?」



少し。



間。



『最新更新は』


『八か月前です』



「八か月」



長い。



「廃村?」



リナ。



剣。



抜く。



「分からない」



俺も。



木剣。



抜く。



「入る?」



リナ。



聞く。



俺。



集落。



見る。



日。



落ちる。



ここを。



避けるなら。



野宿。



でも。



人が。



いない。



理由。



分からない。



「入口まで」



俺。



言う。



「危なかったら」


「戻る」



「うん」



一歩。



入る。



土。



道。



足跡。



ある。



「リナ」



「分かってる」



しゃがむ。



「新しい」



「どれくらい?」



「今日か」


「昨日」



「人いる?」



「いた」



過去形。



「何人?」



「複数」



「どっち?」



「村の中」



進む。



家。



扉。



開いてる。



中。



誰も。



いない。



机。



椅子。



食器。



ある。



「急に」


「いなくなった?」



「かも」



次。



家。



同じ。



物。



残ってる。



「盗賊?」



「なら」


「もっと荒れてると思う」



「魔物?」



「血がない」



「避難?」



「荷物が残りすぎ」



分からない。



広場。



着く。



井戸。



ある。



「水」



「飲まない方がいい」



「うん」



その時。



――ガタン。



音。



右。



家。



「…………」



リナ。



剣。



構える。



俺。



木剣。



握る。



「誰かいる?」



返事。



ない。



「出てきてください」



沈黙。



リナ。



俺を見る。



俺。



頷く。



近づく。



扉。



半分。



開いてる。



リナ。



先。



俺。



後ろ。



中。



暗い。



「誰か」



リナ。



足。



止まる。



「いる」



「え?」



部屋。



奥。



人。



倒れてる。



男。



「大丈夫ですか!」



近づく。



「待って」



リナ。



周り。



確認。



「他はいない」



俺。



しゃがむ。



男。



息。



ある。



「フィリア!」



【生命神フィリア】


『生きています』



「怪我?」



『複数』



服。



破れてる。



腕。



傷。



脚。



傷。



乾いた。



血。



でも。



致命傷。



では。



なさそう。



「聞こえますか?」



男。



目。



薄く。



開く。



「…………」



「大丈夫」


「俺たちは」



男。



急に。



俺の。



腕。



掴む。



「っ!」



強い。



「待って!」



リナ。



剣。



向ける。



「リナ!」


「大丈夫!」



男。



震えてる。



「行くな」



「え?」



「どこへ?」



「北」



男。



息。



荒い。



「北へ」


「行くな」



「何があった?」



「…………」



「この村の人は?」



男。



顔。



歪む。



「いない」



「どこに?」



「…………」



「分からない」



「何で?」



男。



俺の。



腕。



さらに。



強く。



握る。



「消えた」



「…………」



「消えた?」



「昨日まで」


「いた」



「朝」



「起きたら」



「誰も」



「…………」



リナ。



顔。



険しい。



「あなたは?」


「何で怪我してる?」



男。



答えない。



「誰にやられた?」



「…………」



目。



俺。



見る。



何か。



怖がってる。



「右の道」



男。



呟く。



「え?」



「右?」



「分かれ道の」



「右」



「…………」



さっきの。



男。



「右に」


「何がある?」



怪我した。



男。



口。



開く。



でも。



声。



出る前。



外。



――ピー。



高い。



音。



笛。



みたいな。



短い。



一回。



男。



顔。



一気に。



青くなる。



「何?」



リナ。



立つ。



剣。



構える。



男。



震える。



「来た」



「何が?」



「…………」



「来た」



もう一度。



――ピー。



今度は。



少し。



近い。



俺。



木剣。



握る。



心臓。



速い。



外。



夕暮れ。



誰も。



いない。



村。



その。



どこか。



何かが。



いる。



「レン」



リナ。



小さい。



声。



「どうする?」



神様に。



聞く。



その前に。



俺は。



扉。



窓。



怪我人。



外。



順番に。



見る。



逃げる。



残る。



隠れる。



戦う。



まだ。



何が。



正しいか。



分からない。



だから。



まず。



決める。



「この人を」


「一人にしない」



リナ。



頷く。



「うん」



「それから」


「何が来るのか」


「見る」



木剣。



握る。



怖い。



でも。



目は。



閉じない。



――ピー。



三度目。



笛。



今度は。



村の。



すぐ。



外から。



聞こえた。

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