神託ログ28 神様、説明してください
朝。
起きて。
最初に。
思った。
職業。
なし。
「…………」
夢じゃ。
なかった。
昨日。
職業院で。
見た。
【職業】
【なし】
無職。
ではなく。
なし。
言葉にすれば。
たった。
二文字。
なのに。
意味が。
分からない。
「はあ……」
寝た。
はずなのに。
全然。
寝た気が。
しない。
壁際。
木剣。
俺が。
手に取れば。
普通の重さ。
他の人が。
持てば。
重くなる。
理由。
不明。
俺が。
出した。
変な火。
魔法では。
ない。
理由。
不明。
俺にだけ。
届く。
七柱のものではない。
神託。
送信者。
不明。
そして。
職業。
なし。
「…………」
「俺」
木剣。
見る。
「不明多すぎない?」
【知識神ノア】
『はい』
「即答すんなよ」
『事実です』
「もうちょっと」
「励ますとか」
『大丈夫です』
「雑!」
『励ましました』
「ノア」
「励ますの下手だな」
少し。
間。
『否定はしません』
「そこは否定しろよ」
ちょっと。
笑う。
笑えた。
それだけで。
少し。
楽。
「ノア」
『はい』
「昨日の続き」
『はい』
「今日は」
息。
吐く。
「全部」
「聞くから」
『分かりました』
「知らないなら」
「知らない」
『はい』
「推測なら」
「推測」
『はい』
「言えないなら」
「言えない」
『はい』
「勝手に」
「俺に必要ないって」
「決めないで」
少し。
間。
『承知しました』
「他の六人にも」
『すでに共有しています』
「仕事早いな」
『知識神ですので』
「そこ関係ある?」
『おそらく』
「おそらくなんだ」
でも。
今日。
聞く。
俺が。
何なのか。
答えが。
出なくても。
少なくとも。
七柱が。
何を知っているのか。
何を。
知らないのか。
それは。
知っておきたい。
◇ ◇ ◇
昨日の。
職業院。
入口。
俺は。
立っていた。
「…………」
入りたくない。
【戦神ガルド】
『帰るか?』
「まだ入ってないだろ」
『入りたくねえ顔してるぞ』
「してる」
『なら帰ってもいい』
「でも入る」
『そうか』
「止めないんだ」
『昨日言っただろ』
少し。
間。
『決めんのはお前だ』
「…………」
「ありがと」
『おう!』
声。
でかい。
やっぱ。
ガルド。
朝から。
でかい。
中。
入る。
受付。
昨日の。
女性。
俺を。
見た。
止まる。
「あ」
「どうも」
「…………」
「その顔やめてもらえます?」
「すみません」
「完全に」
「石壊した人を見る顔してますよね?」
「…………」
「否定して!」
「石は」
女性。
慎重。
「まだ壊れたと」
「確定していません」
「そこ!?」
昨日より。
少し。
人。
少ない。
俺のせい。
では。
ないと。
思いたい。
「昨日の件で」
「話を聞きに来ました」
「お待ちください」
女性。
奥。
向かう。
しばらく。
年配の。
男。
出てくる。
灰色の。
髪。
細い。
眼鏡。
手には。
昨日の。
記録。
「レン・アルヴェインさんですね」
「はい」
「職業院の」
「判定管理を担当しています」
「よろしくお願いします」
「こちらへ」
案内。
される。
昨日とは。
違う。
小さな。
部屋。
机。
椅子。
その上。
紙。
何枚も。
「まず」
男。
座る。
「昨日の結果について」
「こちらから説明します」
「お願いします」
「結論から言えば」
一拍。
「我々にも」
「分かりません」
「…………」
最近。
聞き慣れた。
「ですよね」
男。
少し。
困った顔。
「驚かれないのですね」
「周りに」
「分からないって言う神様が多いので」
「神様?」
「気にしないでください」
もう。
この説明。
慣れた。
◇ ◇ ◇
男。
紙。
一枚。
出す。
「職業石について」
「どこまでご存じですか?」
「職業を見る石」
「大まかには」
「間違っていません」
「大まかには?」
「職業石は」
「人の中に職業を作るものではありません」
「え?」
「職業を」
「与えるものでもない」
「じゃあ」
「何してるの?」
「読むのです」
「読む?」
男。
指。
一本。
立てる。
「その人と」
「神々の加護」
「そして」
「世界に存在する職業体系との」
「つながりを読み取る」
「…………」
「その上で」
「最も適した職業を」
「表示する」
「じゃあ」
「リナが狩剣士なのは」
「職業石が」
「彼女を狩剣士にしたわけではありません」
「元から」
「適性があった?」
「簡単に言えば」
「はい」
なるほど。
「じゃあ」
「無職は?」
男。
少し。
考える。
「一般に」
「適合する職業が」
「確認できなかった状態です」
「でも」
「職業という仕組み自体には」
「入ってる?」
男。
止まる。
「……独特な表現ですね」
「違う?」
「いいえ」
少し。
紙。
見る。
「近いと思います」
「じゃあ」
喉。
少し。
乾く。
「昨日の」
【職業】
【なし】
「これは?」
男。
眼鏡。
外す。
「分かりません」
「無職と」
「違う?」
「表示形式が」
「明確に違います」
「今まで」
「出たことは?」
「私が確認できる記録には」
「ありません」
「この街だけ?」
「少なくとも」
「当院に残る記録では」
「他の街なら?」
「可能性はあります」
「昔なら?」
男。
少し。
考える。
「古い記録は」
「大神殿に集約されています」
「大神殿」
「北方大神殿です」
その言葉。
覚える。
まだ。
行くとは。
決めない。
「もう一つ」
俺。
聞く。
「職業石」
「誰が作ったんですか?」
男。
「神殿が管理しています」
「管理じゃなくて」
「作ったのは?」
「…………」
男。
止まる。
「分かりません」
「神様?」
「神具として」
「伝わっています」
「神具」
「はい」
「古くから」
「職業判定に使われています」
「古くからって」
「どれくらい?」
「正確な年代は」
「私には」
「分からない」
「はい」
分からない。
でも。
一つ。
増えた。
職業石は。
職業を。
作るものではない。
読む。
もの。
なのに。
俺を。
読もうとして。
壊れかけた。
「…………」
気分。
悪いな。
◇ ◇ ◇
「昨日」
男。
別の。
紙。
出す。
「石に現れた職業名を」
「可能な限り記録しました」
見る。
剣士。
魔術師。
商人。
鍛冶師。
治療師。
斥候。
学士。
運搬士。
狩人。
神官。
「いっぱい出たな」
「通常」
男。
言う。
「複数の適性がある場合でも」
「最も強いもの」
「あるいは」
「複数を統合した上位職が」
「表示されます」
「俺は?」
「一つずつ」
「現れて」
「消えた」
「最後」
「全部消えた」
「はい」
「何で?」
「分かりません」
「ですよね」
男。
少し。
申し訳なさそう。
「ただ」
「何?」
「適性がない」
「という動きには」
「見えませんでした」
「…………」
「どういうこと?」
「適性がなければ」
「最初から」
「職業名は表示されません」
「じゃあ」
「俺には」
「適性がいっぱいある?」
「それも」
「断定できません」
「何で?」
「すべて」
「消えたからです」
「…………」
「石が」
「あなたを」
「何か一つへ」
「分類しようとして」
男。
言葉。
探す。
「できなかった」
「そんな」
「印象でした」
分類。
その言葉。
胸。
引っかかる。
この世界へ。
来た日。
見えた。
記録。
【分類処理を実行】
【――失敗】
【分類不能】
同じ。
「ノア」
『はい』
「聞いてる?」
『すべて』
「どう思う?」
『職員の見解と』
『現時点の観測結果に』
『大きな矛盾はありません』
「じゃあ」
「やっぱり俺」
「分類できない?」
『可能性は高いです』
「何で?」
『不明です』
「…………」
ここから。
神様側。
だな。
◇ ◇ ◇
職業院。
出る。
リナ。
入口。
壁。
寄りかかってる。
「え?」
「遅い」
「待ってたの?」
「ちょっと」
「何で?」
「気になったから」
「仕事は?」
「午後から」
「そうなんだ」
リナ。
俺。
見る。
「何か分かった?」
「分からないことが」
「整理された」
「それ」
「分かったって言うの?」
「最近」
「俺の中では言う」
「変なの」
「知ってる」
歩く。
「リナ」
「何?」
「職業石って」
「職業をくれるんじゃないらしい」
「うん」
「知ってたの!?」
「何となく」
「先に言って!」
「聞かれてないし」
「ノアが増えた!」
「誰?」
「遠いところの説明不足」
リナ。
首。
傾げる。
「でも」
俺。
続ける。
「リナは」
「狩剣士って出た時」
「嬉しかった?」
「嬉しかったよ」
即答。
「欲しかったから」
「狩剣士が?」
「うん」
「子どもの頃から?」
「そう」
腰。
剣。
触る。
「父さんも」
「狩剣士だったから」
「へえ」
「魔物を狩って」
「街道を守って」
「お金稼いで」
「たまに怪我して帰ってきて」
「最後だけ嫌だな」
「母さんも毎回怒ってた」
少し。
笑う。
「でも」
「格好よかった」
「だから」
「狩剣士になりたかった」
「なれて」
「嬉しかった」
「うん」
「じゃあ」
俺。
聞く。
「職業石が」
「別の職業出してたら?」
リナ。
止まる。
「例えば?」
「商人」
「嫌」
「魔術師」
「魔力ない」
「例え!」
「鍛冶師」
「暑い」
「そこ!?」
リナ。
少し。
笑う。
「でも」
「狩剣士じゃなかったら」
声。
少し。
落ちる。
「困ったと思う」
「何で?」
「だって」
一拍。
「それになるつもりで」
「ずっと生きてたから」
「…………」
「狩剣士だから」
「剣を覚えた」
「狩剣士だから」
「狩りを覚えた」
「狩剣士だから」
「今もやってる」
いつもの。
言葉。
でも。
今日は。
少し。
違って。
聞こえる。
「リナは」
「狩剣士だから」
「リナなの?」
リナ。
眉。
寄せる。
「何その質問」
「分からん」
「自分で聞いたのに?」
「最近」
「分からん質問が増えてる」
「変なの」
また。
それ。
でも。
リナ。
少し。
考える。
「逆じゃない?」
「え?」
「私が」
「狩剣士になりたかったから」
「狩剣士になった」
「…………」
「だから」
「私が先」
「職業が後?」
「たぶん」
「たぶんなんだ」
「難しいこと聞くからでしょ」
歩き出す。
俺。
少し。
止まる。
私が先。
職業が後。
その言葉。
妙に。
残った。
◇ ◇ ◇
昼。
街の外。
人。
少ない。
草地。
木剣。
腰。
俺は。
七柱。
呼ぶ。
「じゃあ」
息。
吐く。
「神様」
一拍。
「説明してください」
【戦神ガルド】
『おう』
【魔法神セレナ】
『聞いてる』
【商神メルク】
『始めろ』
【鍛冶神ヴォルグ】
『ああ』
【生命神フィリア】
『はい』
【知識神ノア】
『準備できています』
最後。
【創世神エリオス】
『……聞こう』
「まず」
俺。
聞く。
「職業って」
「神様が与えてるの?」
ノア。
『厳密には』
『違います』
「じゃあ」
「天職って呼ばれてるのは?」
『人間社会における』
『宗教的』
『慣習的な呼称です』
「神様からもらう」
「職業じゃない?」
『個々の人間へ』
『七柱のいずれかが』
『一件ずつ職業を付与しているわけではありません』
「じゃあ」
「誰が決める?」
ノア。
『世界律』
『本人の適性』
『各領域との接続』
『蓄積された職業体系』
『複数の要素によって分類されます』
「神様は?」
『関与しています』
「どこまで?」
少し。
間。
『管理者として』
「管理者」
また。
言葉。
増えた。
「エリオス」
『ああ』
「創世神なのに」
「職業作ってないの?」
『少なくとも』
間。
『現在使われている職業体系を』
『私一人が作ったわけではない』
「七柱で?」
『違う』
「…………」
「じゃあ誰?」
沈黙。
「知らない?」
『すべては』
一拍。
『知らない』
「分かってる部分は?」
『我々が』
『現在の管理を引き継ぐ以前から』
『職業体系は存在していた』
「…………」
風。
吹く。
「引き継いだ?」
『ああ』
「誰から?」
エリオス。
黙る。
「言えない?」
『正確には』
少し。
間。
『一人からではない』
「じゃあ?」
『管理権限と』
『記録と』
『仕組みを』
一拍。
『引き継いだ』
「誰が作ったかは?」
『完全な記録がない』
「…………」
神様が。
作った。
世界。
だと。
勝手に。
思ってた。
でも。
神様にも。
引き継いだ。
ものがある。
「次」
俺。
木剣。
握る。
「俺の職業」
「最初」
「無職だった」
『ああ』
「昨日」
「なしになった」
『ああ』
「違いは?」
ノア。
『確定できません』
「推測は?」
『あります』
「聞く」
ノア。
少し。
間。
『無職は』
『既存職業の中に』
『現在適合する分類がない状態』
「うん」
『なしは』
長い。
間。
『既存の職業分類そのものが』
『対象へ正常に適用されていない可能性があります』
「…………」
昨日。
知らない声。
俺は。
聞いてない。
でも。
どこか。
似ている。
「つまり」
「俺」
「職業がないんじゃなくて」
言葉。
選ぶ。
「職業って仕組みから」
「外れてる?」
ノア。
『可能性の一つです』
「それなら」
「魔法使えたのも?」
セレナ。
『説明できるとは限らない』
「木剣は?」
ヴォルグ。
『別件の可能性もある』
「変な火は?」
『不明』
「全部」
「一つにつなげるな?」
ノア。
『はい』
「分かった」
大事。
何でも。
一つの。
原因に。
したくなる。
でも。
まだ。
証拠。
ない。
「じゃあ」
本題。
「七柱は」
「俺が」
「こうなる可能性」
「最初から知ってた?」
ガルド。
『知らん』
セレナ。
『私も』
メルク。
『同じだ』
ヴォルグ。
『知らん』
フィリア。
『知りませんでした』
ノア。
『分類不能であることは』
『早期に把握しました』
「でも」
「なしになるとは?」
『予測できませんでした』
「エリオス」
『…………』
また。
沈黙。
「エリオス」
『なしという表示は』
一拍。
『知らなかった』
「じゃあ」
「何を知ってた?」
『お前が』
『通常の分類から外れる可能性』
「それだけ?」
沈黙。
「…………」
まだ。
ある。
分かる。
「エリオス」
『…………』
「昨日」
「全部聞くって言った」
『ああ』
「なら」
息。
吸う。
「言って」
長い。
沈黙。
風。
草。
揺れる。
そして。
エリオス。
『レン』
「うん」
『お前について』
『最初に』
『訂正しなければならないことがある』
「何?」
『我々七柱は』
一拍。
『お前を育成している』
「知ってる」
『だが』
声。
重い。
『我々七柱が』
長い。
間。
『レンを選んだのではない』
「…………」
何。
言ってる?
「待って」
「俺」
「育成対象だよな?」
『ああ』
「第109代」
『ああ』
「七柱が」
「育てる」
『ああ』
「でも」
喉。
乾く。
「七柱が」
「選んだんじゃない?」
『そうだ』
「じゃあ」
一拍。
「誰が」
「俺を選んだ?」
沈黙。
誰も。
答えない。
「知らない?」
エリオス。
『……正確には』
ガルド。
『エリオス』
低い。
声。
止める。
「ガルド?」
『そこまでだ』
「何で?」
『今は』
「またそれ?」
腹。
熱くなる。
「俺に」
「必要ないから?」
『違う』
「怖がるから?」
『違う』
「じゃあ何!」
ガルド。
少し。
黙る。
『確かじゃねえ』
「…………」
『確かじゃねえことを』
『今ここで』
『名前だけ出して』
『お前の頭に植え付けたくねえ』
「それを」
止まる。
ガルド。
続ける。
『だから』
『言わねえんじゃない』
『確かじゃないってことまで』
『今は言った』
「…………」
前とは。
少し。
違う。
隠す。
じゃない。
不確か。
だから。
断定しない。
「じゃあ」
俺。
言う。
「いるんだな?」
「候補が」
沈黙。
エリオス。
『……いる』
「証拠は?」
『足りない』
「だから」
「今は言えない?」
『そうだ』
「…………」
納得。
は。
してない。
でも。
前より。
マシ。
「その証拠」
俺。
聞く。
「どこにある?」
ノア。
『可能性が高い場所が』
『一か所あります』
「どこ?」
『北方大神殿』
朝。
聞いた。
場所。
「古い記録?」
『はい』
『現在の七柱が』
『管理を引き継ぐ以前の記録が』
『最も多く残されています』
「遠い?」
『徒歩で』
『およそ三日』
「三日」
近くは。
ない。
でも。
行けない。
距離でも。
ない。
「行けば」
「分かる?」
『保証できません』
「ですよね」
でも。
今。
ここに。
いても。
増えない。
答え。
あるかも。
しれない。
場所。
できた。
「…………」
西。
紫の。
植物。
生命。
減っている。
森。
まだ。
気になる。
でも。
俺自身。
ことも。
知りたい。
全部。
一度には。
できない。
「今日」
俺。
言う。
「決めない」
ガルド。
『おう』
「明日でも」
「いい?」
『当然だ』
「考える」
自分で。
決める。
急がない。
◇ ◇ ◇
街へ。
戻る。
夕方。
「レン!」
後ろ。
リナ。
走ってくる。
「何?」
「話」
「終わった?」
「終わった」
「どうだった?」
「神様に」
「説明してもらった」
「神様?」
「あ」
言った。
リナ。
止まる。
「神様?」
「…………」
もう。
誤魔化すの。
無理。
「リナ」
「何?」
「俺」
頭。
掻く。
「ちょっと」
「説明しにくいことがある」
「今さら?」
「ひどくない?」
「レン」
「いつも一人で喋ってるし」
「…………」
バレてた。
「変な火出すし」
「うん」
「木剣変だし」
「うん」
「無職だったのに」
「なしになるし」
「はい」
「今さら何が増えても」
「ちょっとなら驚かない」
「ちょっとは驚くんだ」
「うん」
俺。
少し。
笑う。
「俺」
「七柱の神様と」
「話せる」
リナ。
止まる。
「…………」
「…………」
「え?」
「驚いた!」
「それは驚くよ!」
「ちょっとじゃないじゃん!」
「限度あるでしょ!」
普通の。
反応。
ちょっと。
安心。
◇ ◇ ◇
全部。
では。
ない。
でも。
話せる範囲。
話した。
この世界へ。
来て。
神様に。
育てられている。
七柱。
それぞれ。
教わってる。
リナ。
黙って。
聞く。
「だから」
「一人で喋ってたんだ」
「そう」
「遠いところの知り合い」
「全部神様?」
「だいたい」
「嘘じゃん」
「遠いだろ!」
「距離の話じゃないでしょ!」
正論。
「で」
リナ。
聞く。
「神様でも」
「レンが何なのか」
「分からない?」
「そう」
「役に立たないね」
七柱。
一瞬。
静か。
「リナ」
「何?」
「今」
「神様七人に喧嘩売った」
「え」
ガルド。
『面白い!』
セレナ。
『言うじゃない』
メルク。
『事実の一部ではある』
ヴォルグ。
『否定はせん』
フィリア。
『もう少し優しく言ってほしいです……』
ノア。
『情報不足は事実です』
エリオス。
『…………』
「大丈夫」
「意外と怒ってない」
「本当にいるんだ……」
リナ。
空。
見る。
「見えない?」
「見えない」
「声は?」
「聞こえない」
「俺だけ?」
「うん」
「変なの」
「もうそれ褒め言葉だと思うことにする」
リナ。
少し。
笑う。
「それで?」
「ん?」
「これから」
「どうするの?」
俺。
止まる。
「北に」
「大神殿がある」
「うん」
「三日」
「うん」
「昔の記録」
「あるかもしれない」
リナ。
俺を見る。
「行くの?」
「まだ」
「決めてない」
「行きたい?」
「…………」
そこ。
大事。
危険。
あるかも。
何も。
ないかも。
三日。
往復。
六日以上。
仕事。
金。
食料。
全部。
いる。
でも。
「行きたい」
答え。
出る。
「自分のこと」
「知りたい」
リナ。
「じゃあ行けば?」
「軽いな」
「だって」
「行きたいんでしょ」
「でも」
「準備とか」
「すればいい」
「危険とか」
「気をつければいい」
「何もなかったら?」
「帰ればいい」
「…………」
簡単に。
言う。
でも。
そのくらいで。
いいのかも。
「リナ」
「何?」
「北方大神殿」
「行ったことある?」
「ない」
「道は?」
「途中までなら」
「何で?」
「狩り」
「なるほど」
リナ。
少し。
考える。
「いつ行く?」
「まだ決めてないって」
「決めたら教えて」
「何で?」
「行くから」
「…………」
「どこに?」
「北」
「誰が?」
「私」
「何で!?」
リナ。
当然。
みたいな。
顔。
「一人より」
「二人の方が安全でしょ」
「仕事は?」
「調整する」
「狩りは?」
「帰ってから」
「危ないぞ」
「狩剣士だよ?」
また。
それ。
「でも」
「俺の問題だぞ」
「うん」
「リナ」
「関係ないだろ」
少し。
間。
リナ。
俺を見る。
「関係あるよ」
「何で?」
「友達だから」
「…………」
止まる。
リナ。
言ってから。
少し。
顔。
逸らす。
「たぶん」
「たぶん!?」
「そこまで長くないし」
「急に保険かけるなよ!」
「嫌なら行かない」
「嫌じゃない」
即答。
出た。
リナ。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「決まり」
「いや」
「まだ出発日は決まってない」
「そこはちゃんと決めて」
「はい」
何か。
少し。
嬉しい。
◇ ◇ ◇
夜。
木剣。
横。
置く。
荷物。
考える。
水。
食料。
金。
替えの。
服。
地図。
「三日」
片道。
三日。
初めて。
この街から。
ちゃんと。
離れる。
西の森より。
遠い。
怖い。
でも。
行きたい。
「エリオス」
『何だ』
「最後に一個」
『ああ』
「俺を」
「七柱が選んだんじゃないなら」
少し。
間。
「何で」
「育ててるの?」
エリオス。
すぐには。
答えない。
『役目だから』
「…………」
少し。
胸。
冷える。
「役目」
『ああ』
「俺じゃなくても?」
『…………』
「第109代なら」
「誰でも?」
沈黙。
長い。
「エリオス」
『最初は』
声。
静か。
『そうだった』
「…………」
正直。
だな。
『我々は』
『育成対象を受け取った』
『それが』
『レンだった』
「うん」
『だから』
『育て始めた』
「役目だから」
『ああ』
少し。
間。
『だが』
「何?」
『今は』
止まる。
『それだけではない』
「…………」
「どういう意味?」
『それは』
一拍。
『自分で考えろ』
「そこヴォルグみたいに逃げる!?」
【鍛冶神ヴォルグ】
『俺を巻き込むな』
「いたの!?」
【戦神ガルド】
『俺もいるぞ!』
「何で!?」
【魔法神セレナ】
『私も』
【商神メルク】
『同じく』
【生命神フィリア】
『聞いていました』
【知識神ノア】
『記録しています』
「プライバシー!!」
うるさい。
本当に。
うるさい。
でも。
少し。
笑う。
七柱は。
俺を。
選んでない。
役目として。
育て始めた。
それは。
事実。
でも。
今。
俺が。
こいつらを。
どう思ってるか。
それも。
別の。
事実。
疑う。
腹も。
立つ。
隠されると。
ムカつく。
うるさい。
勝手に。
会議する。
でも。
助けられた。
教えられた。
笑った。
だから。
全部。
嘘だった。
なんて。
思わない。
「北方大神殿」
呟く。
そこに。
何が。
ある。
誰が。
俺を。
選んだ。
なぜ。
俺なのか。
職業。
なし。
とは。
何なのか。
答え。
あるかもしれない。
ないかもしれない。
それでも。
行く。
今度は。
神託に。
言われたからじゃない。
七柱に。
決められたからでもない。
俺が。
知りたいから。
俺が。
選ぶ。
「エリオス」
『何だ』
「決めた」
『…………』
「北へ行く」
少し。
間。
『そうか』
「止める?」
『止めない』
「危険でも?」
『危険なら』
『危険だと伝える』
「うん」
『分からないなら』
『分からないと伝える』
「うん」
『その上で』
一拍。
『レンが決めろ』
「…………」
「やっと」
「分かってきたじゃん」
ガルド。
笑う。
セレナ。
何か。
文句。
言う。
メルク。
旅費の。
話。
始める。
フィリア。
薬。
持て。
言う。
ノア。
必要物資。
一覧。
作る。
ヴォルグ。
木剣。
点検。
しろ。
言う。
「待って待って待って!」
うるさい。
七柱。
本当に。
うるさい。
でも。
俺は。
笑ってた。
明日。
準備。
する。
その次。
北へ。
向かう。
自分が。
何なのか。
知るために。
神様の。
知らない。
答えを。
探しに。




