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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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26/71

神託ログ26 手を離すな

翌朝。


目が。


覚めた。


最初に。


見たのは。


木剣。


「…………」


昨日。


置いた場所。


そのまま。


布に。


包まれている。


当然。


動いてない。


「おはよう」


返事。


ない。


「…………」


何してるんだ。


俺。


木剣に。


挨拶。


してる。


【戦神ガルド】


『いい朝だな!』


「うわっ!」


飛び起きる。


「急に入ってくんな!」


『起きてただろ!』


「心の準備が!」


『朝に何の準備がいる!』


「静けさ!」


ガルド。


朝から。


うるさい。


でも。


少し。


安心する。


布。


外す。


木剣。


持つ。


「…………」


軽い。


いつもの。


重さ。


昨日。


リナ。


持った時。


腕。


沈んだ。


バルガスも。


重い。


そう。


言った。


俺には。


普通。


「ヴォルグ」


【鍛冶神ヴォルグ】


『持つなと言ったのは昨日までだ』


「お」


『だが振るな』


「厳しい」


『鍛冶場へ持ってこい』


「はい」


木剣。


もう一度。


布。


包む。


「今日」


何が。


分かるんだろう。


いや。


決めつけない。


分からないまま。


終わるかもしれない。


それでも。


見る。



◇ ◇ ◇



鍛冶場。


朝。


バルガス。


すでに。


働いている。


「おはようございます」


「遅い」


「朝ですよ!?」


「炉はもっと前から起きてる」


「炉と競わせないでください」


木剣。


渡す。


バルガス。


受け取った。


瞬間。


「……やっぱりだな」


「重い?」


「ああ」


「昨日と同じ?」


「たぶんな」


「量れない?」


「量れるぞ」


「え?」


普通に。


秤。


出てきた。


「あるんだ」


「鍛冶場だぞ」


木剣。


乗せる。


重り。


置く。


調整。


「…………」


バルガス。


眉。


寄せる。


「どう?」


「普通だ」


「え?」


「この木剣なら」


「これくらいだ」


「じゃあ重くない?」


「秤ではな」


「でも持つと?」


「重い」


「…………」


意味。


分からない。


「秤には」


「嫌われてない?」


「木剣が人を嫌う前提で話すな」


「だって!」


【知識神ノア】


『興味深い現象です』


「ノア」


『はい』


「重さが変わってないなら」


「何が変わってる?」


『現時点では不明です』


「ですよね」


ヴォルグ。


『レン』


「うん」


『持て』


バルガスから。


受け取る。


軽い。


「普通」


『片手を離せ』


「こう?」


片手。


持つ。


問題。


ない。


『水平に』


「はい」


保つ。


『十秒』


「一」


「二」


「数えなくていい」


バルガス。


「気分です」


十秒。


余裕。


『バルガスに戻せ』


渡す。


バルガス。


同じ。


構え。


片手。


「っ……」


腕。


下がる。


「そんなに?」


「馬鹿にしてるのか」


「してないです!」


バルガス。


両手。


持ち直す。


「鉄剣より重く感じる」


「でも秤は普通」


「ああ」


「何それ」


『次』


ヴォルグ。


「まだやる?」


『当然だ』


「誰?」


バルガス。


「遠いところの」


「もういい」


「諦められた!」



◇ ◇ ◇



「持ち手」


ヴォルグ。


『変えろ』


「どうやって?」


『普段と違う場所を握れ』


柄。


一番。


端。


握る。


「こう?」


少し。


持ちにくい。


でも。


重さ。


普通。


『逆手』


「はい」


普通。


『左手』


「はい」


少し。


慣れない。


でも。


重くない。


『地面へ置け』


置く。


『拾え』


「はい」


普通。


『一度手を離せ』


「はい」


『もう一度』


「普通」


何回。


やっても。


俺には。


普通。


「これ」


「俺だけ?」


『まだ決めるな』


「はい」


バルガス。


腕。


組む。


「他の奴にも持たせるか」


「誰?」


「いるだろ」


鍛冶場。


若い。


職人。


呼ばれる。


「これ持て」


「木剣?」


「いいから」


青年。


持つ。


「っ!?」


腕。


下がる。


「重っ!」


「やっぱり」


「何入ってるんですかこれ!?」


「木」


「嘘でしょ!」


次。


別の。


職人。


「重い」


次。


「何だこれ」


次。


「持てるけど木剣の重さじゃない」


全員。


同じ。


「俺」


持つ。


軽い。


沈黙。


「…………」


ちょっと。


怖くなってきた。


「呪われてない?」


【魔法神セレナ】


『今のところ、呪術反応は見えない』


「セレナも見てた?」


『面白そうだから』


「研究者の顔してない?」


『してない』


絶対。


してる。



◇ ◇ ◇



「魔力」


セレナ。


言う。


『流してみて』


「木剣に?」


『少しだけ』


ヴォルグ。


『待て』


『何よ』


『修理直後だ』


『魔力を少し流すだけよ』


『何が起きるか分からん』


『だから調べるんでしょ』


『壊したらどうする』


『直して』


『ふざけるな』


「喧嘩すんな!」


神様。


朝から。


木剣一本で。


揉める。


「セレナ」


『何』


「ヴォルグの言う通り」


『…………』


「何が起きるか分からないなら」


「まず別の方法」


少し。


沈黙。


『分かった』


素直。


意外。


『でも後で試す』


「研究者だなあ」


『魔法神よ』


「似たようなもんじゃん」


『違うわよ』


バルガス。


俺を。


見てる。


「本当に誰と話してるんだ」


「説明すると長いです」


「そうか」


慣れた。



◇ ◇ ◇



昼前。


鍛冶場の。


扉。


開く。


「来たよ」


リナ。


「本当に来た」


「呼んだでしょ」


「来ないかと思った」


「何で」


「昨日重かったから」


「だから気になるんでしょ」


確かに。


リナ。


木剣。


見る。


「直った?」


「修理自体は」


「じゃあ」


手。


伸ばす。


「持っていい?」


ヴォルグ。


『持たせろ』


「どうぞ」


リナ。


握る。


「っ……」


やっぱり。


重い。


昨日と。


同じ。


「無理?」


「無理じゃない」


両手。


持つ。


持ち上げる。


「でも重い」


「剣より?」


「うん」


「変だな」


「レンは?」


受け取る。


「普通」


片手。


上げる。


リナ。


睨む。


「腹立つ」


「俺のせいじゃない!」


「貸して」


「また?」


「構えたい」


ヴォルグ。


『振るな』


「振るのは禁止」


「分かった」


渡す。


リナ。


両手。


握る。


構える。


重い。


それでも。


狩剣士。


形。


綺麗。


「…………」


リナ。


眉。


寄せる。


「何?」


「これ」


「うん」


「変」


「知ってる」


「重いだけじゃない」


「え?」


リナ。


足。


少し。


動かす。


構え。


変える。


「動かしにくい」


「重いから?」


「それもあるけど」


一歩。


踏む。


木剣。


遅れる。


「私の動きに」


「ついてこない」


「木剣が?」


「変な言い方だけど」


「…………」


もう一度。


構え。


「嫌がってるみたい」


俺。


木剣。


見る。


「嫌がる?」


【鍛冶神ヴォルグ】


『レン』


「何?」


『代われ』


受け取る。


「同じ構えをしろ」


「リナと?」


『ああ』


「無理だろ」


「やって」


リナ。


楽しそう。


「何で嬉しそうなんだよ」


「比較」


「セレナみたいなこと言うな」


見よう見まね。


足。


置く。


木剣。


構える。


「こう?」


「違う」


「早い」


「右足もう少し後ろ」


「はい先生」


「腰」


「はい」


「肩に力入れない」


「難しい!」


「それで」


何とか。


形。


作る。


「動いて」


「どう?」


「普通に」


一歩。


木剣。


ついてくる。


「…………」


リナ。


真顔。


「やっぱり変」


「俺の動きの方が下手なのに」


「うん」


「そこは否定して」


「下手だよ」


「知ってる!」


ヴォルグ。


黙っている。


「ヴォルグ」


『もう一度』


何度か。


試す。


俺。


リナ。


俺。


リナ。


違い。


明らか。


俺には。


軽い。


リナには。


重い。


俺には。


動く。


リナには。


遅れる。


「持ち主」


俺。


呟く。


『まだだ』


「でも」


『まだ決めるな』


「はい」



◇ ◇ ◇



「次」


ヴォルグ。


『レン』


「うん」


『木剣を』


少し。


間。


『リナにやれ』


「…………」


「え?」


リナも。


止まる。


「やる?」


『譲れ』


「何で?」


『試す』


「何を?」


『持ち主だ』


「…………」


俺。


木剣。


見る。


「本当に?」


『嫌ならやめろ』


「嫌っていうか」


手。


止まる。


俺の。


木剣。


昨日。


そう。


思った。


でも。


試すために。


渡す。


「リナ」


「何?」


「これ」


木剣。


差し出す。


「やる」


「いらない」


「早っ!」


「私、剣あるし」


「試し!」


「ああ」


リナ。


少し。


考える。


「じゃあ」


木剣。


受け取る。


「もらった」


「うん」


言った瞬間。


妙な。


感じ。


胸。


少し。


引っかかる。


「…………」


俺の。


じゃない。


今。


リナの。


木剣。


そう。


決めた。


「持ってみて」


リナ。


握る。


「…………」


「あれ?」


「どう?」


「さっきより」


持ち上げる。


まだ。


少し。


重そう。


でも。


明らかに。


違う。


「軽い」


「え?」


「完全じゃないけど」


構える。


さっきより。


動く。


「本当?」


「うん」


ヴォルグ。


『…………』


ノア。


『興味深い変化です』


「所有?」


俺。


聞く。


『可能性は高まりました』


リナ。


木剣。


見る。


「これ」


「本当に私の?」


「今は」


「今は?」


「試しだから」


「じゃあ返す」


「待って」


ヴォルグ。


『返させろ』


「もう?」


『ああ』


リナ。


木剣。


差し出す。


「返す」


俺。


受け取る。


「…………」


軽い。


いつもの。


重さ。


「俺の?」


リナ。


「返したからね」


握る。


不思議。


さっきより。


しっくり。


来る。


気がする。


「ヴォルグ」


『もう一度リナへ』


「また?」


渡す。


「貸す」


リナ。


受け取る。



「っ、重っ」



「戻った!」


「何これ!」


リナ。


床へ。


落としかける。


俺。


受け取る。


軽い。


沈黙。


「…………」


セレナ。


『面白い』


「やっぱ研究者じゃん!」


『だって面白いでしょ!』


「それはそう!」



◇ ◇ ◇



ヴォルグ。


しばらく。


何も。


言わなかった。


「ヴォルグ?」


『道具が』


ようやく。


声。


『持ち主を覚えることはある』


「昨日聞いた」


『だが』


「うん」


『ここまで明確に』


間。


『所有の認識へ反応するものは珍しい』


「魔道具?」


『違う』


「何で分かる?」


『魔道具なら』


『術式か』


『魔力経路がある』


「これは?」


『見当たらん』


セレナ。


『私にも見えない』


「じゃあ」


『分からん』


また。


その答え。


でも。


ヴォルグ。


続ける。


『ただし』


「うん」


『道具は』


少し。


声。


低い。


『使われ方を残す』


「…………」


『握り方』


『力』


『魔力』


『癖』


『手入れ』


『傷』


『恐れ』


「恐れ?」


『戦う時』


『手は変わる』


「…………」


西の森。


思い出す。


三人。


囲まれた。


怖かった。


木剣。


握った。


女。


手。


払った。


踏まれた。


ひび。


入った。


それでも。


返された木剣。


握った。


「そういうのも」


「残る?」


『可能性はある』


「じゃあ」


木剣。


見る。


「俺の」


何を。


覚えた?


ヴォルグ。


答えない。


「ヴォルグ?」


『それを』


一拍。


『俺に聞くな』


「え?」


『お前が使った道具だ』


「…………」


『お前が見ろ』


また。


それ。


でも。


今度は。


少し。


違う。


俺しか。


分からないこと。


ある。


この木剣を。


握った時。


何を。


思っていたか。


何が。


怖かったか。


何を。


守ろうとしたか。


それは。


ヴォルグにも。


分からない。



◇ ◇ ◇



午後。


鍛冶場の。


裏。


広い。


場所。


「振っていい?」


『軽くだ』


「やっと!」


木剣。


構える。


リナ。


横。


腕。


組んでる。


「昨日より」


「うん」


「補強分だけ少し重い」


「でも?」


「使える」


一振り。


空気。


切る。


二振り。


三振り。


問題。


ない。


「よし」


ガルド。


『腰が浮いてるぞ!』


「急に入ってくるな!」


『振るなら見る!』


「暇なの?」


『戦神だ!』


「答えになってない」


リナ。


「右足」


「え?」


「踏み込み」


「遅い」


「ガルドと同じこと言ってる」


「誰?」


「遠いところの筋肉」


『誰が筋肉だ!!』


「うるさっ!」


リナ。


笑う。


「もう一回」


「はい」


振る。


「違う」


「こう?」


「違う」


「厳しい」


「戦ったら死ぬよ」


「急に重い!」


「だから」


リナ。


自分の。


剣。


抜く。


「一回」


「え?」


「やろ」


「待って」


剣。


本物。


俺。


木。


「無理無理無理」


「刃は当てない」


「そういう問題?」


「見るだけ」


「何を?」


「レンが」


剣。


構える。


「どれくらい動けるか」


「怖い」


「昨日」


少し。


笑う。


「怖くても見るんでしょ?」


「ガルドの言葉まで盗むな」


『いいぞリナ!』


「本人喜んでるし!」


でも。


構える。


木剣。


握る。


「一本だけ」


「うん」


リナ。


前。


立つ。


空気。


変わる。


さっきまで。


笑ってた。


顔。


静か。


「…………」


怖い。


昨日。


グランボア。


戦った人。


俺。


まともに。


やったら。


一秒。


持たない。


「始めるよ」


「待っ」


来た。



速い。



剣。



右。



見え。



木剣。



動く。



――カン。



「…………え?」



音。



俺。



止まる。



リナも。



止まる。



木剣。



俺の。



顔の横。



リナの。



剣を。



受けている。



「…………」



「今」



俺。



言う。



「俺がやった?」



リナ。



「たぶん」



「たぶん!?」



「もう一回」



「待て待て待て!」



二回目。



リナ。



動く。



今度は。



見ようと。



する。



肩。



足。



目。



剣。



来る。



左。



「っ!」



木剣。



出す。



――カン!



受けた。



でも。



次。



リナ。



手首。



返す。



剣。



消えた。



「え」



木剣。



弾かれる。



首元。



寸前。



止まる。



「…………」



「死んだ」



リナ。



言う。



「言い方!」



「でも」



剣。



下げる。



「最初の一回」



「うん」



「よく見えたね」



「見えてない」



「じゃあ何で受けたの?」



「分からん」



本当に。



分からない。



身体。



勝手に。



動いた?



違う。



少し。



見えた。



リナの。



肩。



動き。



足。



前。



重心。



剣。



来る。



全部。



じゃない。



でも。



一瞬。



「前より」



俺。



言う。



「分かった」



「何が?」



「来る方向」



「…………」



ガルド。



『それだ』



「え?」



『お前』



少し。



嬉しそう。



『前なら目ぇ閉じてたぞ』



「…………」



そう。



だった。



怖い。



速い。



来る。



それだけで。



目。



閉じてた。



今。



閉じなかった。



見た。



だから。



一回。



間に合った。



「木剣のおかげ?」



俺。



聞く。



ヴォルグ。



『決めつけるな』



「はい」



『道具は』



一拍。



『持ち主の代わりに戦わん』



「…………」



『どれだけ馴染もうが』



『握るのはお前だ』



「うん」



『見たのも』



『動いたのも』



『お前だ』



「…………」



少し。



嬉しい。



木剣。



だけじゃない。



俺も。



昨日より。



できること。



増えてる。



◇ ◇ ◇



休憩。


地面。


座る。


リナ。


水。


飲む。


俺も。


飲む。


「リナ」


「何?」


「狩剣士って」


「うん」


「今の動き」


「職業の力?」


リナ。


少し。


考える。


「一部は」


「一部?」


「身体の動かし方とか」


「剣の扱いとか」


「何となく」


「分かる」


「最初から?」


「職業もらってから」


「へえ」


「便利だよ」


「羨ましい」


「無職だもんね」


「刺すな」


リナ。


笑う。


「でも」


俺。


木剣。


見る。


「俺」


「何もないから」


「全部」


「自分で覚えないといけない」


「うん」


「面倒」


「うん」


「時間かかる」


「うん」


「否定して?」


「事実でしょ」


「ノアみたい」


「誰?」


「遠いところの正論」


でも。


「昨日より」


木剣。


握る。


「できるようになるの」


「ちょっと」


「楽しい」


リナ。


俺を見る。


「変なの」


「また?」


「普通」


「早く強くなれる方がいいでしょ」


「まあ」


「でも」


俺。


考える。


「自分で」


「できなかったことが」


「できるようになるの」


「分かるから」


「…………」


リナ。


少し。


黙る。


「狩剣士って」


俺。


続ける。


「便利?」


「便利」


「好き?」


「好き」


即答。


「じゃあ」


「もし」


昨日も。


聞きかけた。


「なくなったら?」


リナ。


眉。


寄せる。


「何でなくなるの?」


「例えば」


「例えばでも」


「嫌」


「…………」


声。


少し。


硬い。


「ごめん」


「別に」


リナ。


立つ。


「なくならないし」


「うん」


「私」


腰。


剣。


触る。



「狩剣士だから」



また。



その言葉。



今日は。



少し。



強く。



聞こえた。



自分に。



言い聞かせる。



みたいに。



「帰ろ」


「うん」



◇ ◇ ◇



鍛冶場。


戻る。


ヴォルグ。


最後に。


木剣。


確認。


『異常なし』


「異常だらけじゃない?」


『修理箇所の話だ』


「なるほど」


『だが』


「うん」


『レン』


声。



少し。



低い。



『覚えておけ』



「何を?」



『道具が』



間。



『持ち主に馴染むことはある』



「うん」



『持ち主を覚えたように』



『振る舞うこともある』



「うん」



『だが』



一拍。



『道具は』



『持ち主を選ぶだけじゃない』



「…………」



『拒むこともある』



「拒む?」



『扱い方を間違えれば』



『無理をさせれば』



『手入れを怠れば』



『いつか』



木剣。



見る。



『応えなくなる』



「…………」



前。



青年。



剣。



手入れ。



半年。



してなかった。



ヴォルグ。



大噴火。



思い出す。



「大事にしろってこと?」



『それだけではない』



「じゃあ?」



『大事にすることと』



『執着することは違う』



「…………」



『壊れても使い続けることが』



『道具を大切にすることとは限らん』



「…………」



『手を離すべき時もある』



木剣。



握る。



「難しいな」



『ああ』



ヴォルグ。



珍しく。



すぐ。



認めた。



『だから見ろ』



「またそれ」



『違和感を無視するな』



「うん」



『道具も』



少し。



間。



『自分もだ』



「…………」



「分かった」



木剣。



布。



巻かない。



今日は。



腰。



差す。



俺の。



相棒。



そう。



思う。



でも。



永遠に。



離さない。



とは。



思わない。



使える。



今。



使う。



壊れたら。



見る。



直せるなら。



直す。



手放すべきなら。



考える。



それで。



いい。



◇ ◇ ◇



帰り道。


リナ。


途中まで。


一緒。


「明日」


「何?」


「仕事?」


「たぶん」


「私も」


「狩り?」


「うん」


「気をつけて」


「レンも」


「俺は街だぞ」


「レン」


リナ。


真顔。


「街にいても」


「変なこと起こるじゃん」


「…………」


何も。


言えない。


「否定できない」


「でしょ」


分かれ道。


リナ。


手。


振る。


「じゃあね」


「また」


歩く。


俺。


木剣。


腰。


触る。


軽い。


「ヴォルグ」


『何だ』


「木剣が」


「俺を持ち主だと思ってるとして」


『仮定だ』


「分かってる」


「何で?」


『知らん』


「使ってたから?」


『可能性はある』


「直したから?」


『可能性はある』


「名前付けた方がいい?」


『やめろ』


「何で!?」


『お前は絶対ろくな名前を付けん』


「失礼!」


ガルド。


『木剣一号!』


「それはガルドだろ!」


セレナ。


『魔力3号』


「絶対嫌!」


メルク。


『銅貨四枚』


「値段!」


ノア。


『木製訓練剣・補修個体A』


「長い!」


フィリア。


『……相棒、では駄目ですか?』


静か。


なる。


「…………」


ちょっと。


恥ずかしい。


「それ」


「もう俺が思ってた」


フィリア。


『そうでしたか』


「だから」


木剣。


軽く。


握る。


「名前は」


「まだいいや」


傷。


残る。


ひび。


補強。


されてる。


俺が。


持てば。


軽い。


他の人には。


重い。


理由。


分からない。


それでも。


今は。


使える。



◇ ◇ ◇



夜。


眠る前。


木剣。


壁。


立てる。


「…………」


今日。


リナの。


剣。


一回。


受けた。


偶然。


かもしれない。


木剣の。


何か。


かもしれない。


俺が。


少し。


成長した。


からかもしれない。


まだ。


分からない。


でも。


一つだけ。


確かなこと。


ある。


前なら。


目を。


閉じてた。


今日は。


見た。


怖かった。


それでも。


見た。


だから。


動けた。


ガルドに。


最初。


教わったこと。


今になって。


少し。


身体に。


入った。


「昨日より」


できること。


増えた。


小さい。


一歩。


でも。


俺の。


一歩。



その時。



【知識神ノア】



『レン』



「ん?」



『一件』



声。



いつもより。



少し。



硬い。



『確認したいことがあります』



「何?」



『本日』



間。



『職業院から』



「職業院?」



『あなたについて』



嫌な。



予感。



『照会がありました』



「何で?」



『無職でありながら』



『魔法を使用した者がいる』



「…………」



噂。



早すぎる。



「それだけ?」



『いいえ』



ノア。



続ける。



『職業判定の』



一拍。



『再確認を推奨する、と』



「…………」



職業。



無職。



この世界へ。



来た日。



神殿で。



出た。



言葉。



「再確認したら」



「変わることある?」



『あります』



「え?」



『極めて稀ですが』



『初回判定が不安定だった場合』



『再測定されることはあります』



「…………」



胸。



少し。



鳴る。



もし。



変わる。



なら。



俺にも。



職業。



出る?



剣士。



魔法使い。



商人。



何でも。



いい。



無職じゃ。



なくなる?



「ノア」



『はい』



「受けた方がいい?」



沈黙。



「…………」



いつもなら。



材料。



出す。



ノアが。



黙っている。



「ノア?」



『私から』



少し。



間。



『受けるべきだとは』



『言えません』



「何で?」



返事。



来ない。



代わりに。



【創世神エリオス】



『レン』



「エリオス?」



『その件は』



声。



低い。



『明日』



「うん」



『七柱全員で話そう』



「…………」



七柱。



全員。



ただの。



職業判定。



それだけなら。



そんな。



必要。



ある?



「何か」



俺。



木剣。



見る。



「知ってる?」



沈黙。



長い。



誰も。



答えない。



「…………」



また。



これ。



知らない。



のか。



知っていて。



言わない。



のか。



まだ。



分からない。



でも。



今度は。



その違いを。



曖昧に。



したくなかった。



「分かった」



俺。



言う。



「明日」



一拍。



「全部聞く」



返事。



ない。



俺は。



目を。



閉じる。



木剣は。



俺を。



持ち主だと。



認識している。



かもしれない。



リナは。



自分を。



狩剣士だと。



迷いなく。



言う。



じゃあ。



俺は。



何だ。



無職。



それが。



俺の。



職業。



本当に。



それだけなのか。



明日。



確かめる。

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