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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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25/71

神託ログ25 折れかけの相棒

翌朝。


俺は。


鍛冶場の前に。


立っていた。


「…………」


熱い。


まだ。


中に。


入ってないのに。


熱い。


金属を。


叩く音。


火の。


匂い。


昨日まで。


治療院に。


いたからか。


余計に。


別世界に。


感じる。


「ヴォルグ」


【鍛冶神ヴォルグ】


『入れ』


「朝の挨拶は?」


『入れ』


「おはよう」


『入れ』


「はい」


扉。


開ける。


熱。


一気に。


来る。


「暑っ」


炉。


赤い。


火。


鉄。


金槌。


工具。


前に。


来た時より。


少しだけ。


見えるものが。


増えた。


あの時は。


全部。


鍛冶道具。


だった。


今は。


形。


違い。


用途。


分からないものも。


多い。


でも。


同じには。


見えない。


「…………」


【鍛冶神ヴォルグ】


『何を見ている』


「道具」


『そうか』


「前より」


少し。


笑う。


「分からないものが増えた」


ヴォルグ。


間。



『それでいい』



「ノアにも似たようなこと言われた」


『あいつと一緒にするな』


【知識神ノア】


『共通点は存在します』


『黙れ』


「朝から仲いいな」


『よくない』


奥。


職人。


何人か。


働いてる。


前に。


見た。


親方。


バルガス。


俺を。


見つける。


「おう」


「おはようございます」


「今日は何だ」


「これ」


布。


包んだ。


木剣。


出す。


バルガス。


顔。


止まる。


「…………」


「何ですか」


「お前」


「はい」


「木剣で何と戦った」


「人っぽい何か」


「意味が分からん」


「俺も分かってないです」


木剣。


受け取る。


ひび。


見る。


表。


裏。


持ち手。


刃に。


見立てた部分。


指。


滑らせる。


「使ったな」


「少し」


【鍛冶神ヴォルグ】


『少しではない』


「ヴォルグは黙ってて」


バルガス。


「誰だ?」


「遠いところの知り合いです」


「最近それで押し切ろうとしてないか?」


「バレました?」


「何となくだ」


この街。


みんな。


鋭くなってない?


バルガス。


木剣。


作業台へ。


置く。


「直したい?」


「はい」


「何で?」


「え?」


質問。


意味。


分からない。


「壊れてるから」


「なら」


バルガス。


壁。


指す。


木剣。


何本か。


並んでる。


「新しいの買った方が早い」


「…………」


「安いぞ」


「いくら?」


「銅貨四枚」


「高い!」


「安いわ!」


【商神メルク】


『妥当だ』


「俺の財布には高い!」


バルガス。


笑う。


「なら直すか?」


「いや」


少し。


止まる。


金。


だけ。


じゃない。


昨日。


リナに。


聞かれた。


大事なの?


たぶん。


そう。


答えた。


でも。


今なら。


もう少し。


分かる。


「これがいい」


「…………」


「新しいのじゃなくて」


木剣。


見る。


「これを」


バルガス。


俺を。


見る。


何も。


言わない。


ヴォルグも。


何も。


言わない。


少し。


長い。


沈黙。


「そうか」


バルガス。


木剣。


もう一度。


手に取る。


「なら」


「見てやる」


「お願いします」



◇ ◇ ◇



「まず」


バルガス。


木剣。


机。


置く。


「お前が見ろ」


「俺?」


「直してほしいんだろ」


「はい」


「なら」


木剣。


指す。


「どこが壊れてる」


「ここ」


ひび。


指す。


「他は」


「他?」


見る。


ひび。


大きい。


そこしか。


見てなかった。


「…………」


木剣。


持つ。


ゆっくり。


見る。


持ち手。


少し。


削れてる。


表面。


傷。


細かい。


先。


欠け。


ある。


「傷だらけ」


「そうだな」


「これも直す?」


バルガス。


答えない。


「…………」


ヴォルグ。


『聞く前に見ろ』


「はい」


見る。


傷。


いつ。


ついた。


分からないもの。


多い。


でも。


いくつか。


覚えてる。


最初。


ガルドと。


構え。


練習。


地面。


擦った。


街の外。


枝。


払った。


西の森。


あの女に。


踏まれた。


持ち上げられた。


その時。


大きな。


ひび。


入った。


「…………」


一本の。


木。


なのに。


傷。


一つずつ。


違う。


「これ」


俺。


ひび。


見る。


「全部消したら」


「新品みたいになる?」


バルガス。


「やろうと思えばな」


「本当に?」


「削って」


「埋めて」


「補強して」


「表面を整えりゃ」


「見た目は近づく」


「じゃあ」


『駄目だ』


ヴォルグ。


「え?」


声。


低い。


『全部消すな』


「何で?」


『考えろ』


また。


それ。


「…………」


木剣。


見る。


全部。


綺麗。


直す。


新品。


みたい。


なる。


良さそう。


でも。


前。


ヴォルグ。


言った。



直すことと。



新しくすることは。



違う。



「消したら」


俺。


言う。


「これじゃなくなる?」


『違う』


「違う?」


『考えすぎだ』


「難しいな!」


バルガス。


横で。


笑う。


「神様にでも説教されてんのか?」


「そんな感じです」


「大変だな」


「七人います」


「何の話だ」


「忘れてください」


木剣。


見る。


傷。


「必要ない?」


『何が』


「全部消す必要」


ヴォルグ。


少し。


間。



『そうだ』



「でも」


「傷は」


「ない方がいいだろ?」


『使えない傷ならな』


「使える傷?」


『そのひびは』


「うん」


『放置すれば折れる』


「うん」


『だから直す』


「うん」


『この擦り傷は』


「……使える?」


『支障がない』


「じゃあ」


『残せ』


「何で?」


ヴォルグ。


少し。


黙る。


そして。



『傷は消すものではない』



「…………」



『使える傷なら』



一拍。



『残せ』



「…………」


「格好いいな」


『そういう話ではない』


「いや今のは格好いい」


『黙れ』


でも。


何となく。


分かった。


直す。


って。


全部。


元通りに。


することじゃない。


使えるように。


すること。


「じゃあ」


木剣。


見る。


「ひびは直す」


『ああ』


「欠けは?」


『程度による』


「擦り傷は?」


『残す』


「持ち手」


『調整する』


「分かった」


バルガス。


俺を見る。


「決まったか?」


「はい」


「じゃあ」


「やるぞ」


「俺も?」


「お前のだろ」


「直してくれるんじゃ」


「手伝え」


「はい!」



◇ ◇ ◇



木剣。


修理。


簡単。


だと思ってた。


甘かった。


「削りすぎ!」


「はい!」


「そこじゃない!」


「はい!」


「力入れんな!」


「はい!」


「返事だけはいいな!」


「教員やってたので!」


「何だそれ!」


危ない。


前世。


出た。


「昔の仕事です!」


「無職じゃないのか!?」


「今は無職です!」


「余計分からん!」


【鍛冶神ヴォルグ】


『手元を見ろ』


「はい!」


ひび。


周辺。


削る。


割れた。


部分。


確認。


中。


「黒い?」


バルガス。


「汚れだ」


「腐ってる?」


「違う」


「じゃあ」


「分からんものを勝手に病気にするな」


「すみません」


掃除。


する。


細い。


木片。


入れる。


接着。


この世界の。


樹脂。


使う。


「こんなのでくっつく?」


バルガス。


「こんなの?」


「いや」


「すごそうです」


「遅い」


補強。


巻く。


圧。


かける。


待つ。


「すぐ使える?」


「無理」


「どれくらい?」


「今日一日は置け」


「長い」


「壊したのはお前だ」


「ぐっ」


ヴォルグ。


『待つのも修理だ』


「鍛冶神まで」


『急いで壊せば二度手間だ』


「はい」


作業。


続く。


俺。


ふと。


聞く。


「バルガス」


「何だ」


「直せないものってある?」


手。


止まらない。


「ある」


「やっぱり?」


「当たり前だ」


「どんな?」


「粉々」


「うん」


「材料が足りん」


「うん」


「作りが分からん」


「うん」


「直す方が危険」


「…………」


昨日。


フィリア。


思い出す。


治せない。


生命神でも。


ある。


鍛冶屋でも。


ある。


「じゃあ」


「直せない時」


「どうする?」


「諦める」


即答。


「早い」


「必要なら作り直す」


「それも無理なら?」


「別のもん使う」


「…………」


「道具は」


バルガス。


木剣。


見る。


「使うためにある」


「思い出は?」


俺。


聞く。


バルガス。


少し。


止まる。


「ある」


「じゃあ」


「使えなくなっても」


「残すことある?」


「ああ」


「それって」


「道具じゃなくなる?」


バルガス。


俺を見る。


「面倒くさいこと聞くな」


「すみません」


少し。


考える。


「道具として終わっても」


「物として終わるとは限らん」


「…………」


「使わなくなっても」


「持っときたいなら持っとけ」


「理由なんて」


肩。


すくめる。


「持ち主が決めりゃいい」


「持ち主」


木剣。


見る。


俺の。


木剣。


いつから。


そう。


思うように。


なったんだろう。



◇ ◇ ◇



昼。


修理。


一段落。


乾くまで。


待つ。


「暇」


【鍛冶神ヴォルグ】


『掃除しろ』


「客だぞ俺」


『働け』


「横暴!」


バルガス。


「暇ならそこ掃け」


「現実でも言われた!」


箒。


持つ。


掃除。


する。


床。


木屑。


金属片。


炭。


「これ捨てていい?」


『待て』


ヴォルグ。


「何?」


小さな。


金属片。


拾う。


『それは残せ』


「ゴミじゃない?」


『使える』


「何に?」


『補修』


「こんな小さいの?」


『小さいから使えることもある』


「…………」


箱。


入れる。


次。


曲がった。


釘。


「これは?」


『戻せる』


「これは?」


『捨てろ』


「違い分からん!」


『見ろ』


「見てる!」


『もっと見ろ』


「ヴォルグの教育、根性論入ってない!?」


『入っていない』


「ガルドより厳しい」


【戦神ガルド】


『呼んだか!?』


「呼んでない!」


鍛冶場。


少し。


笑い声。


俺。


掃除。


続ける。


使える。


使えない。


直せる。


直せない。


残す。


捨てる。


簡単。


そうで。


全部。


判断。


いる。


「ヴォルグ」


『何だ』


「鍛冶って」


「作る仕事だと思ってた」


『違うのか』


「直すのもある」


『ある』


「捨てるのも?」


『ある』


「残すのも?」


『ある』


「難しいな」


『だから』


一拍。


『見ろと言っている』


「…………」


最初。


ヴォルグに。


教わった時。


分からないものを。


分かったふりするな。


そう。


言われた。


今なら。


前より。


分かる。


見る。


って。


ただ。


目を向ける。


だけじゃない。


何が。


まだ。


使える。


何が。


危ない。


何を。


残す。


何を。


捨てる。


それを。


決めるために。


見る。



◇ ◇ ◇



午後。


鍛冶場。


客。


来た。


男。


持ってきたのは。


短い。


ナイフ。


刃。


欠けてる。


「直るか?」


バルガス。


見る。


「使い方は?」


「薪割り」


「ナイフで?」


「手斧忘れた」


バルガス。


無言。


「…………」


「何だよ」


「道具を間違えたな」


「一回だけだ」


「一回で欠けた」


「…………」


ヴォルグ。


静か。


「大丈夫?」


俺。


小声。


『何がだ』


「キレない?」


『俺を何だと思っている』


「前科あるだろ」


『ない』


「大噴火したじゃん」


『必要な指導だ』


「指導の音量じゃなかった」


バルガス。


ナイフ。


返す。


「直せる」


「本当か」


「ただし」


刃。


指す。


「短くなる」


「元通りじゃないのか?」


「欠けた分を整える」


「同じ形にはならん」


男。


顔。


曇る。


「新品みたいにできない?」


「できなくはない」


「なら」


「刃を全部作り直す」


「…………」


「それは」


バルガス。


ナイフ。


見る。


「直すより」


「別物に近い」


男。


少し。


悩む。


「使えるなら」


「傷残ってもいい」


「なら」


バルガス。


頷く。


「そうする」


俺。


木剣。


見る。


同じ。


傷。


全部。


消す必要。


ない。


使える。


なら。


残る。


それも。


その道具が。


通ってきたもの。



◇ ◇ ◇



夕方。


「よし」


バルガス。


木剣。


持ち上げる。


「触っていい?」


「いい」


受け取る。


「…………」


見た目。


ほとんど。


変わってない。


傷。


ある。


擦れ。


ある。


小さな。


欠け。


ある。


でも。


大きな。


ひび。


そこだけ。


補強。


されている。


細い。


濃い色の。


線。


残ってる。


「傷」


俺。


指。


近づける。


「消えてない」


「消してないからな」


「使える?」


「軽くなら」


「折れない?」


「絶対はない」


「ですよね」


木剣。


握る。


少し。


振る。


軽く。


空気。


切る。


「…………」


変わらない。


いや。


少し。


違う?


「何か」


「重い?」


バルガス。


「補強したからな」


「ちょっとだけ?」


「ああ」


もう一度。


握る。


不思議。


嫌じゃない。


「いいな」


バルガス。


「何が」


「傷」


「…………」


「残ってる方が」


木剣。


見る。


「俺のって感じする」


バルガス。


少し。


笑う。


「なら」


「それでいい」


【鍛冶神ヴォルグ】


『振るな』


「今ちょっとだけ!」


『今日は置けと言った』


「でも確認」


『確認は一度でいい』


「はい」


怒られた。


木剣。


作業台へ。


戻す。


「明日から?」


『軽く使え』


「全力は?」


『まだだ』


「分かった」


待つ。


急がない。


それも。


直す。



◇ ◇ ◇



その時。


鍛冶場の。


入口。


「レン?」


声。


振り向く。


リナ。


「何してるの?」


「木剣」


「あ」


近づく。


「直った?」


「たぶん」


「たぶん?」


バルガス。


「明日までは使わせん」


「なるほど」


リナ。


木剣。


見る。


「傷」


「残した」


「何で?」


「使えるから」


「…………」


「あと」


少し。


恥ずかしい。


「全部消すと」


「これじゃなくなる気がして」


リナ。


木剣。


じっと。


見る。


「変なの」


「またそれ?」


「でも」


少し。


笑う。


「分かるかも」


腰。


自分の。


剣。


触る。


「私のも」


「傷ある?」


「あるよ」


鞘。


少し。


削れてる。


柄。


使い込まれてる。


「直さない?」


「使えなくなる傷なら直す」


「同じだ」


「うん」


俺。


木剣。


見る。


「これ」


「普通の木剣なんだけど」


「うん」


「最近」


「普通じゃない気がする」


リナ。


眉。


寄せる。


「魔法の剣?」


「違う」


「高いやつ?」


「違う」


「じゃあ普通じゃん」


「そうなんだけど!」


説明。


できない。


高くない。


強くない。


特別な。


能力も。


ない。


でも。


俺には。


前と。


同じ。


木剣じゃない。


「大事になった?」


リナ。


聞く。


昨日と。


同じ。


質問。


今度は。


迷わない。



「うん」



「そっか」


それだけ。


リナ。


言う。



◇ ◇ ◇



「持ってみる?」


俺。


何となく。


言った。


リナ。


「いいの?」


「うん」


「まだ振るなって言われたから」


「持つだけね」


俺。


木剣。


持ち上げる。


リナへ。


渡す。


「はい」


リナ。


手。


伸ばす。


柄。


握る。



その瞬間。



「……え?」



リナの。



腕が。



落ちた。



木剣の。



先。



床へ。



ゴン。



「ちょっ!」


俺。


慌てる。


「何してんの!」


「重っ!」


「は?」


リナ。


両手。


使う。


木剣。


持ち上げる。


「何これ!?」


「何って木剣」


「重い!」


「え?」


俺。


受け取る。


軽い。


いつもの。


重さ。


「普通だけど」


「嘘」


「いや」


片手。


持つ。


「ほら」


リナ。


俺を見る。


木剣。


見る。


「もう一回」


渡す。


今度は。


構える。


リナ。


両手。


しっかり。


握る。


「っ……」


腕。


沈む。


「本当に重い?」


「重い!」


「どれくらい?」


「鉄の剣より」


「嘘だろ」


「嘘じゃない!」


バルガス。


近づく。


木剣。


受け取る。


「…………」


片手。


持つ。


眉。


動く。


「重いな」


「え?」


俺。


「バルガスも?」


「ああ」


「俺は?」


受け取る。


軽い。


「普通」


沈黙。


鍛冶場。


一瞬。


静か。



【鍛冶神ヴォルグ】



『レン』



声。



低い。



「何」



『床へ置け』



「何で?」



『いいから』



木剣。



床。



置く。



「これ」



俺。



見る。



普通。



木。



傷。



補強。



それだけ。



「補強のせい?」



『違う』



即答。



「じゃあ」



『分からん』



「…………」



ヴォルグが。



分からない。



そう。



言った。



バルガス。



木剣。



見る。



「使った材料は」


指。



折る。



「木片」



「樹脂」



「補強糸」



「どれも普通だ」



「重くなるほど?」



「ならん」



リナ。



腕。



振る。



「まだ重い感じする」



「ごめん」



「何でレンが謝るの」



「俺のだから?」



「知らないよ」



ノア。



『重量そのものが変化したとは考えにくいです』



「何で?」



『レンが保持した際の挙動と一致しません』



「じゃあ」



「人で変わる?」



『可能性はあります』



「木剣が?」



『原因不明です』



また。



それ。



でも。



今までと。



少し。



違う。



これは。



俺が。



ずっと。



持っていた。



もの。



「ヴォルグ」



『何だ』



「前に」



思い出す。



最初。



鍛冶場。



古い。



剣。



俺が。



触れた時。



一瞬。



何か。



反応した。



【外部干渉反応:検出】



【反応時間:0.3秒】



【原因:不明】



「道具って」



「持ち主を」



「覚えたりする?」



沈黙。



ヴォルグ。



答えない。



「ヴォルグ?」



『…………』



長い。



間。



そして。



『する』



「…………」



『正確には』



『そう見えることがある』



「どういうこと?」



『長く使われた道具は』



『持ち手の癖』



『力の入れ方』



『魔力』



『扱い方』



『そういうものを』



一拍。



『残すことがある』



「記憶?」



『そう呼ぶ職人もいる』



リナ。



木剣。



見る。



「じゃあ」



「この木剣」



「レンを覚えてる?」



ヴォルグ。



すぐには。



答えない。



『まだ』



『決めるな』



「…………」



『一度起きただけだ』



『偶然もある』



『別の原因もある』



「うん」



ヴォルグ。



前より。



慎重。



俺も。



決めない。



でも。



木剣。



見る。



俺が。



握ると。



軽い。



リナ。



バルガス。



重い。



「明日」



ヴォルグ。



言う。



『もう一度調べる』



「分かった」



『今日は使うな』



「はい」



『絶対だ』



「はい!」



リナ。



少し。



笑う。



「怒られてる?」



「めちゃくちゃ」



「遠いところの人に?」



「今日めっちゃ近い」



木剣。



布。



包む。



大きな。



ひび。



直した。



傷。



残った。



それだけ。



だったはず。



なのに。



何か。



変わった。



いや。



前から。



変わっていたのかもしれない。



俺が。



気づいて。



なかっただけ。



◇ ◇ ◇



夜。



木剣。



横。



置く。



触らない。



使わない。



ヴォルグとの。



約束。



でも。



見る。



傷。



一つ。



一つ。



今日。



消さなかった。



傷。



ガルドとの。



練習。



街の外。



西の森。



あの三人。



俺が。



選んだこと。



失敗したこと。



逃げたこと。



全部。



少しずつ。



残っている。



「道具が」



呟く。



「持ち主を覚える」



本当か。



分からない。



でも。



もし。



本当なら。



この木剣は。



俺の。



何を。



覚えたんだろう。



手。



伸ばしかける。



止める。



「明日」



今日は。



待つ。



直したものは。



すぐ。



元通りには。



ならない。



それでも。



まだ。



使える。



傷が。



残っても。



使える。



だったら。



終わりじゃない。



俺は。



布に包まれた。



木剣を見る。



「明日な」



返事。



当然。



ない。



でも。



なぜか。



前より。



少しだけ。



相棒みたいに。



見えた。

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