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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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24/71

神託ログ24 枯れるには、まだ早い

翌朝。


俺は。


昨日の治療院へ。


向かっていた。


「…………」


手には。


何も。


持っていない。


採取用の袋も。


ナイフも。


ない。


今日は。


紫の植物を。


見に行く。


でも。


触らない。


持ち帰らない。


勝手に。


抜かない。


昨日。


薬師に。


言われた。


分からないものを。


分かった顔で触るな。


ヴォルグにも。


似たようなことを。


散々。


言われた。


「俺」


歩きながら。


呟く。


「ちょっと賢くなってない?」


【知識神ノア】


『比較対象をいつの時点に設定しますか』


「そういう返しじゃない」


『この世界へ来た直後との比較であれば』


少し。


間。


『知識量は増加しています』


「だろ?」


『同時に、未知として認識している項目も増加しています』


「…………」


「賢くなったのに分からないこと増えてる?」


『はい』


「損してない?」


『知るということは』


ノア。


淡々。


『何を知らないかを知ることでもあります』


「朝から深いな」


【魔法神セレナ】


『ノアは朝でも夜でも同じよ』


『時間帯による思考精度の有意な変化は確認されていません』


「ほら」


『何がですか』


「そういうところ」


昨日より。


少し。


できる。


昨日より。


少し。


知っている。


でも。


分からないものは。


なくならない。


むしろ。


増えている。


紫の植物も。


その一つ。



◇ ◇ ◇



治療院。


昨日。


倒れた子ども。


まだ。


寝ていた。


「どうですか?」


年配の。


薬師。


振り返る。


「ああ」


昨日と。


同じ人。


「朝には熱も下がった」


「本当?」


「声を抑えろ」


「すみません」


寝台。


見る。


顔色。


昨日より。


いい。


母親。


椅子で。


眠っている。


ずっと。


付き添っていた。


らしい。


「助かる?」


聞く。


薬師。


少し。


眉。


寄せる。


「今のところはな」


今のところ。


それ以上。


言わない。


俺も。


聞かない。


助かった。


と。


決めるには。


まだ。


早い。


「昨日の草」


「見に行くんだろ」


「はい」


「触るなよ」


「はい」


「匂いも不用意に嗅ぐな」


「はい」


「口に入れるな」


「それはしません!」


薬師。


俺を。


じっと。


見る。


「…………」


「何ですか」


「本当に?」


「俺どう見えてるんですか!?」


『不用意に口へ入れる可能性は低いと推測します』


ノア。


「フォローありがとう!」


『ただし、未知の対象への接近頻度は高めです』


「落とすな!」


薬師。


怪訝な顔。


「朝から元気だな」


「独り言です」


「治療院では静かにしろ」


「はい」


怒られた。


薬師。


紙。


一枚。


渡す。


簡単な。


絵。


紫の。


花。


葉。


茎。


「似た草はいくつかある」


「見分け方は?」


「葉の裏」


「裏?」


「細い白筋が三本」


「触らないと見えなくない?」


「だから」


薬師。


棒。


渡す。


「これで裏返せ」


「なるほど」


「直接触るな」


「はい」


「見つけても抜くな」


「はい」


「場所を覚えて戻れ」


「はい」


「勝手に食うな」


「食わないって!」


薬師。


少し。


笑った。


「それくらいでいい」


「何が?」


「怖がってるくらいで」


「…………」


「知らんもの相手に」


薬師。


子どもの。


寝台。


見る。


「慣れた顔するよりはな」


昨日。


触っただけで。


倒れた。


かもしれない。


子ども。


怖がる。


それで。


いい。


「行ってきます」


「ああ」


「あと」


振り返る。


「この草」


「名前は?」


薬師。


少し。


考える。


「この辺じゃ」


「ムラサキネムリ」


「眠り?」


「昔は煎じて使った」


「何に?」


「痛み止め」


「薬じゃん」


「ああ」


薬師。


表情。


変えない。


「薬だ」


「…………」


昨日。


子どもを。


倒した。


かもしれない。


植物。


でも。


薬。


「毒じゃない?」


「薬にもなる」


「毒にもなる?」


「ああ」


「どっち?」


薬師。


鼻。


鳴らす。


「人間は」


「名前を一つ付けると」


「中身まで一つだと思いたがる」


「…………」


「薬か毒かは」


「量と」


「使い方と」


「相手次第だ」


「なるほど」


【商神メルク】


『物の価値と同じだ』


「お前も入ってくる?」


『同じ話だ』


確かに。


魚。


一匹。


人によって。


価値。


違う。


植物も。


一つ。


役割。


決まっているわけじゃない。


「じゃあ」


俺。


薬師に。


聞く。


「昨日の子は」


「草が悪かった?」


薬師。


少し。


止まる。


「まだ」


一拍。


「そう決めるな」


「…………」


「分かりました」



◇ ◇ ◇



街の北。


門から。


少し。


離れた。


草地。


俺。


一人。


見た目は。


一人。


中身は。


うるさい。


【生命神フィリア】


『足元に気をつけてください』


【戦神ガルド】


『周りも見ろ』


【魔法神セレナ】


『魔力反応も確認するわ』


【商神メルク】


『採取するなら価値も――』


「採取しない」


『ならいい』


【鍛冶神ヴォルグ】


『棒を折るな』


「薬師から借りたやつだから大事にする」


『よし』


【知識神ノア】


『記録を開始します』


「エリオスは?」


沈黙。


【創世神エリオス】


『いる』


「いた」


七柱。


全員。


いる。


「何で今日はこんな集まってるの?」


ガルド。


『暇だから』


セレナ。


『私は違うわよ』


メルク。


『俺もだ』


ヴォルグ。


『俺もだ』


フィリア。


『私は心配です』


ノア。


『観測対象として興味があります』


エリオス。


『…………』


「一番暇そうなの創世神じゃない?」


『違う』


「返事早っ」


少し。


笑う。


でも。


目。


足元。


草。


普通。


緑。


白い。


小さな花。


黄色。


虫。


飛ぶ。


鳥。


鳴く。


昨日の。


東の森と。


同じ。


普通の。


生きている場所。


「どこだ?」


薬師。


街の北と東で。


最近。


見かける。


そう。


言ってた。


歩く。


触らない。


見る。


十分。


くらい。


「ないな」


ノア。


『右前方』


「え?」


『紫色の植物を確認』


「どこ」


『約十五歩』


進む。


「あ」


あった。


草の。


間。


紫。


小さい。


花。


一本。


二本。


三本。


「これ?」


しゃがむ。


近づきすぎない。


紙。


見る。


花。


似てる。


葉。


似てる。


「裏」


棒。


使う。


葉。


そっと。


持ち上げる。


白い。


細い。


線。


一。


二。


三。


「三本」


ノア。


『形状一致率は高いです』


「ムラサキネムリ」


フィリア。


『…………』


「どう?」


『少し待ってください』


静か。


フィリア。


何か。


見ている。


俺には。


見えないもの。


生命。


「植物も分かる?」


『はい』


「人間と同じ?」


『同じではありません』


「でも生命?」


『はい』


少し。


間。


『生きています』


当たり前。


なのに。


何となく。


その言い方。


残る。


「毒でも?」


『毒を持っていても』


フィリア。


『生きています』


「…………」


昨日。


人を。


助ける。


治す。


その話。


今日は。


植物。


「悪い植物?」


聞く。


フィリア。


すぐ。


答えない。


『レンさんは』


「うん」


『この植物が』


『人を傷つけようとして生えていると思いますか?』


「…………」


見る。


紫の。


花。


風。


揺れる。


意思。


あるか。


分からない。


でも。


「思わない」


『はい』


「ただ」


「人間には危ない」


『その可能性があります』


「悪くなくても」


『危険なものはあります』


「…………」


悪い。


危険。


同じじゃない。


覚えておく。



◇ ◇ ◇



「一株だけ?」


立つ。


周り。


見る。


少し。


先。


「あ」


また。


紫。


さらに。


奥。


「ある」


一つ。


二つ。


五つ。


十。


「多くない?」


ノア。


『現在視認範囲内に二十七株』


「数えてたの?」


『はい』


「仕事早い」


進む。


でも。


途中。


止まる。


「ここから」


地面。


違う。


少し。


湿ってる。


「雨?」


昨日。


降ってない。


セレナ。


『地下水かもしれない』


「ムラサキネムリ」


「湿った場所に生えるって言ってた」


ノア。


『薬師の証言と一致します』


「じゃあ普通?」


『生育条件の一部は』


「一部?」


『山の奥に生育するという証言とは一致しません』


「…………」


そう。


街から。


近い。


歩いて。


来られる。


子どもも。


遊べる。


場所。


「何で」


「ここに増えた?」


誰も。


答えない。


「フィリア」


『はい』


「植物」


「普通?」


『…………』


長い。


「分からない?」


『いいえ』


声。


少し。


違う。


『生きています』


「それはさっき聞いた」


『ただ』


止まる。


『弱っています』


「え?」


しゃがむ。


紫。


花。


見た目。


普通。


「枯れてる?」


『いいえ』


「じゃあ」


『説明が難しいです』


「生命力?」


『近いです』


「弱ってるのに増えてる?」


『はい』


「矛盾してない?」


『そう見えます』


フィリア。


困っている。


生命神でも。


すぐ。


分からない。


「具体的には?」


『一株ごとの生命反応が』


『不安定です』


「病気?」


『断定できません』


「毒?」


『植物自身が毒に侵されている可能性も』


「ある?」


『否定できません』


「…………」


昨日。


薬師。


言った。


昔。


触れただけで。


人が。


急に弱るような草では。


なかった。


草が。


変わった?


それとも。


環境が?


「セレナ」


『見てる』


「魔力は?」


『少し変』


「何が?」


『この周辺』


『外界魔力が薄い』


「薄い?」


『無いわけじゃない』


『でも』


少し。


考える。


『流れが悪い』


「植物と関係ある?」


『分からない』


「ですよね」


最近。


この答え。


増えた。


でも。


前より。


嫌じゃない。


分からない。


なら。


次。


見るもの。


探せる。



◇ ◇ ◇



俺は。


場所を。


覚える。


ノア。


『位置記録しました』


「便利」


『正確な地図座標ではありません』


「でも戻れる?」


『周辺情報から再現可能です』


「十分」


帰ろう。


そう。


思った。


その時。


フィリア。


『待ってください』


「何?」


『少し先』


「植物?」


『いいえ』


声。


真剣。


『生命反応があります』


「動物?」


『小さいです』


「どこ?」


『左』


見る。


草。


揺れる。


「…………」


近づく。


ゆっくり。


ガルド。


『慎重に』


「うん」


草。


分けない。


外から。


見る。


「いた」


小さい。


鳥。


地面。


倒れてる。


「生きてる?」


フィリア。


『はい』


「弱ってる?」


『かなり』


「触る?」


言って。


止まる。


昨日なら。


すぐ。


拾った。


かもしれない。


でも。


分からない。


鳥。


紫の草。


近く。


原因。


不明。


「どうすればいい」


聞きそうに。


なる。


でも。


止める。


自分で。


考える。


「直接は触らない」


布。


持ってる。


でも。


布越しなら。


安全?


分からない。


「薬師」


連れてくる?


鳥。


それまで。


持つ?


フィリア。


『呼吸が弱いです』


時間。


ない。


「……くそ」


助けたい。


でも。


何でも。


手を出せば。


いいわけじゃない。


「フィリア」


『はい』


「生命魔法で」


「鳥を治すのは?」


『原因不明です』


「昨日と同じ」


『はい』


「なら使わない」


『…………はい』


「でも」


見捨てる?


違う。


「この辺に」


長い。


枝。


探す。


ある。


枝。


使って。


紫の草。


触れないように。


鳥の。


周り。


確認。


「何か絡まってる?」


ない。


「外傷」


フィリア。


『大きなものは確認できません』


「じゃあ」


「運ぶ」


『レンさん』


「直接触らない」


上着。


脱ぐ。


広げる。


枝。


二本。


鳥の下へ。


そっと。


滑らせる。


「これなら」


完全に。


安全か。


分からない。


でも。


何もしないより。


俺は。


選ぶ。


鳥。


上着へ。


乗せる。


「街」


戻る。


走らない。


揺らさない。


早く。


「持ってくれよ」


鳥。


返事。


しない。



◇ ◇ ◇



薬師。


俺を。


見た瞬間。


「何を拾ってきた」


「鳥」


「見れば分かる!」


「草地で倒れてました!」


「触ったか!」


「直接は!」


上着。


見せる。


「紫の草の近く」


薬師。


顔。


変わる。


「置け」


机。


上。


「手を洗え」


「はい!」


すぐ。


洗う。


腕も。


水。


使う。


戻る。


薬師。


鳥。


見てる。


「どう?」


「急かすな」


「はい」


しばらく。


沈黙。


「外傷は」


「ない」


「じゃあ」


「分からん」


「…………」


でも。


薬師。


小さい。


瓶。


出す。


「何?」


「水」


「ただの?」


「少し塩と蜜」


鳥の。


くちばし。


ほんの少し。


濡らす。


待つ。


「薬は?」


「原因分からんのに入れるか」


「…………」


昨日。


フィリアと。


同じ。


「できることだけ」


薬師。


言う。


「まずはな」


鳥。


少し。


動く。


「お」


「騒ぐな」


「はい」


羽。


震える。


目。


少し。


開く。


生きてる。


「フィリア」


『生命反応、少し上がりました』


「よかった」


薬師。


俺を見る。


「誰と話してる」


「遠いところの知り合い」


「…………」


「最近この言い訳も厳しくなってきた」


「知らん」


鳥。


まだ。


弱い。


でも。


さっきより。


少し。


いい。



◇ ◇ ◇



薬師に。


場所。


説明する。


「街の北」


「湿った草地」


「二十七株以上」


「数えたのか?」


「知り合いが」


「また遠いところか」


「はい」


薬師。


ため息。


「昔は?」


俺。


聞く。


「本当にここにはなかった?」


「少なくとも」


「俺が若い頃は見なかった」


「どこなら?」


「北東の山」


「山?」


「ああ」


「湿地がある」


「距離は?」


「歩けば半日はかかる」


「それが」


「街のすぐ近くまで来た」


「ああ」


「種が運ばれたとか?」


「ありえる」


「鳥?」


「ありえる」


「人?」


「ありえる」


「魔物?」


「ありえる」


「全部ありえるじゃん」


「だから調べるんだろ」


「……そうですね」


「ただ」


薬師。


腕。


組む。


「気になるのは」


「何?」


「増え方が早い」


「いつから?」


「目立つようになったのは」


考える。


「ここ一月くらいだ」


「一月」


「最初は数株」


「今は?」


「お前が見ただろ」


「…………」


二十七。


視界。


だけで。


「北だけ?」


「東にもある」


「西は?」


また。


聞く。


薬師。


少し。


考える。


「西は」


「最近」


「薬草採りもあまり行かん」


「何で?」


「獣が減った」


背中。


少し。


冷える。


「…………」


十三話。


老人。


言ってた。


西の森。


動物。


鳥。


避けている。


俺が。


行った時。


不自然に。


静かだった。


「西に」


「ムラサキネムリがあるかは?」


「知らん」


「…………」


繋がった。


いや。


まだ。


繋げるな。


獣が。


減った。


紫の植物。


増えた。


同じ。


原因とは。


限らない。


「ノア」


『はい』


「今の」


『記録しました』


「結論は?」


『情報不足です』


「よし」


それで。


いい。



◇ ◇ ◇



午後。


鳥。


少し。


元気。


戻った。


立った。


「おお」


薬師。


「静かにしろ」


「はい」


鳥。


ふらつく。


でも。


立つ。


「助かる?」


俺。


聞く。


薬師。


「まだ分からん」


「ですよね」


昨日なら。


少し。


もどかしかった。


今は。


分かる。


分からない。


は。


諦める。


じゃない。


まだ。


決めない。


ということ。


「レンさん」


フィリア。


呼ぶ。


「何?」


『少し』


「うん」


『外へ』


治療院。


出る。


「どうした?」


フィリア。


しばらく。


黙る。


『あの鳥』


「うん」


『私なら』


止まる。


『もっと早く』


「治せた?」


『可能性はあります』


「でも使わなかった」


『はい』


「後悔してる?」


長い。


間。


『少し』


「…………」


正直。


「使えばよかったって?」


『助けられるかもしれない力があるのに』


『使わないことは』


少し。


苦しい声。


『難しいです』


「うん」


『今も』


『使いたいです』


「鳥に?」


『はい』


「でも」


『原因が分かりません』


「なら」


俺。


言う。


「今日は使わないでいいんじゃない?」


『…………』


「鳥」


「ちょっと元気になった」


『はい』


「薬師が見てる」


『はい』


「今すぐ」


「フィリアがやらないと死ぬ」


「って感じでもない」


『はい』


「なら」


少し。


考える。


「待つ」


フィリア。


黙る。


「助けないんじゃなくて」


「今は」


「待つ」


『…………』


「駄目?」


『いいえ』


声。


少し。


柔らかい。


『それも』


『助けることだと思います』


「そっか」


俺。


壁。


背中。


預ける。


「フィリア」


『はい』


「昨日」


「全部を救おうとする人にはなってほしくないって」


『はい』


「でも」


「フィリア」


「全部救いたいんだろ」


沈黙。


『はい』


「大変だな」


『何がですか?』


「自分が一番」


「自分の言うこと守れてない」


『…………』


「痛っ」


頭。


何か。


刺された。


ような。


気がした。


「今なんかした?」


『していません』


「声で刺された」


『気のせいです』


「生命神怖い」


でも。


少し。


笑えた。



◇ ◇ ◇



夕方。


治療院。


出る前。


昨日の。


子ども。


目。


覚ましてた。


母親。


泣いてる。


今度は。


嬉しい方。


俺。


少し。


離れたところから。


見る。


「よかったな」


フィリア。


『はい』


「治してないけど」


『はい』


「助かった」


『はい』


「鳥も」


『まだです』


「厳しい」


『まだです』


「でも立った」


『はい』


「昨日より」


『少し』


「よくなった」


フィリア。


少し。


間。



『はい』



「それでいいな」


『…………はい』


外。


出る。


夕方。


風。


紫の。


花。


頭。


残る。


あの植物。


悪い。


わけじゃない。


たぶん。


ただ。


生きている。


でも。


生きる場所が。


変わった。


性質も。


変わった。


かもしれない。


何か。


起きている。


「フィリア」


『はい』


「植物って」


「自分で」


「生える場所選べる?」


『種類によります』


「ムラサキネムリは?」


『自力で大きく移動はできません』


「種」


『風』


『動物』


『水』


『人』


「じゃあ」


「何かが運んだ」


『可能性はあります』


「環境が変わった可能性も?」


『あります』


「…………」


原因。


一つ。


じゃない。


「西」


呟く。


フィリア。


返事。


しない。


「気になる?」


聞く。


『はい』


「何が?」


また。


沈黙。


「フィリア?」


『紫の植物が』


『西にあるかどうかではありません』


「じゃあ?」


『生命の分布です』


「生命の?」


『街の周辺』


『北』


『東』


『西』


少し。


間。


『均一ではありません』


「普通じゃない?」


『普通です』


「じゃあ」


『ただ』


フィリア。


声。


低い。


『西だけ』


止まる。



『少なすぎます』



「…………」


十三話。


老人。


言った。


動物が。


西を。


避けている。


森。


静か。


だった。


俺も。


見た。


「いつから?」


『分かりません』


「原因」


『分かりません』


「紫の草と」


『関連は不明です』


「…………」


分からない。


でも。


今まで。


別々だったものが。


少しずつ。


同じ。


方向を。


向き始める。


西。


「行かないぞ」


俺。


言う。


ガルド。


『まだ何も言ってねえ』


「先に言った」


セレナ。


『成長したわね』


「だろ?」


『少しだけ』


「そこ最後いらない」


西。


気になる。


でも。


気になるから。


行く。


それは。


もう。


やらない。


今。


できること。


知る。


聞く。


見る。


準備。


する。


それから。


選ぶ。


「明日」


俺。


腰。


見る。


布に。


包んだ。


木剣。


ひび。


広がったまま。


「まず」


ヴォルグ。


『鍛冶場だ』


「ですよね」


『朝一番で来い』


「はい」


「これ」


木剣。


軽く。


触る。


「直るかな」


ヴォルグ。


すぐには。


答えない。


『見てから決める』


「そればっか」


『見ずに決める方が馬鹿だ』


「……確かに」


ひび。


入った。


木剣。


紫の。


植物。


弱った。


鳥。


治療院の。


人たち。


全部。


同じではない。


でも。


今日。


少し。


思った。


弱っている。


壊れている。


だから。



終わり。



とは。



限らない。



鳥は。



立った。



子どもは。



目を覚ました。



なら。



この木剣も。



まだ。



分からない。



「明日」


俺は。


木剣を。


握る。


「見てもらおう」


捨てるには。


まだ。



早い。

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