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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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23/71

神託ログ23 治せない神様

翌朝。


治療院へ向かう道で。


フィリアは。


珍しく。


静かだった。


「…………」


普段なら。


朝食は食べましたか。


昨日の疲れは。


肩は痛くありませんか。


睡眠時間は。


水分は。


だいたい。


何かしら。


聞いてくる。


今日は。


何もない。


「フィリア」


【生命神フィリア】


『はい』


「緊張してる?」


少し。


間。


『どうしてですか?』


「静かだから」


『私はいつも静かです』


「それは無理がある」


『…………』


「昨日も寝る直前に呼んだし」


『必要なことでした』


「その前は手洗えって言ったし」


『必要なことです』


「飯食えって言うし」


『必要です』


「母ちゃんみたい」


『レンさん』


「はい」


『今日は帰りますか?』


「ごめんなさい」


少し。


笑う。


でも。


すぐ。


また。


静かになる。


やっぱり。


何か。


ある。


「昨日」


俺は。


歩きながら。


聞く。


「治せるものと、治せないものを見てほしいって言ったよな」


『はい』


「俺に?」


『はい』


「何で?」


返事。


来ない。


「フィリア?」


『見れば』


少し。


声。


弱い。


『分かると思います』


「…………」


それ以上。


聞かなかった。



◇ ◇ ◇



治療院。


昨日の。


グランボア襲撃で。


怪我をした人が。


何人も。


寝ている。


薬。


血。


汗。


湯。


いろんな。


匂い。


混ざる。


「……多いな」


【生命神フィリア】


『はい』


重傷者。


軽傷者。


包帯。


添え木。


眠っている人。


呻く人。


家族。


付き添っている人。


俺が。


昨日。


運んだ人も。


いた。


「ロッド」


男。


顔。


上げる。


「お前」


「腕どう?」


「動く」


包帯。


巻かれた。


腕。


見せる。


「仲間は?」


「生きてた」


「よかった」


「……ああ」


ロッド。


少し。


笑う。


昨日。


震えていた。


今も。


顔。


疲れてる。


でも。


少し。


違う。


「昨日」


ロッド。


言う。


「止めてくれて助かった」


「俺?」


「あのまま戻ってたら」


腕。


見る。


「たぶん、邪魔になってた」


「…………」


「ありがとな」


胸。


少し。


温かくなる。


「俺」


「何も治してないけど」


「は?」


「いや」


フィリアの。


言葉。


思い出した。


傷を。


治すことと。


人を。


助けることは。


同じじゃない。


「何でもない」


ロッド。


「変な奴だな」


「最近よく言われる」


笑う。


少し。


安心。


できた。


その時。


奥。


声。


「先生!」


空気。


変わる。


治療師。


走る。


「何?」


俺。


見る。


奥の。


寝台。


若い。


男。


昨日。


東門で。


戦った人?


顔。


青い。


息。


浅い。


「フィリア」


『行きましょう』


「うん」


近づく。


邪魔に。


ならない場所。


止まる。


年配の。


治療師。


傷。


見る。


腹。


深い。


包帯。


赤い。


「出血が……」


「止血薬!」


「もう使ってます!」


「治癒魔法は?」


「二度目です!」


「三度目は負担が――」


「分かってる!」


声。


飛ぶ。


俺。


動けない。


「フィリア」


『はい』


「治せる?」


沈黙。


「フィリア?」


『…………』


「生命神なら」


言ってから。


止まる。


その言葉。


何か。


違う。


でも。


もう。


出た。


「治せるんじゃないの?」


フィリア。


すぐには。


答えなかった。



『できません』



「…………」


声。


小さい。


「何で」


『傷が深すぎます』


「でも」


『血も失いすぎています』


「生命神だろ?」


また。


言ってしまう。


『はい』


「なら」


『レンさん』


初めて。


少し。


強い声。


『生命神は』


間。


『死なない神ではありません』


「…………」


『命を作れるわけでも』


『失った命を戻せるわけでもありません』


男。


苦しそうに。


息。


する。


治療師。


必死。


動く。


「じゃあ」


喉。


詰まる。


「何ができる」


フィリア。


『回復を促す』


『傷を塞ぐ』


『身体が治ろうとする力を助ける』


「それだけ?」


言った瞬間。


後悔。


した。


それだけ。


じゃない。


分かってる。


でも。


フィリア。


怒らない。


『はい』


静か。


『それだけです』


「…………」


『命が』


少し。


震える。


『もう、自分で戻れないところまで行けば』


『私は』


『引き戻せません』


「…………」


知らなかった。


生命神。


その名前。


勝手に。


思ってた。


何でも。


治せる。


死ななければ。


何とか。


できる。


そんな。


力。


あると。


思ってた。


違う。


神様にも。


できないこと。


ある。



◇ ◇ ◇



治療。


続く。


俺は。


見ている。


何も。


できない。


フィリアも。


見ている。


「……使わないの?」


聞く。


『何をですか』


「フィリアの力」


『使っています』


「え?」


『ずっと』


「…………」


分からない。


見えない。


『生命反応を』


『少しでも安定させています』


「じゃあ」


「もっと」


言葉。


止まる。


もっと。


強く。


できないのか。


もっと。


力。


使えば。


助かるんじゃないか。


フィリア。


俺が。


言わなくても。


分かったみたいだった。


『できます』


「え?」


『もっと強く』


『干渉することは』


『できます』


「じゃあ!」


『でも』


止められる。


『身体が耐えられません』


「…………」


『治癒は』


『傷を消すことではありません』


『身体に』


『治れと命じることでもありません』


「じゃあ」


『身体が持っている力を』


『助けるものです』


男。


息。


苦しい。


『無理に強く』


『回復を促せば』


『弱っている身体そのものを』


一拍。


『壊します』


「…………」


治す。


力。


強ければ。


いい。


わけじゃない。


「難しいな」


『はい』


フィリア。


小さく。


答えた。


『とても』



◇ ◇ ◇



時間。


経つ。


治療師。


汗。


拭う。


「脈、戻ってきた」


誰か。


息。


吐く。


「まだ安心するな」


「はい」


助かった?


分からない。


でも。


今。


生きてる。


俺も。


息。


吐いた。


「よかった……」


フィリア。


返事。


しない。


「フィリア?」


『はい』


「助かりそう?」


『分かりません』


「…………」


『今を越えても』


『感染』


『内臓の損傷』


『失血』


『危険は残ります』


「そっか」


まだ。


終わってない。


でも。


生きてる。


「なら」


俺。


言う。


「今はそれでいい」


『…………』


「違う?」


『いいえ』


少し。


優しい声。


『そうですね』



◇ ◇ ◇



治療院の。


奥。


少し。


静かな場所。


俺。


椅子。


座る。


「疲れた」


何も。


してない。


でも。


疲れた。


フィリア。


『レンさん』


「何?」


『先ほど』


「うん」


『生命神なら治せるのでは、と』


「…………」


「あれ」


頭。


下げる。


「ごめん」


『謝らなくていいです』


「でも」


『普通です』


「普通?」


『生命神』


フィリア。


少し。


自嘲するように。


『大げさな名前ですから』


「自分で言う?」


『私が付けたわけではありません』


「…………」


少し。


引っかかる。


「神様の名前って」


聞こうと。


して。


やめる。


今は。


別。


「フィリア」


『はい』


「昨日」


「俺にこれを見せたかった?」


『一部は』


「一部?」


『はい』


少し。


間。


『もう一つ』


声。


変わる。


『私自身のことも』


「フィリアの?」


『はい』


「何?」


沈黙。


長い。


『私は』


フィリア。


『時々』


止まる。


『治すべきではないものまで』


『治したくなります』


「…………」


意味。


すぐには。


分からない。


「治すべきじゃない?」


『はい』


「そんなのある?」


『あります』


「例えば?」


『治療によって』


『別の危険を生む場合』


「…………」


『本人が望んでいない場合』


「治してほしくない人?」


『います』


「何で?」


『理由は人によって違います』


『痛みを受け入れている人』


『治療そのものを恐れる人』


『代償を払えない人』


『自分より他者を優先してほしい人』


「…………」


『そして』


少し。


声。


重い。


『私が手を出すことで』


『その人が、自分で選ぶ機会を奪う場合』


「…………」


フィリア。


最初の。


授業。


思い出す。


子ども。


転んだ。


俺。


すぐ。


傷。


見た。


フィリア。


答え。


くれなかった。


その人を。


見て。


そう。


言った。


「フィリアって」


俺。


ゆっくり。


言う。


「助けたいが」


「先に来る?」


沈黙。


そして。



『はい』



迷わず。


答えた。



『正しいかどうかより』



一拍。



『助けたいが、先に来ます』



「…………」



優しい。



それだけなら。



そう。



思う。



でも。



違う。



助けたい。



だから。



相手の。



意思を。



置いていく。



ことが。



ある。



「それ」


俺。


言う。


「怖いな」


『はい』


フィリア。


否定しない。


『だから』


「だから?」


『レンさんには』


声。


静か。



『全部を救おうとする人には』



間。



『なってほしくありません』



「…………」



胸。



引っかかる。



「何で」



『全部は救えないからです』



「それだけ?」



フィリア。



黙る。



「フィリア」



『…………』



「それだけじゃないだろ」



長い。



沈黙。



『全部を救おうとすると』



ようやく。



『いつか』



声。



少し。



苦しい。



『救われる側の気持ちを』



『見なくなるからです』



「…………」



『救うことそのものが』



『目的になる』



『助けたいという自分の気持ちが』



『相手の選択より』



『大きくなる』



「それ」



俺。



言う。



「フィリアの話?」



返事。



来ない。



「…………」



聞きすぎた?



そう。



思った時。



『はい』



小さい。



声。



「そっか」



それ以上。



聞かない。



今は。



◇ ◇ ◇



昼過ぎ。


治療院。


手伝う。


水。


運ぶ。


布。


洗う。


薬。


持っていく。


俺。


治せない。


でも。


仕事。


ある。


「これどこ?」


「奥!」


「了解!」


動く。


怪我人。


一人。


水。


欲しい。


渡す。


別の人。


起き上がろうと。


する。


「待って」


支える。


「大丈夫」


「大丈夫じゃない顔してる」


「トイレだ」


「それは行こう」


肩。


貸す。


フィリア。


何も。


言わない。


必要な時だけ。


『足元』


「うん」


『左脚に力が入りにくいです』


「分かった」


答え。


全部。


くれない。


でも。


必要な。


情報。


くれる。


戻る。


寝台。


座らせる。


男。


「ありがとな」


「いえ」


「治療師か?」


「無職です」


「…………」


「何その顔」


「いや」


「無職って自分で言う奴初めて見た」


「俺も最近慣れてきた」


男。


笑う。


俺も。


笑う。


それで。


いい。



◇ ◇ ◇



午後。


入口。


騒がしくなる。


「先生!」


子ども。


抱えた。


女性。


飛び込んでくる。


「お願いします!」


「どうした!」


治療師。


走る。


子ども。


十歳。


くらい。


顔。


白い。


ぐったり。


「急に倒れて!」


「熱は?」


「分かりません!」


「何を食べた?」


「いつもと同じです!」


寝台。


運ぶ。


俺。


道。


空ける。


フィリア。


急に。


声。



『レンさん』



「何?」



『近づきすぎないで』



「え?」



今までと。



違う。



強い。



声。



俺。



止まる。



治療師。



子どもの。



手。



見る。



「これは……」



指。



紫。



色。



付いている。



「何?」



母親。



泣く。



「分かりません!」



「外で遊んでいて」



「帰ってきたら」



「手に」



治療師。



匂い。



嗅ぐ。



「植物?」



俺。



背中。



冷える。



紫。



植物。



西。



頭。



浮かぶ。



でも。



決めつけない。



「フィリア」



『はい』



「分かる?」



沈黙。



『生命反応が』



「うん」



『乱れています』



「毒?」



『断定できません』



「治せる?」



長い。



沈黙。



そして。



『分かりません』



「…………」



治療師。



子ども。



診る。



「この色」



別の。



治療師。



顔。



変わる。



「北の草地で増えてる花じゃないか?」



「紫の?」



「最近よく見る」



「触っただけで?」



「分からん」



母親。



「助けてください!」



その声。



胸。



刺さる。



俺。



フィリアを。



呼びそうに。



なる。



助けて。



治して。



生命神だろ。



でも。



止まる。



今日。



見た。



聞いた。



助けたい。



それだけで。



手を出す。



危険。



「フィリア」



『はい』



「今」



息。



吐く。



「何が分かる?」



フィリア。



少し。



間。



『生命活動が急速に弱っています』



「原因は?」



『不明です』



「治癒魔法を使ったら?」



『原因が毒なら』



『代謝を促進することで』



声。



重くなる。



『悪化させる可能性があります』



「…………」



「じゃあ」



何。



する。



治療師。



考えてる。



俺。



治せない。



フィリア。



力。



ある。



でも。



原因。



分からない。



助けたい。



だから。



使う。



違う。



「専門家」



呟く。



「この植物」



治療師。



見る。



「詳しい人いませんか?」



「薬師だ!」



一人。



顔。



上げる。



「南通りの薬師!」



「呼んできます!」



俺。



走ろうと。



する。



「待て!」



治療師。



「場所分かるのか?」



「分かりません!」



「俺が行く!」



若い。



助手。



走る。



「じゃあ俺は?」



「水!」



「はい!」



動く。



今。



できること。



やる。



◇ ◇ ◇



薬師。



来る。



年配の。



女性。



子どもの。



指。



見る。



「これ」



顔。



険しい。



「知ってる?」



「似たものは」



袋。



薬草。



出す。



「触れた場所を洗え!」



「はい!」



「吐かせるな!」



「口には?」



「分からん!」



指示。



飛ぶ。



俺。



水。



運ぶ。



子どもの。



手。



洗う。



紫。



薄く。



落ちる。



フィリア。



ずっと。



見てる。



『生命反応』



「どう?」



『まだ弱いです』



「悪化?」



『今は止まっています』



「……よし」



少し。



息。



吐く。



薬師。



薬。



作る。



飲ませる。



待つ。



長い。



時間。



子ども。



指。



少し。



動く。



母親。



泣く。



「……お母さん」



小さい。



声。



「っ……!」



抱きつこうと。



する。



治療師。



止める。



「まだ!」



でも。



母親。



泣く。



俺も。



力。



抜ける。



「よかった……」



フィリア。



『はい』



声。



少し。



震えてる。



「フィリア」



『何ですか』



「今」



「治したかった?」



沈黙。



『はい』



「最初から?」



『はい』



「でも」



『使いませんでした』



「何で?」



長い。



間。



『怖かったからです』



「…………」



『私の“助けたい”が』



『この子を』



『もっと苦しめるかもしれなかった』



「…………」



生命神が。



治さない。



それは。



何もしない。



じゃない。



治さないと。



決めた。



「それ」



俺。



言う。



「すごいと思う」



『…………』



「治すより」



「難しそう」



フィリア。



少し。



笑った。



気がした。



『はい』



『とても』



◇ ◇ ◇



夕方。


薬師。


紫の。


色が。


付いた布。


見る。


「この植物」


俺。


聞く。


「どこにあるんですか?」


「最近なら」


薬師。


考える。


「街の北と東」


「西は?」


「西?」


「いや」


何でも。


西へ。


結びつけるな。


「何でもないです」


薬師。


首。


振る。


「昔は」


「この辺じゃ、ほとんど見なかった」


「え?」


「山の奥」


「湿った場所に生える草だ」


「それが」


「最近」


「街の近くにも?」


「ああ」


薬師。


紫の。


跡。


見る。


「増えてる」


「原因は?」


「知らん」


「毒?」


「それも」


少し。


眉。


寄せる。


「妙なんだ」


「何が?」


「昔」


「同じ草を薬に使ったことがある」


「薬?」


「ああ」


「量を間違えれば毒になる植物は珍しくない」


「じゃあ今回も」


「分からん」


薬師。


首。


振る。


「触れただけで」


「ここまで急に弱るような草じゃなかった」


「…………」


また。


変。


「変わった?」


「草が?」


「はい」


「分からん」


薬師。


俺を見る。


「分からんものを」


「分かった顔で触るな」


「…………」


ヴォルグ。


思い出す。


思わず。


笑う。


「何がおかしい」


「いや」


「同じこと言う知り合いがいて」


「賢い奴だ」


【鍛冶神ヴォルグ】


『当然だ』


「聞いてたのかよ」


薬師。


「何?」


「何でもないです」



◇ ◇ ◇



治療院を。


出る。


空。


夕焼け。


俺。


フィリア。


「今日」


歩く。


「何もできなかった気がする」


『そうですか?』


「治してない」


『はい』


「薬も作ってない」


『はい』


「知識もなかった」


『はい』


「そこは否定して」


『事実です』


「ノアみたいになってる」


少し。


笑う。


「でも」


俺。


続ける。


「専門家呼ぶって」


「考えた」


『はい』


「水運んだ」


『はい』


「それだけ」


『それだけではありません』


「何?」


フィリア。


少し。


間。



『治せないと』



『認めました』



「…………」



『それは』



『とても大切です』



「そんなに?」



『はい』



「何で?」



『治せない人が』



『治せるふりをすると』



少し。



声。



重くなる。



『人は死にます』



「…………」



強い。



言葉。



「フィリアも?」



『はい』



「神様でも?」



『神様でも』



即答。



『できないことを』



『できると思い込めば』



『間違えます』



ノア。



ヴォルグ。



セレナ。



みんな。



似たこと。



言う。



分からない。



知らない。



できない。



それを。



認める。



簡単そうで。



難しい。



「でも」



俺。



聞く。



「フィリア」



『はい』



「全部を救いたい?」



長い。



沈黙。



夕方。



風。



吹く。



そして。



『はい』



声。



小さい。



『できるなら』



「…………」



『全部』



「そっか」



否定。



しない。



それが。



フィリア。



優しい。



でも。



その優しさが。



危ない。



ことも。



本人が。



知ってる。



「じゃあ」



俺。



言う。



「俺が止めることもあるかもな」



『レンさんが?』



「フィリアが」



少し。



笑う。



「助けたいで暴走したら」



沈黙。



『止められますか?』



「神様相手?」



『はい』



「…………」



考える。



「たぶん無理」



『では駄目ではありませんか』



「でも言う」



『何を?』



「やめろって」



フィリア。



少し。



間。



『……そうですか』



「うん」



『では』



声。



柔らかい。



『その時は』



一拍。



『お願いします』



「任せろ」



言って。



少し。



怖くなる。



生命神を。



止める。



そんな日。



来ない方が。



いい。



たぶん。



でも。



何となく。



覚えておこうと。



思った。



◇ ◇ ◇



夜。



今日。



見た。



命。



助かった人。



まだ。



危ない人。



治せた傷。



治せない傷。



使えた力。



使わなかった力。



そして。



紫の。



植物。



昔は。



街の近くには。



ほとんど。



なかった。



触れただけで。



人を。



ここまで。



弱らせるものでも。



なかった。



「…………」



西。



考えそうになって。



やめる。



まだ。



材料。



足りない。



明日。



できるなら。



植物を。



見る。



触らない。



調べる。



知ってる人に。



聞く。



俺は。



治せない。



だから。



治す前に。



知る。



それで。



いい。



目を。



閉じる。



その時。



フィリア。



小さな。



声。



『レンさん』



「何?」



『今日の子』



「うん」



『助かって』



少し。



間。



『よかったです』



「うん」



『本当に』



声。



少し。



震える。



『よかった』



俺は。



返事を。



しなかった。



ただ。



聞いた。



生命神。



だから。



命に。



慣れている。



わけじゃない。



助かれば。



嬉しい。



失えば。



たぶん。



痛い。



それでも。



見続ける。



フィリアも。



俺と。



同じように。



できることと。



できないことの。



間に。



立っている。



そんな気がした。

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