神託ログ22 昨日より、できること
翌朝。
身体が。
重い。
「…………」
起き上がる。
肩。
腕。
脚。
全部。
少しずつ。
だるい。
昨日。
戦ってない。
なのに。
走った。
人を運んだ。
荷物を運んだ。
怪我人を支えた。
「戦ってないのに筋肉痛って」
【戦神ガルド】
『いいことじゃねえか!』
「朝から元気だな」
『身体を使った証拠だ!』
「俺はもう少し静かな証拠が欲しい」
立つ。
腕。
回す。
痛い。
でも。
動く。
「最初より」
少し。
楽。
な気がする。
この世界へ。
来たばかりの頃。
少し走るだけで。
息。
上がった。
荷物。
持つのも。
きつかった。
今は。
疲れる。
でも。
前より。
動ける。
「ガルド」
『何だ』
「俺、強くなってる?」
『なってる』
即答。
「お」
『ただし』
「来た」
『調子に乗るほどじゃねえ』
「分かってるよ」
『昨日のグランボアが来たら』
「逃げる」
『よし!』
「判断早いだろ」
『成長したな!』
「基準そこ?」
でも。
少し。
嬉しい。
昨日より。
できること。
一つ。
増える。
それは。
派手じゃない。
急に。
最強に。
なるわけでもない。
でも。
昨日できなかったことが。
今日。
少し。
できる。
それなら。
悪くない。
◇ ◇ ◇
午前。
街の外。
西でも。
東でもない。
いつもの。
開けた場所。
右手。
前。
一。
魔力を。
感じる。
二。
動かす。
三。
火。
形。
四。
外へ。
「――灯れ」
ぽっ。
炎。
「よし」
【魔法神セレナ】
『昨日より早い』
「だろ?」
『火は小さいけど』
「褒める時は褒め切れ!」
『事実も大事』
「魔法神、厳しい」
火。
消す。
もう一度。
「――灯れ」
ぽっ。
出る。
「二回連続」
『ええ』
「最初」
何回。
失敗したっけ。
数えるの。
やめたくらい。
出なかった。
今は。
出る。
まだ。
小さい。
でも。
出る。
「魔力は?」
『ちゃんと減ってる』
「減って喜ばれるの変だな」
『今はね』
謎の炎。
あれは。
減らなかった。
だから。
普通に。
減ることが。
安心。
「今日は」
俺。
右手。
見る。
「あっちはやらない」
セレナ。
少し。
間。
『ええ』
「やりたくはあるけど」
『ええ』
「昨日止められた理由」
「考えた」
『何だった?』
「限界が分からない」
『そう』
「魔力なら」
「減ったら休める」
『ええ』
「でも」
謎の炎。
何を。
消費するか。
分からない。
何も。
消費しない。
可能性も。
ある。
でも。
分からない。
「無料だと思って使って」
「後で」
「とんでもない請求来たら困る」
【商神メルク】
『よく覚えている』
「例えが怖かったからな」
セレナ。
『なら今日は』
「普通の魔法」
『そう』
「昨日より」
『一つ先』
「お」
少し。
楽しくなる。
「何する?」
『飛ばす』
「…………」
「ついに?」
『ついに』
「ファイアボール?」
『名前は好きにしなさい』
「ファイアボール!」
『急に子ども』
「男はこういうの好きなんだよ!」
【戦神ガルド】
『分かる!』
「ほら!」
【魔法神セレナ】
『ガルドは黙って』
『何でだ!?』
◇ ◇ ◇
「――灯れ」
火。
出る。
「ここから?」
『前へ押し出す』
「どうやって」
『魔力で』
「説明がヴォルグみたいになってるぞ」
【鍛冶神ヴォルグ】
『何だ』
「呼んでない!」
セレナ。
『火を作った時』
『魔力との繋がりがあるでしょ』
「ある」
『その繋がりを保ったまま』
『位置を動かす』
「…………」
炎。
見る。
感覚。
糸。
みたいな。
もの?
「こう?」
炎。
揺れる。
少し。
前。
ぽふ。
消えた。
「…………」
『惜しい』
「今の惜しい?」
『昨日なら動かなかった』
「なるほど」
もう一回。
「――灯れ」
ぽっ。
繋がり。
感じる。
押す。
「行け」
炎。
少し。
前。
十センチ。
二十。
「お」
三十。
消える。
「記録更新」
『記録ってほどじゃない』
「厳しい!」
でも。
笑う。
もう一回。
失敗。
もう一回。
少し。
伸びる。
魔力。
減る。
休む。
水。
飲む。
「魔法って」
地面に。
座る。
「地味だな」
セレナ。
『何を想像してたの』
「ドーン!」
『馬鹿』
「ズガーン!」
『もっと馬鹿』
「詠唱して大爆発!」
『今の魔力でやったら、先にあなたが倒れる』
「夢がない」
『夢で魔法は上手くならない』
「現実的だな魔法神」
『魔法だからこそよ』
「え?」
セレナ。
少し。
間。
『魔法って』
『できないことが、できるように見えるでしょ』
「うん」
『だから』
『できることと』
『できないことを』
『ちゃんと知るの』
「…………」
『知らないまま使えば』
『自分も』
『誰かも』
『傷つけるから』
昨日の。
謎の炎。
思い出す。
「セレナ」
『何?』
「魔法」
「好き?」
『好きよ』
即答。
「何で?」
今度は。
少し。
間。
『昨日まで』
『できなかったことが』
『できるようになるから』
「…………」
思わず。
笑う。
「今日の俺じゃん」
『そうね』
火。
もう一度。
出す。
小さい。
弱い。
でも。
昨日より。
少し。
前へ。
◇ ◇ ◇
昼。
街へ。
戻る。
腹。
減った。
市場。
歩く。
「今日は」
財布。
見る。
「安いの」
【商神メルク】
『昨日魚を食ったからな』
「うまかったから後悔はない」
『金は減った』
「現実」
パン。
探す。
その時。
「あ」
リナ。
店先。
いた。
「リナ!」
振り向く。
「レン」
「怪我どう?」
「もう大丈夫」
「肩は?」
「ちょっと痛い」
「大丈夫じゃないじゃん」
「動くから」
「それは大丈夫とは言わない」
リナ。
眉。
上げる。
「何」
「昨日までのレンが言う?」
「ぐっ」
何も。
言えない。
「フィリア!」
【生命神フィリア】
『はい』
「何か言って」
『リナさんの意見に賛成です』
「裏切られた!」
リナ。
「また?」
「独り言」
「便利だね、それ」
「便利じゃない」
リナ。
パン。
買う。
俺も。
同じ。
「昨日」
聞く。
「グランボア」
「うん」
「怖かった?」
「聞いたじゃん」
「改めて」
「怖かったよ」
パン。
ちぎる。
「死ぬかと思った」
「…………」
軽く。
言う。
でも。
たぶん。
本当。
「それでも」
「狩剣士だから?」
リナ。
俺を見る。
「うん」
やっぱり。
「でも」
続く。
「昨日は」
少し。
考える。
「それだけじゃない」
「え?」
「何ていうか」
パン。
一口。
「人がいたから」
「人?」
「逃げる人」
「怪我してる人」
「子ども」
「衛兵」
「みんな」
リナ。
少し。
照れたように。
顔。
逸らす。
「私だけ逃げるの」
「嫌だった」
「…………」
狩剣士だから。
だけじゃない。
「それ」
「何?」
「いいと思う」
「急に何」
「いや」
少し。
安心した。
理由。
自分でも。
分からない。
「レンは?」
「俺?」
「昨日」
「戦わなかったでしょ」
「うん」
「怖かった?」
「めちゃくちゃ」
「じゃあ何で残ったの」
「…………」
考える。
逃げても。
よかった。
広場まで。
行って。
じっと。
していても。
よかった。
でも。
人。
いた。
困ってた。
「できること」
「ありそうだったから」
リナ。
少し。
笑う。
「同じじゃん」
「何が?」
「私と」
「俺、戦ってないけど」
「そこじゃなくて」
パン。
俺の。
肩。
軽く。
叩く。
「できることやった」
「…………」
「それでいいでしょ」
簡単に。
言う。
でも。
その言葉。
少し。
残る。
◇ ◇ ◇
午後。
リナが。
街の外へ。
行くと言った。
「狩り?」
「違う」
「じゃあ?」
「昨日の確認」
「グランボア?」
「うん」
「一人で?」
「衛兵もいる」
「なら安心」
「レンも来る?」
「…………」
七柱。
一瞬。
静か。
「見に?」
「戦いに行くわけじゃない」
リナ。
「足跡と」
「昨日の傷」
「確認するだけ」
ガルド。
『門から遠くへ行くな』
フィリア。
『無理はしないでください』
セレナ。
『西へは行かないこと』
メルク。
『仕事なら報酬を確認しろ』
「俺、仕事じゃない」
ヴォルグ。
『木剣は使うな』
ノア。
『観察自体には価値があります』
エリオス。
『…………』
「エリオス?」
『行くなら』
少し。
間。
『よく見ろ』
「……うん」
東。
昨日の。
魔物。
西じゃない。
でも。
今。
俺に必要なのは。
何でも。
同じ謎へ。
結びつけることじゃない。
見る。
決めつけない。
「行く」
◇ ◇ ◇
東門。
外。
昨日の。
戦闘跡。
すごい。
地面。
抉れてる。
盾。
壊れてる。
木。
折れてる。
「でか……」
足跡。
俺の。
身体より。
大きい。
「これがグランボア?」
「うん」
リナ。
しゃがむ。
「普通は?」
「もっと小さい」
「どれくらい?」
リナ。
考える。
「大きくても」
手。
上げる。
「このくらい?」
「十分でかい」
「昨日のは異常」
「何であんなに大きく?」
「分かんない」
衛兵。
数人。
周囲。
調べてる。
一人。
年配の。
男。
「昨日戦った嬢ちゃんか」
「はい」
「そっちは?」
俺。
「見学です」
「帰れ」
「早い!」
リナ。
笑う。
「この人」
「昨日、避難手伝ってました」
衛兵。
俺を見る。
「お前か」
「知ってる?」
「怪我人運んでた無職」
「無職まで広まってる!」
「目立つんだよ」
「何で!?」
「神殿で無職出た奴なんて珍しいからな」
最悪。
この街。
情報。
回るの。
早すぎる。
「邪魔しません」
「危険なら戻ります」
衛兵。
少し。
考える。
「街道から外れるな」
「はい」
「魔物を見たら戻れ」
「はい」
「勝手に追うな」
「はい」
「分からないものに触るな」
「…………」
「返事」
「はい!」
全部。
俺に。
刺さる。
◇ ◇ ◇
足跡。
追う。
東。
街道。
少し。
進む。
「昨日」
リナ。
「こっちから来た」
足跡。
深い。
大きい。
でも。
ところどころ。
変。
「これ」
俺。
しゃがむ。
「右だけ浅い?」
リナ。
見る。
「本当だ」
右。
後ろ脚。
足跡。
少し。
浅い。
「傷?」
「たぶん」
昨日。
右脇腹。
大きく。
抉れていた。
庇って。
歩いた。
「じゃあ」
「街に来る前から」
「かなり弱ってた」
「うん」
「それであれ?」
リナ。
顔。
少し。
固くなる。
「うん」
嫌な。
話。
元気だったら。
どれだけ。
強かった。
足跡。
さらに。
見る。
ノア。
『歩幅に変化があります』
「どこ?」
『現在地点から約二十歩先』
進む。
確かに。
足跡。
間隔。
変わる。
「急に広い」
リナ。
「走った?」
「街へ?」
「うん」
その前。
何か。
あった?
地面。
見る。
足跡。
一度。
止まっている。
「ここ」
リナ。
しゃがむ。
「向き変わってる」
グランボア。
東から。
西。
街へ。
進んでいた。
でも。
ここ。
足。
ぐちゃ。
向き。
乱れてる。
「振り返った?」
「かも」
昨日も。
戦いながら。
何度も。
後ろ。
気にしてた。
「追われてた?」
俺。
言う。
リナ。
すぐ。
答えない。
「分かんない」
「うん」
その答え。
いい。
分からない。
なら。
分からない。
「でも」
リナ。
地面。
指す。
「これ」
「何?」
「血」
黒く。
乾いた。
跡。
グランボア。
傷。
「結構ある」
「うん」
その横。
地面。
深く。
削れている。
「爪?」
俺。
聞く。
リナ。
首。
振る。
「グランボアのじゃない」
「じゃあ」
「分かんない」
また。
それ。
でも。
少しずつ。
材料。
増える。
◇ ◇ ◇
さらに。
少し。
進む。
衛兵。
先。
止まる。
「ここまでだ」
「何か?」
「森に入る」
東の。
森。
昨日。
グランボアが。
出てきた場所。
「追わない?」
リナ。
聞く。
衛兵。
首。
振る。
「今の人数じゃ無理だ」
「調査隊は?」
「組む」
「いつ?」
「早くて明日」
「…………」
俺。
森。
見る。
静か。
普通の。
森。
西の森とは。
違う。
鳥。
鳴く。
虫。
いる。
風。
木。
揺れる。
「普通だな」
リナ。
「何が?」
「いや」
西。
静か。
だった。
不自然な。
くらい。
ここは。
生きてる。
「レン」
「何?」
リナ。
森の。
手前。
指す。
「これ」
地面。
毛。
黒い。
太い。
「グランボア?」
「うん」
血。
付いてる。
その先。
木。
幹。
赤黒い。
「擦った?」
「たぶん」
傷。
痛くて。
身体。
擦った?
近づく。
でも。
触らない。
衛兵に。
言われた。
「傷」
リナ。
見ている。
血。
量。
多い。
「かなり深かったんだな」
「うん」
「リナ」
「何?」
「昨日」
「傷」
「剣じゃ無理って言ったよな」
「うん」
「何で?」
リナ。
少し。
考える。
「形」
「形?」
「剣なら」
自分の。
剣。
抜かない。
鞘のまま。
示す。
「斬った跡って」
「細い」
「うん」
「深くても」
「線になる」
「昨日のは?」
リナ。
両手。
広げる。
「抉れてた」
「幅がある?」
「うん」
「爪?」
「大きい魔物なら」
「ありえる」
「じゃあ」
「でも」
リナ。
止める。
「変だった」
「何が?」
「傷の端」
「…………」
「きれいだった」
「きれい?」
「うまく言えない」
「裂かれたなら」
「もっと」
手。
動かす。
「ぐちゃってなる」
「昨日のは?」
「抉れてるのに」
「境目だけ」
少し。
眉。
寄せる。
「妙に、はっきりしてた」
「…………」
何か。
頭。
引っかかる。
きれい。
切れた。
でも。
大きい。
「何だそれ」
「だから分かんない」
「うん」
分からない。
でも。
覚える。
◇ ◇ ◇
帰る。
途中。
リナ。
突然。
言った。
「火」
「え?」
「使えるんでしょ」
「何で知ってる?」
「噂」
「この街怖い!」
「無職なのに魔法使ったって」
「情報早すぎない!?」
「珍しいから」
「無職を珍獣みたいに言うな!」
リナ。
笑う。
「見せて」
「ここで?」
「小さいのでいい」
セレナ。
『普通の火なら構わないわ』
「じゃあ」
止まる。
右手。
前。
一。
魔力。
二。
動かす。
三。
火。
四。
外へ。
「――灯れ」
ぽっ。
小さな。
炎。
リナ。
目。
見開く。
「おお」
「どう?」
「ちっさ」
「おい!」
セレナ。
笑ってる。
絶対。
笑ってる。
「魔力3だから!」
「3?」
「あ」
リナ。
俺を見る。
「魔力3なの?」
「…………」
「うん」
「少な」
「知ってる!」
「それで魔法使えるんだ」
「練習した」
「へえ」
リナ。
炎。
見る。
「すごいじゃん」
「…………」
「今」
「何?」
「すごいって言った?」
「言ったけど」
「もう一回」
「嫌」
「何で!」
炎。
消える。
「昨日より」
俺。
手。
見る。
「ちょっと前に飛ばせる」
「昨日?」
「いや」
「最初より」
言い直す。
謎の炎。
まだ。
話さない。
隠す。
というより。
俺自身。
分かってない。
「毎日練習してるの?」
「まあ」
「剣も?」
「ちょっと」
「仕事も?」
「しないと食えない」
リナ。
少し。
笑う。
「忙しい無職」
「矛盾してるな」
「でも」
リナ。
前。
歩き出す。
「昨日よりできること増えてるなら」
振り返る。
「いいじゃん」
「…………」
簡単な。
言葉。
でも。
今の俺には。
結構。
響いた。
昨日より。
できること。
走る。
荷物を運ぶ。
人を見る。
道具を見る。
値段を考える。
知らないと言う。
魔力を感じる。
火を出す。
少し。
飛ばす。
戦えない。
治せない。
知らないこと。
山ほど。
ある。
でも。
何もできない。
では。
なくなっている。
「そうだな」
俺も。
歩く。
「いいかも」
◇ ◇ ◇
街へ。
戻って。
夕方。
リナ。
剣。
手入れ。
している。
布。
油。
刃。
見る。
「ちゃんとやるんだ」
「何が?」
「手入れ」
「当たり前でしょ」
【鍛冶神ヴォルグ】
『当然だ』
「ヴォルグが喜んでる」
「誰?」
「遠いところの知り合い」
「それ便利すぎない?」
「気づいた?」
リナ。
刃。
見る。
丁寧。
昨日。
あれだけ。
戦った。
道具。
見る。
ヴォルグ。
教わった。
使った後。
見ろ。
違和感。
無視するな。
「欠けてる?」
「少し」
「直る?」
「研げば」
「自分で?」
「できるところは」
「すご」
「普通」
また。
普通。
俺には。
知らないこと。
ばかり。
「レンの木剣は?」
「…………」
忘れてた。
いや。
忘れてない。
忘れたふり。
してた。
布。
包んだ。
木剣。
出す。
ひび。
「うわ」
リナ。
顔。
引く。
「そんな反応する?」
「それ使ってたの?」
「使ってない」
「昨日?」
「ちょっと」
「使ってるじゃん」
「昨日は昨日!」
【鍛冶神ヴォルグ】
『持ってこい』
「はい」
「誰に返事してるの?」
「怒ってる知り合い」
「遠いところ?」
「めちゃくちゃ近く感じる」
鍛冶場。
行く。
その前。
リナ。
木剣。
見る。
「それ」
「何?」
「大事なの?」
「…………」
考える。
高い。
ものじゃない。
名剣。
でもない。
特別な。
武器。
でもない。
最初。
持った。
木剣。
何度も。
使った。
「たぶん」
「たぶん?」
「最初より」
少し。
大事。
リナ。
「変なの」
「お前に言われたくない」
「私の剣は大事だよ」
「何で?」
即答。
「狩剣士だから」
「…………」
また。
それ。
でも。
今日は。
少し。
違って。
聞こえた。
狩剣士だから。
剣が。
大事。
じゃあ。
もし。
狩剣士じゃ。
なくなったら。
その剣は。
大事じゃ。
なくなる?
聞こうとして。
やめる。
今。
聞くことじゃない。
リナは。
リナ。
俺は。
俺。
昨日より。
できること。
一つ。
増えれば。
それでいい。
今は。
そう。
思う。
◇ ◇ ◇
夜。
眠る前。
俺は。
今日。
覚えたことを。
思い返す。
普通の火を。
少し。
前へ。
飛ばせた。
グランボアの。
足跡を。
見た。
傷。
聞いた。
リナの。
剣の手入れを。
見た。
昨日より。
知った。
昨日より。
できた。
でも。
一つ。
気になる。
あの。
巨大な。
グランボア。
街へ。
襲いに。
来たんじゃ。
ない。
もし。
本当に。
逃げてきたのなら。
あいつを。
あそこまで。
傷つけたものが。
いる。
俺は。
目を。
閉じる。
追わない。
まだ。
決めつけない。
ただ。
覚えておく。
その時。
【生命神フィリア】
『レンさん』
「ん?」
『起きていますか?』
「今寝るところ」
『少しだけ』
「何?」
間。
いつもの。
フィリアより。
少し。
長い。
『明日』
「うん」
『私と一緒に』
声。
静か。
『治療院へ来ていただけませんか』
「治療院?」
昨日の。
怪我人?
「誰か悪いの?」
フィリア。
すぐには。
答えなかった。
『はい』
短い。
返事。
「分かった」
『ありがとうございます』
「俺にできることある?」
また。
間。
『分かりません』
「…………」
『でも』
フィリア。
『見てほしいんです』
「何を?」
『治せるものと』
少し。
声。
弱くなる。
『治せないものを』
「…………」
返事。
迷う。
でも。
「分かった」
明日。
治療院。
俺は。
まだ。
治せない。
魔法も。
使えない。
でも。
見ることは。
できる。
昨日より。
できること。
増えた。
なら。
明日。
また。
一つ。
知ればいい。
そう。
思って。
目を。
閉じた。




