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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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19/71

神託ログ19 知らぬが仏、神も知らぬ

翌朝。


俺は。


火を出した。



「――灯れ」



ぽっ。



指先の先。


小さな炎が。


揺れる。


「…………」


出た。


昨日。


何度も失敗して。


ようやく覚えた。


普通の。


火魔法。


【魔法神セレナ】


『安定してきたわね』


「だろ?」


『まだ小さいけど』


「一言多い」


『魔力3だし』


「二言多い!」


炎を。


消す。


少し。


疲れる。


身体の中。


魔力が。


減った。


その感覚も。


昨日より。


分かる。


「これが普通」


『そう』


俺は。


右手を見る。


昨日の夜。


名前のない神託に。


聞いた。



あの炎は。



魔法か。



返ってきた。



【違う】



信じるかどうかは。


別。


でも。


確かめたい。


「セレナ」


『何?』


「今日」


息を。


吐く。


「あの火、もう一回出してみたい」


返事が。


来ない。


「…………」


『嫌』


「え?」


予想外。


「魔法神が?」


『魔法神だからよ』


「どういうこと?」


『分からないものを、軽い気持ちで再現しないで』


声が。


真面目。


『昨日の火は』


『発動条件も』


『消費も』


『性質も』


『停止条件も』


『何一つ分かっていない』


「でも」


『しかも』


遮られる。


『あれが本当にあなたの力なのかすら』


「…………」


『分からない』


正しい。


全部。


正しい。


「だから」


俺は。


言う。


「確かめたい」


『…………』


「分からないまま」


右手。


握る。


「また本番で出る方が怖い」


沈黙。


「昨日は」


「三人に囲まれて」


「神託も切れて」


「何もできなくて」


「あれが出た」


思い出す。


怖かった。


本当に。


「次」


「もっとヤバい時に出たら」


「俺」


「何が起きたのかも分からない」


セレナ。


答えない。


「出るかどうか」


「まず」


「それだけでも知りたい」


長い。


沈黙。


そして。



【創世神エリオス】


『条件を決めよう』



「エリオス」


『無制限に試すのは駄目だ』


『だが』


少し。


間。


『レンの言う通り』


『何も知らないまま放置することにも危険がある』


セレナ。


『……分かってる』


少し。


不満そう。


『分かってるけど』


フィリア。


『安全を優先してください』


ガルド。


『俺は賛成だ』


メルク。


『条件次第だ』


ヴォルグ。


『止める基準を先に決めろ』


ノア。


『記録します』


俺は。


少し。


笑った。


「会議始まった?」


【戦神ガルド】


『今回は早く終わらせる!』


【商神メルク】


『お前が黙ればな』


『何で俺だ!?』


「もう長くなりそう」


でも。


今日は。


ありがたい。


一人で。


試す気には。


なれなかった。



◇ ◇ ◇



場所は。


昨日と同じ。


街の外。


西ではない。


開けた。


何もない場所。


人も。


近くにいない。


「条件」


確認する。


ノア。


『一、通常火魔法との比較を行う』


「うん」


『二、危険を感じた場合は即時中止』


「うん」


『三、身体および魔力に異常が出た場合も中止』


「うん」


『四、原因不明の神託を受信した場合』


「中止?」


『状況次第です』


「そこは曖昧なんだ」


『未知事象同士の干渉を避けるべきですが、観測価値もあります』


「知識神が出てるな」


『五』


「まだある?」


『七柱の神託接続に異常が発生した場合』


「即中止」


『はい』


「了解」


セレナ。


『絶対よ』


「分かってる」


『本当に?』


「昨日から信用ないな俺」


フィリア。


『昨日、怪我をしたまま森へ行った方ですから』


「もう肩治ったって!」


『ほぼ、です』


「ぐっ」


ヴォルグ。


『木剣は置け』


「え?」


『ひびが深い』


腰の。


木剣。


昨日。


女に触れられて。


ひびが。


広がった。


「持ってるだけでも?」


『使うな』


「…………」


木剣を。


地面へ。


置く。


何となく。


心細い。


ただの。


木剣なのに。


「終わったら直せる?」


ヴォルグ。


少し。


間。


『見てから決める』


「分かった」


壊れたら。


終わり。


ではない。


でも。


何でも。


直るわけでもない。


それも。


少しずつ。


分かってきた。



◇ ◇ ◇



まず。


普通の火。


右手。


前へ。


一。


自分の魔力を。


認識。


二。


指先へ。


動かす。


三。


火の形。


小さく。


四。


外へ。



「――灯れ」



ぽっ。



炎。



「成功」


【魔法神セレナ】


『魔力反応、正常』


ノア。


『発動前魔力量を記録』


「数字分かる?」


『相対値として』


「ならお願い」


『発動後、魔力量低下を確認』


セレナ。


『術式も正常』


「術式?」


『今は気にしなくていい』


「気になる」


『今日は別の話!』


「はい」


地面。


乾いた小枝。


火を。


近づける。


煙。


焦げ。


燃える。


「普通」


『ええ』


水で。


消す。


ジュッ。


煙。


残る。


「これが比較対象」


ノア。


『記録しました』


「じゃあ」


一度。


深呼吸。


「次」


セレナ。


『待って』


「何?」


『昨日の火』


『どうやって出したか覚えてる?』


「…………」


考える。


三人。


囲まれた。


逃げられない。


木剣。


ひび。


怖い。


来るな。


そう。


思った。


手を。


出した。


「魔力を集めようとはした」


『ええ』


「火を出そうともした」


『ええ』


「でも」


昨日。


普通の火を。


覚えた。


だから。


分かる。


「手順」


「踏んでない」


セレナ。


『そう』


「魔力を火にする感覚も知らなかった」


『そうよ』


「なのに出た」


『だから』


少し。


声が。


低くなる。


『おかしいの』


「…………」


「じゃあ」


手を。


前へ。


「同じようにやってみる」


『無理はしない』


「うん」


目を。


閉じる。


昨日。


思い出す。


怖かった。


三人。


影が。


なかった。


人間じゃない。


神託。


切られた。


逃げられない。


木剣。


踏まれた。


女。


男。


近づく。


「…………」


来るな。


そう。


思う。


「来るな」


手。


前へ。


何も。


起きない。


「来るな!」


何も。


なし。


目を。


開ける。


普通の。


右手。


「……出ない」


セレナ。


『魔力反応なし』


「全く?」


『ええ』


ノア。


『外部魔力にも顕著な変化なし』


「もう一回」


思い出す。


もっと。


強く。


怖さ。


引っ張る。


「来るな!」


何も。


なし。


「…………」


三回。


四回。


何も。


起きない。


ガルド。


『一回休め』


「まだ」


『休め』


「…………はい」


地面に。


座る。


「怖さが足りない?」


誰も。


答えない。


「本気で怖くないと出ないとか?」


フィリア。


『それを確認するために』


声。


少し。


強い。


『本当に危険な状況を作るのは反対です』


「俺も嫌だよ」


ガルド。


『当然だ』


「じゃあどうする?」


沈黙。


しばらく。


誰も。


答えなかった。


そして。



【戦神ガルド】


『俺がやる』



「何を?」


『怖がらせる』


「…………」


「嫌な予感しかしない」



◇ ◇ ◇



十分後。


俺は。


木剣を。


持っていた。


「使うなって言われたんだけど」


【鍛冶神ヴォルグ】


『構えるだけだ』


「ならいいの?」


『打つな』


「はい」


ガルド。


『想像だけじゃ足りねえ可能性がある』


「うん」


『人間は』


『頭で分かってても』


『身体が危険だと思わなきゃ反応しねえことがある』


「なるほど」


『だから』


少し。


間。


『俺が合図する』


「何の?」


『後ろから攻撃が来ると思え』


「思えって」


『俺が』


『三』


『二』


『一』


『って数える』


「それ余計怖くなくない?」


『うるせえ!』


「だって来るって分かってるし」


『まずやってみろ!』


「はい」


構える。


目。


閉じない。


後ろ。


何も。


いない。


分かっている。


でも。


ガルド。


声。



『三』



少し。


緊張。



『二』



肩。


固くなる。



『一』



振り返る。



何も。



ない。



「…………」



『…………』



「何もないけど」


『知ってる!』


「俺も知ってる!」


『怖がれよ!』


「無茶言うな!」


セレナ。


『ガルド、下手』


『何だと!?』


メルク。


『演技力がない』


『関係あるか!?』


ノア。


『事前に危険が存在しないと説明したため、恐怖反応の誘発には不向きかと』


『先に言え!!』


俺は。


笑った。


駄目だ。


全然。


怖くない。


「もうちょっと」


考える。


「実際に何か飛んでくるとか」


フィリア。


『危険です』


「柔らかいもの」


メルク。


『布袋ならどうだ』


「布袋?」


『中身を軽い綿にする』


ヴォルグ。


『当たっても怪我はしにくい』


ガルド。


『よし!』


フィリア。


『顔には当てないでください』


「誰が投げるの?」


沈黙。


「神様、物投げられないよな?」


『…………』


「誰もいないし」


『…………』


「詰んだ?」


ノア。


『代替案があります』


「何?」


『レン自身が投げ』


『落下地点へ移動する』


「自作自演すぎるだろ!」


結局。


布袋案は。


なくなった。



◇ ◇ ◇



「条件」


俺は。


考える。


昨日。


何が。


違った。


怖かった。


追われた。


囲まれた。


逃げられなかった。


そして。


何より。


「来るなって」


「本気で思った」


セレナ。


『ええ』


「火を出したいより」


「近づいてほしくなかった」


『…………』


「攻撃したい」


じゃない。


止めたい。


近づくな。


それが。


先。


「じゃあ」


俺は。


少し。


離れた場所に。


木剣を。


置く。


「これ」


ヴォルグ。


『何をする』


「借りる」


『何に』


「守りたいもの」


沈黙。


『……続けろ』


木剣。


あれは。


ただの。


道具。


でも。


この世界で。


最初から。


持っているものの。


一つ。


ガルドに。


構えを。


教わった。


ヴォルグに。


見方を。


教わった。


昨日。


ひびが。


入った。


「壊されたくない」


本当に。


そう思う。


「これに」


一歩。


離れる。


「何かが近づいてくる」


想像。


する。


昨日の。


女。


木剣を。


踏んだ。


持った。


ひびが。


広がった。


嫌だった。


「触るな」


右手。


前へ。


「それ」


俺のだ。


「触るな」


何も。


起きない。


「…………」


もう少し。


思い出す。


女の。


手。


木剣。


ピシッ。


音。


「やめろ」


胸。


少し。


ざわつく。


「触るな」


来るな。


やめろ。


壊すな。


「――触るな!」


瞬間。



空気が。



揺れた。



「……え?」



右手。



前。



何も。



見えない。



でも。



セレナ。



『待って』



声。



変わる。



「何?」


『今』


『何か――』



消えた。



「…………」



炎。



出ない。



「今の?」


セレナ。


『分からない』


「魔力?」


『違う』


「外の魔力?」


『それも違う』


ノア。


『極短時間』


『既知の魔力反応とは異なる変化を確認』


「昨日と同じ?」


『比較可能な記録が不足しています』


「もう一回」


フィリア。


『レンさん』


「大丈夫」


『…………』


「あと一回」


少し。


間。


『一回だけです』


「ありがとう」


木剣。


見る。


触るな。


壊すな。


来るな。


昨日。


あの三人。


俺に。


何かしようとした。


確認。


そう言った。


何を。


確認したかった?


「…………」


男。


近づく。


手。


伸びる。


嫌だ。


来るな。


「来るな」


昨日の。


恐怖。


少し。


戻る。


「来るな」


手。


前へ。


「俺に」


一瞬。


言葉。


止まる。


俺に。


何を。


されたくなかった?


触られる?


捕まる?


連れていかれる?


違う。


分からない。


でも。


一つ。


強かった。


「勝手に」


胸。


ざらつく。


神様も。


名前のない奴も。


三人も。


俺のことを。


知っている。


俺だけ。


知らない。


無職。


分類不能。


名前。


火。


何も。


分からない。


「勝手に」


決めるな。


俺が。


何なのか。


「俺を」


右手。


前。


「勝手に決めるな!」


その瞬間。



――ボッ。



「っ!?」



炎。



出た。



赤。



橙。



白。



昨日と。



同じ。



一瞬で。



俺の前へ。



広がる。



「出た!」



セレナ。



『動かないで!!』



「分かってる!」



熱。



ある。



でも。



足元。



草。



燃えない。



木剣。



炎の。



すぐ近く。



焦げない。



煙。



ない。



「これだ」



心臓。



速い。



怖い。



でも。



昨日とは。



違う。



今日は。



見られる。



「ノア!」


『記録中です』


「セレナ!」


『見てる!』


「魔力!」


沈黙。



一秒。



二秒。



『動いてない』



「俺の?」


『動いてない!』


「減ってる?」


『待って!』


炎。



揺れる。



俺の。



目の前。



熱い。



でも。



何も。



燃やさない。



「外の魔力は?」


『反応なし!』


「術式!」


『ない!』


「じゃあこれ何!?」


『分からない!!』


セレナが。



叫ぶ。



『だから今見てるの!!』



「ごめん!」



炎。



少し。



大きくなる。



「うわ」



『レン!』



ガルド。



『落ち着け!』



「どうやって消す!?」



セレナ。



『普通の魔法なら供給を止める!』



「供給してないんだろ!?」



『そうなのよ!!』



「じゃあどうすんだよ!」



誰も。



分からない。



まずい。



怖い。



でも。



昨日。



勝手に。



消えた。



何が。



違った。



三人。



離れた。



危険。



なくなった。



来るな。



そう思う必要が。



なくなった。



「…………」



じゃあ。



今。



木剣。



見る。



誰も。



触っていない。



壊そうとも。



していない。



俺も。



今。



危険じゃない。



「もういい」



炎へ。



言う。



「大丈夫」



自分に。



言う。



「もう」



「来なくていい」



炎。



揺れる。



一瞬。



強く。



そして。



消えた。



「…………」



静か。



煙。



なし。



焦げ跡。



なし。



木剣。



無事。



俺。



立っている。



「消えた……」



セレナ。



返事。



なし。



「セレナ?」



『待って』



「何?」



『確認する』



身体。



魔力。



意識。



セレナ。



ノア。



フィリア。



次々。



確認する。



「どう?」



沈黙。



長い。



そして。



セレナ。



『魔力量』



「うん」



『変化なし』



「…………」



『発動前と』



『発動後』



『同じ』



「一切?」



『測定可能な範囲では』



ノア。



『同意します』



「外の魔力は?」



『顕著な消費なし』



「術式」



『確認できない』



「草」



ヴォルグ。



『焦げなし』



「木剣」



『変化なし』



フィリア。



『レンさんの身体にも、現時点で大きな異常はありません』



「…………」



全部。



昨日と。



同じ。



でも。



一つ。



違う。



今日は。



偶然じゃない。



俺が。



出そうとして。



出た。



「再現」



呟く。



「できた」



誰も。



否定しなかった。



◇ ◇ ◇



地面に。


座る。


足。


少し。


震えていた。


「怖……」


今になって。


来た。


ガルド。


『よく見た』


「褒めるとこ?」


『怖がりながら観察できた』


「…………」


最初。


教わった。


怖くても。


見ろ。


今日。


少しだけ。


できた。


「セレナ」


『何』


「魔法じゃない?」


長い。


沈黙。


『少なくとも』


慎重に。


言葉を。


選んでいる。


『私が知っている魔法の条件には』


『当てはまらない』


「じゃあ」


『だから』


遮られる。


『“魔法ではない”と断定するのも、まだ早い』


「…………」


『私が知らないだけかもしれない』


魔法神が。


それを。


言う。


「悔しくない?」


『めちゃくちゃ悔しい』


即答。


「そこは神様なんだ」


『どういう意味よ!』


「いや」


少し。


笑う。


でも。


疑問。


残る。


「何で」


手を見る。


「俺」


「こんなの出せるんだ」


誰も。


答えない。


当然。


ノア。


『現時点で確定している情報を整理します』


「お願い」


『第一』


『通常火魔法とは発動過程が異なる』


「うん」


『第二』


『レン本人の魔力消費を確認できない』


「うん」


『第三』


『外界魔力の顕著な消費も確認できない』


「うん」


『第四』


『既知の術式構造を確認できない』


「うん」


『第五』


『視覚上は炎に類似』


『熱も存在する』


『しかし、接触した植物および木材に燃焼反応を起こしていない』


「うん」


『第六』


少し。


間。


『レンの強い拒絶意思と、発現に相関がある可能性』


「拒絶」


『“来るな”』


『“触るな”』


『“勝手に決めるな”』


「…………」


確かに。


全部。


嫌だ。


やめろ。


そういう。


気持ち。


「怒り?」


『怒りだけとは限りません』


「恐怖?」


『それだけとも限りません』


「じゃあ」


ノア。


『現時点では』


『“拒絶”が最も近い表現です』


拒絶。


何かを。


拒む。


「火なのに?」


セレナ。


『だから変なのよ』


「ですよね」



◇ ◇ ◇



「もう一回」


俺が。


言った瞬間。


七柱。


ほぼ。


同時。



『駄目だ』



『駄目』



『反対だ』



『やめろ』



『駄目です』



『非推奨です』



最後。


エリオス。



『今日は終わりだ』



「綺麗に揃ったな!」


初めてじゃないか。


七柱。


全員。


同じ意見。


「一回だけ」


『駄目!』


セレナ。


「魔力減ってないよ?」


『だから怖いの!』


「…………」


言われて。


止まる。


普通なら。


使えば。


減る。


限界が。


分かる。


でも。


これは。


減らない。


「使い放題?」


【商神メルク】


『その考え方は捨てろ』


「即答」


『代価が見えていないだけかもしれん』


「……代価」


『金が減らないから無料とは限らん』


メルク。


『後から請求されるものもある』


「商神の例え怖いな」


フィリア。


『身体への影響が、すぐに現れない可能性もあります』


ノア。


『累積による変化も否定できません』


ヴォルグ。


『壊れるまで使える道具を』


『壊れない道具とは言わん』


「…………」


強い。


全員。


言ってること。


違うのに。


結論。


同じ。


「分かった」


今日は。


やめる。


自分で。


決める。


試したい。


でも。


止める。


それも。


選択。


木剣を。


拾う。


ひび。


まだ。


ある。


「帰ったら直せる?」


ヴォルグ。


『鍛冶場へ持ってこい』


「お」


『直せるとは言っていない』


「そこは厳しい」


『見てから決める』


「はい」


歩き出す。


少し。


気持ちが。


軽い。


謎は。


解けていない。


でも。


昨日より。


知っている。


あれは。


偶然じゃない。


少なくとも。


俺の意思と。


何か。


関係がある。


それだけでも。


大きい。



◇ ◇ ◇



帰り道。


俺は。


ふと。


聞いた。


「エリオス」


『何だ』


「さっきの」


「見たことある?」


沈黙。


「似たものでもいい」


『…………』


長い。


俺は。


歩きながら。


待つ。


昨日までなら。


その間だけで。


疑っていた。


今も。


少し。


疑う。


でも。


待つ。


『ない』


エリオス。


「本当に?」


『少なくとも』


少し。


言葉を。


選ぶ。


『俺が管理している現在の記録の中に』


『同じ現象はない』


「…………」


現在の。


記録。


引っかかった。


「現在の?」


エリオス。


止まる。


「昔は?」


沈黙。


また。


長い。


ガルドも。


セレナも。


誰も。


割り込まない。


「エリオス」


『古い記録には』


声。


低い。


『俺たち七柱でも』


『自由に確認できない領域がある』


「…………」


初めて。


聞いた。


「神様なのに?」


『神だから』


少し。


間。


『何でも見られるわけではない』


ノアの。


言葉。


思い出す。



神であることと。



すべてを知ることは。



同義ではない。



「それ」


「俺と関係ある?」


『分からない』


「…………」


今日は。


その答えを。


前より。


受け入れられた。


「じゃあ」


「分かったら教えて」


『ああ』


「隠さないで」


少し。


間。



『約束する』



その言葉。



信じたい。



そう。



思った。



◇ ◇ ◇



街が。


見えてくる。


門。


人。


荷車。


いつもの。


景色。


「今日」


振り返る。


遠く。


西。


森。


「あそこ行かなくてよかったな」


【戦神ガルド】


『当たり前だ』


「名前のない奴は」


今日は。


来ていない。


俺が。


あの火を。


再現しても。


何も。


言ってこなかった。


見ていたのか。


見ていないのか。


それも。


分からない。


「…………」


でも。


今日は。


一つ。


自分で。


答えを。


得た。


あの火は。


俺の意思で。


もう一度。


出た。


なら。


少なくとも。


完全に。


誰かが勝手に。


出したものでは。


ない。


そう。


思いたい。


その時。



――ピコン。



「…………」


噂をすれば。


名前。


なし。



【――――】



「見てた?」


返事。



【見ていた】



「やっぱり」


「再現できたぞ」


【ああ】



「じゃあ教えろ」


「これ何なんだ」


少し。


間。



【まだ分からない?】



「分からないから聞いてる」


【火ではない】



「それは何となく分かった」


【魔法でもない】



「セレナは断定してないけどな」


返事。


少し。


遅い。



【慎重だな】


【魔法神は】



「お前より信用できる」


沈黙。


ちょっと。


言いすぎた?


いや。


いい。


【そうか】



怒っては。


いない。


らしい。


「じゃあ何」


「答えろ」


長い。


沈黙。


そして。



【お前は】



【何を望んだ】



「望んだ?」


昨日。


三人。


来るな。


今日。


木剣。


触るな。


最後。



勝手に。



俺を。



決めるな。



「拒んだ」


【そう】



「それが何」


【炎を望んだか?】



「…………」



止まる。



炎。



出ろ。



昨日。



一瞬。



そう思った。



でも。



最後に。



強く。



思っていたのは。



来るな。



触るな。



勝手に決めるな。



「……違う」



【そう】



「じゃあ」



喉。



乾く。



「何をした」



文字。



ゆっくり。



浮かぶ。



【お前は】



【燃やしたんじゃない】



「…………」



【“燃えない”を】



一度。



表示が。



揺れる。



【壊したんだ】



「……は?」



意味。



分からない。



「燃えないを壊す?」



【そう】



「何だよそれ」



返事。



なし。



「待て」



【――――】



「それが俺の力?」



表示。



薄くなる。



「おい!」



最後。



一つ。



【自分で確かめろ】



消えた。



「…………」



また。



それ。



俺は。



右手を見る。



炎を。



出した。



そう。



思っていた。



でも。



あいつは。



違うと言う。



燃やしたんじゃない。



“燃えない”を。



壊した。



意味は。



分からない。



証拠も。



ない。



信じる理由も。



まだ。



ない。



だから。



答えには。



しない。



ただ。



覚えておく。



俺が。



あの時。



何を望んだのか。



何を。



拒んだのか。



そして。



何が。



起きたのか。



誰かの言葉を。



そのまま。



信じるんじゃない。



神様の言葉も。



名前のない何かの言葉も。



自分の目で。



確かめる。



俺は。



まだ。



自分が何者なのか。



知らない。



でも。



知らないなら。



知ればいい。



一つずつ。



自分で。

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