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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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18/71

神託ログ18 火のないところに、魔法神は立たぬ

街へ戻ってから。


俺は。


何度も。


自分の右手を見ていた。


握る。


開く。


握る。


開く。


当然。


何も起きない。


「…………」


昨日までと。


同じ手。


傷もない。


火傷もない。


特別な印が。


浮かんでいるわけでもない。


なのに。


あの森で。


この手の先に。


確かに。


炎があった。


赤く。


熱く。


大きく。


燃えていた。


なのに。


草は。


燃えなかった。


木にも。


燃え移らなかった。


そして。


魔法神が。


言った。



『私の知っている火魔法と、違う』



「…………」


さらに。


名前のない神託。



【その火】


【本当に】


【お前が出したと】


【思ってる?】



「意味分かんねえよ……」


独り言。


返事は。


なかった。


名前のない神託からも。


七柱からも。


今は。


何も来ない。


それが。


逆に。


落ち着かなかった。


「セレナ」


呼ぶ。


数秒。


【魔法神セレナ】


『何?』


「起きてる?」


『神にその質問する?』


「じゃあ何て聞けばいいんだよ」


『普通に呼べばいいでしょ』


「呼んだ」


『だから来たわ』


いつもの。


セレナ。


少しだけ。


安心する。


「昨日の火」


一瞬。


間。


『ええ』


「調べた?」


『調べた』


「分かった?」


『分からない』


即答。


「…………」


『何よ』


「いや」


「ちょっとくらい進展あるかと思った」


『あるわよ』


「あるの!?」


『分からないことが増えた』


「最悪の進展!」


『仕方ないでしょ!』


セレナの声に。


いつもの勢いが。


戻る。


でも。


すぐ。


少しだけ。


低くなった。


『だから』


「うん」


『今日は、最初からやる』


「最初?」


『火魔法』


「…………」


『あなたが昨日出したものが何なのか』


『その前に』


セレナ。


『普通の火魔法が何なのか』


『ちゃんと覚えて』


「比較する?」


『そう』


『分からないものを調べるなら』


『まず』


一拍。


『分かるものを増やす』


「……ノアみたいなこと言うな」


【知識神ノア】


『合理的です』


「いたの!?」


『質問されていませんでしたので』


「その登場方法やめろ!」


セレナ。


『ノア』


『何でしょう』


『今日は黙ってて』


『了解しました』


「素直!」


少し。


笑った。


怖いものは。


消えていない。


でも。


今。


やることは。


決まった。



普通の魔法を。



知る。



◇ ◇ ◇



街の外。


ただし。


西ではない。


門から。


少し離れた。


開けた場所。


周囲に。


燃えやすいものが。


少ない。


「ここなら?」


【魔法神セレナ】


『いいわ』


「何か緊張するな」


『昨日あれだけの火を出した人が?』


「だからだよ」


『安心しなさい』


「何を根拠に」


『今日は私がいる』


「昨日もいたけど途中で切られた」


『…………』


「ごめん」


『……いい』


言ってから。


少し。


後悔した。


セレナが。


悪いわけじゃない。


あの時。


七柱全員との接続が。


切られた。


「セレナ」


『何?』


「昨日」


少し。


言葉を探す。


「怖かった?」


返事。


来ない。


「いや、俺はめちゃくちゃ怖かったんだけど」


『…………』


「神様も、そういうのあるのかなって」


少し。


長い。


沈黙。


『あるわよ』


「あるんだ」


『神を何だと思ってるの』


「何でも知ってて、何でもできる」


『まだそんなこと言う?』


「もう思ってない」


『ならいい』


セレナ。


少し。


間を置く。


『昨日』


『あなたとの接続が切れた時』


『私は何もできなかった』


「…………」


『どこにいるかは分かる』


『でも』


『何が起きているか』


『何をされているか』


『分からない』


『呼んでも届かない』


「うん」


『怖かったわよ』


声。


少しだけ。


小さい。


「そっか」


『だから今日は』


急に。


いつもの声へ。


『完璧に覚えてもらうから!』


「切り替え早!」


『魔力3でも分かるように!』


「絶対それ言うよな!」


『事実でしょ!』


「いつか100くらいにして黙らせるからな!」


『楽しみにしてるわ』


たぶん。


笑っている。


「じゃあ」


俺は。


息を吐く。


「お願いします」


『ええ』


セレナ。


『火魔法を教えるわ』



◇ ◇ ◇



『まず』


セレナ。


『魔法は、願えば出るものじゃない』


「昨日めちゃくちゃ願ったけど」


『だから昨日の話は一旦忘れて!』


「はい」


『普通の魔法には』


少し。


間。


『大きく四つの段階がある』


「四つ」


『一』


『自分の魔力を認識する』


「やった」


『二』


『魔力を動かす』


「指先まで?」


『そう』


『三』


『魔力に形を与える』


「形?」


『火なら火』


『水なら水』


『風なら風』


「魔力を変えるってこと?」


『厳密には少し違うけど、今はそれでいい』


「初心者向け説明?」


『そう』


「ヴォルグに聞かせたい」


【鍛冶神ヴォルグ】


『聞こえている』


「いた!」


『何だ』


「いや」


「初心者がどこで分からないか分かる神様ってすごいなって」


沈黙。


『……黙れ』


セレナ。


『四』


「はい」


『形にした魔力を、現象として外へ出す』


「それで火が出る?」


『そう』


「一、認識」


『ええ』


「二、動かす」


『ええ』


「三、形を与える」


『ええ』


「四、外へ出す」


『正解』


「昨日は?」


沈黙。


『だから』


セレナ。


『それを調べるために』


『今から普通をやるの』


「了解」


俺は。


右手を。


前へ出す。


「じゃあ」


『待って』


「何?」


『いきなり火を出そうとしない』


「え」


『まず一』


「魔力を認識する」


目を。


閉じる。


身体の中。


探す。


最初は。


全然。


分からなかった。


でも。


今は。


少し。


分かる。


胸の奥。


腹。


血とは。


違う。


熱とも。


違う。


何か。


「……ある」


『それ』


「少なっ」


『魔力3だから』


「自分で言ったのに腹立つ!」


『集中!』


「はい」


魔力。


意識する。


『二』


「動かす」


腕。


肩。


肘。


手首。


指。


流す。


……流す。


「…………」


難しい。


身体の中にあるものを。


動かす。


筋肉を。


動かすのとは。


違う。


「これ」


『何?』


「蛇口がめちゃくちゃ固い感じ」


『分かりにくいわね』


「俺には分かりやすい」


『ならそれでいい』


少しずつ。


魔力。


右腕へ。


指先。


「来た」


『止めて』


「出さない?」


『まだ』


指先に。


小さな。


熱。


いや。


熱じゃない。


魔力。


『三』


セレナ。


『火を想像して』


「昨日の?」


『違う!』


強い。


『昨日の火は忘れて』


「じゃあ」


火。


何を。


想像する。


焚き火。


蝋燭。


コンロ。


……コンロ?


この世界に。


ない。


「小さい火」


『そう』


『最初から大きな炎を作ろうとしない』


「小さく」


火。


揺れる。


小さな。


炎。


頭の中。


『魔力を、その形へ寄せる』


「…………」


難しい。


「これ合ってる?」


『聞かない』


「うっ」


『自分で感じて』


昨日までなら。


すぐ。


答えを。


聞いていた。


「…………」


指先。


魔力。


少し。


変わる。


気がする。


「これ?」


『続けて』


「はい」


『四』


セレナ。


『外へ』


「どうやって?」


『言葉を使う』


「詠唱?」


『そんな大げさなものじゃない』


「じゃあ?」


『初心者なら、現象と意思を結びつけるための補助』


「言葉が?」


『そう』


「何て?」


セレナ。


少し。


嬉しそう。



『――灯れ』



「…………」


何か。


格好いい。


「それだけ?」


『それだけ』


「もっとこう」


手を。


大きく。


広げる。


「紅蓮の業火よ、我が敵を――」


『いらない』


「即答」


『やりたければ止めないけど』


「恥ずかしいからやめる」


『賢明ね』


息を。


吸う。


指先。


魔力。


火。


小さく。


外へ。



「――灯れ」



何も。



起きない。



「…………」



『…………』



「セレナ」


『何』


「今、笑った?」


『笑ってない』


「絶対笑った」


『初回なんてそんなものよ』


「魔法神、ちょっと期待してただろ」


『してない』


「間があった」


『うるさい! もう一回!』



◇ ◇ ◇



二回目。


失敗。



三回目。


失敗。



四回目。


指先が。


ちょっと。


温かくなった。


「今!」


『魔力が散った』


「惜しい?」


『昨日よりは』


「昨日普通の魔法やってないけど!」


五回目。


失敗。


六回目。


何も。


なし。


七回目。


「…………」


『レン』


「何」


『休憩』


「まだいける」


『駄目』


「何で?」


『魔力が減ってる』


「え?」


自分では。


よく分からない。


『今のあなたは魔力が少ない』


「3」


『自分で言うようになったわね』


「慣れた」


『少ないからこそ』


セレナ。


『減った時の影響が大きい』


「どんな?」


『疲れる』


「普通」


『集中できなくなる』


「うん」


『ひどいと気分が悪くなる』


「それは嫌」


『だから休む』


地面へ。


座る。


水。


飲む。


「魔法って大変だな」


『慣れれば変わる』


「セレナは簡単にできる?」


『当然』


「何個くらい?」


『数える必要ある?』


「嫌味?」


『事実』


「神様ムカつく」


『魔力3に言われたくない』


「そこに戻すな!」


少し。


笑う。


でも。


一つ。


気づいた。


「なあ」


『何?』


「今」


自分の中。


確認する。


「魔力減ったんだよな」


『ええ』


「普通の魔法って」


「失敗しても減る?」


『程度によるけど』


『動かして』


『形にしようとした時点で』


『少しは消費する』


「成功したら?」


『当然、もっと減る』


「…………」


昨日。


あの火。


大きかった。


今日。


小さな火すら。


出せていない。


それでも。


魔力が。


減った。


「昨日の後」


聞く。


「俺の魔力、減ってた?」


沈黙。


『…………』


「セレナ?」


『それも』


少し。


声が。


低くなる。


『おかしいところ』


「減ってなかった?」


『少なくとも』


『あれだけの炎を出した後とは思えない状態だった』


「…………」


また。


一つ。


増えた。


普通との。


違い。


「やっぱり」


「魔法じゃない?」


『まだ決めない』


「うん」


『まず』


セレナ。


『普通の火を出しなさい』


「了解」



◇ ◇ ◇



休憩後。


八回目。


失敗。


九回目。


火。


出ない。


十回目。


指先に。


一瞬。


赤い光。


「今の!」


『近い!』


「初めて褒められた!」


『集中!』


十一回目。


赤い光。


消える。


十二回目。


何も。


なし。


「下手になった!」


『力みすぎ!』


「力むだろ!」


『火を殴って出す気!?』


「気合い!」


『魔法に気合いで勝とうとしない!』


「戦神なら褒めてくれる!」


【戦神ガルド】


『気合いは大事だ!』


「ほら!」


【魔法神セレナ】


『ガルド黙って!!』


『何でだ!?』


「先生同士が喧嘩すんな!」


集中。


一。


魔力。


ある。


二。


動かす。


指先。


三。


火。


小さい。


欲張らない。


昨日の。


大きな炎。


思い出さない。


あれを。


出そうとしない。


ただ。


小さな。


火。


四。


外へ。


息。


吐く。



「――灯れ」



ぽっ。



「…………」



指先の。


少し先。



小さな。



本当に。



小さな。



炎。



「…………」



「出た」



『出たわね』



「出た!!」



思わず。


立ち上がる。



「出た! セレナ! 出た!」



『見れば分かる!』



「魔法!」



『そうよ!』



「俺、魔法使った!」



『そう!』



「魔力3でも!」



『自分で言った!』



小さい。



蝋燭より。



少し。



大きいくらい。



でも。



火。



俺が。



出した。



ちゃんと。



手順を踏んで。



魔力を。



使って。



出した。



「すげえ……」



異世界。



来た。



無職。



借金。



走らされた。



働いた。



神様七人に。



振り回された。



変な奴らに。



襲われた。



でも。



今。



初めて。



ちゃんと。



思った。



「異世界っぽい……!」



【魔法神セレナ】


『感想それ!?』



「だって魔法だぞ!」



『ここまで来るの長かったわね……』



「お前が泣くなよ!」



火。



揺れる。



小さい。



綺麗。



その時。



「熱っ」



指。



引く。



炎。



消える。



「消えた」


『集中が切れたから』


「もう一回!」


『休憩』


「ええ!?」


『魔力』


「……はい」


座る。


でも。


顔が。


緩む。


「俺、魔法使えた」


『一回だけね』


「一回は一回」


『そうね』


セレナ。


少し。


優しい声。


『よくできました』


「…………」


「もう一回言って」


『嫌』


「何で!」


『調子に乗るから』


「もう乗ってる!」


『でしょうね』



◇ ◇ ◇



少し。


休んで。


今度は。


実験。


地面に。


小さな。


乾いた枝。


一本。


置く。


「燃やす?」


『ええ』


「さっきの火で?」


『普通の火なら』


セレナ。


『燃える』


「昨日のは燃えなかった」


『そう』


息。


整える。


魔力。


認識。


動かす。


火。


形。


外。



「――灯れ」



ぽっ。



さっきより。


少し。


小さい。


でも。


出た。


「二回目」


『集中』


炎を。


枝へ。


近づける。


最初。


変化。


なし。


少し。


待つ。


枝の。


表面。


黒くなる。


煙。


細く。


上がる。


「お」


そして。



火が。



移った。



「燃えた」


『ええ』


枝。


ぱち。


小さな。


音。


焦げる。


煙。


匂い。


普通の。


火。


「…………」


昨日と。


違う。


はっきり。


違う。


昨日の炎は。


草の上を。


走った。


でも。


草は。


焦げなかった。


木にも。


燃え移らなかった。


煙も。


残らなかった。


今日の火は。


小さい。


弱い。


でも。


枝を。


燃やしている。


「これが」


『火魔法』


セレナ。


「普通の?」


『少なくとも』


『私たちが知っている』


『この世界の火魔法』


「…………」


枝の火を。


消す。


水。


少し。


かける。


ジュッ。


音。


煙。


「昨日のは」


『分からない』


「魔力の動きもなかった」


『ええ』


「魔力も減ってなかった」


『ええ』


「燃えるものも燃えなかった」


『ええ』


「でも熱かった」


『ええ』


「炎に見えた」


『ええ』


「…………」


「全然違うな」


『そうね』


ようやく。


実感した。


昨日。


俺が。


出したもの。


あれを。


魔法と。


呼んでいいのか。


分からない。



◇ ◇ ◇



「もう一個」


俺は。


聞く。


「昨日の火」


『ええ』


「俺が出したんじゃない可能性」


名前のない神託。



【その火】


【本当に、お前が出したと思ってる?】



「ある?」


セレナ。


すぐには。


答えなかった。


『ある』


「…………」


『でも』


「うん」


『あなたが出した可能性もある』


「どっちだよ」


『だから分からないのよ』


少し。


苛立った声。


でも。


俺に。


ではない。


自分に。


だと思う。


『外部から何かが発動した』


『あなたを媒介にした』


『あなた自身の未知の能力』


『私たちが知らない魔法体系』


『そもそも魔法ではない』


「多いな」


『もっとあるわ』


「もういい」


頭。


痛くなる。


「でも」


一つ。


分かった。


「名前のない奴の言葉」


『ええ』


「正しいとは限らない」


セレナ。


少し。


間。



『そうよ』



「俺が出したと思ってる?」


あれは。


質問。


でも。


質問って。


人を。


誘導できる。


俺が。


出していない。


そう。


思わせることも。


できる。


「こいつ」


少し。


腹が立った。


「答え言ってないんだよな」


『ええ』


「ずっと」


西へ。


七柱には言うな。


あれは人間じゃない。


その火、本当にお前が出したと思ってる?


「知ってるみたいな言い方して」


「肝心なこと」


「全然教えてない」


『…………』


「性格悪くない?」


【商神メルク】


『ようやく気づいたか』


「いたの!?」


『聞いていた』


「みんな勝手に聞くな!」


【知識神ノア】


『神託共有領域の仕様上――』


「説明はいらない!」


ガルド。


『俺は最初から気に食わん!』


ヴォルグ。


『同意する』


フィリア。


『私は』


少し。


間。


『怖いです』


「フィリアが?」


『はい』


「何が?」


『レンさんに』


フィリア。


『答えではなく』


『疑いだけを渡していることが』


「…………」


その言葉。


胸に。


残った。


疑い。


七柱への。


自分への。


自分の力への。


確かに。


あいつは。


答えを。


くれていない。


「……じゃあ」


俺は。


立ち上がる。


「次に来たら聞く」


【戦神ガルド】


『何を』


「質問する側」


少し。


笑う。


「交代してもらう」


セレナ。


『いいじゃない』


「答えなかったら?」


メルク。


『信用する価値を下げろ』


「商神らしい」


ノア。


『回答拒否も情報です』


「知識神らしい」


ヴォルグ。


『分からんと言うならまだいい』


「鍛冶神らしい」


フィリア。


『無理はしないでください』


「フィリアらしい」


ガルド。


『気に食わなかったら殴れ!』


「戦神だけ雑!」


『何でだ!』


「殴れないだろ神託!」


久しぶりに。


笑った。


昨日から。


怖いことばかり。


だった。


でも。


今。


少し。


戻った気がした。


自分が。



◇ ◇ ◇



夕方。


街へ。


戻る前。


俺は。


もう一度。


火を。


出した。


一。


自分の魔力。


二。


動かす。


三。


形を与える。


四。


外へ。



「――灯れ」



ぽっ。



小さな。



炎。



「できた」


三回目。


偶然じゃない。


「セレナ」


『何?』


「ありがとう」


『…………』


「何その間」


『急に素直だから』


「失礼だな」


『でも』


セレナ。


『覚えておいて』


「何?」


『これが』


小さな。


火。



『あなたの今の魔法』



「今の」


『そう』


『弱い』


「おい」


『小さい』


「おい!」


『魔力も少ない』


「褒めろよ!」


『でも』


声。


少し。


柔らかくなる。


『あなたが』


『自分で魔力を動かして』


『自分で形を作って』


『自分で出した火よ』


「…………」


炎を見る。


小さい。


本当に。


小さい。


昨日の炎とは。


比べものに。


ならない。


でも。


「こっちの方が」


少し。


嬉しい。


「俺のって感じするな」


『なら』


セレナ。


『忘れないで』


「うん」


『分からないものを』


『自分の力だと決めつけない』


『でも』


『誰かに違うと言われただけで』


『自分の力じゃないとも決めつけない』


「…………」


『確かめるの』


『あなた自身が』


火。


消える。


今度は。


ちゃんと。


魔力が。


減った感覚が。


少しだけ。


分かった。


疲れ。


残る。


焦げた。


小枝。


残る。


全部。


証拠。


「普通って」


呟く。


「大事なんだな」


【知識神ノア】


『比較対象になります』


「今日はお前の授業じゃない」


『失礼しました』


「素直だな!」



◇ ◇ ◇



夜。


眠る前。


俺は。


今日のことを。


頭の中で。


繰り返していた。


普通の。


火魔法。


魔力を。


使う。


減る。


燃える。


焦げる。


煙が出る。


昨日の。


炎。


魔力の動き。


確認できず。


消費。


ほぼなし。


燃えない。


焦げない。


煙もない。


でも。


熱はある。


「…………」


違う。


少なくとも。


同じじゃない。


そこまでは。


分かった。


でも。


何なのかは。


まだ。


分からない。


「明日」


もう一度。


試す。


昨日と。


同じ条件。


いや。


同じは。


無理。


あの時。


俺は。


本気で。


怖かった。


三人に。


囲まれて。


逃げ道がなくて。


来るな。


そう。


思った。


「怖さ……?」


それが。


条件?


分からない。


決めつけない。


俺は。


横になる。


目を。


閉じる。



――ピコン。



「…………」


開ける。


来た。


名前のない。


神託。



【――――】



「ちょうどいい」


身体を。


起こす。


「今日は俺が聞く」


返事。


なし。


「お前は誰だ」


沈黙。


「何で俺の名前を知ってる」


沈黙。


「何で西へ呼んだ」


沈黙。


「昨日の三人は何だ」


沈黙。


「俺の火を知ってるのか」


そこで。


表示が。


変わった。



【知っている】



「じゃあ教えろ」


【まだ】



「何で」


【お前が】


文字。


続く。



【知らないから】



「だから聞いてるんだろ」


【違う】



少し。


間。



【お前は】



【自分を知らない】



「…………」


胸の奥。


ざらつく。


「知ったようなこと言うな」


【だから】



【確かめろ】



「何を」


【火を】



「今日やった」


【それではない】



「…………」


やっぱり。


知っている。


昨日の。


あの炎を。


「どうやって出す」


沈黙。


「答えろ」


【知らない】



「は?」


初めて。


だった。


こいつが。


知らない。


そう。


言ったのは。


「知らないのに、確かめろって?」


【ああ】



「ふざけんな」


【だから】



表示。



一度。



消える。



そして。



【お前自身が】



【確かめるしかない】



「…………」


腹が立つ。


でも。


少しだけ。


意外だった。


何でも。


知っているような。


言い方をしていた。


こいつも。


知らないことがある。


「最後」


聞く。


「昨日の火」


「魔法か?」


長い。


沈黙。



【違う】



「…………」



「じゃあ何だ」



返事。



来ない。



「おい」



【――――】



「逃げんな」



神託が。



薄くなる。



最後。



一つだけ。



表示された。



【それを知るのは】



【お前だ】



消えた。



「…………」



静かな。


夜。



俺は。



自分の。



右手を見る。



普通の魔法なら。



今日。



覚えた。



小さい。



火。



弱い。



魔力3の。



俺の火。



でも。



森で出た。



あれは。



違う。



少なくとも。



名前のない何かは。



そう言った。



信じるかは。



別だ。



「確かめる」



俺は。



手を。



握った。



誰かに。



お前の力だと。



言われたからでも。



違うと。



言われたからでもない。



自分で。



確かめる。



あの炎が。



何なのか。



俺自身が。

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