神託ログ14 神様に聞く前に、身体が動いた
翌朝。
俺は。
少しだけ迷っていた。
「……行くか」
昨日。
初めて街の外へ出た。
何か。
大事件があったわけじゃない。
魔物と戦ったわけでもない。
ただ。
街道を歩いた。
荷車を見た。
人と話した。
西の森について。
妙な話を聞いた。
獣が避ける。
鳥も寄りつかない。
そして。
最後に見た。
一枚の白い羽。
ただの羽。
そう言われれば。
それまで。
でも。
妙に。
頭に残っている。
「西……」
【戦神ガルド】
『行くなよ』
「うわ!」
思わず。
声が出た。
「急に来るなよ!」
『お前が今、西って言ったからだ』
「言っただけ」
『昨日言っただろ』
「分かってるよ」
今日は。
西の森へ行くつもりはない。
そもそも。
昨日の老人が。
何か危険を見たわけでもない。
獣が避けている。
鳥が寄りつかない。
それだけ。
分からないことを。
勝手に危険だと決めつけるのも違う。
だから。
今日は。
昨日と同じ。
街道の近く。
もう少し。
外の世界を見てみる。
「それならいい?」
『俺に聞くな』
「え?」
予想外。
『昨日、決める練習をするって言っただろ』
「…………」
そうだった。
『危ねえと思ったら止める』
『だが』
一拍。
『何でも俺たちに聞いてから動くな』
「……分かった」
ちょっと。
嬉しい。
「じゃあ行ってくる」
『おう!』
『待ってください』
フィリア。
「はい」
『朝食は?』
「食べた」
『水は?』
「持った」
『体調は?』
「いい」
『昨日の疲れは?』
「大丈夫」
『本当に?』
「お母さん?」
『レンさん』
「ごめんなさい」
ガルドが。
笑っている気がした。
◇ ◇ ◇
街の門。
昨日と。
同じ兵士。
俺を見るなり。
眉を上げた。
「また外か?」
「はい」
「気に入ったか?」
「ちょっと」
「珍しいな」
「何が?」
「普通、街の外なんて仕事がなきゃ出たがらん」
「危ないから?」
「それもある」
兵士は。
街道を見る。
「何もないからだ」
「何も?」
「店もない。飯もない。寝床もない。魔物はいる。盗賊もいる」
「……言われると行きたくなくなるな」
「今なら戻っていいぞ」
「行きます」
笑われた。
「西には行くなよ」
足が。
止まる。
「昨日の話、知ってるんですか?」
「ああ」
「何かあった?」
「いや」
兵士は。
首を振る。
「だから困ってる」
「?」
「何か出たなら討伐隊を出せる」
「何も出てない?」
「少なくとも報告はない」
でも。
動物が。
寄りつかない。
「猟師連中が気味悪がってるだけだ」
「…………」
「近づかなきゃ問題ない」
そう言って。
兵士は。
俺の肩を軽く叩いた。
「今日も夕方までには帰れ」
「はい」
門を。
出る。
昨日より。
少しだけ。
外の世界が。
近く感じた。
◇ ◇ ◇
歩きながら。
見る。
昨日。
ガルドに言われた。
景色じゃない。
危険を見ろ。
道。
足跡。
草。
人。
荷車。
そして。
ヴォルグに言われた。
違和感を無視するな。
メルクには。
物の流れ。
フィリアには。
傷だけじゃなく。
人を見ること。
ノアには。
知識と判断は違うと。
教わった。
「…………」
なんか。
忙しいな。
【知識神ノア】
『何がですか』
「見るものが増えた」
『良い傾向です』
「全部見ようとすると疲れるけど」
『すべてを見る必要はありません』
「え?」
『重要なものを選ぶことも観察です』
「……なるほど」
また。
覚えることが増えた。
「結局増えてんじゃん」
『何がですか』
「何でもない」
◇ ◇ ◇
昨日。
荷車が止まった場所を通る。
地面には。
まだ。
車輪の跡が残っていた。
応急処置をした。
あの荷車。
ちゃんと。
街まで戻れただろうか。
『戻っています』
ノア。
「分かるの?」
『門の通行記録に該当する荷車があります』
「そういうのも分かるんだ」
『記録されている情報であれば』
便利。
本当に。
便利。
でも。
全部ではない。
それも。
昨日。
教わった。
歩く。
しばらくして。
前から。
一台の荷車が来た。
「また荷車」
昨日のことが。
あったせいか。
つい。
見る。
車輪。
大丈夫そう。
軸。
遠くて。
分からない。
荷物。
樽。
木箱。
御者。
男が一人。
その横。
少年。
十歳くらい。
だろうか。
御者台に座っている。
親子?
すれ違う。
少年と。
目が合った。
笑う。
俺も。
軽く。
頭を下げる。
それだけ。
何でもない。
すれ違い。
だった。
◇ ◇ ◇
少し進んで。
俺は。
立ち止まった。
「…………」
何だ?
今。
何か。
変だった。
振り返る。
荷車。
遠ざかっていく。
「何だろ」
『どうした』
ガルド。
「分からない」
『なら見ろ』
見る。
車輪。
荷物。
御者。
少年。
「…………」
音?
荷車から。
一定の間隔で。
音がしている。
ガタン。
ガタン。
ガタン。
普通。
じゃない?
昨日。
荷車を見たから。
気にしすぎているだけ?
「ヴォルグ」
返事。
なし。
聞こうとして。
止めた。
何でも。
神様に聞くな。
昨日。
自分で言った。
見る。
右の車輪。
左。
「……あれ?」
右。
少し。
揺れている?
いや。
車輪じゃない。
「留め具?」
荷台と。
車輪を繋ぐ。
金属。
遠くて。
よく見えない。
でも。
何か。
変。
俺が。
そう思った瞬間。
――ガキン。
乾いた。
音。
荷車が。
傾いた。
「――っ!」
右の車輪。
外れた。
荷台が。
大きく。
跳ねる。
馬が。
驚いた。
前脚を。
上げる。
「うわっ!」
御者の声。
手綱が。
引かれる。
でも。
遅い。
馬が。
走り出した。
荷車が。
街道を。
暴走する。
「レン!」
ガルド。
声。
でも。
俺は。
もう。
走っていた。
◇ ◇ ◇
「止まれ!」
叫ぶ。
当然。
馬は。
止まらない。
外れた車輪。
荷車。
右側が。
地面を削る。
火花。
御者が。
必死に。
手綱を引く。
少年。
荷台へ。
投げ出されている。
「父ちゃん!」
「掴まれ!」
荷車が。
蛇行する。
街道の先。
曲がり道。
その外側。
斜面。
まずい。
落ちる。
【戦神ガルド】
『レン! 正面から行くな!』
聞こえる。
でも。
どうする。
【魔法神セレナ】
『魔法は使うな! 今のあなたじゃ制御できない!』
分かってる。
【知識神ノア】
『現在速度では、約――』
「数字はいい!」
走る。
昨日まで。
何度も。
走らされた。
ガルドに。
死ぬほど。
走らされた。
「今かよ……!」
意味あったじゃん。
追いつけない。
でも。
荷車も。
片輪。
速度が。
落ちている。
少年が。
荷台から。
滑る。
「危ない!」
少年の身体が。
外へ。
投げ出された。
「――っ!」
考えるより。
先に。
身体が。
動いた。
◇ ◇ ◇
走る。
街道を。
斜めに。
少年の。
落ちる先へ。
【戦神ガルド】
『レン!』
地面を。
蹴る。
手を。
伸ばす。
届かない。
もう一歩。
「くっ……!」
跳ぶ。
少年の腕。
掴んだ。
「うわっ!」
そのまま。
二人。
地面へ。
転がる。
肩。
衝撃。
「っ……!」
痛い。
でも。
離さない。
少年の身体を。
抱える。
一回。
二回。
地面を。
転がる。
止まる。
「……っ」
息。
できる。
身体。
動く。
少年。
「大丈夫!?」
返事。
ない。
「おい!」
顔を見る。
目。
開いている。
泣いている。
「……こわ……」
「え?」
「怖かった……」
その一言。
昨日。
フィリアに。
教わったことが。
頭に浮かんだ。
傷だけを。
見るな。
その人を。
見ろ。
俺は。
少年の身体を見る。
血。
少し。
腕。
擦り傷。
大きな出血は。
ない。
意識も。
ある。
でも。
震えている。
「……怖かったな」
そう言って。
背中に。
手を置いた。
少年が。
俺の服を。
掴む。
「父ちゃん……」
「大丈夫」
言ってから。
止まる。
大丈夫?
分からない。
荷車。
「待ってて」
顔を上げる。
少し先。
暴走した荷車。
横倒し。
馬。
立っている。
御者。
地面。
「父ちゃん!」
少年が。
立とうとする。
「待って!」
『レンさん』
フィリア。
『その子を急に動かさないでください』
「分かった」
『意識はあります』
『大きな生命反応の乱れもありません』
「じゃあ」
言いかけて。
止める。
昨日。
教わった。
助けることと。
治すことは。
同じじゃない。
「ここで待てる?」
少年が。
首を振る。
服を。
離さない。
「……一緒に行くか」
『ゆっくり』
フィリア。
「うん」
肩。
痛い。
でも。
動く。
少年の手を。
握る。
二人で。
荷車へ。
◇ ◇ ◇
「父ちゃん!」
御者。
生きている。
「いてて……」
身体を。
起こす。
「父ちゃん!」
少年が。
駆け寄る。
「お前! 大丈夫か!」
「うん!」
抱き合う。
俺は。
少し離れて。
息を吐いた。
「よかった……」
力が。
抜ける。
その瞬間。
肩。
ズキッ。
「いっ……!」
『レンさん』
フィリア。
「大丈夫」
『大丈夫かどうかは私が確認します』
「強い」
『右肩を打っています』
「やっぱり?」
『大きな損傷は感じません。ただし、無理に動かさないでください』
「了解」
御者が。
こちらを見る。
「兄ちゃん」
「はい?」
「お前が……?」
「いや」
何て。
言えばいい。
「落ちたところに、たまたま」
「たまたまであんな走り方するか」
「…………」
御者が。
頭を下げた。
深く。
「ありがとう」
「…………」
何だろう。
その一言が。
妙に。
重かった。
昨日。
メルクに。
言われた。
金は。
感謝が。
形になったものでもある。
でも。
今。
金なんて。
どうでもよかった。
「無事でよかったです」
それだけ。
本当に。
そう思った。
◇ ◇ ◇
しばらくして。
近くを通った旅人たちも。
集まってきた。
馬を。
落ち着かせる。
荷車を。
街道の端へ。
寄せる。
御者の怪我も。
軽い。
少年も。
擦り傷だけ。
俺の肩も。
痛いけど。
動く。
大事故に。
ならなかった。
「原因は?」
旅人の一人が。
外れた車輪を見る。
御者も。
しゃがみ込む。
「留め具が……」
俺も。
見る。
金属の部品。
割れている。
「これが折れた?」
『そうだ』
ヴォルグ。
ずっと。
黙っていた。
「ヴォルグ?」
『見ろ』
「うん」
金属。
切れた部分。
妙に。
綺麗。
「……?」
壊れた。
金属って。
こんな感じ?
俺には。
分からない。
『通常の摩耗だけでは』
ヴォルグが。
止まる。
「何?」
『いや』
「いや、じゃなくて」
『断定できん』
昨日。
言われた。
分からんものを。
分かったふりするな。
ヴォルグ自身も。
それを。
守っている。
「変なの?」
『……少しな』
「何が?」
『破断面が綺麗すぎる』
「誰かが切ったみたいってこと?」
『そうは言っていない』
「…………」
『劣化の可能性もある』
『製造時の不良も』
『外部から力が加わった可能性もある』
『今は決めるな』
「分かった」
御者へ。
聞く。
「この荷車、昨日まで問題なかった?」
「ああ」
「音とか」
「特には」
昨日の。
別の御者。
あの人は。
異音を。
無視していた。
今回は。
違う。
「整備は?」
「出る前に見てる」
御者が。
少し。
怒ったように言う。
「息子を乗せるんだぞ」
「……すみません」
なら。
何で。
壊れた?
偶然。
もちろん。
あり得る。
道具は。
壊れる。
「…………」
西から。
風が。
吹いた。
◇ ◇ ◇
「兄ちゃん」
少年が。
俺のところへ。
来た。
「何?」
「これ」
小さな。
木の実。
手のひらに。
乗せている。
「くれるの?」
「うん」
「何で?」
「助けてくれたから」
「…………」
受け取る。
小さい。
赤い。
木の実。
「ありがとう」
少年が。
笑う。
さっきまで。
泣いていた顔。
それが。
笑っている。
何か。
胸の奥が。
少しだけ。
温かくなった。
【生命神フィリア】
『よかったですね』
「うん」
『レンさん』
「何?」
少し。
間。
『先ほど』
『私に聞きませんでしたね』
「……何を?」
『助けるかどうか』
「…………」
そういえば。
聞いていない。
荷車。
少年。
落ちる。
見た瞬間。
走った。
「聞く暇なかった」
『はい』
「悪かった?」
『いいえ』
フィリア。
少し。
優しい声。
『それでいいんです』
「…………」
ガルド。
『ただし!』
来た。
『無茶はすんな!』
「どっちだよ!」
『動いたことはいい!』
『死ぬような動き方は駄目だ!』
「難しい注文だな!」
『だから鍛えるんだ!』
「結局走らせたいだけだろ!」
『バレたか!』
「隠してないだろ!」
セレナ。
『でも』
『魔法に頼らなかったのは正解だったわ』
「使えないだけだけど」
『そうとも言うわね』
メルク。
『報酬は木の実一つか』
「いいだろ別に」
『悪いとは言っていない』
「…………」
メルク。
少し。
笑っている気がした。
ノア。
『行動開始から少年確保まで――』
「時間測ってたの?」
『はい』
「今はいい」
『そうですか』
ヴォルグ。
『肩』
「大丈夫」
『木剣』
「え?」
見る。
腰。
転がった時。
地面に。
ぶつけた。
少し。
傷。
「……あとで見る」
『今見ろ』
「はい」
いつもの。
ヴォルグだった。
◇ ◇ ◇
荷車は。
その場では。
直せなかった。
御者と少年は。
通りかかった別の荷車に。
乗せてもらい。
街へ戻ることになった。
別れる前。
御者が。
もう一度。
俺へ。
頭を下げた。
「名前、聞いていいか?」
「レン」
「レンか」
御者は。
覚えるように。
一度。
口にした。
「本当にありがとう」
「いえ」
少年も。
手を振る。
「レン!」
「おう!」
「またね!」
「またな!」
荷車が。
遠ざかる。
俺は。
手の中の。
赤い木の実を見る。
「…………」
名前。
呼ばれた。
それだけなのに。
少し。
嬉しかった。
異世界へ。
来た。
無職だった。
何も。
持っていなかった。
神様に。
育てられている。
まだ。
自分一人で。
できることなんて。
ほとんどない。
でも。
今日。
初めて。
誰かに言われたからじゃなく。
自分で。
一歩目を。
選んだ。
「…………」
その結果。
誰かが。
笑った。
悪くない。
「なあ、ガルド」
『何だ』
「今日」
少し。
恥ずかしい。
「走ったよな」
『走ったな!』
「訓練ってことにしていい?」
『駄目だ!』
「何で!?」
『明日は別で走る!』
「鬼!!」
思わず。
笑った。
◇ ◇ ◇
帰り道。
俺は。
少しだけ。
歩く速度を。
落としていた。
肩が。
痛い。
フィリアから。
何度も。
無理するなと。
言われた。
「分かってるって」
『レンさんは、“分かってる”と言いながら無理をする傾向があります』
「まだ数日だぞ?」
『数日でも分かります』
「怖いな」
街の門が。
見えてくる。
夕方。
間に合った。
門番。
朝と同じ兵士。
「お」
俺を見る。
「ちゃんと帰って――」
俺の。
汚れた服。
肩。
擦り傷。
「……何した?」
「ちょっと」
「何した」
「人助け?」
兵士が。
額を。
押さえた。
「昨日、“大丈夫だろ”はやめろって言ったよな?」
「俺が大丈夫じゃなかったわけじゃ」
「怪我してるだろ!」
「軽いです!」
怒られた。
街の中へ。
入る。
「今日はもう休めよ!」
「はい!」
「西へは行ってないだろうな!」
「行ってないです!」
そこだけは。
本当。
西には。
行っていない。
でも。
西から。
吹いた風。
そして。
壊れた。
荷車の留め具。
何となく。
頭に残っている。
◇ ◇ ◇
夜。
寝る前。
肩の痛みは。
少し。
引いていた。
「今日は……」
悪くなかった。
痛かったけど。
それ以上に。
少年の。
笑った顔が。
残っている。
俺は。
もらった木の実を。
手のひらで。
転がした。
小さい。
何の変哲もない。
赤い実。
でも。
捨てる気には。
ならなかった。
「価値は一つじゃない、か」
メルク。
傷だけを見るな。
フィリア。
怖くても見ろ。
ガルド。
違和感を無視するな。
ヴォルグ。
知ることと決めることは違う。
ノア。
全部。
少しずつ。
今日。
使った。
「…………」
七柱。
バラバラなのに。
ちゃんと。
繋がってるんだな。
その時。
――ピコン。
「ん?」
神託。
こんな時間に?
見る。
【――――】
「…………?」
名前が。
ない。
いつもなら。
誰からの神託なのか。
表示される。
ガルド。
セレナ。
メルク。
ヴォルグ。
フィリア。
ノア。
エリオス。
でも。
今回は。
【――――】
それだけ。
「誰?」
返事。
なし。
「ノア?」
反応。
なし。
「エリオス?」
何も。
来ない。
俺は。
身体を。
起こした。
「……ガルド?」
沈黙。
神託は。
消えない。
【――――】
文字も。
ない。
名前も。
ない。
ただ。
空白だけが。
残っている。
「何だよ、これ……」
しばらくして。
表示は。
何も伝えないまま。
消えた。
◇ ◇ ◇
神域。
七柱の共有領域。
最初に。
口を開いたのは。
ノアだった。
【知識神ノア】
『今の神託を送った者は?』
沈黙。
【戦神ガルド】
『俺じゃねえ』
【魔法神セレナ】
『私でもない』
【商神メルク】
『違う』
【鍛冶神ヴォルグ】
『送っていない』
【生命神フィリア】
『私ではありません』
ノア。
『私も送信していません』
残る。
一柱。
【創世神エリオス】
沈黙。
【戦神ガルド】
『エリオス』
返事が。
少し。
遅れた。
『俺ではない』
誰も。
続けなかった。
【知識神ノア】
『神託経路を確認します』
短い。
沈黙。
『…………』
【魔法神セレナ】
『どうしたの?』
ノアから。
一つ。
表示された。
【送信元】
【取得不能】
【商神メルク】
『故障か』
【知識神ノア】
『現時点では断定できません』
【鍛冶神ヴォルグ】
『なら決めつけるな』
『はい』
フィリアが。
静かに。
問う。
【生命神フィリア】
『レンさんには?』
また。
沈黙。
エリオス。
『まだ言うな』
【戦神ガルド】
『理由は』
『分からないものを』
エリオスが。
少し。
間を置いた。
『恐怖だけで判断させたくない』
ガルドから。
返事は。
来なかった。
誰も。
答えを。
持っていなかった。
ただ。
一つだけ。
記録が残った。
【未識別神託】
【送信元:不明】
【内容:なし】
【受信対象:レン・アルヴェイン】
そして。
その記録を。
七柱の誰も。
消すことができなかった。




