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神々は無職を選んだ  作者: 夜凪 灯
第一章 七柱と無職
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11/71

神託ログ11 商神、客より神々の方が邪魔だった

前書き


いつも『神々は無職を選んだ』を読んでくださり、本当にありがとうございます!


ここまでレンと七柱の神々を見守ってくださっている皆さんに、心から感謝しています。


この作品を、もっと笑えて、もっとワクワクして、時には心に残るような――そんな皆さんに愛される作品にしていきたいと思っています。


まだまだ物語は始まったばかり。


これからも「次も読みたい!」と思ってもらえるように、展開やキャラクター、一つひとつのやり取りまで、もっと面白さを追求していきます!


面白いと思っていただけたら、高評価などで応援していただけると、とても励みになります!


これからもレンと七柱の神々を、よろしくお願いします!

昨日。


知識神ノアに教わったことは。


思ったより単純だった。


知っていることと。


決めることは違う。


正解がないこともある。


そして。


分からないなら。


分からないと言えばいい。


「……よし」


朝。


俺は残り少ない所持金を確認して。


立ち上がった。


今日の担当は――。



――ピコン。



【商神メルク】


『市場へ来い』


「またメルク?」


『不満か』


「いや、前やったじゃん」


『一度荷物を運んだ程度で商売を理解したつもりか?』


「思ってません」


『なら来い』


「はい」


商神。


強い。


前回。


俺はメルクに。


価値について教わった。


荷物を運び。


掃除をして。


銅貨を二枚稼いだ。


一枚は。


食事に消えた。


そして今。


残っている金も。


かなり心細い。


「……働くか」


何より。


門番への借金。


銅貨三枚。


まだ一枚も。


返せていない。



◇ ◇ ◇



市場へ着くと。


朝から。


人で溢れていた。


野菜。


果物。


肉。


魚。


布。


雑貨。


屋台。


客を呼ぶ声。


値段を交渉する声。


荷車の音。


前に来た時より。


ずっと。


騒がしく感じる。


『前の店へ行け』


「荷運びしたところ?」


『ああ』


果物を扱う店。


前回。


荷運びを手伝った。


あの店だ。


店主も。


俺を覚えていた。


「おお、兄ちゃん」


「おはようございます」


「また仕事探しか?」


「はい」


「ちょうどいい」


店主が。


店の奥を指す。


木箱。


籠。


果物。


大量。


「今日は荷物じゃない」


「何するんですか?」


「店番」


「…………」


「できるか?」


「やったことないです」


『レン』


メルク。


「何?」


『やれ』


「軽いな!」


店主が。


怪訝そうに見る。


「どうした?」


「いや、何でもないです」


危ない。


神様との会話。


外から見れば。


完全に独り言だ。


「やります」


「よし」


店主が。


笑った。


「昼まで頼む」


「はい!」


こうして。


異世界生活。


初。


接客業が始まった。



◇ ◇ ◇



「まず」


店主が。


並べられた果物を指す。


「こっちが一個銅貨二枚」


「はい」


「こっちは三つで銅貨一枚」


「はい」


「こっちは傷あり。一山で銅貨二枚」


「はい」


「これは熟してるから今日中に売りたい。二つで銅貨一枚」


「待って」


情報量。


多い。


「もう一回お願いします」


店主は。


笑った。


「覚えろ」


「厳しい!」


『商売は待たん』


「メルクまで!」


何度か。


値段を確認する。


ようやく。


頭に入った。


「よし」


客を待つ。


すぐに。


女性が一人。


店へ来た。


「これ、いくら?」


来た。


初客。


指しているのは。


赤い果物。


「銅貨二枚です!」


女性が。


一個。


手に取る。


「高いねえ」


「え?」


開始。


三秒。


想定外。


「昨日は一枚だったよ?」


「え?」


店主を見る。


いない。


奥で。


荷物を整理している。


「メルク!」


『何だ』


「昨日一枚だったって」


『客がそう言っているな』


「どうすればいい?」


『お前が店番だ』


「助けろよ!」


女性が。


俺を見ている。


「どうするの?」


「えっと……」


焦る。


値下げ?


でも。


勝手に。


値段を変えていいのか?


「銅貨……一枚で」


『馬鹿』


即。


怒られた。


「じゃあ二枚です!」


女性の眉が上がる。


「どっちなの?」


「二枚です!」


「そう」


女性は。


果物を戻した。


「じゃあいらない」


去っていく。


「…………」


初客。


逃した。


『0点』


「早いわ!」


『むしろマイナスでもいい』


「厳しすぎない!?」


店主が。


奥から。


笑っていた。


「兄ちゃん、向いてねえな」


「まだ一人目です!」


「その調子じゃ昼まで長いぞ」


悔しい。


「何が悪かった?」


メルクへ聞く。


『全部』


「具体的に!」


『まず』


メルクが言う。


『なぜ昨日の値段を確認しなかった』


「今日の値段聞いたから」


『客は昨日の値段を知っていた』


「うん」


『なら、その差に理由がある可能性を考えろ』


「あ」


確かに。


今日。


高くなった理由。


あるのかもしれない。


『次』


「まだある?」


『勝手に値段を変えた』


「それは分かる」


『次』


「まだ!?」


『客がなぜ“高い”と言ったか確認していない』


「高いからじゃないの?」


『それは客の言葉を繰り返しただけだ』


「…………」


『本当に金が足りないのか』


『値下げ交渉なのか』


『昨日との違いを知りたいだけなのか』


『別の商品を探しているのか』


『お前は何も聞いていない』


「…………」


痛い。


確かに。


高い。


そう言われて。


焦って。


すぐ。


値段を下げようとした。


「商売って難しいな」


『人間が相手だからな』


「商神らしいこと言うじゃん」


『俺は商神だ』


「知ってる」



◇ ◇ ◇



二人目。


年配の男性。


「この果物、甘いか?」


来た。


今度こそ。


俺は。


果物を見る。


「甘い……」


知らない。


食べたことがない。


昨日。


ノアに。


教わった。


分からないなら。


分からないと言う。


「すみません。俺、食べたことないので分からないです」


男性が。


一瞬。


止まった。


「店番なのに?」


「今日初めてで」


『正直すぎる』


「え!?」


昨日と言ってること違う!


『嘘をつかないことと、何も調べないことは別だ』


「…………」


正論。


腹立つ。


「ちょっと待ってください!」


店主を呼ぶ。


「これ、甘いですか?」


「そっちは酸味が強い。甘いのなら隣だ」


「ありがとうございます」


男性へ。


隣の果物を示す。


「こっちの方が甘いそうです」


「じゃあ、そっちを二つ」


「はい!」


売れた。


初売上。


「よし!」


『10点』


「低っ!」


『客を待たせた』


「初めてなんだから許して!」


『だが』


「ん?」


『分からないことを、分かったふりしなかった』


少し。


間。


『そこは悪くない』


「……ノアのおかげだな」


【知識神ノア】


『呼びましたか』


「うわ!」


急に来た。


『質問されていませんでしたので、発言を控えていました』


「いたの!?」


『はい』


「いつから?」


『最初から』


「助けてよ!」


『質問されていません』


「そういうとこだぞ!!」


【商神メルク】


『邪魔するな』


【知識神ノア】


『了解しました』


消えた。


「…………」


何だったんだ。


『客だ』


「え?」


振り返る。


三人。


待っていた。


「うわ、ごめんなさい!」


商売。


本当に。


待ってくれない。



◇ ◇ ◇



そこから。


少しずつ。


慣れてきた。


「これいくら?」


「三つで銅貨一枚です」


「こっちは?」


「傷があるので一山二枚です」


「食べられる?」


「はい。見た目が悪いだけだそうです」


「じゃあこっち」


「ありがとうございます!」


別の客。


「甘いやつある?」


「こっちです」


「硬いのがいい」


「じゃあ……」


分からない。


「店主さん!」


聞く。


覚える。


次。


また同じことを聞かれたら。


今度は。


答えられる。


少しずつ。


知っていることが。


増えていく。


でも。


しばらくすると。


別の問題が起きた。


客が。


来なくなった。


隣の店には。


人がいる。


向かいにも。


いる。


でも。


俺の店。


少ない。


「何で?」


『考えろ』


「場所?」


『違う』


「値段?」


『大きな差はない』


「商品?」


『品質に問題はない』


「じゃあ何?」


『それを考えろ』


また。


答えをくれない。


店を見る。


果物。


並んでいる。


値段。


書いてある。


俺。


立っている。


「…………」


隣を見る。


「安いよー!」


店員が。


声を出している。


「朝採れだ! 甘いぞ!」


向かい。


別の店。


「今日の煮込みにどうだい!」


客へ。


話しかけている。


俺。


「…………」


立っているだけ。


「これか?」


『何がだ』


「呼び込み」


『やってみろ』


息を吸う。


「い、いらっしゃいませー!」


小さい。


誰も。


見ない。


「……無理」


『なぜだ』


「恥ずかしい」


『昨日、神相手に一人で大声を出していただろう』


「ヴォルグのせいだよ!」


『あれよりは簡単だ』


確かに。


あれを。


市場の真ん中で。


やったと思えば。


「いらっしゃいませー!」


今度は。


少し大きく。


一人。


こちらを見る。


「果物どうですかー!」


二人。


止まる。


お。


来る。


「甘いのあります!」


女性が。


近づいてくる。


「どれ?」


「これです!」


売れた。


「……なるほど」


『何がだ』


「客が来なかったんじゃなくて」


『ああ』


「俺が、来る理由を作ってなかった?」


メルクから。


少し。


間。


『30点』


「上がった!」


嬉しい。


基準が。


完全に。


メルクに支配され始めている。



◇ ◇ ◇



昼前。


小さな女の子が。


店の前で。


ずっと。


果物を見ていた。


十歳くらい。


だろうか。


手には。


銅貨一枚。


「どうした?」


声をかける。


女の子は。


一番大きな赤い果物を指した。


「これ……」


「うん」


「一枚じゃ買えない?」


値段。


銅貨二枚。


「……買えない」


女の子が。


少し。


俯く。


「お母さんにあげたいの」


「お母さん?」


「今日、誕生日」


困った。


俺の頭に。


一瞬。


選択肢が浮かぶ。


一枚で。


売ってあげる。


でも。


さっき。


勝手に値段を変えて。


怒られた。


「メルク」


『何だ』


「どうする?」


『お前が決めろ』


「出た」


『店番はお前だ』


「でも俺の店じゃない」


『だからこそ、勝手な値下げはできん』


「じゃあ無理じゃん」


『そう言ったか?』


「…………」


言ってない。


見る。


店。


果物。


値段。


一枚で買えるもの。


ある。


でも。


女の子が見ているのは。


赤い果物。


「何でこれがいいの?」


女の子に聞く。


「お母さん、これ好きだから」


「そっか」


傷ありの商品を見る。


同じ種類。


少し。


小さい。


形も悪い。


三つで。


銅貨一枚。


「こっちは?」


女の子が。


見る。


「同じ?」


「味は……」


言いかけて。


止まる。


「店主さん!」


「何だ?」


「傷ありって、味違います?」


「変わらんよ」


「だって」


女の子が。


傷のある果物を見る。


「三つ買えるの?」


「一枚で」


少し。


考えて。


笑った。


「じゃあ、こっち!」


銅貨。


一枚。


受け取る。


果物を。


三つ。


袋へ。


「ありがとう!」


女の子は。


走っていった。


俺は。


その背中を見る。


『レン』


「ん?」


『今、何を売った』


「果物」


『0点』


「何で!?」


上がったと思ったのに!


『もう一度考えろ』


「果物三つ」


『違う』


「…………」


メルク。


こういう時。


絶対。


答えを言わない。


考える。


女の子。


銅貨一枚。


母親。


誕生日。


欲しかったもの。


「……プレゼント?」


『近い』


「母親に喜んでもらうためのもの?」


『そうだ』


メルクが。


言う。


『客は、商品そのものが欲しいとは限らん』


「え?」


『腹を満たしたい』


『誰かを喜ばせたい』


『楽をしたい』


『時間を節約したい』


『見栄を張りたい』


『安心したい』


『理由は様々だ』


市場を見る。


果物。


服。


肉。


道具。


全部。


物を売っている。


でも。


買う人には。


その先がある。


『商品だけを見るな』


『客を見ろ』


「…………」


昨日。


フィリアにも。


似たことを言われた。


傷だけを見るな。


その人を見ろ。


「神様たちって、意外と同じこと言うな」


『一緒にするな』


「そこ否定するんだ」


『俺は商売の話をしている』


「はいはい」


でも。


面白い。


違う神から。


違うことを教わっているはずなのに。


少しずつ。


繋がっていく。



◇ ◇ ◇



昼。


店主が。


戻ってきた。


「どうだった?」


「……大変でした」


「売上は?」


数える。


店主が。


確認する。


「悪くない」


「本当ですか?」


「ああ」


少し。


嬉しい。


「じゃあ」


店主が。


銅貨を。


二枚。


俺へ渡した。


「今日の分」


「二枚?」


「不満か?」


「いや!」


昨日と。


同じ。


でも。


今日は。


意味が違う。


荷物を運んで。


二枚。


店番をして。


二枚。


「仕事って、いろいろあるんだな」


『当然だ』


メルク。


「体力なくてもできる仕事ある?」


『ある』


「魔法使えなくても?」


『ある』


「天職が無職でも?」


少し。


間。


『仕事はできたな』


手の中。


銅貨二枚。


答えは。


そこにあった。



◇ ◇ ◇



「よし」


俺は。


市場を出る。


「どこへ行く」


『門』


メルクに。


先に言われた。


「分かってる」


借金。


銅貨三枚。


今。


手元に。


昨日から残っていた分と。


今日稼いだ分。


少なくとも。


返せるだけの金がある。


ただ。


全部返したら。


また。


食事に困る。


「……一枚だけ返す」


『なぜだ』


「全部返したら、今日の飯がなくなる」


『正解』


「お」


『40点』


「満点いくつ?」


『100』


「遠いな!」


門へ向かう。


あの。


最初に。


銅貨三枚を。


立て替えてくれた兵士。


今日も。


いた。


「すみません」


「ん?」


俺を見て。


少し。


考える。


「ああ。無職の兄ちゃん」


「その覚え方やめてください」


兵士が。


笑う。


「仕事見つかったか?」


「少しだけ」


銅貨を。


一枚。


出す。


「これ」


兵士は。


銅貨を見る。


「何だ?」


「返します」


「三枚だったぞ」


「分かってます」


「なら貯めてからでいい」


「でも」


兵士は。


受け取らない。


昨日と。


同じ。


「まず自分で立て」


「…………」


「食う金はあるのか?」


「あります」


「今夜は?」


「……たぶん」


「たぶんじゃ駄目だ」


また。


返される。


「でも借金ですよね?」


「そうだ」


「なら」


「逃げる気あるか?」


「ないです」


「ならいい」


「良くないでしょ」


「俺がいいと言ってる」


強い。


「それに」


兵士が。


俺を見る。


「返しに来た」


「はい」


「それで十分だ」


「……?」


「逃げる奴は、ここに来ねえ」


昨日。


メルクが言った。


信用。


目に見えない。


価値。


「じゃあ」


俺は。


少し考える。


「次、ちゃんと稼いだら返します」


「ああ」


「絶対」


「分かった分かった」


軽い。


でも。


俺にとっては。


結構。


大事な約束だった。



◇ ◇ ◇



門から。


市場へ戻る途中。


メルクが。


突然聞いた。


『レン』


「何?」


『あの兵士は、なぜ金を受け取らなかった』


「俺が困るから?」


『それだけか』


また。


それだけか。


「……信用してくれた?」


『そうだろうな』


「でも」


少し。


不思議だった。


「信用って、金にならないよな」


『なる』


「え?」


即答。


『場合によっては』


「どうやって?」


『例えば』


メルクが。


説明する。


『お前が店を持ったとする』


「いきなり?」


『想像しろ』


「はい」


『同じ商品を扱う店が二つある』


『片方は安い』


『だが、嘘をつく』


『もう片方は少し高い』


『だが、約束を守る』


「……俺なら後者かな」


『なぜだ』


「安心だから」


『それが価値だ』


「…………」


『客が明日も来る理由になる』


その言葉。


妙に。


残った。


「明日も来る理由」


『一度売れば終わりではない』


『また来たいと思われる』


『また頼みたいと思われる』


『また任せてもいいと思われる』


『それも商売だ』


俺は。


朝。


店へ来た時のことを思い出した。


店主は。


俺を覚えていた。


前回。


荷物を運んだ。


掃除もした。


だから。


今日。


店番を任された。


「……俺も?」


『何がだ』


「前にちゃんと働いたから、今日も仕事もらえた?」


『そうだ』


「じゃあ」


昨日の。


銅貨二枚。


あれだけが。


報酬じゃなかった。


今日。


もう一度。


仕事を任されたこと。


それ自体が。


前回。


作った価値。


「何か」


少し。


嬉しい。


「商売って、金だけじゃないんだな」


『今さらか』


「商神が言うと説得力ある」


『金は重要だ』


「そこは否定しないんだ」


『当然だ』


メルクらしい。


『綺麗事だけでは腹は膨れん』


「はい」


『だが』


少し。


間。


『金だけ見ていても、商売は続かん』


「…………」


『人を見る』


『何を求めているかを見る』


『そして』


『明日も来る理由を作れ』


俺は。


市場を見る。


昨日までとは。


少し違って見えた。


物を売る人。


買う人。


運ぶ人。


作る人。


誰かの。


必要なものが。


別の誰かへ。


渡っていく。


その間を。


金が。


動いている。


「……面白いな」


『そうだろう』


「メルク、ちょっと嬉しそう?」


『気のせいだ』


「絶対嬉しいじゃん」


『50点』


「点数で誤魔化した!」



◇ ◇ ◇



その時だった。


市場の向こうから。


声が聞こえた。


「レン!」


振り返る。


朝。


店に来た。


あの女の子。


その隣に。


女性がいる。


母親。


だろう。


女の子が。


こちらへ走ってくる。


「お兄ちゃん!」


「どうした?」


「お母さん、喜んだ!」


女性も。


こちらへ来る。


手には。


あの。


傷のある果物。


「この子から聞きました」


「え?」


「予算に合わせて選んでくれたって」


「いや、俺は」


「ありがとうございました」


頭を。


下げられる。


「見た目は悪いけど」


女性が。


笑う。


「味はすごく美味しかったです」


女の子も。


笑っている。


「また買いに行く!」


「……うん」


二人は。


市場の中へ。


歩いていった。


俺は。


その背中を見る。


『レン』


「何?」


『今、何が起きた』


「…………」


今日は。


分かった。


「また来る理由ができた」


少し。


間。



【商神メルク】


『80点』



「おお!」


今日。


最高点。


「あと20点は?」


『調子に乗るな』


「厳しい!」


でも。


悪くない。



◇ ◇ ◇



夕方。


神々の。


共有領域。


そこに。


珍しく。


複数の神が集まっていた。


【商神メルク】


『今日の報告だ』


【戦神ガルド】


『レンは働いてたんだろ?』


【商神メルク】


『ああ』


【魔法神セレナ】


『魔力の練習は?』


『していない』


『ちょっとくらいさせてもよかったじゃない』


『今日は商売の日だ』


【鍛冶神ヴォルグ】


『道具は』


『使っていない』


『そうか』


【生命神フィリア】


『食事はしましたか?』


『した』


『ちゃんと?』


『した』


【知識神ノア】


『摂取量の記録はありますか』


『お前ら』


メルクの。


文字が。


止まる。


『今日の担当は俺だ』


沈黙。



【戦神ガルド】


『で、何点だった?』



『…………』



【魔法神セレナ】


『私も気になる』



【生命神フィリア】


『私もです』



【知識神ノア】


『評価基準の共有を希望します』



【鍛冶神ヴォルグ】


『何を学んだ』



メルクは。


しばらく。


黙っていた。


そして。



【商神メルク】


『お前らの方が客より邪魔だ』



【戦神ガルド】


『客じゃねえし!』



【魔法神セレナ】


『神だし!』



【知識神ノア】


『その指摘は正確です』



【生命神フィリア】


『ふふ』



【鍛冶神ヴォルグ】


『で、何点だ』



『お前まで聞くな』



そこへ。


最後の一柱。


創世神エリオスが。


静かに現れた。



【創世神エリオス】


『ちょうどいい』


全員。


少し。


静かになる。


『一度』


『レンの育成について』


『七柱で話し合いたい』



沈黙。



【戦神ガルド】


『いいな!』



【魔法神セレナ】


『賛成!』



【商神メルク】


『嫌な予感しかしない』



【鍛冶神ヴォルグ】


『同感だ』



【生命神フィリア】


『必要だと思います』



【知識神ノア】


『議題を整理します』



メルクは。


すでに。


面倒そうだった。



【創世神エリオス】


『では、明日』



【七柱育成会議】


【開催】



そのことを。


当の育成対象であるレンは。


まだ。


知らなかった。

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