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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第七章 進化と万能編

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第157話 想定外のでき事

 ロガンズとスレーム・ガング一行の馬車は岩山地帯の山道を順調に進んでいる。現在、約10km地点といったところだ。


「この山道、先に向かってる人たちがいるのに何だかモンスター多くないですか?」

「雨が降ったからじゃないか?」

「・・・でも変ですね。普段ならスライムが多く出てもおかしくないはずですが」

「そうそう、スライム! 最近、全然見かけなくないですか?」

「言われてみればスライム倒してないわね」

「あれじゃないかな? モンスター進化説。黒い雨以降、スライムが逃げて行くようになったとか書いてあった」

「私もそれは読みましたが黒い雨が降らなくなった今でもそうなのでしょうか?」


 そう話している間にまた馬車が止まった。


「モスバル、またモンスター出たの?」

「今度はスライムだな、何匹かいるようだ。

 ザイルとパーソンがスライムくらい倒したいとゴネてな。

 今、二人に任せたところだ。

 まあ、擬態する前に倒しておいた方が帰りが楽だろ?」

「もう、さっさと終わらせてよね!」


 バンとセキトモはまだ倒されていないスライムのいる位置を確認している。


「あそこにもいますね」

「うん、これは・・・上に逃げようとしている?

 いや、落ちてきたのか?」


 モンスターが多い原因がこのスライムたちの出現で分かったようだ。崖の上は日照りにさらされている岩盤で余り生き物が生息していない。崖を駆け上れるカモシカが通るくらいだろう。山道は崖に挟まれているもののコケや草は生えているので何かしらの生き物が生息している。どうやら上で発生したスライムが捕食する生き物を求めて崖の下に落ちてきているようなのだ。


 先に向かった討伐者たちがいたのは移動を再開してしばらくしてからの事だった。全員疲弊しているようだが重傷者はいないようだ。8人いる。


「誰か解毒ポーション持っているやつはいないか?

 このままだと仲間が死んでしまう」

「おいおい、ウソだろ、3人も毒に侵されてるぞ」

「お前たち毒対策をして討伐に向かったんじゃないのか?」

「解毒ポーションは5瓶用意してあったんだが全員集まっているときにまとめて浴びてしまって・・・。迂闊だった」


「モスバル、この方々に治療を!」


 バンも躊躇することなく残りの1人に手持ちの解毒ポーションを使った。


◇◇


「どうします? 俺たちの解毒ポーション残り2瓶になっちゃいましたよ」

「命の代償としては安かったわよね?」

「そっち?」


 引き上げて行った討伐者たちから解毒ポーションの礼として30万エーペルを受け取った。買い直すには十分な額なのだがサソリと遭遇する前に解毒ポーションを3瓶も失ったのは想定外のでき事である。


「あいつら結局1体も倒せなかったんでしょ?

 しかもせこい考えで挑んだみたいだったし」


 彼らは討伐対象の印である塗料のついたサソリ1体だけに集中してタグを回収して戻る算段だったようだ。5体のサソリすべてにタグが打ち込まれているわけではない。観測者による確認で虚偽の報告をすればバレるのだが1体だけでもその分の報酬は出るはずと。それに山道では身を隠す所があまりないので目撃されていなかったら5体倒した事にするという打算もあったようだ。


 サソリがいるおよその位置はここから2km先とのこと。都市の方向へ随分進行しているようだ。先行してイズハが確認に向かった。ここから先は馬車を残して歩きで進む。馬車の見張りとしてザイル、パーソン、ゴルの3人が残る。ロガンズ全員を残して向かおうとしたがローザがついて行くと無理を通した形だ。ローザとモスバルは後方支援のみに徹するとのこと。


 ローザの話ではサソリの毒を浴びてから死に至るまで6~8時間とのことだ。少なくとも5時間以内には解毒処置をしなければならないだろう。


「毒の対処ができなかったら馬車で急いで都市に戻るって事でいいんだよね?」

「はい、馬車ならなんとか間に合ううちに戻れるかと」


 トウマは持っていた解毒ポーションをバンに渡した。


「これはバンさんが持っていて下さい。俺が持ってても使いどき間違っちゃうかもしれないので」

「・・・分かりました」


 しばらく山道を進んでいると、イズハが戻って来た。


「サソリはこっから約500ってとこっすかね。100mくらいまで近づくと視界に入る位置なので気づかれてしまうかもっす」


 ローザたちが遭遇したときと同様、1体だけが先に進んでいて残りの4体は100mほど後方にいるようだ。先に進んでいる1体に塗料が着いていたらしい。


「何だが僕たちを誘っている感じがしないか? 賢いモンスターかもしれないぞ」

「1体はおとり? 罠を張っているという事でしょうか?」

「巨大なモンスターを襲える動物なんてここにはいないだろ? 罠だとしたら人間、討伐者を誘っているとしか考えられないよ」

「・・・そうかもしれませんね」


「イズハ、サソリ1体を追い越して先を確認して来たの?」


 いくら気配を消すのが上手いイズハでも隠れる場所のない山道で巨大なサソリに気づかれずに素通りするなんて無理な話だ。


「崖の上からっすよ。登って上から確認してきたっす」

「あ、ダンジョンで似たような事やってたね。でもこの崖の高さ30m以上はあるぞ」

「登るのは特に問題なかったっすよ」

「そうなの? 俺でも登れるかな?」

「サソリを上から攻撃できないか考えてみたっすけど高過ぎるっすね」

「うーん、チナみたいに弓が使えたらなぁ~」


 イズハの話では崖の上は凸凹の激しい岩盤が至る所にあり歩行には適さない場所だったそうだ。もし、モンスターに襲われたら崖下に落ちてしまう可能性もあるので崖上を行くのはおすすめ出来ないらしい。


 トウマはロッカと目が合った。


「俺は飛び降りたりしないですからね!」

「別に何も言ってないでしょ」


 ここからはまとまってサソリの毒を浴びないよう分散して行動する。中央を進むのはトウマとセキトモ、勿論大盾を持つセキトモが前だ。いきなり毒を浴びせられても大盾で防ぐことが可能だろう。左側を進むのはロッカとイズハ。右側を進むのはバン一人だ。バンの後方にローザとモスバルを付かせた。これは念話でやり取りができる布陣でもある。ローザたちには念話ができることを教えていない。


《では、中央の俺たちが先行しますね》

《バン、左右に他のモンスターがいた場合は私たちだけで対処するわよ》

《承知しております。サソリに気取られないよう迅速にですね》


 一同が臨戦態勢で山道を進んでいると、バンの元にローザとモスバルがやって来た。


「バン様、こちら側はバン様お一人です。もしものときはお父様との取決めを破り、私も参戦致しますわ」

「私もこの場合は致し方ないと思う。出来る協力はするつもりだ」

「有難うございます。お気持ちは嬉しく思いますがサソリ討伐は私たちが決めた事です。お二人を戦いに巻き込むつもりはありません。最初の取り決め通り、お二人は誰かが負傷した場合の救護を優先して下さい」

「・・・分かりました。ではご武運を祈ります」


 二人は足を止め、バンと距離を置いた。


 バンは考えていた。解毒ポーションは私とセキトモさんの持つ2瓶だけ。サソリの毒を浴びてもしばらくは動ける事を考えると誰かが危ないときは私が盾となって浴びたほうがよいかもしれない。その覚悟だけはしておこう。そして相手は巨大なモンスター5体。例え3手に別れて戦っても2体同時に相手取るなど無理に等しいでしょう。少なくとも2体は足止めして。いや、1体は私が一撃で確実に仕留めるつもりでいかないと。


 バンは背に着けていたツインロッドを手に持つと、水袋を取り出した。


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