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戦のために兵を集めねばならんな

 さて室町時代において兵士を集める場合はまず軍勢催促というものを自分の影響下にある国人などに行いどこに集まるかを指示する。


 室町時代の守護・管領・公方といったものは基本的に直属の兵力は大して持っていないのでこうやって兵を集めるのだな。


 で、軍勢催促に応じて国人などが兵を連れて集結地に集合すると、彼らは「着到状」という書面を提出する。


 その内容は、率いてきた兵のうち騎乗の武士が何人弓を持った兵が何人、槍持が何人で合計の兵が何人などを細かく書きどれだけの兵力を持ってきたかを軍勢催促したものに伝えることで、最終的には自軍の兵力がどのくらいかがおおよそはわかるわけだ。


 無論この数字がもられている場合もあるわけだが、食料などは基本的にはすべて兵士を集めてきたほうが自弁で負担するのでよほど水増ししているのでなければさほど気にはされない。

 

 で軍勢が集結したら合戦に適した場所に移動し戦いが始まり、勝敗が決するか食料が尽きて明確な決着はつかないでお互い撤退して合戦が終わる。


 実際の所どちらの被害もそこそこで食べ物が尽きて終わることのほうが多かったりする。

 

 で、戦いが終わると国人などは「軍忠状」という書面を、軍勢催促を行った者へ提出する。


 これはこの戦いで自分の率いたものがどういう手柄をたてたか、それをだれが見ていて証明できるか、また自分達の損害がどのくらいあったかなどをこと細かく書きあげる。


 旗を立てたり奇抜な兜をかぶったりするのは自分がどこで何をしていたかを証明するために必要なことだったんだな。

 

 でそれを受け取った軍勢催促を行ったものがその内容を確認し、必要があればその功績を上げたという証明ができるものに話を聞いた上で、内容にまちがいがなければ花押などを押し返却し、後日その軍忠状を役所へ持っていき恩賞を受け取るというもの。


 ただし兵を出してもろくに戦果が上がらなかったりすると当然恩賞はろくにでないわけで、堀越公方の足利政知が伊豆の国人に反発を受けていたのはそのあたりに原因があるわけだ。

 

 ちなみに恩賞の多くは所領の安堵と官位で、名刀や具足などが与えられれば、それは最上級のものであったと考えていい。


 所領安堵の書状があれば徴税権を保証されるが、支配者がコロコロ変わることも多い時代だったのでこれはこれで重要なんだ。

 

 なお、また、武将が差し出す軍忠状とは別に、軍勢催促を行ったものが戦場での直接見て働きぶりが素晴らしかったものには「感状」という書類をおくり、この場合は所領が増えたりする場合もある。


 大抵は敵対的な国人を討ち取ったとか城を攻め落としたといったものになるわけだけどな。


 なので、基本的に軍勢催促を行ったものが自ら先頭に立って戦うことはない。


 結果的にそうなる場合はあるんだけどな。


 彼らの役目は集まってきたものが戦いで行ったことをきちんと把握して、信賞必罰を公正に行うことなんだ。


 それに対して扇谷上杉定正が何を行ったかを考えれば彼の元を離れるものが続出するのは当然ではあるんだが、そもそも室町幕府そのものが力をつけすぎたものは粛清し、左遷する事を繰り返してきた政権だしな……。


 遠江今川なんかはそれを見事に体現しているので今川の中央に対しての姿勢が大内なんかに比べて曖昧なのもよく分かる。


 そして根本的には封建領主同士の戦いである室町時代の合戦は後の戦国時代の合戦に比べればあまり凄惨なものではない。


 これは武士を育てるためには時間と金がかかりなるべくなら自軍の損害がでないようにとしていたことが大きいな。


 関東以北がなかなか統一されなかったのはそういった事情もあったんだと思う。


 だが応仁の乱でそういった形が崩れたのも事実で、戦争になった場合は悴者を雇い入れて兵力を増やし、兵数で押しつぶしていくという形に合戦は変わりつつある。


 そういった者たちに長柄の槍をもたせて槍衾を作れば敵を押しつぶすのは難しくなくなるわけだ。


 その代わり合戦を行うための費用がどんどん跳ね上がるようになるのではあるけどな。


 で、今回だがせっかく順調に勧めている治水工事を中断させたりもしたくないので、悴者を500人ほど雇い入れて槍をもたせて食料も支給して戦わせることにした。


 合戦が終わった後も働き口がないならば普請をしてもらってもいいと思うしな。


 それとは別に風魔から100名ほど人を出してもらうことにもしている。


 山間での騎乗術に優れた彼らには偵察や伝令などの役目を担ってもらうつもりだ。


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